米アップルが16日発売した「iPhone14」の出足が鈍い。
東京都から来た40代男性は最上位機種の「Pro Max」を購入し、
MMD研究所によると、iPhone利用者の買い替え頻度は「3年に1回」とする回答が27.3%で最も多かった。
ITジャーナリスト 石川 温
米アップルは9月16日に「iPhone 14」「iPhone 14 Pro」「iPhone 14 Pro Max」を発売する。
筆者は一足早く3モデルを入手し、いろいろと試して使っている。
今回、特に大きなアップデートがあったのはiPhone 14 ProとiPhone 14 Pro Maxだ。
基本的な外観は従来モデルを踏襲しているが、見た目の違いとして大きいのがディスプレーの上部だ。
これまでノッチ(切り欠き)だったのが、パンチホールと呼ばれる黒くて長細い穴のようのものが鎮座している。
パンチホールには自撮りするためのカメラや、顔認証で使うためのパーツを内蔵している。
他社は自撮りするためだけのカメラを画面の下に内蔵するなど、画面表示を極力、邪魔しないような処理を施している。
アップルの場合は顔認証で使うパーツなどを画面下に内蔵できないのか、あえて目立つ機構にしてきた。
Androidスマートフォンでは数年前の手法なのだが、アップルはそんな目立つ欠点をソフトウエアのチカラでフォローしてきた。
「Dynamic Island(ダイナミックアイランド)」と呼ぶ様々な通知や情報、アプリの状態などを表示するエリアとして活用している。
音楽を再生しつつ別のアプリを立ち上げると、音楽の再生情報がDynamic Islandに表示される。
さらに別のアプリ、もう一つ別のアプリと続けて立ち上げると、さらにアプリの情報が小さくDynamic Islandに表示される。
この自然な流れが巨大なパンチホールの存在を忘れさせてくれるのだ。
アップルは弱点をうまいことチャームポイントにしてしまったのだった。
iPhone 14 ProとiPhone 14 Pro Maxを使っていて地味ながらも便利だと実感しているのが、常時表示ディスプレーだ。
机の上に置きっぱなしにして画面の表示がオフになっても、時計やウィジェットなどが表示された状態のままとなっている。
これにより、時刻を確認しようとわざわざiPhoneの電源ボタンをちょこんと押すといった操作が不要となる。
本当に地味なアップデートなのだが、これがジワジワと便利だと感じるのだ。
待ち受け画面に人物の写真を設定していても、自然な感じで顔写真を表示してくれている。
また、使っていないときは時計が人物の前に見やすく表示されており、iPhoneを手にすると時計表示が人物の背後に回るなど、
細かい演出が趣深い。
例えば、ボイスレコーダーアプリを使いっぱなしにしていると、これまでは画面が真っ黒になって、
数時間録音しっぱなしにしていたという事態も珍しくない。
iPhone 14 ProとiPhone 14 Pro Maxであれば、常時表示ディスプレーにしておくと、
ボイスレコーダーアプリが表示されたままになる。
これは画面の書き換え回数を減らすことで実現しているため、秒数の表示は消えているという機能だ。
これによりボイスレコーダーアプリが起動したままというのがすぐに分かるので、
取材などが終わったらちゃんとアプリを終了しようと気がつくことができるのだ。
Androidスマホの場合は常時点灯に対応した機種が多いものの、表示できるのは時計やウィジェットのみに限られている。
iPhone 14 ProとiPhone 14 Pro Maxの常時表示ディスプレーは全体的な使い勝手向上にもつなげている点が大きい。
iPhone 14 ProとiPhone 14 Pro Maxを使っていて楽しいと感じたのがカメラだ。
従来は1200万画素(12MP)であったが、今回からメインカメラは4800万画素(48MP)になっている。
4倍の画素数を誇るのだが、アップルでは4つの画素を1つの画素として扱うことで、
光を取り込む量を増やすというアプローチを行っている。これにより、暗い場所でも明るく撮れるようになっているのだ。
また従来、ズームを使うとややぼやけた画像になっていたが、
48MPの高解像度で撮影することで解像度を維持したまま望遠の撮影が可能となる。
実際に日差しが少ない林の中で撮影してみたが、子どもの表情をきっちりと捉え、
また望遠もかなりの解像感で撮影することができた。
さらに撮影モードを「Apple ProRAW」に設定すると、手動で解像度を12MPと48MPに切り替えることが可能だ。
明るさを優先するのか、解像度を選ぶのか、自分で選んで撮影できるので、
カメラ好きにはあれこれ試して撮影できるのが楽しくなるはずだ。
iPhone 14など、これまでのiPhoneは「誰でも何も考えずにシャッターを押しても、
そこそこのきれいな写真が撮れる」というのが魅力であった。
iPhone 14 ProとiPhone 14 Pro Maxは、プロや写真好きが考えながら撮影できるカメラに進化している。
まさにプロ仕様のカメラといえる出来栄えなのだ。
ただ、複数の画素を1つの画素として扱う技術はAndroidスマホのメーカーはすでに取り入れていたりするので、
決して目新しい技術ではない。iPhone 14 ProとiPhone 14 Pro Maxを使っていて感じるのが、
Androidでは数年前に取り入れられた技術をようやく採用していても
「後追いしている感じ」を全く出していないというのが興味深い。
このあたり、単に技術を取り入れるだけではAndroidに追いついただけにしかならないのだが、
アップルは基本ソフト(OS)を一緒に開発していることもあり、
ハードウエアとソフトウエアの融合が実にうまいことユーザーの体験向上につながっているのだ。
今回、iPhone 14 ProとiPhone 14 Pro Max、さらにiPhone 14を使ってみたが、
進化を感じるのはiPhone 14 ProとiPhone 14 Pro Maxであり、
iPhone 14は前モデルとの違いをなかなか見いだせない。
カメラに徹底的にこだわるなら、iPhone 14 ProとiPhone 14 Pro Maxが間違いなく買いといえる。
一方で、iPhone 14は目新しさに欠けるのが残念だ。実際、チップセットは前モデルのiPhone 13 Proと同等だ。
iPhone 14ではなくても、iPhone 12やiPhone 13が値下げされていることを考えると、
型落ちiPhoneをあえて選ぶというのも賢い買い方といえるだろう。
ただ一般的なユーザーにとってみれば、iPhone XやiPhone 11などからの買い替えが多いと想定されるため、
3年ほど前の機種からの乗り換えであればかなりの進化ではないだろうか。
動画配信のUSEN-NEXT HOLDINGSとヤマダホールディングスが共同出資するY.U-mobile (東京・品川)は9月、サービスブランド「y.u mobile」で、楽天から契約を移す場合に基本料が最大5カ月無料になるキャンペーンを始める。
同社はヤマダデンキの店頭で申し込みを受け付けており、22年4月から5GB(ギガは10億、GB)の通信量で月1070円(税込み)などとしている基本料について、最大3カ月無料にするキャンペーンを実施してきた。楽天が5月、1GB以下の通信量なら基本料を0円とするプランの廃止を発表したため、公式サイトから契約すれば最大2カ月無料となるキャンペーンの開始予定を前倒しし、7月から導入していた。
さらに9月以降は、楽天の自社回線サービスからの乗り換えに限り、無料期間を2か月分上乗せする。楽天からの乗り換えニーズが高まっており、鹿瀬島礼社長は「ユーザーの取り合いに参戦したい」と話す。
楽天の自社回線サービスの契約数は6月末時点で477万件となり、4月から約23万件減った。0円廃止は財務改善のためで、楽天グループは23年1~12月期中のモバイル事業の単月黒字化を目指している。大和証券の石原太郎アナリストはレポートで「(1契約あたりの売上高である)ARPUの上昇と、(KDDIとの)ローミングの費用減少で赤字縮小が続くだろう」とコメントした。
楽天の0円プランは8月いっぱいで終わるが、9~10月も基本料などに相当する楽天ポイントを携帯契約者に還元するため、10月末までは実質無料と言える期間が続く。ただ、その後は契約を見直す人が再び増えるとみられている。
MMD研究所(東京・港)の6月の調査では、楽天からの乗り換えを検討しているユーザーのうち、MVNOへの移行を考えている割合はおよそ16.8%だった。移行先を決めていない「浮遊層」31.1%も合わせると、5割に及ぶ。こうした需要を取り込むべく、各社が策を練る。
最大手IIJ、基本料半額も
MVNO首位で「IIJmio」などを展開するインターネットイニシアティブ(IIJ)は8月の間、音声通話付きプランを申し込む人に、基本料を半年間、毎月440円割り引くキャンペーンを実施。基本料が月850円の2GBプランは半額以下の410円となる。
総務省によると、MVNO事業者の全回線数に占めるIIJのシェアは3月末時点で18.1%。同社の個人ユーザーの契約数は4~6月期に1~3月期比で約3%増え、約113万回線となった。
関西電力子会社のオプテージ(大阪市)は、6~7月の「mineo」の契約数が前年同期比で6割以上増えた。そこで8月下旬、月額990円からのプラン「マイそく」に新たに660円の「ライトコース」を加える。12月ごろの開始を検討していたが「各社の動きが活発化する中で前倒しした」(同社)。
ソニーネットワークコミュニケーションズ(東京・品川)は2月から、携帯の「NUROモバイル」を光回線「NURO光」と併せて新規契約した場合に、基本料を1年間毎月330円割引いてきた。このキャンペーンサイトの閲覧数が5月に急増したため、6月から割引額を一挙に2倍以上の792円とした。月792円の3GBプランなら1年間、無料になる。同社の6~7月の1日当たりの乗り換えユーザー数は、5月上旬と比較し約3倍に増加した。
MVNOは通信回線を大手から借りるため初期投資が少なく、異業種が数多く参入してきた。総務省によると22年3月時点で1648社ある。だがNTTドコモ、KDDI、ソフトバンクの壁は厚く、存在感を示せていない。移動系通信の契約数に占めるMVNOの割合は13%にとどまる。
しかも、大手は今やMVNOと正面からぶつかる敵と言える。KDDIの格安プラン「povo」は、必要な分だけデータ量を買う仕組みで、基本料は0円。契約者を増やし、定着させる魅力的なプランをどうつくるか。MVNOの課題は今まで以上に重みを増している。
ドコモ回線のMVNO
旅行会社大手のHISと、格安スマホの老舗の日本通信が合弁で設立した「HISモバイル」が、新料金プランを5月上旬から6月上旬に導入する。料金は、データ通信量が100メガバイト(MB)以下の場合、最安で月額290円。多くの利用者をカバーできそうな7ギガバイト(GB)プランも月990円で提供する。ここまで安い料金でHISモバイルは採算が取れるのか。
290円のプランはデータ容量によって料金が変動する。100MB未満の場合は290円で、100MB以上になると、1GBまで550円になる。スマホでアプリをダウンロードしたり、動画を見たりすると、すぐに100MBは超えてしまうが、データ通信をほとんど使わない人には割安な料金プランだ。シニア層など音声通話が中心の人にはお得な料金体系と言えるだろう
HISモバイルの狙いもここにある。今後は3Gの電波が徐々になくなっていくからだ。KDDIはすでに3月末で3Gのサービスを終了し、ソフトバンクは24年1月、NTTドコモは26年3月に終了する予定。通話が中心の利用者も4G、5Gに移る。今後4年間で乗り換え需要が拡大するとみられる。
通話主体の利用者を取り込むため、音声通話料は30秒9円に設定した。通常の大手通信事業者は30秒22円で、HISモバイルの料金は半額以下だ。1回5分以下なら何度でも掛けられる「5分かけ放題」は月500円、「完全かけ放題」は1480円で提供する。こちらも他社に比べて安い。5分以内の通話しかしない人なら、データ容量100MB未満の290円と合わせて月790円で回線を維持できる。
消費者目線では、お得な料金プランに見えるが、290円の月額料金でどうやってサービスを維持していくのか気になる。
一方で、現在HISモバイルの販路はインターネットが中心で、通話が中心の利用者に十分届いていない。そのため、同社は今後フランチャイズ方式でリアルな店舗を増やしていくという。
1号店は群馬県太田市に開設。空き店舗など、コストの安い物件を活用して、店舗数は徐々に増やしていく。HISの知名度は高いだけに、サービス内容をきちんと周知できれば利用者を伸ばせそうだ。