オキナワキノボリトカゲ(Japalura polygonata polygonata) Okinawa tree lizard
夕方。場所は変わってここは比較的樹高のある木の茂る暗い森。
林道の入り口にあった立ち枯れの木にはリュウキュウコゲラが来ていた。
日が長いと言えどもう18時をまわった森の中は相当暗くて、辺りには哀愁漂うリュウキュウアカショウビンの声が響いている。私達がこの森の中を通る林道を歩いていると、突然道端からガラスヒバァが動き出してすぐに木の根元に潜ってしまった。
カサコソと地面で何者かが動く音を聴き取ったら、下手に近付かずに双眼鏡でその音の方向を見た方が見失う確率が低いというもの。この時は小さくて茶色い、ヘリグロヒメトカゲがそのカサコソ音の主だった。
ふいにアオバセセリが飛んでいった先に目をやると、オキナワキノボリトカゲがシダの葉の上に乗っているのを見つけた。
顔の鱗の質感が、昔の図鑑に載っていたアロサウルスあたりにそっくりだ。
レンズを近付け過ぎると、口を開けて怒り出す。
【2011/06/23/沖縄本島 Okinawa Island,Japan/Jun.2011】
リュウキュウルリモントンボ(Coeliccia ryukyuensis ryukyuensis)
ここは、山原の中でも比較的背の低い木が茂る明るい森。
森に着くと早速、「ピリリリッ」と鳴いてリュウキュウサンショウクイが出迎えてくれた。この後何度かこの森に立ち寄ったけれど毎回リュウキュウサンショウクイが見られたから、結構な生息密度なのだろう。
何本も沢をまたぐアップダウンの激しい林道を歩いていると、胸部と複眼が綺麗なスカイブルーをしたリュウキュウルリモントンボの雄が木漏れ日差す葉の上で静かに休んでいた。
またしばらく歩くと沢の奥からホントウアカヒゲの囀りがかすかに聞こえた。そこで私達はこの沢の近くに座り込んで少し待ってみたのだけれど、結局ホントウアカヒゲは姿を現さなかった。
待っている時に、沢沿いに咲くアオノクマタケランには白い麩の入った翅が見事なナガサキアゲハやシロオビアゲハ、それからジャコウアゲハなど、何種類もの蝶が吸蜜に来ていた。
オキナワウズグモ(Octonoba okinawensis)
オキナワハンミョウに道案内されながら林道を出ると、開けた道には目の覚めるような青色の後翅をしたアオタテハモドキの雄がとまっていた。
【2011/06/23/沖縄本島 Okinawa Island,Japan/Jun.2011】
ベニアジサシ(Sterna dougallii bangsi) Roseate Tern
お昼の後。海岸沿いに車を走らせていると間もなく、コバルトブルーの海上を何羽もの白い海アジが乱舞している光景が目に飛び込んできた。
私が慌てて車から降り海辺に出ると、群れで飛びながら採餌していたそれらが、休息のためにすぐ近くの堤防へはらりはらりととまり出したではないか。嘴と足が赤くて美しい、ベニアジサシだ!
まとまって飛翔していた群れの半分が私達の目の前に舞い降りると、群れのもう半分はまた採餌をしながら、またさらに分散しながら静かなワンドの中を飛んで行った。
私と友人は灼熱の日差しの中で、まるで体感温度をすっかり忘れてしまったかのように座り込んでしばらくベニアジサシ達を眺めていた。こういうスパイスの利いた生き物に出逢うと、全ての意識がそちらに向いてしまうというのはいつものことである。なんという幸せな空間なのだろう。
しばらく経った後ふと浜辺を見ると、打ち上げられたのかオリイオオコウモリの亡骸が転がっていた。また、いつの間にか離れた場所にいた友人は魚のミイラ(友人が後で言うにはクロホシマンジュウダイだったらしい)をつついていた。
エリグロアジサシ(Sterna sumatrana) Black-naped Tern
ベニアジサシの中に少数が混ざっていたエリグロアジサシ。
【2011/06/23/沖縄本島 Okinawa Island,Japan/Jun.2011】
クロツラヘラサギ(Platalea minor) Black-faced Spoonbill
本州はまだ梅雨真っ只中の6月に、沖縄本島を訪れた。
はじめ私は、気温だけなら関東も沖縄も大して変わらないと思っていたけれど、実際沖縄に到着してみると予想以上の体感温度だった。いや、しかしこれでこそ沖縄という感じがして良いものだ。
飛行機の出発時刻が信じられないくらいに早い時間帯だっやから、あと3分でもゲートに到着するのが遅れていたら本当に乗り過ごしていたかもしれない(もう羽田空港は何度も利用しているというのに、あろうことか駅を降りてから初め真逆の方向へ進んでいた)。
この時期は鳥達の渡りもほとんど終わり、南部の海岸などはあまり見どころが無いため、潮の影響を受ける汽水の貯水池を少しチェックするだけにした。
この池に着くと3羽のクロツラヘラサギが採餌の真っ最中で、自慢の嘴を長いストロークで左右に振りながら足早に歩きまわっていた。それはもうとても奇妙な光景で、まるでお掃除ロボットか何かが全自動モードで動いているかのようであった。クロツラヘラサギの本気の採餌を見たのが実は初めてだった私は、目を見張ってその動きを追った。
池には他にバンの幼鳥が複数いて、セイタカシギと数種類のサギ、それからコアジサシが1羽飛び回っているという少し寂しい状況だった。
“左にスウィング!”
次に私達が向かったのは、本島に来たら必ず一度は訪れる、我部祖河食堂。いつもは豊崎の店に行くのだけれど、今回は初めて名護の本店を訪れた。
沖縄の食堂の良いところは、扇風機の回っている畳の座敷があること。あくまで個人的な考えだけれど、これほど最高にくつろげる空間は他には無いかもしれない。
ここでとびきり美味い元祖ソーキそばを食べると、全身に沖縄パワーがみなぎってきた!
【2011/06/23/沖縄本島 Okinawa Island,Japan/Jun.2011】
ルリボシカミキリ(Rosalia batesi) Blue Longhorn-Beetle with Black Spots
毎年この季節になると、ルリボシカミキリやヤマトタマムシが見たくなる。
晴天が続いた土曜日の夜、私が次の日の天気予報を見ながらまさにそんなことを考えていると、虫の研究をしている先輩からサンプリングへの誘いの電話があった。もちろん私が大喜びしたことは言うまでも無い。
日曜日。雲ひとつない空、ジリジリと照る太陽。世の中、もうすっかり夏になってしまったようだ。
この日の私は、ポロに半ズボン、サンダル、そして麦わら帽子を装備した、いかにもな格好。大きな麦わら帽子は電車やバスを乗り継ぐ間は頭の後ろに下げておいたけれど、いささか恥ずかしかったのは否定できない。
バス停からしばらく歩いて、アオゲラとガビチョウの鳴く秘密の小路を通り抜けると突然、目の前にうずたかく積み上げられた丸太の山々が姿を現した。
このような丸太の山は、例えるならば宝石の採掘場。初夏の僅かな期間、このような場所にタマムシやカミキリの類が産卵しに来るのだ(発生するものもいるかもしれない)。だから、私達はただ日陰の丸太に腰掛け、丸太のそこかしこに目を配っておけば良いのである。上手くいけば、宝石たちが向こうから飛んでくるのを見つけることが出来る。
そして、ついにお目にかかることの出来たルリボシカミキリは、とびきり晴れ渡った夏の青空のような色をしていた。
初めにやってくるこの雄はやがて、雌を誘引するためにコーリングをし始めた。
【2011/07/10/東京 Tokyo,Japan/Jul.2011】