伊達だより 再会した2人が第二の故郷伊達に移住して 第二の人生を歩む

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ジャコシカ9

2018-03-09 19:44:49 | ジャコシカ・・・小説
 彼は最初に丁寧に腰を折って礼を言ってから、笑顔で続けた。
 「おかげ様で行き斃れにならずに済みました。それどころかストーブを消さないでおけと言って

もらったので、暖かくて良く眠れました」

 「それは良かった」

 「母さん達にも親切にしてもらって、今朝は弁当までいただいて、それで何かお手伝いさせても

らいたいと言ったら、この仕事を指示されました。助かりました。

 こんなに良くしてもらえるなら、いっそここに居付いてしまいたいくらいです」

 「なつくなよ。悪くない話しだが、給料も出面賃(でめんちん)も出ない。函館行きの汽車の時間は確認したの

か」

 「一応、昼頃の鈍行にしょうかと思っています」

 高志は言ってから、まだ言いたいことが残っているといった様子で猛を見ている。

 「まだ何か話しでもあるのか」

 高志は言い淀んでいたが、促されて意を決したように言った。

 「さんざん迷惑をかけてから、またこんなことを言うのは厚かましいのですが、私、本当にここ

に住みたくなりました。何か仕事はないでしょうか」

 猛は表情を変えずに高志を見た。それからギョロ眼を強くつぶって、どんよりと垂れこめた雪空

を仰いで言った。

 「仕事かぁ、無理だなぁ」

 溜息混じりに言って、今一度高志を見てから、「ちょつと待て、中に入って茶でも一服やろう」

と休憩所の引き戸を指した。

 高志は誘われるままに、デッキブラシを片付けて猛の後に続いた。

 休憩所の中には男が一人、所在なさ気にストーブに当たっていた。

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