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《本記事のポイント》

  • 「運命の赤い糸」とめぐり逢いの真実
  • 女性の魂の属性としての羞恥心
  • 恋愛相手のなかにある正直さや誠実さを大切にする

 

 

ソウルに暮らす12歳の少年ヘソンと少女ノラは、とても仲が良く、いつも一緒にいて惹かれ合っていた。しかし、ノラが、映画監督をしている父の都合で家族でカナダに移住することになり、突然の別れを迎える。

 

ヘソンは、その後もノラのことをずっと思い続け、兵役の軍事訓練中も彼女のことばかり思っていた。そして、小学校時代に離れ離れになった彼女のことを、ここまで思うというのは、きっと過去世からの夫婦の縁があったのではないか、そんな風に思い始める。一方、ノラは、カナダに移住した後、アメリカ・ニューヨークの大学に入学し、シナリオライターを目指す。そんな二人が離別から12年後に再会する……。

 

長編映画監督デビュー作となるセリーヌ・ソンが、12歳のときに家族とともに海外へ移住した自身の体験をもとにオリジナル脚本を執筆し、メガホンをとったのが本作品だ。

 

ノラ役はNetflixのドラマシリーズ「ロシアン・ドール 謎のタイムループ」のグレタ・リー。ヘソン役は「LETO レト」「めまい 窓越しの想い」のユ・テオ。2023年第73回ベルリン国際映画祭のコンペティション部門出品で、第96回アカデミー賞では作品賞、脚本賞にノミネートされた。

 

 

「運命の赤い糸」とめぐり逢いの真実

この映画は、転生輪廻と過去世の縁をテーマにしたものだが、そもそも現代社会のように、国境越えて生活の基盤が移っていくことが頻繁に起きる流動的な社会において、本当にたった1人運命の人がいて、「運命の赤い糸」で、その人と巡り合えるのだろうかという疑問もあるだろう。大川隆法・幸福の科学総裁によると、現代では、生まれる前に結婚の約束している人は、複数いる場合もあるという。

 

人間はこの世に生まれてくるとき、天上界で夫婦の約束をし、第一候補を決めてきていますが、たいていは、ほかにも四、五人ぐらい、自分と結婚の縁のある人が地上にいて、A、B、C、D、Eといった順序もあるのです。そのなかで、まだ結婚していない人がいれば、守護霊はその人と急速に近づけてくれます。また、結婚の縁はなくても、過去世で一緒に仏法真理の勉強をしたり、一緒に仕事をしたりした縁のある人がいます。天上界の応援があれば、そうした縁が必要に応じて結婚縁に転じ、その結果、天上界で約束をしていなくても、結婚生活に入ることがあります。そうしたことはいくらでもあります」(『幸福へのヒント』)。

 

映画ではたった1人の運命の人という思い入れが、主人公を突き動かしていくのだが、気をつけないとこれは、執拗なストーカーにもなりかねない点には注意が必要だ。

 

縁のある人は複数いるし、別の縁が結婚縁に転化していくこともある。過去世に想いを馳せることは、霊的人生観として大切なものだが、加えて、いかに魅力的な人間へと自分を創り上げていくかという自助努力も、怠ってはならないことである。

 

 

魂そのものの属性としての羞恥心

2人の交流が再開するのは、それから12年後、24歳の時だ。

 

ある日、ノラがカナダの母とチャットで会話をしていると、ふと、小学校時代、自分と仲の良かったヘソンのことを思い出し、検索してみる。するとヘソンが彼女のお父さんのページに書き込みをしていたことを発見する。そして自分に会いたいと言っていることを見て、面白半分に彼に連絡を取る。

 

こうして、2人は12年ぶりにオンライン上で出会い、その後繰り返しチャットを通じて関係を深め合う。

 

ヘソンは再会できた喜びから、ぜひソウルに来てくれとノラを誘う。しかし、ヘソンの強い思い入れにひるみ、煩わしさを感じたのだろうか。ノラは、1年間のチャット会話の中止を提案する。

 

ヘソンはショックを受けながらも、それを受け入れるのだが、この冷却期間の間に、ノラは、たまたま知り合ったアメリカ人小説家と親密な関係になり、結婚してしまう。その目的は、アメリカ人と結婚した配偶者に支給されるグリーンカード(永住権)を手に入れるためでもあったということが後で判明する。

 

このように幼くして西欧圏に移住したことで、ノラがやや羞恥心に欠けた女性へと変わっていき、伝統的な韓国男性であるヘソンとの間に意識のギャップが生まれていることが、映画の面白みとなっている。

 

ノラが東洋社会に属する女性にあるはずの慎みや羞恥心を失っていくことについて映画は価値判断を示さないが、本来、女性にとっての羞恥心とは、魂の属性そのものであることを大川隆法総裁は『不動心』のなかでこう指摘する。

 

結局、色情関係というものが、なぜ自由に許されていないのかといえば、恥ずかしいという羞恥の感情が、魂そのものの属性としてあることに原因が求められます。すなわち、仏がそうした感情を予定していることに第一原因が認められるのです」(『不動心』)

 

人間を創造された大いなる存在が、原初に女性の魂に羞恥心を付与したということ、それを伝統として保持してきた東洋的な社会秩序の美点については、改めて見直されてもいいのではないだろうか。

 

 

恋愛相手のなかにある正直さや誠実さを大切にする

ノラが結婚したことを知ったヘソンは、そのことを受け入れつつも、ずっとノラのことを思い続け、結婚に踏み切れずにいる。

 

そして彼女の結婚から7年後、ヘソンはノラに会いにニューヨークに旅行する。ここが映画のクライマックスになっている。

 

再会した2人は、ノラの夫であるアメリカ人の男性も交えて3人で、バーで語り合う。その中で話題になるのが"過去世(パストライブス)"のことだ。

 

ヘソンはずっとノラを思い続けてきたのはなぜか、という疑問について、やはり過去世できっと何か縁があったのではないかという思いを直接彼女にぶつける。ノラもそれに応じて、様々な過去世を想像しながら、話に花を咲かせる。

 

やがてノラの夫も加わり、男性同士の間でも過去世で縁があって、それゆえ、こうして今一緒にいるのではないかとお互い納得する。

 

ここまで、終始一貫、ヘソンとノラの恋愛がとても節度のあるものとして描かれているのが大変印象的だ。

 

その理由を考えてみると、特に、男性のヘソンが、ノラとはきっと過去世で縁があり、今世でも一緒に夫婦となることを約束していたかもしれないという"三世の縁"という考え方を信じていて、それが彼の肉欲をコントロールする一つの歯止めの役割を果たしていることに気がつく。

 

これは一種の誠実さとでも言えるのではないだろうか。そして、ここが相手を見る際の一番のポイントであるべきだろう。

 

大川隆法総裁が『希望の法』のなかで、こう指摘している通りである。

見合いであろうと恋愛であろうと、外見だけで相手を決めた場合には、三年から五年、長くても十年以内には破綻すると見てよいでしょう。したがって、外見ではなく、もっと長続きするものを、相手のなかに見つけることが大事です。長続きするものとは何かといえば、やはり、その人の基本的な人生観です。それをまず見抜かなければいけません。相手のなかにある正直さや誠実さ、率直さ、まじめさ、こういうものに惹かれて結婚した場合は、あまり失敗することはないと思います」(『希望の法』)

 

映画は、7日間のニューヨーク滞在を終えたヘソンと最後の抱擁をして、彼を見送るノラの眼から涙が流れ出し、そのまま泣き続ける姿を描きつつ、エンディングを迎える。

 

彼女の涙は、ひたすら過去世の縁を信じ続け、ニューヨークにまでやってきたヘソンの姿の中に、自分が捨てて来た大切なものにノラが思い至った、後悔の涙だったようにも見えた。

 

やはり、過去世や霊的世界を、子供騙しの作り事だと考えることが、大人になることではあってはならないだろう。

 

打算や、計算づくの恋愛をするのではなく、人間が現世、来世、過去世を行き渡っている永遠の命であることを確信し、誠実に生きることこそ、本当の意味での大人の賢さなのだということを忘れてはなるまい。

 

『パストライブス 再会』

【公開日】
全国公開中
【スタッフ】
監督:セリーヌ・ソン
【出演】
出演:グレタ・リー ユ・テオほか
【配給等】
配給:ハピネットファントム・スタジオ
【その他】
2023年 | 106分 | アメリカ・韓国合作

公式サイト https://happinet-phantom.com/pastlives/

 

 

【関連書籍】

いずれも 大川隆法著 幸福の科学出版

 

 

【高間智生氏寄稿】映画レビュー

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