モノクローム・モーニング

2010-11-18 22:23:25 | 鳥(Birds)


シロクロヒタキ(Enicurus scouleri) Little Forktail


早朝。宿から出て歩いていると、何か小さな鳥が、私達からは死角になった地上から垂直上方向に向って何度もフライングキャッチをしていた。
この飛翔の際に、腰から外側尾羽にかけての逆Y字に見える白が目立って見えたため、「カワビタキかな?」と言う私。
しかし言葉とは裏腹に、胸の中でざわめく何かを感じた。そして心の片隅にある鳥の名前が浮かんできた自分に驚いた。
けれどそう簡単に見られるものではないよ、と自らに言い聞かせながらその鳥がとまっている地面が見える位置まで移動した時、なんということだろう、浮かんだ鳥の名前と目に飛び込んできた姿が一致したのだ。
「シロクロヒタキ!」

ショートボディ・エンビシキチョウといった感じの姿はとても愛らしく、図鑑の写真を何度も見ては想いを馳せていた憧れの鳥。台風の直撃による崖崩れ等の影響でシロクロヒタキの営巣地が削られ、近年は個体数が少なくなっているという。

シロクロヒタキははじめ灯りに寄った虫を求めて林縁まで出てきていたけれど、そのうちセキレイのように沢に沿って餌を探し始めた。



ミヤマビタキ(Muscicapa ferruginea) Ferruginous Flycatcher


混群の中、1羽だけ混ざっていたミヤマビタキ。この鳥も台湾に来て是非見たいと思っていた、日本でも記録がある鳥である。
まだ若い個体はこのように頭部に細かい斑がある。



【2010/09/26/台湾、嘉義 Chia-i,Taiwan】


小鳥の協奏曲

2010-11-17 22:53:42 | 鳥(Birds)


ヤブドリ(Liocichla steerii) Steere's Liocichla

ヤブドリはとても特徴的な動き方をする。そう、例えるなら小動物。
ネズミのように姿勢を低くして、タタタと走って道を横切ったり、数羽で地面を移動しているのをよく見る。混群に入っていたり、ヤブドリだけで行動していたりもする。



ニイタカキクイタダキ(Regulus goodfellowi) Flamecrest

ニイタカキクイタダキはヒガラよりもさらに小さい。
パンダ顔で混群に入っていて、虫を捕らえるために珍しくホバリングした時には、黄色とオレンジ色の頭頂部が、まるで活火山が噴火したかのように逆立った。黄金の菊(gold)を戴くキクイタダキに対して、炎(flame)を戴くニイタカキクイタダキの英名はこれに由来しているのだろう。



シマドリ(Ixops morrisoniana) Taiwan Barwing

シマドリは、混群の中では割りとシャイな方かもしれない。
よく木の幹を移動しているため、その体色から目立ちにくくなる。



ウチダウソ(Pyrrhula nipalensis) Brown Bullfinch

地味なウチダウソは、混群には入らずに同種で小群を形成することが多いようだ。
なるほど、尾羽に白い軸斑が入っているけれど、確かにこのことはどの図鑑にも書いていない。



タカサゴマシコ(Carpodacus vinaceus) Vinaceous Rosefinch

姉池に行くと、池の中にはバンコロヒキガエルやホトケドジョウのオバケみたいなドジョウがいた。よく探せばアリサンサンショウウオぐらい居たかもしれない。

針葉樹が幻想的な雰囲気な林道を歩くと、また混群に当たった。虹彩が白いためにキツイ顔に見えるアリサンチメドリは、イメージより随分小さくて驚いた。また、その群れにはミヤマウグイスも混ざっていた。
この時期には珍しく実の生る木には、カンムリチメドリの小群が来ていた。

森林遊楽区内を一周していると、濃霧になってしまった。
鳥は見えないが、霧の中から「ヒーヒヒョヒョヒョ....」というコルリみたいな声がした。何だろう、コバネヒタキあたりだろうか。また「ケン!....ケン!.....」という声が遠くからした。ミヤマテッケイだろうか?知る術が無いのが悔しいところ。



キバラシジュウカラ(Parus monticolus) Green-backed Tit

この森林遊楽区で鳥を探すには、とにかく歩き回るのが懸命である。
生息している鳥の大半は混群で採餌しながら移動しており、混群に当たらなければほぼ何も居ないし、混群に出遭えば殆どの種類が見られてしまう。
混群によって何種か別の鳥が入っており、これをいち早く見つけられるかがポイントになる。



カワビタキ(Rhyacornis fuliginosa) Plumbeous Water-Redstart

夜、料理店に入りメニューを見ていると、「竹鶏」などという文字を見つけた。
どこかで見たことがあると思い、少し考えてみると、それは図鑑に載っていたタイワンコジュケイの台湾名ではないか。注文してみると、それの丸焼きが出てきた。


【2010/09/25/台湾、嘉義 Chia-i,Taiwan】


約束の地は、阿里山

2010-11-15 18:21:22 | 鳥(Birds)


アリサンヒタキ(Tarsiger johnstoniae) Collared Bush Robin


阿里山の早朝。
例によって夜明けとともに起き出した私達は、大飯店(ホテル)から出て冷たい外気に身を晒し、眠気を振りほどいた。
まだ辺りはかなり薄暗いけれど、鳥の気配に満ちていた。というのも、そこかしこで羽ばたきや何かをつつく音がするのだ。

やっと目が利くようになってきた頃、茂みで動く影を双眼鏡で追うと、キクチヒタキの雄が隠れていた。次に、2羽で地面を跳ねるムクドリ大の鳥が道を横断した。目先の黄色斑がチャームポイントのヤブドリだ。さらに、すぐ近くの藪の中には、日本の亜種よりも随分冠羽の目立つヒガラがいる。また、お腹がまっ黄色のキバラシジュウカラもいる。針葉樹の一帯では、カケスが数羽で遊んでいた。カケスといっても台湾亜種で、日本のミヤマカケスの頭部の黒斑を無くしたような姿をしている。

阿里山鉄道の線路沿いを歩いていると、目の前の線路を囲う柵に小鳥がとまった。
肉眼でもその体色がわかる距離に居ながら、「も、もしかしてこれは....!」とわざとらしく言って、もったいぶる私達。双眼鏡に入れるまでの数秒、胸の高鳴りは最高潮に達し、顔の緩みに歯止めが利かなくなった。
アリサンヒタキだ!

初めての阿里山、鳥達による最高の歓迎である。


【2010/09/24/台湾、嘉義 Chia-i,Taiwan】


八千尺の山の朝

2010-11-14 22:43:03 | 鳥(Birds)


ヤマムスメ(Urocissa caerulea) Taiwan Magpie


八仙山の朝。
涼しい空気を浴びながら部屋を出ると、タイワンオナガがロッジのすぐ隣の木で騒がしく遊んでいた。
トイレに寄ろうと建物の角を曲がった時、信じられない光景が目に飛び込んできた。なんと、ヤマムスメがトイレの前にある洗面台の上にとまっているではないか!
あまりにも突然、そして近すぎたため、うろたえるばかりでどうしたら良いのか分からない私達。そんな気を知ってか知らずか、ヤマムスメは堂々と虫をついばんでいる。どうやら夜の間にトイレの灯りに寄ってきた虫を狙って来ていたようだ。
さらにもう2羽ほどが舞い降りてきて、ヤマムスメ朝食会の開催である。
よく動く鳥で、あれよあれよという間にその小群は餌をとりながら山の方へ移動していった。





ヤマムスメを見た後に少し歩いて、崖から谷を流れる渓流を見ると、カワガラスとカワビタキが動いていた。けれど道が途中で崩れており、崖に囲まれた川には近づけなくなっていた。
朝食をとった後、また歩いてみるも、どうも鳥が少ない。朝だというのに鳥の混群は通過しないし、鳴き声だって明らかに少ない。タイワンコジュケイやタイワンガビチョウと思しき声が聞こえるばかりである。
やはりそのような時期なのだろうか。

その後、崖に面した見晴らしの良い林道を歩いてみることにした。
ベニサンショウクイが、雄が2羽と雌が1羽、飛んでいった。空を見上げるとハチクマが飛んでいた。ヒメアマツバメと....そしてタイワンショウドウツバメも飛んでいる!
随分と弱ったオキナワルリチラシがよぼよぼと歩いていた。何気に初見である。
昼も近くなった頃、やっと、激しく込み合った潅木を移動する混群にめぐり遭った。
ヒメオウチュウ、ベニサンショウクイ雌、ズアカチメドリ、アオチメドリ、メジロチメドリ、ヒメマルハシで形成されている。

昼食をとった後、親切な宿の方が谷関のバス停まで車で送ってくれた。「こんなとこ(八仙山)どこのガイドブックに載ってるの?」と聞かれた。日本人が訪れることは稀らしい。
バス停の壁にはタケトラカミキリがいた。また、付近の料理屋では、ヒガイとオイカワの間の子のような姿の魚が水槽で飼われていた。これは日本で言うアユのような位置づけの食材なのだろう。
私達は次に、バス、新幹線等を乗り継いで嘉義の阿里山へと向った。
台湾のタクシーはとても安いのでよく利用するのだけれど、阿里山へ向う途中のタクシーで、一度降りたタクシーにもう一度乗ろうとした際、濃霧のなかでタクシーの車体にはらりと、巨大で美しいハグルマヤママユがたった1秒だけとまったものだから、眠気も覚めた。



バンコロヒキガエル(Bufo bankorensis

阿里山の夜は霧深く、また私一人でナイトハイクをしていると、どこか別世界へ行ってしまいそうな気がしてきた。このガマの出現は、そんな私に少し安心感を与えてくれる。
しばらくすると雨が降り出してきたので、おとなしく大飯店に戻って床に着いた。
外灯に結構虫が寄っているから、明日は鳥が期待出来そうだ。


【2010/09/23/台湾、台中・嘉義 Taichung and Chia-i,Taiwan】


ニンフの翅

2010-11-13 21:27:08 | 両爬(Amphibia&Reptiles)

ラトウチハヤセガエル(Rana latouchi

台湾2日目。
この日は台中の鞍馬山へと向った。
山の麓は果樹園になっており、標高を上げるにつれて辺りの植生が変わっていった。
山の中腹辺りを散策してみると、トラツグミが暗い場所で採餌していた。ミミジロチメドリは3羽で針葉樹の中をよく動いている。いきなり飛んできたのは30~40羽のベニサンショウクイの群れだった!雄が真紅、雌が黄色をしているものだからもの凄まじい見た目である。逆光でトケンが飛んだが、大きさからして明らかにオオジュウイチだろう。「ピピーハ」の声は出してくれず。
―この場所に早春に訪れたのなら、きっと赤い桐の実にタイワンツグミやチャバラオオルリが来るのであろう...。
もう少し標高を上げた場所では、「ヒリリリ...」と尻上がりにタカサゴミソサザイが鳴いていたけれど、藪から出てきてはくれなかった。その代わりカンムリチメドリの群れと、ゴシキドリが通過していった。
さらに標高を上げると、周りは針葉樹のみとなった。ホシガラスの「ガァガァ」という声がしたり、腹が橙色のゴジュウカラがちょこまかと動き回っていたけれど、結局目的の鳥2種には出遭えなかった。そもそも計画の段階で破綻していたのである。鞍馬山日帰りなど、移動に殆ど時間を割かれて下見くらいしか出来ないことくらい目に見えていた。
いいのだ。老後の楽しみにとっておくものだと考えれば問題無い。

暗くなる頃、八仙山に到着した。台風の影響で宿のスタッフは2名でもちろん他の客などおらず、とても静かだった。

夕食後、友人は寝ると言ったけれど、私は昼間の物足りなさを埋めるために一人で夜の森を歩くことにした。




沢水が流れ込む池では、沢山のラトウチハヤセガエルが鳴いていた。



バンコロヒキガエル(Bufo bankorensis

明かりもない林内を歩いていると、まだ小さなバンコロがいた。苔むした崖にはタイワンサソリモドキがいたり、アシヒダナメクジが這っていたりした。また、林道上のアフリカマイマイを危うく踏み潰すところだった。




羽化直後のセミの翅。透き通った白い翅は、まるで妖精の羽のよう。


【2010/09/22/台湾、台中 Taichung,Taiwan】