作品情報⇒https://moviewalker.jp/mv87822/
以下、公式HPからあらすじのコピペです(青字は筆者加筆)。
=====ここから。
NYでストリップダンサーをしながら暮らす“アニー”ことアノーラ(マイキー・マディソン)は、職場のクラブでロシア人の御曹司、イヴァン(マーク・エイデルシュテイン)と出会う。
彼がロシアに帰るまでの7日間、1万5千ドルで“契約彼女”になったアニー。パーティーにショッピング、贅沢三昧の日々を過ごした二人は休暇の締めくくりにラスベガスの教会で衝動的に結婚!
幸せ絶頂の二人だったが、息子が娼婦と結婚したと噂を聞いたロシアの両親は猛反対。結婚を阻止すべく、屈強な男たちを息子の邸宅へと送り込む。ほどなくして、イヴァンの両親がロシアから到着。
空から舞い降りてきた厳しい現実を前に、アニーの物語の第二章が幕を開ける 。
=====ここまで。
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アメリカ映画だけど、ロシアの御曹司が絡む話だし、パルムドールらしいから見てみるか、、、と思って、映画友と見に行ってまいりました。公開後初の週末だったからか、何と満席。
◆これがパルムドール、、、?
結論からいうと、かなりの期待ハズレでござんした。
とにかく、長い。139分もあるのだが、90分で十分描き切ることのできる話だし、ムダ脱ぎ、ムダ濡れ場のオンパレードで、正直ウンザリ。ストーリー自体はシンプルながら、1分でよさそうなシーンに10分くらい割いており、ダレる。隣に座っていた若いお兄ちゃんは途中から爆睡していた。
が、私が期待ハズレだと感じたのは、そこではなく、超格差婚した挙句に下流が敢え無く切り捨てられるなんていう、、、何ら新鮮味のない話、展開だったからである。正直なところ、途中から腹立たしささえ感じた。これで何故パルムドールとなったのか? ……と疑問に思い調べたら、審査員長は、私の苦手なグレタ・ガーウィグだった、、、ごーん。やはり、私は彼女と相性が悪い。
本作の受賞理由は、マイノリティに寄り添う視点云々、、、だそうだが、寄り添ってんのか、これ? アニーが徹底的にロシアのオリガルヒ一家にやりこめられて泣き崩れて終わっているんだが。寄り添ってんなら、アニーが一矢報いる展開にしても良いんじゃないのかねぇ。
アニーが見せた抵抗といえば、金切り声で叫び暴れたり、イヴァンに結婚無効を翻意させようと説得したりするくらいで、これのどこが“寄り添う視点”なんだ? 正直、あんまり頭の良くないアニーが暴れて右往左往しているのばかり見せつけられるのは、男(監督)の蔑み視線をうっすら感じたんだけど、これって私がひねくれているだけなんでしょうね。フェミ系の方々の感想を見ても、おおむね好評みたいだし。
私が監督なら、アニーに安易に結婚なんか選択させないかなぁ。結婚しないと話が成立しないのかも知らんが。イヴァンが彼女と結婚したがるのは、アメリカ国籍が欲しいからである。何でそれでキャッキャッ!と結婚させちゃうんだよ。そら、現実にはそういうことは掃いて捨てるほどあるだろうけど、これは、21世紀の映画なんじゃないのかね??
結婚=幸せと思う女、なんていつの時代の話よ。この辺が男の監督だな、、、と感じる所以なんだが。イマドキの若い女性はもっとモノ考えているんじゃない? 男の汚らしい部分を日々見せつけられている職場で身体張って仕事している女性が、そんなフワフワした妄想に安易に乗るかねぇ? 相手が大金持ちだとしても、ロシアの金持ちなんてほぼ“怪しい”のがお決まりなわけで、そんな御曹司との結婚、身の危険を感じてもおかしくない。
まあでも、アニーは、そういう考えが働かない“おバカ女”という設定なわけだ。抵抗といっても暴れて叫ぶ程度が関の山。……これって、アニーの個性としてのおバカキャラ、、、ではなく、女なんて相手が金持ちなら喜んでホイホイ結婚すんだろ??という、男の潜在意識が投影されたキャラとしか思えないんだよな。つまり、アニーは監督から見た女のカリカチュアであると。私が腹立たしさを覚えたのはコレなんだが。
そういう映画に対して、フェミだのジェンダーだのの旗手と目されている女性映画監督グレタ・ガーウィグが最高賞を贈るって、何の冗談?と思っちゃう私は、やはり考え過ぎ、ひねくれ過ぎなんですね。そーですね。すみません。
本作のショーン・ベイカー監督の他作品を見ていないので、見当違いな感想かも知れないけれど、、、いや、見当違いであってほしいよ、むしろ。
◆おとぎ話の現実
一昔前までのディズニー的おとぎ話は、虐げられた美しい女がカッコイイ王子様に見初められて結婚し、めでたしめでたし、、、が定番だったのだが、本作は、そのめでたしめでたしの後日談みたいなもんである。
本当にめでたいのは、王子様が、“賢くてどこまでも結婚相手の味方になってくれる人であること”が最低条件となる。
アニーが結婚したロシアの御曹司ヴァーニャ(と作中では呼ばれていた)は、“アホでどこまでも自己中な人”でしかなかったのだった、、、嗚呼。苦労知らずのバカボン(バカなボンボンの略です)にありそうなキャラ造形もまた白ける一要因であったのだが。
昨年見た「プリンセス・シシー」(1955)も、上記のディズニー的おとぎ話に当てはまると思うが、しかもあれは一応実話が元ネタだが、シシーも結婚後はめでたいとは言い難い状況だった。ヨーゼフ1世はアホではなかっただろうが、あんまし思いやりのある人でもない印象だし、、。
ヴァーニャは、アニーが両親の差し向けた男たちに拉致られたというのに自分だけ逃げ去り、両親が現れると両親の言いなりで、アニーのことなどまるで気にもかけないという、男としてというより、人間としてクズっぷりを発揮する。あっけなくロシアに連れ戻される。
本当にマイノリティに寄り添うのなら、アニーがヴァーニャの両親の鼻を明かすような展開にしてほしかったよなぁ。一人の若い女性に出来ることなど何もない、、、じゃなくてさ。一人の若い女性でも、知力と気力で、ロシアの成金に一泡吹かせることも出来る、、、って方が見ていて面白いと思うんだけど。
◆その他もろもろ
アニーを演じたマイキー・マディソンは美人というよりは個性的。時折、東洋人的な雰囲気も感じられた。脱ぎシーンが多くて大変だっただろう。中盤以降は暴れまわり、叫びまくり、歩き回り、、、と、撮影にはめっちゃ体力消耗したのではなかろうか。演技が良いのか悪いのか、、、正直あんましよく分からんかった。別に下手とは思わなかったが。頑張ってるなー、という感じ。
見ていて、アニーは別にイヴァンとメチャクチャ結婚したかったというわけでもないように感じたんだよなぁ。イヴァンの甘ったれにせがまれて、じゃあ結婚しちゃおっか!みたいに見えた。離婚に抵抗しているのは、金への執着ではなく、イヴァンの愛情を信じたいという気持ちが強かったからではないかしらん。ラストは、色々解釈されているみたいだけど、私はわりとストレートに、ずーーーっと気を張ってイヴァンの両親たちと対峙して来たけど敗れ去って、ふとイゴールの優しさに触れて気が抜けて号泣しちゃった、、、だけじゃないかなと。別にイゴールに特別な感情はなくても、そういうことってあるじゃん。
面白かったのが、途中から登場する2人のロシア人男性。イヴァンの両親の差し金で、イヴァンとアニーの下に乗り込んできたトロスとイゴール。
トロスは強面だが、何かとドジで一言二言多いがためにコトが上手く運ばない。イヴァンが行方不明になって探しに入った風俗店で、酔客に絡まれると無視できずに相手して演説し出したり、イヴァンの結婚無効裁判ではただの傍聴人のくせに、アニーが弁明している最中に度々「意義あり!」とか割り込んで法廷を混乱させたり。劇場でも度々笑いが起きていた。
イゴールも強面だが、こちらは心優しい兄ちゃん。演じているのはユーリー・ボリソフ。「コンパートメント№6」でリョーハを演じてイイ味出していたのだが、本作でも、かなり重要なキーパーソンである。
バカボンを演じたマーク・エイデルシュテインは、ロシアのティモシー・シャラメと言われているらしい。まあ、キレイだよね確かに。ティモシー・シャラメに、、、似てるか??
ロシア人の俳優さんたちは、普通に移動の自由とかあるんだろうか? ちょっと見ていて心配してしまった。
ショーン・ベイカー監督の他の作品を調べたら、レンタルでいくつかあるみたいなので見てみようかな。
イヴァンの家はスゴい豪邸だが、ゼンゼン素敵じゃなかった。
オスカー獲っちゃいましたね~。意外でした。面白くないことはなかったけど、ちょっとイヤな内容で観ていて観終わって不快な気分にも。それにそうそう、上映時間が長かった。セックスシーンが無駄に多いのも、ちょっとゲンナリ。
ロシアの俳優がアメリカ映画に出演できたりするんですね。映画祭やプロモーション、アカデミー賞授賞式にも晴れ晴れと登場してたけど、すきを見て亡命なんかしたら、プーチンさんから刺客が送られてしまうことでしょうか。
新聞の映画欄で、今年のアカデミー賞は、ベルリンやカンヌでの受賞作ばかりで、ハリウッドの凋落か、、、みたいなことが書いてありました。
トラ○○はアカデミアを敵視しているし、芸術なんか興味なさそうなので、ますます映画業界もお寒い状況になるんでしょうか。
邦画の惨状を思えば、なんぼかマシだとは思いますが(^^;
たけ子さんのレビュー、楽しみにしております♪