国産ジェット大幅人員削減 三菱重工、量産規模を縮小
5/23(土) 0:04配信 共同通信
三菱重工業は、子会社が開発を手掛ける国産初のジェット旅客機スペースジェット(旧MRJ)事業の
人員を大幅に削減することが22日、分かった。
2021年度以降に納入を目指している90席級の初号機の量産計画を縮小する見通し。
新型コロナウイルス感染拡大で航空機需要が落ち込んでいることを受けた措置。
新規事業の柱と位置付けたジェット旅客機生産は早期の収益化が困難になりつつある。
三菱重工は20年3月期の決算会見で、スペースジェット事業の開発費を
19年度の約1400億円から20年度は約600億円に縮小する方針を明らかにしていた。
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10号機アメリカへ持ち込めず❗️
三菱スペースジェット「コロナ三重苦」で大逆風5/16(土) 9:30配信毎日新聞
三菱スペースジェット(旧MRJ)に暗雲が垂れ込めている。新型コロナウイルスの感染拡大の影響は航空業界全体におよび、かなり深刻だ。その現状をリポートしました。【毎日新聞経済プレミア・平野純一】
新型コロナウイルスは、スペースジェットの開発の進捗(しんちょく)、開発費を支える三菱重工業の業績、機体を購入する航空会社の業績――のすべてに重大な影響を与えている。スペースジェットは今まさに「三重苦」の状態だ。
三菱航空機(三菱重工の子会社)は3月、スペースジェットの最新試験機(10号機)を名古屋空港で初飛行させ、4月には試験飛行拠点の米国西海岸ワシントン州の空港に送る予定だった。だが、新型コロナの影響で途中の給油空港の使用許可が出ず、まだ名古屋空港に留め置かれている。
ANAグループへの1号機納入予定は「2021年度以降」。三菱重工の泉沢清次社長は5月11日の20年3月期決算会見で、「スペースジェット事業に甚大な影響が出ていることは間違いない。新試験機の米国行きの予定はまだ立たず、全体のスケジュールを精査している」と述べ、コロナ問題の収束いかんが、納入時期にも大きく影響する可能性を示唆した。
◇三菱重工の余力がなくなる
決算では、膨大な開発費を負担し続ける三菱重工の収益力悪化も明らかになった。20年3月期の本業のもうけを示す事業損益(営業損益)は295億円の損失となり、20年ぶりの赤字となった。スペースジェット事業では、保有する資産価値の目減りを会計上に反映する減損と開発費で2633億円の損失を計上。スペースジェットの資産価値はゼロに引き下げた。自動車用のターボチャージャーやエアコンなども振るわなかった。
21年3月期は、新型コロナの影響による収益のマイナスを1400億円程度と予想。固定費削減などで450億円程度の改善効果を見込んでも事業利益はゼロになる見通しだ。スペースジェットの開発費は前期の半分の600億円程度に抑える。スペースジェット関連全体の費用は1100億~1300億円を見込むが、買収したカナダ・ボンバルディア社の小型旅客機「CRJ」事業で最大700億円の減損を見込むためだ。
特にボーイング向け事業は厳しいものになりそうだ。三菱重工はB777の後部胴体、B787の主翼を製造しているが、今年度の納入見込みは、B777向け42機(前期比マイナス12機)、B787向け140機(同マイナス26機)だ。ただ、これは現時点の予想で、「ボーイングの業績次第でさらに落ち込む可能性が高い」(航空アナリスト)。航空機部品を製造する名古屋航空宇宙システム製作所(大江工場)は今月、操業の一時停止を予定している。開発費はかかるが利益は生まないスペースジェットを支える力が弱ってきている。
◇航空会社はみな大赤字
航空会社の収益も厳しい。1号機を受け取るANAは、1~3月期に連結最終損益が587億円の赤字に落ち込んだ。JALも同229億円の赤字だ。この大型連休(4月29日~5月6日)も両社は国内線・国際線ともに旅客数が前年より95%以上減少しており、4~6月期はもっと苦しくなっていることが予想される。米国でも、大手航空会社の1~3月期の最終損益は、アメリカン航空22億ドル(約2350億円)▽デルタ航空5億ドル(約535億円)▽ユナイテッド航空17億ドル(約1820億円)の巨額赤字を計上した。
航空会社の業績が厳しくなれば、航空機購入の意欲も薄れる。三菱航空機は昨年、今後20年間の世界の航空機市場で、100席未満のリージョナルジェットは約5000機の需要があり、このうち40%の約2000機が米国市場と予測していた。これも見直しは必至だろう。
◇M100を「いったん見合わせる」
また、現在開発中の「M90」(90席級)に続き、主に米国市場向けの一回り小さな「M100」(70席級)も開発する予定だったが、泉沢社長は「航空業界が激変しており、検討作業をいったん見合わせる」と述べ、開発を一時凍結する考えを示した。小型旅客機の最大市場の米国に売り込むには「M100」が早期に必要だが、市場の先行きが見通せないなかでは慎重にならざるをえない。
名古屋空港にいる試験10号機は、改良を重ね「これなら型式証明を取れる」と踏んだ最終段階の試験機だ。だが、米国へ最終試験に向かう直前、誰も予想だにしなかったコロナ禍に行く手を阻まれている。
10号機 5月12日飛行以降飛んでいない