映画 ご(誤)鑑賞日記

映画は楽し♪ 何をどう見ようと見る人の自由だ! 愛あるご鑑賞日記です。

アシスタント(2019年)

2023-07-01 | 【あ】

作品情報⇒https://moviewalker.jp/mv81302/


以下、公式HPよりあらすじのコピペです。

=====ここから。
 
 名門大学を卒業したばかりのジェーンは、映画プロデューサーという夢を抱いて激しい競争を勝ち抜き、有名エンターテインメント企業に就職した。

 業界の大物である会長のもと、ジュニア・アシスタントとして働き始めたが、そこは華やかさとは無縁の殺風景なオフィス。早朝から深夜まで平凡な事務作業に追われる毎日。常態化しているハラスメントの積み重ね……しかし、彼女は自分が即座に交換可能な下働きでしかないということも、将来大きなチャンスを掴むためには、会社にしがみついてキャリアを積むしかないこともわかっている。

 ある日、会長の許されない行為を知ったジェーンは、この問題に立ち上がることを決意するが――。

=====ここまで。


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 公式HPのintroductionにもあるとおり、本作は、あの#Me Too運動がきっかけで制作された映画です。正直言って、雨後の筍かと思うくらいに最近多いですね、フェミ映画。私は好んで見る方だし、フェミ映画はどんどん作られてほしいので歓迎だけど、こんだけ続々出てくると怖いのは反動です。実際、SNS上のアンチはなかなか酷いです。ほとんど憎悪に近い書き込みも少なくない。男女どちらが書き込みしているのか分からないけど、女性にもミソジニーは多いからなぁ。

 フェミ自体は大事なのだが、そのために行動している人たちの中には、わざわざ敵を作るような言動をしている人も少なくないので(こういうことを書くだけでアンチ・フェミ認定されるんだが)、これはなかなかに厄介な問題なのであります。

 で、本作は公開前からフェミ界隈では話題になっており、90分弱という短い尺でもあるので、劇場まで行ってまいりました。


◆闘争心を維持できなかったの。ごめんね。

 主人公のジェーンは、良い大学を出て、有名な会社に就職した、一見勝ち組(ってヤな言葉だね)な女子である。

 が。

 新入社員としてのジェーンの現実は、学歴など何の役にも立たない会長の身の回りの世話を始め、同じ部署の男性社員の尻拭いまでもさせられる。てめぇがやれよ!的なことがほとんど。

 ……これね、見ていて非常に辛かった。私ら世代は、均等法施行後数年目のバブル崩壊直後世代なのだが、当時は均等法なんてのは単なるお題目で、会社はほぼオッサン都合で動いており、女子社員は「女のコ」とか言われて、オッサンだけでなく同期も含めた全男性社員のケア要員としてしかみなされていない、、、というケースはザラであった。私は同期男子と2人で同じ部署に配属されたが、課員の机拭き、お茶出し(コーヒーの好みまで覚える)、カップの片付け、等々は、同期男子には要求されず、私にだけ課されたことだった。会議の前の準備もそう。会議の後の片付けもそう。同期男子はやれと言われないし、やらない。やろうともしない。女がやるのがアタリマエで、彼は私をせめて「手伝う」という概念さえも持っていない。

 んでもって、こっちは曲がりなりにも「総合職」などという有難い名称をいただいているので、仕事面では同期男子と同じ量を振られるわけだ。だけど、途中で上司や先輩が外出から戻って来たら、私は手を止めてお茶を入れなきゃいけないが、同期男子はそんなことはしなくてよいから、そんだけ彼は仕事が捗るわけだ。ここで私が「仕事が立て込んでるから」という理由でお茶を入れないと「何でお茶持ってこねーんだよ、気の利かねえ女だな。これだから4大出た女なんか取るとメンド―なんだよ」とか言われるのが分かっていて、それがムカつくので仕方がなくお茶を入れるために仕事の手を止めるわけだ。これが、バブル崩壊直後世代総合職女子の日常であった。

 で、それとほぼ同じ光景が、21世紀に制作された映画でも描かれているって、これどーなの?? しかも、ジェンダーギャップ最下位に近い日本じゃなくて、もうちょっとマシなはずのアメリカの話。

 いや、、、私らも、それでも闘ったこともあるのよ。「男子社員にも分担してもらいたい」とか言ってね。でも華麗にスルーされるだけなんだよね。「そんなこと言わずに黙ってやれ」とさえ言われない。んで、何かゼンゼン別の場面で嫌味を言われるわけよ。例えば、私の友人は(別の会社だが)、名刺を作ることになったときに、他の男子社員と同じ四角い名刺をオーダーしようとしたら「さすが、4大出た女性は“角が立つ”ねぇ、ハッハッハ!!」と笑われたんだとか。彼女は最初、意味が分からなかったと言っていた。私もその話を聞いたとき??であったが、彼女によれば、その後、その場に居合わせた4大卒先輩女子に「私も言われた。私なんか、角丸くした名刺にした方が良いんじゃない?って言われて、角丸名刺にしたんだよ」と解説されたってんだから、すげぇ話である。

 ちなみに、私の場合は、別の日に「あのとき、ああいう事言ってたよね。君、ああいう事、よく言うよね、、、(苦笑)」とネチネチ言われるのがパターンだった。新人で仕事もできないくせに偉そうに権利主張してんじゃねぇ、、、と言外に含んでいるのは、いくら鈍感な私でも分かっていた。でも、それとこれと同じ土俵で語ること自体がオカシイでしょ、って話なんだよ、バカめが!! 仕事できないのは同期男子も同じだろーが。

 もっとヒドい例だと、咳をしている男がいて、私が何も声を掛けずにいたら「普通さ、先輩が咳してたら“風邪ですか? 大丈夫ですか?”ぐらい言わない? 言おうと思わない??」とか言われて、意味が分からなかったこともある。そもそも、そいつが咳をしていること自体、意識の範疇外だったのだ。「てめぇの母親じゃねぇんだから知らねぇよ!ボケ!!」とか言ってやれば良かった、、、と後で気付いたときにはもう遅かった。悔しくてムカついた。

 でも、そういう日常の繰り返しは、地味に心を削られるので、あっという間に闘争心は摩耗して無くなってしまうのである。

 本作のジェーンも、まさにそうである。闘おうとしたが、ものの見事に玉砕する。

 私らがもっと闘っていれば、もう少しマシになっていたのかも知れん。だから、ジェーンがああいう目に遭っているのは、私ら世代にも責任があるかも知れん。……だけれども、闘うことを強いられること自体がおかしなハナシなんじゃねーのか?? 何で男は男ってだけでケアされる側なのさ、、、ってことよ。

 喜んでケアしている女もいるから、まあ、これは男VS女という問題ではないのであるが。

 ちょっと、ウン十年前の怒りを思い出して言葉が汚くなってしまいました(いつもか)。


◆新入社員の将来を人質にとる悪質さ。

 本作内でも、とにかく、男たちは誰もジェーンに「ありがとう」を言わない。言われなかったよなぁ、、、私も、全く。机拭いてやったのに「電話のボタンの間に埃溜まってるの、オレ、嫌いなんだよぉ、、、」とか言われてね。私は無視しました。でも、ジェーンは似たようなケースでは、ちゃんとやってあげちゃう。……というか、やらないと居づらくなるのだ。将来を人質に取られているので。

 そう、私は、入社して1か月目には「こんな会社辞めてやる!!」と決意したので、無視できたのだ、きっと。実際辞めたのは2年近く経っていたけれども。

 本作内でも、会長も先輩男子社員も、ジェーンに超絶理不尽なことを要求していながら、気まぐれに「君は優秀だ」とか言って、グルーミングするのである。それで、将来に希望を持っているジェーンは惑わされるのだ。それはただのグルーミングだよ、と言ってあげられる同じ立場の先輩女子社員もいない。ジェーンは孤立無援なのだ。

 必死に就活を勝ち抜いて、念願の会社に入った人は、なかなか辞める決断は出来ないかも知れぬ。だって、夢と希望を持って入社したのだし、そのために、頑張ったのだ。若い時代の貴重な時間を犠牲にして。それを無に帰するような選択はしたくないのは当然だ。

 本作は、とことん救いがない。何のオチもない。ただただハラッサーに囲まれた1日を淡々と描写しているだけの映画である。だからこそ、リアルだし、見るべき映画になっている。ただ、これはアンテナの無い人が見ても、何も引っ掛からない映画でもある。

 ある意味、リトマス試験紙的な作品と言っても良いだろう。

 

 

 

 

 

 


ジェーンはあの会社にあの後どれくらいいるだろうか、、、。

 

 

 

 

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コメント (2)
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