伊達だより 再会した2人が第二の故郷伊達に移住して 第二の人生を歩む

田舎暮らしの日々とガーデニング 時々ニャンコと

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ジャコシカ103

2019-03-28 20:09:10 | ジャコシカ・・・小説
 逆に酒の力を借りたせいか、高志はクラゲから荒海のイルカになった。

 嵐の海を渡った後は、さんさんと陽の降り注ぐ空虚の海で二人とも筏の上で、横たわっていた。

 やがて眠りに落ち、次に眼を開けた時は、隣にはもう美奈子はいなかった。

 彼女は現われたい時に現われ、去りたい時には去る。

 高志はなんとなく納得し、なんとなく安心する。彼女の去った後の目覚めの時は、ちらりとカー

テン越しの薄明かりに浮かぶ目覚まし時計を見て、再び変わらぬ眠りの中に落ちこんでいった。

 二人の関係は周囲には殆んど、気付かれることはなかった。

 美奈子の態度は、完璧なまでに、以前と変わらなかった。

 彼女が変わらなければ、高志には変わりようもない。

 彼女は毎日アパートを訪れるかと思うと、ふいに一週間も二週間も顔を見せなくなる。

 しかし、どんな日も彼女が朝まで高志の部屋にいることはなかった。

 家族の誰かと暮らしているのかを訊ねたことがある。

 「一人暮らしよ」そう答えただけで、後は何も応えない。

 店では毎日顔を合わせているのに、そんなことについて互いに何か言葉を交わすことはない。

 そんな日々の中で高志は次第に、自分が春までここにいるのかどうか、分からなくなっていた。

 そもそも何処かへ行きたくなったら、季節は関係なくなるのは分かっていた。

 それでも毎日の雪かきは、彼のそんな考えを押し止める力があった。

 アパートの玄関先から、5メートル先の通りまではやらねば文字通り、閉じこめられてしまうし、

店の入口前はいつの間にか自分の受け持ちになっている。

 毎日のことなので、ちょっと一服小休止の間に、ドロンを決めこむのも難しいのだ。

 二月に入ると寒さも威力を増し、さすがに雪はもう沢山と音を上げ始める。

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