作品情報⇒https://moviewalker.jp/mv82408/
以下、公式HPよりあらすじのコピペです。
=====ここから。
シグネの人生は行き詰まっていた。長年、競争関係にあった恋人のトーマスがアーティストとして脚光を浴びると、激しい嫉妬心と焦燥感に駆られたシグネは、自身が注目される「自分らしさ」を手に入れるため、ある違法薬物に手を出す。薬の副作用で入院することとなり、恋人からの関心を勝ち取ったシグネだったが、その欲望はますますエスカレートしていき――。
=====ここまで。
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少し前に、TwitterのTLに本作の予告が流れてきました。その時のスチール画像を見た瞬間、『オテサーネク』やん??と思って、強烈に印象に残りました(オテサーネク、好きなもので、、、)。
左が本作、右が『オテサーネク』。……似てませんか?
でまあ、あらすじとか一応チラッと見たけど、この画像で内容を期待して良さそうと直感したので、公開直後のサービスデーに見に行ってまいりました。いやぁ、、、期待に違わぬ、、、どころか、期待のはるかナナメ上を行く作品でござんした。ひょ~~。
ちなみに、上記のあらすじは若干ピントズレな気がしますね。シグネは恋人の関心を引きたかったからあんなことをしたわけじゃないと思うんですが、、、。公式HPでコレはどーなのかしらん。
◆肥大化した自己顕示欲を持て余すシグネ。
死愚ね、、、じゃなくて(なかなか的を射た変換だ)、シグネという女性が本作の主人公なんだが、ここまでイッちゃってるヤバいキャラは、なかなかいないのではないか。彼女に匹敵するヤバいヒロインとしては、、、『パッション・ダモーレ』のフォスカ、『私、オルガ・ヘプナロヴァー』のオルガ、『地獄愛』のグロリア、、あたりが思い浮かぶが、方向性がかなり違うかな。フォスカとグロリアは一人の男に執着し過ぎなストーカー気質、オルガは対人距離感のオカシな人だった。シグネは、自己顕示欲の塊。もう、まさにビョーキ。
自己顕示欲、、、誰にでもあるものだと思うけど、大抵の人はそれをあんまし露骨には出さないようにする。目立つの大好き人間もたくさんいるけど、彼らだって、例えば自分が期待していたより周囲の反応が薄かった時に「何それ、そんだけ?そんな程度?アタシのことバカにしてんの??」なんて相手にグイグイ追及しないでしょ。せいぜい「え、もっと褒めてよ!」とかおちゃらけて言う程度じゃないか?
でもシグネは言っちゃうのだ。「何それ」って。
ヘンなロシアの薬をのんだ副作用で顔面崩壊した後、いかがわしい事務所の紹介でモデルをすることになったシグネ。それを自慢げに友人夫婦に喋るが、友人夫婦は「その事務所、障がい者を見世物にしてるって噂聞いたから、、、」と心配するわけだが、シグネは「何それ、アタシにはモデルなんかできっこないとか思ってるわけ??もっとスゴいって言いなさいよ!!」(セリフ正確じゃないです、ゼンゼン)とか言って絡んで、友人夫婦を呆れさせてしまうのだった。
このシーンは後半なんだけど、もう、序盤からシグネはヤバさ全開である。
注目を集めるためなら、食物アレルギーだと大ウソをつく、犬に顔面を嚙みつかせようとする、、、挙句の果てが、ロシアの“リデクソル”という脱法ドラッグ。それをのむと、副作用で皮膚が爛れると知り、シグネはそれをヤク中の友人にネットで大量に購入してもらい、せっせと服用するんである。
……もう、、、あーあ、、、って感じのシーンが続くのよ。
顔面が崩壊することよりも、周囲に注目されないことの方が、シグネにとっては我慢ならないらしい。注目を浴びるなら、顔面が崩壊しようが病気になろうが構わない。ところどころ挟まるシグネの「こうなったらいいのにな~」という妄想シーンがまたイタい。妄想とリアルが微妙に曖昧に提示され、シグネのヤバさを暗示しているようで、ある意味コワい。
結局、シグネの自己顕示欲は満たされないまま終わる、、、ごーん。
◆シグネは性格が悪いのか?
シグネがこうなったのには、きっと生い立ちに何らかの原因があるんだろうと思うが、そこは全く描かれないので分からない。母親は出てくるが、イマイチ存在感が薄く、シグネにアサッテなアドバイスをするだけなところを見ると、やはり、シグネは愛情不足な環境だったのではないか、と推察される。
彼氏トーマス(この人もかなりヘンな人ではある)は、シグネが顔面崩壊して入院すると、「もっとオレが話をちゃんと聞いてあげればよかった」と後悔して、泣く。トーマスは、シグネが嘘をつきまくっていることを分かっているし、シグネが顔面崩壊してその後も体調がどんどん悪くなっても、彼女から離れようとしない。これは、愛なのか、、、それとも共依存、、、? 多分、後者なんだろう。
シグネは、自己顕示欲を満たすために、その矛先が自身の肉体改造へと向かったのだが、これが反社会的行動になって他者へと向かったのが『私、オルガ・ヘプナロヴァー』のオルガだろう。どちらが良いとは言えないが、他人を物理的に傷つけないだけ、シグネの方が罪がないかも知れぬ。
ネットの感想に、「シグネの性格が悪過ぎる」と書いている人がいたんだが、それはまあ間違いじゃないけど、彼女の場合はもう性格とか何とかではなく、病気なので、きちんと精神科で治療を受けないといけない状態なわけよ。性格が本当に悪いかどうかはその後の問題。私は見ていて、序盤こそ「何このヤバい人、、、」と思ったが、途中から可哀相になってしまった。彼女はこのまま適切な治療を受けない限り死んでしまうだろうから、どうにか救われてほしい、、、と思って祈るような気持ちで最後まで見た次第。……ま、救われなかったんだけど、本作内では。
◆バズりなんかじゃダメなのよ。
“承認欲求”全盛の現代で、その塊みたいな主人公シグネだが、本作ではそのツールであるSNSはあくまで遠景にしか描かれていない。SNSは、結局、承認欲求を瞬間的に満たすための道具に過ぎないことを踏まえてのことだろう。シグネが妄想する理想は、TVのインタビュー番組に出演したり、体験記を出版してその本がベストセラーになったり、、、というもので、バーチャルでのバズりではないところがミソである。彼女にとって、バズりではダメなのだ。
これは、本作において案外重要なことではないか。ネットでのバズりなんてのは、誰にでも起き得ることで、運やタイミングも左右する。しかも一時的で打ち上げ花火に終わることがほとんどだ。シグネでなければならない理由は全くない。けれど、TV番組に呼ばれる、本が売れる、、、ってのは、シグネ自身にスポットライトが当たった結果のことであり、彼女の夢想はここにあるのだ。
有名人の全てが、才能があったり、努力の人であったり、、、というわけでもない。シグネから見れば“何であの人が、、、?”な人もいるのだろう(その一番身近な例が彼氏のトーマスかもだが)。何でアタシじゃないわけ? あの人が注目浴びてるのにアタシが注目されないのヘンじゃない? って感じじゃないか。シグネが可哀相なのは、あんな姿になっても、集団セラピーの場で、まだ自分を過剰演出してしまうところ。ぶっちゃけ、不幸自慢。
でもさ。仮にシグネが一躍注目を浴びたとしても、世間はすごく忘れやすいから、すぐにシグネに集まった注目も潮が引くようになくなってしまうと思うのだよ。そうすると、シグネの場合、注目を浴びる前よりもさらに承認欲求が強くなるか、世間に忘れられたことにショックを受けて激しい鬱になるか、、、とにかく、注目が集まっても病むと思うのよね。どっちにしても、彼女に必要なのは、やっぱり“治療”でしょ。
本作はノルウェーが舞台なんだが、北欧映画って、そんなにたくさんは見ていないけど、こういう人間の醜悪さを容赦なく描いちゃう作品が結構ある気がするなぁ。一度は行ってみたいな、ノルウェーとかアイスランド。
犬の飼い主がシグネを罵倒するシーンが、不謹慎だが笑えた。
面白そうな映画ですね!ヤバいヒロインが好きなので、観たいです!ノルウェーが舞台というのにも惹かれます。北欧、行ってみたいな~。
承認欲求とか自己顕示欲…この映画のヒロインみたいに極端じゃないけど、そんなに目立ちたいの?そんなにすごいと思ってもらいたいの?なセレブや芸能人って多いですよね。フランス在住の某元女子アナさんとか。彼女にみたいに華麗じゃないけど、私だって無意識のうちに、承認欲求的な言動をしてるかも…もし鼻につくような発信があれば、ご指摘くださいね💦
面白かったですヨ♪
内容はかなりヤバいのに、深刻さはなく、かといってブラックコメディとも違うような。
北欧映画って、独特なテイストの(悪意のスパイスが効いた)映画が多いような気がしません? 私だけかな。
芸能人はイメージ商売なので、まあ仕方ないかもですね。
今は私人逮捕とかって動画上げまくっている人とか、大分ヤバいと思います。
彼らもある意味、シグネと同じで、治療が必要なんじゃないかなぁ、、、。
その前にそろそろ捕まると思いますけど。
たけ子さんの文章は鼻になんかゼンゼンつかない、、、どころか、面白くて、こんな風に書けたらなぁ、といつも拝読しています。
これからも楽しいレビューよろしくお願いします(*^-^*)
フォスカもシグネも、「性格が悪い」で片づけられる生易しいものではなくて、ただもうヤバすぎる!一刻も早く治療しなくちゃダメなレベルですよね。承認欲求が肥大していくのは、例えがやや的外れなんですが、顔のお直しを一度始めると、ドラッグのようにやめられなくなるような?制御不能に陥るんでしょうね。コワい。
北欧の男優が主役のサスペンスやドラマも、病んでいる方の登場率が高いような。コメディもブラックな笑いが多いですね。気候や日照時間(特に冬)のせい?
フォスカ、、、強烈でした。
そうそう、登場のタイミングが絶妙でした。
見ている方の期待値を最大限上げておいて、、、ヤラレましたね(^^;
演じた女優さん、素顔はとてもお美しい素敵な方みたいで、特殊メイクってすごいです。
イタリア版オスカーですか。納得です、あの演技なら。
顔のお直し、確かに一度やるとやめられないってのあるかも知れませんね。
メグ・ライアンも、、、(記事拝読しました)。
承認欲求の肥大化って、愛情不足だと思うんですよね~。
親子関係か家庭環境に何らか起因しているように思えて仕方ないです。
当人の持って生まれた性質もあるとは思いますけど。
北欧、やはりあの気候が影響しているってのありますよね、きっと。
北国鬱とかいう言葉もあるくらいですし、、、。
でも、北欧映画、結構好きなの多いです(*^-^*)