作品情報⇒https://movie.walkerplus.com/mv71560/
以下、上記リンクよりあらすじのコピペです。
=====ここから。
画家のマリアンヌはブルターニュの貴婦人から、結婚を拒む娘エロイーズの見合いのための肖像画を頼まれる。
身分を隠して近づき、密かに肖像画を完成させたマリアンヌは、真実を知ったエロイーズから絵の出来栄えを否定されてしまう。だが、描き直すと決めたマリアンヌに、意外にもモデルになると申し出るエロイーズ。
キャンバスを挟んで見つめ合い、美しい島をともに散策、音楽や文学について語り合ううちに、ふたりは恋に落ちる。
=====ここまで。
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アデル・エネルが主演なので見に行きました。新聞での評も読んでいたし、大雑把にあらすじは知っていたけれど、それにしても本作では“男が出て来ない”、、、です、ハイ。
◆恋愛映画として、、、どうなのか。
あちこちで色んな人が誉めているので期待値が上がっていたせいか、正直言って、あんましピンとこなかった。
……恋愛映画なんだよね? で、いつも思うんだが、これが、異性愛の恋愛映画だったらどうなのか、って話。つい最近まで、LGBTはマイナーだとされていた。実際は、マイナーなのか、本当に異性愛がメジャーなのか、それすら今の私には分からないのだが、ほんの15年とか20年前までは、恋愛映画といえば異性愛映画が主流だったわけだが、そうじゃない恋愛映画が出て来て、“異性愛じゃない”ことが過剰にフォーカスされることで、それ男女の恋愛映画だったらあまりに陳腐やろ、、、っていう異性愛じゃない恋愛映画が量産されている気がするのね。
男女の恋愛と、LGBTの恋愛じゃ、社会的背景がゼンゼン違うでしょ、ってことは分かるが、男女の恋愛にも枷はイロイロあるんでねぇ。
つまり、本作も、画家の方が男だったらどーなのか? って話。
意に沿わない結婚を強いられそうになっているお嬢、そのお嬢の肖像画を描く画家、お嬢のお目付役でもある母親が留守の間にお嬢と画家が懇ろになる。しかし2人は結ばれない運命にあり、お嬢の方はその束の間の恋を胸に秘めてその後の人生を生き、画家の方もお嬢を忘れられず独身を貫く、、、。
ありがち……てか、18世紀版『マディソン郡の橋』でしょ、これ。不倫じゃないけどサ。画家が男であったら、本作はあんまし注目されなかった気がするなぁ。その程度の映画にしか、私には見えなかった。映画にする価値がないとまでは思わないけど、ここまで批評家とかに誉められたでしょうかね?
……というわけで、ストーリー的にはフツーで、特に、前半はかなり退屈に感じてしまった。2人が恋に落ちてからは、マリアンヌがどんな肖像画を描くのか(本作では、かなり絵が描かれていく過程が詳細に描写されているので、それは見ていて面白かったんだけど、、、)に興味を持って見ることが出来たけれども、ラストまで展開も想定内で意外性も低く、エンドロールが出て、え、、、終わり??って感じだった。
◆振り返る。
とはいえ、印象的なシーンもないわけじゃない。
本作のポスターにもなっている、ドレスの裾に火がついたアデル・エネルの佇んでいるシーンは、島の伝統行事でのワンショット。焚火をして、その周りで女たちが歌って踊るんだが、その焚火の火がエロイーズのドレスの裾に移って燃え上がりそうになる。すぐに消されるからどうってことはないんだが、そのエロイーズの姿を見て、マリアンヌの中で変化が起きるという重要なシーンということもあり、なかなか美しかった。
あと、2人が懇ろになった後、別れを前提に、エロイーズのためにマリアンヌが自画像を描くんだけど、そのときに、鏡をエロイーズの股間(股間と言っても、別に、足を広げているわけじゃくて、ヘアーが隠れるように、って意味ね)に置くのよね。なんか、その図が非常に面白いというか。その小さな丸い鏡に映る自分の顔を描くマリアンヌと、それを見つめるエロイーズ、、、。なかなかユニークな画だった。
それから、本作ではギリシャ神話のオルフェイスの話(振り返っちゃダメと言われたのに振り返って、愛する人は永遠に黄泉の国の住人となった、ってやつ)が出てくるんだが、これが、終盤の伏線になっている。……いるんだけど、私が本作でピンとこなかった一番の理由が、ここ。あんまり伏線が効いていないというか、、、いや、むしろ、やり過ぎなのかな。
肖像画も出来上がって、2人はいよいよもうお別れ、というときに、花嫁衣装を身に纏ったエロイーズが、マリアンヌに「振り返って!」と言って、マリアンヌが振り返ろうとする、、、、というシーンなんだけど。これが、感動したという人もいるかもだけど、私には、何だかなぁ、、、という感じで。
振り返る=永遠のお別れ、なわけだが、何でエロイーズは「振り返って」って言ったのか。マリアンヌは振り返ったのか?
そして、これは、ラストシーンにもつながって、数年後に2人はある劇場で再会する。再会といっても気付いているのはマリアンヌだけ、、、で、エロイーズは気付いているのかいないのか、マリアンヌの方を見ようともせず、2人の思い出の曲が奏でられている舞台に見入って涙を流している。……でジ・エンド。
マリアンヌを振り返らない=これが永遠の別れじゃない、、、ということなのかも知らんが、私にはあんまりグッとこなかった。
まぁ、一旦別れた2人が再会するのって、難しいよなぁ。映画なんだからハッピーエンドにしちゃえば? とも思うけど。この時代(18世紀末)に、女性同士の恋愛を貫くのは社会的背景から言って極めて難しいわけで、それを敢えてやり遂げる2人の女、、、とか。それこそ、異性愛じゃない恋愛映画だからこそ、の話になりそうなのに、敢えてフツーの話にしちゃっているのがね、、、物足りない。
◆フェミ要素は不発。
中世~近代まで女性の画家は珍しい存在だったみたいだが(いたかもしれないが資料がほとんど残っていないらしい)、女性画家を描いた映画だったら『アルテミシア』(1997)の方が面白かった。アルテミジア・ジェンティレスキという実在の女性画家を描いている。
アデル・エネルは美しかったけれど、ほとんど笑わない。終盤にちょっと笑顔を見せるけれども。マリアンヌを演じたノエミ・エルランはフランス人だけど、ちょっと中東系の血もはいっているのかな?というようなエキゾチックな美人。意志が強そうで、役には合っている。
2人のラブシーンが物足りん、と書いている人がネット上でいたけれど、十分だと思ったなぁ、私は。全裸ベッドシーンは軽めだけど、糸引きの濃厚キスシーンがねっとりじっとり描かれて、もうあれだけでお腹一杯。
とにかく、男が出て来ない。荷物運びの下男みたいのがチョロッと出てくるだけで、顔も遠目からでよく分からん程度。かなりフェミを意識している作品だと思うが、多分、そっちの狙いは不発だろうな、これでは。そういう視点でいえば、『お嬢さん』(2016)の方がよっぽど刺さる。
絵が上手い人って、それだけで尊敬してしまう、、、。