米司法制度は政治的道具に成り果て、終わりを迎えるのか 6月のトランプ・バイデン直接対決(討論会)に期待【─The Liberty─ワシントン・レポート】
2024.06.03(liverty web)
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ニューヨーク州地裁で審理が行われていたトランプ前大統領の刑事裁判について、5月30日に12名の陪審員の評決が下された。不倫相手とされる元ポルノ女優への口止め料を、「他の犯罪を隠すため」に、不正に会計処理したという疑惑をめぐり、トランプ氏は起訴罪状34件の全てで有罪となり、メディアやネットワークは大騒ぎとなった(詳細は関連記事:「不倫口止め料」をめぐる裁判でトランプ氏が「有罪」評決)。
トランプ氏や共和党議員、保守系識者などは全員、評決を非常に強く非難し、「アメリカにとって悲しみの日」「米司法制度は崩壊した」「司法制度は政治的武器となり、信用はなくなった」などと訴えた。
トランプ陣営には、3日間で、2億ドル(314億円)を超える記録的献金が集まり、その3割は初めての共和党への献金者だった(6月2日共和党本部共同議長発表)。また、ウォール・ストリートのビリオネアー(資産10億ドル以上)たちは、評決直後から、続々とトランプ支持を表明し、裁判を非難している(5月30日付ブルームバーグ)。
一方、バイデン大統領や民主党議員などは、「何者も法を超越できない("No one is above the law")」などとコメントし、評決を歓迎している。
口止め料の支払いは違法ではなく、不正会計処理も微罪で、この案件で「起訴」までされたケースは、アメリカ史上一度もない(ハーバード大学法学部名誉教授アラン・ダーショウィッツ弁護士〔民主党員〕による指摘)。
元ポルノ女優は2018年に署名入りでトランプ氏との関係はなかったと公表し、既に終わっていた案件だが、トランプ起訴を公約として掲げて当選した民主党のブラッグ検事(アメリカの地方検事は所属政党が明確)は、ニューヨーク州の法律を駆使して、時効切れの微罪を、「他の(不明の)犯罪を隠すための重罪」(時効切れにならない)に格上げして蘇らせた。そのため、ブラッグ検事事務所の職員からすら、「ゾンビ・ケース(案件)」と呼ばれ、アンチトランプ系の識者からも、あまりの根拠の薄弱さが指摘されていた。
しかし、民主党献金者であるファン・マーチャン判事は、トランプ氏側に有利な証言者を制限し、全会一致が原則の陪審評決に対して、犯罪の種類(共謀罪か単独犯か等)や、重罪にするために必要だった「他の犯罪」については一致する必要はない、(虚言で有名な)トランプ氏の元顧問弁護士コーエン氏の証言の全部を否定しなくていいなどと指示し、会計処理問題をニューヨーク州選挙法違反問題にまで格上げさせるなど、巧みに陪審員を誘導した。
民主国家における法律の基本は、犯罪を発見した後に犯人を特定する順序だが、今回の裁判は、まずターゲットを特定して犯罪を発見するという逆の順序で、去年3月の起訴当時から、多くの保守系識者から、「スターリンが用いた方法と同じ」(人治独裁国家)だとも指摘されてきた。
18世紀の思想家モンテスキューによって提唱された「三権分立」(『法の精神』)を世界で初めて採用したアメリカ合衆国憲法の精神はどこへ行ったのか。アメリカの司法制度は、政治的道具(武器)に成り果て、終わりを迎えるのかと思わせるような様相である。
テレビを見ると、保守系のFOXニュースやNewsmaxは、もちろん、裁判については徹底的に批判しているが、リベラル左翼系のCNNやMSNBCも、決してトランプ氏の有罪を手放しで喜んではおらず、裁判を批判するCNNのリーガルアナリストや民主党議員もいる。