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夫はソ連軍の捕虜となり連れ去られた。それっきり妻(アンナ)の下へは帰ってこなかった。帰ってきたのは、夫が最期の日々を書き記したメモ帳。ある日を境に空白が続くそのメモ帳が訴えるものとは、、、。
アンジェイ・ワイダ渾身の告発映画。
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7月に海外へ行くことになり、コペンハーゲン→ベルリン→ワルシャワの予定で移動するため、関連する映画を見ている次第。今回は、ポーランド映画。ワイダ監督作は、『ワレサ 連帯の男』に続き(多分)2作目。来月公開予定の『残像』も見たいと思っているところ。
本作は、公開時から見たい見たい、と思いつつ、結局今頃の、しかもDVDでの鑑賞と相成りました。
◆地図から消えた国
冒頭のシーンが印象的。こちら側からあちら側に逃げようとする人々。反対に、あちら側からこちら側に逃げてくる人々。双方の人々が橋の上で交錯する。
こちら側=クラクフ、あちら側=東側ソ連国境。橋=ヴィスワ川に架かる橋。アンナは、クラクフから橋を渡って東へ、大将夫人は東側からクラクフへ。
大将夫人は、アンナに「クラクフに戻れ」と言う。しかし、東へ行くアンナ。2人の女性が橋の反対側にそれぞれ向かう。どちらも、逃げているのだ。それなのに、逃げる方向は正反対。
そう、これは、当時のポーランドが置かれていた状況そのもの。この川を境に、独ソ不可侵条約においてポーランド割譲が密約されていたから……。どちらへ逃げても、安住の地には辿り着けないポーランド国民。
ポーランドの歴史は、映画を通じてかいつまんでいる程度なのでほとんど無知に等しいけれども、地勢的に、両脇をソ連(ロシア)とドイツという、まあ、言ってみれば侵略国家に挟まれて、非常に厳しいものであったことくらいは何となくだが知っている。
そういう、ポーランドの地理的な宿命を、見事に描いている冒頭のシーンは胸に迫る。この後、アンナたちはどうなってしまうのか、、、。
そして、この冒頭にもう一つ印象的なセリフが。
「私はどこの国にいるの?」
このセリフを言った女性は、作品の後半、ソ連を告発する行動を起こすものの、案の定、ソ連に逮捕され、地下室へ連行される。多分、そのまま生きては帰れなかったんだろうな、、、。
戦争自体が終わっても、ソ連統治による地獄は終わらなかったという、ポーランド(だけじゃないけど)の抱える不条理がしっかり描かれている。
◆カティンの森事件
事件については、あちこちのサイトに書かれているけれど、ここでは、wikiにリンクを貼っておきます。
で、事件を直接的に描写したのは、終盤の15分~20分くらいでしょうか。ほとんどセリフもなく、ただただ淡々とした描写。しかし、その内容は凄惨極まりない。
その描写の詳細はここでは書かないけれども、あんなことをさせられた加害者側のソ連兵たちにとっても、相当の精神的ダメージではなかったろうかと思う。映画でたった数分見ただけで、これだけのダメージを受けたのだから、実際の現場を体験した者たちのダメージは想像を絶する。
こういうダメージは、その場では分からなくても、じわじわと低温やけどの様に時間が経ってから症状が出てくるものだと思う。きっと、生きて帰ったソ連兵たちも、苦しんだに違いない。そんな事実は当然のごとく抹消されているだろうが、、、。
そして、その終盤の凄惨なシーンを見ながら頭の中を駆け巡っていたことといえば、“ソ連は何でこんなことをする必要があったのだろうか?” という根本的な疑問だ。
虐殺されたのが、ポーランドの知識階級の人々が多数を占めていたことから、国力弱体化を図るため、という解説を目にしたけれども、果たして真相はどうなのだろうか、、、。
一人ずつ後ろ手に縛り上げて頭部を拳銃で撃ち抜くという、何という手間暇の掛かる殺し方。それを何万回と繰り返したその執拗さ。弾丸1発でも、何万人分ともなれば、決してそこに掛かる経費は安くないはずだ。もっと、安価で簡単に虐殺する方法はあったはずなのに、どうしてそんな執拗な殺し方をソ連は選んだのか、、、?
しかも、銃殺は屋内で行われ、床に流れた大量の血を、1回1回、丁寧に洗い流すのである。何という、手の込んだ虐殺か、、、。
この疑問に明快に答えてくれる情報には残念ながら、辿り着けなかった。虐殺の方法に良いも悪いもないものだが、ここまで執拗かつ残虐な手法をソ連が選んだ理由が、私にはどう考えても分からない。
◆映画作品としては、、、
本作は、ある意味、終盤の15分が全てを語っていると言ってしまっても良いくらい、映画作品としてみれば、いささかバランスを欠く構成だった様に思う。
登場人物が多いので、それぞれの立場が明確に分からない人もおり、後から何度か見直してみて、何となく分かったように思うけれど、、、。
アンナが、国境からクラクフに無事に戻れるのも、イマイチ分からないけれども、恐らくその前のシーンでアンナ母娘を匿ったのがソ連の将校で、彼の助力があってのことだと思われる。実際にどんな助力だったのかは分からない。将校がアンナに(命を保証するため)偽装結婚を申し出ても、アンナは頑なに拒むわけで、その後、どうやってクラクフに戻る許可が下りたのかは描かれていない。
主役は、夫を待つアンナであるけれど、同じように家族を失った人々が群像劇のように描かれるので、それぞれの立場を理解するのに時間が掛かるし、説明不足は否めない。もう少し、登場人物を絞って、視点を定めても良かったのでは、、、。
とはいえ、ワイダ自身が、この事件の遺族であり、ポーランド人としてこの事件について描くことに執念を燃やしたのは、本作を見れば、痛いほどに分かるので、作品としてバランスが悪くても、瑕疵があっても、それを補って余りある価値が本作にあることは間違いない。
映画は原則としてはエンタメだと思うが、こういう映画ももちろんアリだし、映画だからこそ出来ることだと思う。
実話モノは受け止め方が難しいところだけれど、本作については、圧倒的な監督の熱量にねじ伏せられた感じがする。有無を言わせぬパワーに圧倒されるのも悪くない。
ソ連はやはり怖ろしい。
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