作品情報⇒https://eiga.com/movie/94385/
以下、公式サイトよりあらすじのコピペです。
=====ここから。
1980年代、農業で成功することを夢みる韓国系移民のジェイコブは、アメリカはアーカンソー州の高原に、家族と共に引っ越してきた。荒れた土地とボロボロのトレーラーハウスを見た妻のモニカは、いつまでも心は少年の夫の冒険に危険な匂いを感じるが、しっかり者の長女アンと好奇心旺盛な弟のデビッドは、新しい土地に希望を見つけていく。
まもなく毒舌で破天荒な祖母も加わり、デビッドと一風変わった絆を結ぶ。
だが、水が干上がり、作物は売れず、追い詰められた一家に、思いもしない事態が立ち上がる──。
=====ここまで。
『ノマドランド』と並び、アカデミー賞有力候補だそうです。
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『ノマドランド』に続いて本作を見たんだけれど、どっちかというと、本作の方が見たかったのです。でも、仕事サボって1本だけ見るのももったいない、もう1本見ておこう、ってことで、本作の前に、ノマドを見たのでした。
この作品を後に見て良かった、、、。こちらの方が鑑賞後感は良いです。
◆キリスト教が、、、
移民の国アメリカの、韓国系移民のお話で、監督の生い立ちをベースにした物語とのこと。
アメリカや韓国では大ヒットらしいけれど、これ、日本じゃあんまりウケないだろうなあ、と思う。何でかって、そりゃ、クリスチャン人口が少ないからです、日本は。本作は、最初こそ移民の苦労話みたいな様相なんだけれども、途中から、キリスト教色が濃くなっていて、ちょっとピンと来ない部分も多いのではないかと思うのだ。
ただ、移民の家族の物語として見れば、まあ、想定内の展開が続くけれども面白いと思ったし、ちょっとなぁ、、、と白けたところもあるけど(後述)、一応強引にハッピーエンディングに持っていったのも良かったんじゃないかしらん。
農業で一旗あげたい父ジェイコブ。ネットの感想等を読むと、この父親の評判がかなり悪いんだけど、ありがちな父親像だと思うわ。自分の理想に家族を巻き込む一家の主、ってやつね。でもって、その妻モニカも割と類型的というか、ジェイコブに反発ばかりしている妻、というキャラ設定。何でこの2人、夫婦になったの?と、そっちの方が不思議になるくらい。
まあ、色々大変ではあるものの、ジェイコブの農業も、どうにか収穫に漕ぎ着ける。デビッドは心臓の病気を持っているけど、自然に回復しつつある。医者は「土地が合っているのかも。今の場所から引っ越さない方が良いんじゃない?」等と言う。モニカは相変わらずだが、まあ、どうにか家族の形は維持している。
その代りに、おばあちゃんが脳梗塞になって、後遺症で右半身だか左半身だかが不自由になる。この辺になると、かなり宗教色を感じさせ、おばあちゃんはデビッドの病気を引き受けたんじゃないか、という感じに見える。
というか、序盤でも、一家が引っ越してきたトレーラーハウスが、嵐が来て大雨に流されるかも、、、という事態になるんだが、これも十分“ノアの方舟”を思わせる。
さらに、ポールという男性が一家の手伝いに来てくれて、ジェイコブの農作業を主に手伝ってくれるんだが、このポールが出てくるあたりから、モロにキリスト教を感じさせる描写になる。大体、このポールおじさん、朝鮮戦争の生き残りで、大きな十字架背負って炎天下を歩いているんだからね。近所でも変人扱いされているけど、これって、モロに迫害される信徒的な描写やん……、と思って見ていたら、後日、町山氏の「映画その他ムダ話」を聞いたら、やっぱりそういうことだったみたい。でもまあ、こんなヘンな人がいたんだよ、というエピソードだと思えばそれはそれで許容範囲な気もする。
おばあちゃんは脳梗塞になる前は、文字の読めない無教養ぶりを恥じることもなく、花札を孫に教えて、下品な言葉もバンバン言って、、、という豪快なキャラだったんだが、病気後は、家族の負の要素を一身に引き受けたみたいな存在になる。
……という具合に、家族のキャラ設定は割と類型的だし(長女の存在感がなさ過ぎるが)、ストーリーも困難がありながらも何とか、、、みたいな起承転結のハッキリした展開で無難。キリスト教描写も、そこまでアレルギー反応を起こすものではなかった。
~~以下、結末に触れています。~~
◆ちょっと白けてしまったこと2つほど。
ポールの存在にちょっと違和感があるものの、終盤までは結構面白く見ていたんだけど、いわゆる起承転結の“転”の辺りから、ちょっと引いてしまったのよねぇ。
ジェイコブよりも、私は、どっちかというとモニカの方が嫌だなぁ、と感じていた。まあ、序盤の彼女の反応は当然とは思う。が、“転”に差し掛かるところの、ジェイコブに離婚を切り出す彼女の言動は、感じ悪かった。ジェイコブが苦労してどうにか収穫に漕ぎ着け、それを買ってくれる人が見つかり、生活のめどが立ちかけたところでの離婚話。
……けど、これも、強引なハッピーエンディングに持って行くための伏線だったんだよな、後から考えれば。
離婚話で険悪になった一家4人は、とりあえずトレーラーハウスに帰って来るんだが、そこでジェイコブとモニカが見たのは、折角売れることが決まった農作物を収めた倉庫の火事。これまでの全てが燃えて行く、、、。ここで、夫婦は呆然とその燃える倉庫を見つめるのではなく、燃えさかる倉庫に入って行って、ついさっきまで農業に大反対していたモニカも必死になって、倉庫から少しでも農作物を運び出そうとする。しかし、火の勢いが強く、ほとんどは燃えてしまう。
こうして、この火事によって夫婦は再びよりを戻す。直後のシーンでは、トレーラーハウスの中で、一家4人とおばあちゃんが川の字になって寝ている。
私は、この倉庫が燃えるシーンを見て、『ギルバート・グレイプ』のラストシーンを思い出していた。『ギルバート~』では、敢えて家に火を着けたんだが、火事のシーンに説得力があったし、ある種のカタルシスがあったと思う。けれど、本作の火事のシーンは、どうもこう、、、ご都合主義的な感じを受けてしまった。バラバラになりそうな家族をまとめるために入れた一大事、それが、あの倉庫の火事、、、という風に、私には見えてしまったのよね。
家族がまとまる、、、んなら、別に、ジェイコブの野菜が売れることになって良かったね、、、でいいじゃん、と思うのよ。だって、モニカはとにかく“この地で農業”がイヤだから、野菜が売れることになっても「離婚」を言っていたわけで、火事の後にコロッと“この地で農業”を受け入れるってヘンじゃない?
でもまあ、町山氏の「映画その他ムダ話」を聞くと、人生には予期しないことが起きるもの、、、ということを描いている映画だそうだから、あの火事もそういうことなんでしょう、きっと。
そのことが一番よく分かるのが、ジェイコブの変化を描いているシーン。地下水を探すときに、序盤ではダウジングで探そうとする近所のオジサンを小ばかにしていたジェイコブが、終盤では、何とダウジングで探すのだ。非科学的なことを拒絶していた彼も、いろんなことを経験して、世の中には人知を超えるものがあると悟った、、、、ということの表れなんだろうけど、なんかこれも、ちょっと白けてしまった。
確かに、人知を超えるものがあるのに異論はないが、それがダウジングって、、、、。あんな水曜スペシャル(若い人はご存じないと思います、すみません)レベルのインチキにいきなり飛ぶって、それこそ、飛躍が大き過ぎやしませんかね? まあ、別にいいですけど。
あれこれケチをつけましたが、良い映画だと思います。
なるほど~。言われてみれば、何となく宗教っぽさが内容にはありましたね~。おばあちゃんがデビッドの病気を引き受けてくれた、みたいな展開とかほんとそうですね。周囲のアメリカ人がみんな善い人ばかりなのも。アメリカの敬虔な白人キリスト教信者なんて、ほんとはガチな人種差別主義者が多いんじゃなかと私は思うのですが。
私は火事のシーン、懐かしのドラマ「思い出にかわるまで」を思い出してしまいました(^^♪
ポールが出て来た辺りから、あれ〜?って感じになりましたね。
でも、それ抜きで見れば、割とオーソドックスな移民物語な気がします。トランプみたいなオジサン出て来なかったし。
想い出に〜、たけ子さんもご覧になってた? 私は飛び飛びで見てましたが、途中からあんまりにもドロドロで嫌になりました。
そーいえば、あれも火事になりましたね。大沢樹生が何か喚きながら見ていたシーンがあったような…。