ムクロジは昭和レトロの魔法瓶みたいなユニークな形をしているおもしろい木の実で、
その中に格納された黒くて堅い種子は羽根つきのおもりや数珠、厄除けや
無病息災の願いを込められて利用されてきました。
また、水に浸すと泡立つ果皮は薬用や石鹸として役立ってきました。
そんなムクロジの人との関わりや魅力を探りながら、発芽から実がつくまでの成長過程など、
不思議で楽しい植物の世界を盛りだくさんに紹介します 。
- ムクロジ科 ムクロジ属
- 学名:Sapindus mukorossi Gaertn.英名:soap nut treeChinese soapberry
- ムクロジ属 (Sapindus) は熱帯地域から温帯地域までに約15種が分布子房の各室には1個の胚珠があり、果実は1〜3個の分果からなり、種子に仮種皮が無いのが特徴参考文献:園芸植物大事典 (小学館)
- 日本では関東以西~沖縄地方に分布する
- 高さ15m以上になる落葉高木
- 葉は偶数羽状複葉 秋には黄葉する
- 雌雄同株
- 11月頃に約2cmの球形の実が黄色く熟す
- 黒い種子は極めて堅牢
- 羽根つきの羽根のおもりや数珠に使用
- 果皮はサポニンをを含み、薬用・石けんとしても用いられた
- 寺院・神社・広い公園に植栽されていることが多い
縁起の良い木の実 羽根つきの羽根
オレンジ色の飴細工のような優雅な器に収納されたムクロジの黒い種子は羽根つきの羽根の黒い玉として使われていたんだそうです。
は羽根つきに打ってつけ!?
それもそのはず、ムクロジの種子の堅牢さは種子の中でもトップクラスの優れもの。少々叩いたくらいではビクともしません。
大きさは14mmぐらいで、硬い所に落とすと小気味良くはね返ります。
羽根つきだけに、打ってつけの素材だったんですね。(笑)
ムクロジは縁起が良い!?
ムクロジは漢字で無患子と書くことから、子が患わ無いという願いが込められ、
羽子板は厄をはね返す、はねのけるという事から縁起物として扱われていたようです。
また、ムクロジの黒い種子を豆に見立てて、魔滅 (まめ) で魔除けになるとか、マメに暮らせるという縁起かつぎも上乗せされていました。
羽根つきの歴史
羽根つきは室町時代から宮中の正月遊びとしてあったそうですが、一般にも盛んに遊ばれるようになったのは江戸時代以降のようです。
羽根つきの羽根は当初、ムクロジの種子に鳥の羽をつけたものを蚊を食べるトンボの姿に見立て、
空につきあげて蚊除けのまじないとしていたものだそうです。
当時の疫病は蚊を媒介として広まることが多かったといいます。
昨今、よく耳にするデング熱やマラリア等の感染症も蚊が媒介することが知られているので納得です。
しかし、羽根つきの羽根を見た限りでは「どうしてトンボに見えるのだろう?」と疑問に感じたのですが、
黒い種子を2つ並べるとトンボのように見えなくもない。
ムクロジの黒い種子はちょうど大型トンボの目の大きさぐらいです。
羽根が飛び交う様子をトンボが素速く飛ぶ姿に見立てたんですね。
室町時代に始まり、現代に至るまで羽根つきや羽子板は時代と共にいろいろな縁起かつぎが加えられ
厄除けや無病息災の願いが盛りだくさんにこめられるようになりました。
また、景気を跳ね (羽根) 上げると言う意味で、江戸時代には商売繁盛のお札代わりにも贈られていたという縁起物だったようです。
と、いうことでお正月には羽根つきをすると縁起が良いようですね。
ムクロジの種子の羽根を使った羽根つきで災厄や困難を跳ね返せるように祈願するのも良いかも!?
まるで魔法瓶!? ムクロジの実
昭和レトロの魔法瓶のようなユニークな形をしているムクロジの実。
形もさることながら、半透明な質感はアールヌーボーのエミール ガレやドーム兄弟によるガラス工芸作品を彷彿とさせます。とっても魅力的。
おままごとのポットのようでもあり、かわいいです。ムクロジポットとでも呼んでみましょうか。(笑)
乾燥しきっていないムクロジポットを割ってみるとペタペタした水飴のような粘液が出てきます。
このペタペタしたものはサポニンで、何と!石鹸やシャボン玉にも使われていたという優れものです。