この人を威圧するような美しさが、彼女そのものなのだ。
「艶ごとの始末は着いたのかしら」
あやは質問には応えずに、遠慮のない言葉をぶつけた。
「もちろん彼とは切れたわ。ただし仕事は別よ。彼は志乃を取り私を棄てた。その選択の結果が
出るのはこれからね。
私達は「フローラ」を失った。代わりに私は青山の店とブランド「優」を完全に自分のものにで
きた。
「フローラ」では引き続き「優」を扱うし、他の彼の店でも扱う。ついでに青山に手頃な工房も
手に入れた。
次はあや、貴方の番よ。札幌にブテックの良い出物があるの。よければそこの店をまかせたい、
責任者になって欲しいの」
「またあの女たらしの紐付きでですか」
あやの眼は冷ややかだ。
その眼の奥の表情を追って、優美は声を落とした。
「私を信用できなくなった」
「優美さんをと言うより女が分からないの。貴方も志乃さんも私には解らないの」
優美は視線をあやの瞳から外し、白磁のカツプを両手で包むようにして持ち上げた。
コーヒーを一口、二口飲み終わっても、彼女はカップを手放さない。
静かな沈黙が流れた。
やがて音をたててカップを置いた優美は、優しくあやを見て言った。
「でも貴方はこの仕事が好きでしょう。今までの時間はそのためにあった。ならば簡単に諦めら
れないでしょう。