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グローバル化への準備---英語と他の言語(8):文章の形式(Form)

2013-02-25 | ビジネスの世界
英語と他の言語(7)から続く。

3)形式(Form)
文書の形式には、基本的な形としてブロック形式(Block Form)とインデント形式(Indent Form)がある。この2つの形式は、横書きの日本語、英語、その他の外国語の形式である。また、縦書きの日本語は、ほとんどがインデント形式であるが、ブロック形式の縦書きもある。

下の図は、横書きのブロック形式のサンプルである。このサンプルの言語は日本語であるが、英語や他の言語でもかまわない。このブログも典型的なブロック形式である。

 ブロック形式
 

ブロック形式の特徴は、パラグラフ(段落)の最初の文字を左詰めで書き始める。1つのパラグラフが終われば、空白行を1行入れて、次のパラグラフを左詰めで書き始める。

ブロック形式では、パラグラフとパラグラフを1行の空白行で分離するので文章は読み易くなるが、空白行の数だけ紙/画面スペースが増える。

縦書きの日本語のブロック形式では、パラグラフの最初の文字を字下げなしで書き始める。最初のパラグラフを書き終えたとき、空白行を1行入れて、次のパラグラフを字下げなしで書き始める。この要領は横書きと同じである。

次に、インデント形式を説明する。下の図は日本語の横書きのサンプルである。

 インデント形式
 

日本語の横書きの場合は、パラグラフの最初の文字を1文字右にずらせて書き始める。パラグラフが終われば、改行して次のパラグラフを1文字右にずらせて書き始める。パラグラフとパラグラフの間には空白行を入れないが、パラグラフの先頭文字が1文字右にずれているので新しいパラグラフを識別できる。日本語のインデント形式で、1文字だけ右にずらせるのは、原稿用紙の1枡からきていると思う。これに対して、英語の場合は、パラグラフの書き出しを3~5文字右にずらせるのが一般的である。

縦書きの日本語では、パラグラフの最初の文字を1文字だけ字下げして書き始める。パラグラフの終りで改行し、空白行なしで次のパラグラフを1文字だけ字下げして書き始める。パラグラフとパラグラフの区別は1文字の字下げで識別する。

インデント形式では、横書きと縦書きともにパラグラフの間に空白行を入れないので紙面は少なくなる。

以上、ブロック形式とインデント形式の基本形を説明した。実際には、インターネット上のニュース(日本語)のように、インデント形式でもパラグラフとパラグラフの間に空白行を挿入するケースもある。

ブロック形式とインデント形式ともに昔からの形式である。しかし、筆者の記憶では、80年代までは英文レターや日本語のビジネスレターでは、日付や差出人やレター本文もインデント形式だった。

80年代の後半に、アメリカのロータス・デベロップメント社がcc:mail(carbon copy:mail、シーシーメール)を発表した。このメールソフトは、国際通信ネットワークの普及と共にまたたく間に世界に広まった(しかし、日本語版はなかったと思う)。このソフトは、後のグループウェアの先駆けだった。

90年代初頭には、代表的な電子メールとして世界に定着したcc:mailは、ビジネスレターのカーボン紙を不要にした。同時に、従来の紙ベースのレターの形式にも影響した。

タイプライターによるビジネスレターでは、日付は用紙の右上、宛先は左上、件名は中央、結語と差出人署名は右下だった。この作業は、タイピストにとっては簡単な操作だが、紙を意識しない電子メールでは、右上や右下あるいは中央といってもその位置決めは難しいことだった。たとえば、レターサイズの紙を縦置きでプリントすれば日付が右上であっても、横置きの紙では中央になる。

そこで、cc:mailでは、From(差出人)、To(宛先)、CC(カーボンコピー)、Subject(件名)、Date(日時)はすべて左詰めになった。やがて、この形式は紙ベースのビジネスレターでも一般的な形式になり、結語(Regardsなど、日本では“以上”が多い)や氏名を左詰めで書く人が多くなった。また、レター本文も簡潔なブロック形式が多くなった。

次に、見出しと項目の番号の付け方を説明する。

一般の作文では、題目があれば見出しや項分けは必要でない。しかし、ビジネス文書や論文では、見出しや項目で文書の内容を分かり易くする必要がある。

下の図は、見出し(Heading)と項目(Item)のナンバリングのサンプルである。見出しと項目の違いは曖昧であるが、見出しは目次に書き出す大まかなもの、項目は見出しをさらに細かく分解したものといえる。

ここで説明する横書きのナンバリング方法はアメリカ式のため、縦書きの日本語には通用しないので注意されたい。

 見出しと項目の番号
 

上の図に示すように、見出しの一番左の位置をレベル1と呼び、右に向かってレベル2、レベル3・・・と呼ぶ。

レベル1の見出しは、見出し番号+.(ピリオド)+見出しの順序で書く。(例:1.背景、2.調査の範囲と・・・)。レベル2以降は、.(ピリオド)の代りに1スペース(1空白)を入れて見出しを書く(例:2.1 範囲、2.1.1 見出し)。

次に、見出しの下のレベルに現れる項目のナンバリングは、(1)、(2)、(3)・・・のように丸括弧の中の番号で項目を分ける。さらに、丸括弧の下のレベルの項目には、1)、2)、3)・・・のように片括弧の数字でナンバリングをする。

図には例示しなかったが、片括弧より下のレベルでは、項目の前に□や○などの記号を付けて識別する。Wordの箇条書きの行頭記号と同じイメージである。

最後に、図表番号の取り方を説明する。

ビジネス文書や論文などでは、図(FigureまたはFig.)や表(Table)を参照する。下の図は、図表番号のサンプルである。図番号と表番号は別々に採番する。図表番号+1スペース(1空白)+図表の名称を書き、全体にアンダーラインを付ける。図か表かの判断に迷えば、図とすれば無難である。

 図表番号
 

図と表がそれぞれ10件以下であれば、図番号と表番号はそれぞれ単純な1桁の連番で良い(例:図1、図2、図3・・・)。10件以内であれば、後で図表の追加/削除しても、大きな作業にならない。

図表が多い場合は、上のサンプルのようにレベル1の見出し番号と枝番で図表を管理する。見出し番号と枝番で管理すれば、図表の追加/削除に伴う他の図表番号の変更は、レベル1の見出し番号の枝番の変更だけで済む。したがって、変更作業を少なく抑えることができる。たとえば、図2-3を追加すれば、旧番号の図2-3を図2-4に変更、最後の図番まで番号を1つずつ繰り下げる。この変更は、他の見出し番号の図1-XXや図3-XXなどには波及しない。もし、図表番号が単純な連番であれば、変更作業は大きくなり、変更ミスが起りやすくなる。

図表の採番方法、注意点、論文への図表添付法を専門教科「線形計画法(Linear Programming)」の授業で教わった。後の実社会で役立ったので、今も”gonna”が口癖だったあの先生をよく覚えている。

ここで余談になるが、1990年代初頭からビジネス環境も大きく変わり始めた。仕事のチーム・メンバーも多国籍、たとえば、ドイツ人は小数点をコンマ(,)で表す習慣があった。文書管理をサーバーで一元管理するためにはサーバー(Document Server:各国とon-line接続)の運用ルール、仕事のやり方や成果物(文書)の標準化も必要になった。また、文書サーバーの管理では、文書のバージョン、機密(Authorization)、保管(Archive)を管理する専門家(常駐)のサービスも利用した。

テレワークの参考だが、タスク・フォースの仕事では、オンライン・ネットワーク+標準化+気心の知れたチーム・ワークがGood Jobを生み出す。(例:米英蘇独濠日の十数人が在宅(在国?)勤務+SFOで全員参加の月例打合せabt1wk、夜は3,4人がレンタ・カーで食事、誰かが輪番で食事代を負担、スコットランド人は時どき美人の奥さん同伴、楽しい、スーパーで安売りがあると皆とレンタ・カーで駆け付けた。街のあちこちに思い出は尽きない。)

文書管理においては、用語の統一はもちろん、文章の形式(Form)、レベル展開、項目のナンバリングのルール、図表番号の取り方など多くのルールを決める必要があった。当時、ルール決めでよくMilitary Standard(通称Mil Std:アメリカ軍の標準規格)を参考にした。なお、文章と段落(パラグラフ)の関係については、次の説明を参照されたい。

【参考2:文章の構造
 文章の構造は次のとおりである。この構造を理解すれば、文章の論理展開が容易になる。 
◇作文(Composition)=一つまたは複数の段落(Paragraph)で構成
◇段落=一つの主題文(Topic Sentence)と複数の支持文(Supporting Sentence)で構成
 ただし、支持文なしで主題文だけの段落もOK
 例:ここに赤いバラの花がある。(←主題文)このバラは今朝庭の花壇で見つけた。(←支持文)・・・
◇段落の並べ方を工夫して「三段論法」「演繹法」「帰納法」「起承転結」などを展開
◇文(Sentence)の要件=短く(32 Words以下)、簡潔(Straightforward)、曖昧でない(Unambiguous)・・・簡潔で多義にとれないSentenceが良い。

以上は、筆者がアメリカの大学で受けた「作文」の基礎教育・・・必須の実習科目(Lab)だった。(留学生を対象にする英語教育ではなかった。)

また参考だが、日本の国語学者(複数)によると、日本の国語教育に問題があるとの指摘がある。【「グローバル化への準備---英語と他の言語(5)2013-01-10」 の1)国語教育の現状を参照されたい。】

筆者も欧米人との比較で日本ビジネスマンの作文下手を痛感した。特に、コンピューター関係ではドキュメンテーション(文書化)が重要である。読んで分かる文書であれば、他言語への自動翻訳でも翻訳精度が向上する。効率的な国際ビジネスには国語教育が大切と国語の先生たちに認識していただきたい。

次回は、4)文体に続く。

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グローバル化への準備---英語と他の言語(7):Mechanics of Writing

2013-02-10 | ビジネスの世界
グローバル化への準備---英語と他の言語(6)から続く。

(6)作文のキーポイント
ここでは、筆者が今日まで実践してきた作文(Writing)のキーポイントを、
   1)構造(Mechanics of Writing)
   2)用語(Terminology)
   3)形式(Form)
   4)文体((Style of Language)
   5)内容(Content)
に分けて説明する。

この方法は、60年代にアメリカで受けた教育に、日米の民間企業や国際機関の経験を加味したものである。この説明は、一般的な文章から技術的な論文やシステム設計書の作文を対象にしている。また、個人の作文から複数の人が共同で仕上げる文書にも当てはまる。

1)構造(Mechanics of Writing)
何かを書こうとするとき、まず、文章の論理的な構造(メカニックス)を考える。自分が思うことをどのように表現するか、どのように論理的に展開するかと考える。

参考だが、この段階を機械やシステムの場合では構想設計または概要設計と言う。この構想設計が甘いと後々設計変更が必要になり、結果として駄作になるケースが多い。同様に、小説、詩歌、絵画などでも、最初の構想が大切だと思う。

最も一般的な文章の構造は、起承転結である。言い換えれば、文章の展開順序であり、起承転結の他にも、結論から書き出す方法、演繹法や帰納法、あるいは気の向くままに書く方法などがある。

この段階では、書く順序を下に例示するような目次案にまとめる。もちろん、1000字程度(日本語)の個人的な作文では、目次案などと言う大げさものでなく、構想は頭の中だけで済ませる。しかし、長文やビジネス文書の場合は、目次案は必須である。メモでもいいから、必ず紙に書き出し、チェックすることをお勧めする。下の例はビジネス文書の目次案、文書が完成したとき右側にページ番号を入れる。

 目次案
 

目次案の内容を検討するとき、たとえば起承転結をフローチャート(流れ図)に展開する。フローチャートの上で、作文の順序をあれこれと考えて、目次案を最終化する。これはコンピューターシステムの概要設計と同じ手法である。

実際のフローチャートでは、目次案の見出しだけでなく、見出しの中身を複数のキーワードに分解する。
たとえば:
  見出し=「背景」
  「背景」のキーワード=「調査の目的」「現場ヒアリング」「将来への対応」「期待効果」・・・
  「背景」をキーワードに分解して、中身をより明確にした。

作文では、一つのキーワードを一つの主題文(Topic Sentence)として、その主題文を複数の支持文で説明して一つのパラグラフを作る。ここでは、キーワードは省略するが、アメリカの作文教室では、キーワードを含むフローチャートを手書きで作成し、先生に説明し、添削とアドバイスを受けた。

この段階で作文の粗筋が見えるので、全体のページ数も推定できる。2~3人で報告書を書くときに、個人々々があれこれ悩むより、この方法で驚くほど速く文書が完成する。

2)用語(Terminology)
作文においては、使用する単語や言葉の用法に一貫性がなければ全体が支離滅裂になる。また、読者も混乱する。特に、複数の人が一つの文書を作成するときには用語の統一は必須になる。もし、外国語への翻訳が必要な文書の場合は、用語の統一で自動翻訳の精度も向上し、手間とコストを削減できる。

用語の統一は、国レベルでも実施している。たとえば、日本語では「公用文における漢字使用等に関する実施要領」(平成22年)の別紙は、「次のような代名詞は,原則として,漢字で書く。例 俺 彼 誰 何 僕 私 我々・・・」などと用語と書き方を示している。

アメリカでは、「用語と章立てのルール」として、Mil Spec(ミルスペック:Military Specifications and Standards:軍用規格)を利用する方法もある。また、国内外の民間企業や自治体には、独自の文書作成基準やルールがある。

ある地方自治体は、お役所の固い表現を平易な言葉に変えていた。
慣用語の平易化(1980年代後半頃の例)
一環として → 一つとして、忌たんのない → 率直な、追って → 後日、既定の → 定められた、かかる → このような、懸念 → 恐れ 心配、格段の → 特別の、幸甚に存じます → 幸いです、所存であります → 考えです、講ずる → 実行する 行う、所定の → 決められた、ご臨席 → ご出席・・・

ここで、用語に関する余談になるが、国連の専門機関での仕事始めは言葉合わせだった。

専門機関では欠員に応じて専門職を適宜任用するが、専門語は必ずしも世界共通ではない。たとえば、Technical Feasibility(技術的に実現できるかどうか)、Operational Feasibility(人が運用できるかどうか)、Economic Feasibility(経済的に成り立つかどうか)の意味が新任の専門職と国連の定義に違いがないことをチェックした。これは、いわゆる言葉合わせだった。

また、グローバルシステムの開発では、各国各社の参加者の用語を英語に統一、アメリカ本社の文書管理サーバーで集中管理した。日本ではあまり一般的な仕事ではないが、文書管理の専門家が内容や改訂版や機密を管理した。

用語統一の一部だが、日付時間の書き方、通貨の書き方(Yenか¥など)、計量単位のメートル法系への統一、英語句読法への統一やイギリス英語とアメリカ英語の違いをアメリカ流に統一した。

また、ドイツでは小数点の代わりにコンマを書くので、他の国では千の単位と間違う。そこで、小数点はピリオドに統一した。さらに、フィートポンド法のメートル法への統一も厄介な問題だった。プロジェクトではメートル法に統一したが、外部の組織と関連する問題は統一できなかった。この問題は、現在も国家レベルでは統一されていない。度量衡の統一は、法律、技術、経済、運輸などあらゆる分野に影響する大きな問題である。

さらに、コンピューターの文字コード(シフトJISなど)もユニ・コード(Unicode)で多くの文字を表現できるようになった。90年代初頭のキーボードには¥サインが存在しなかった。このような個々の問題に触れると切りがないので、ここでは省略するが、グローバル化には根の深い問題があちこちに潜在する。

用語統一の最後に、日本のグローバル企業の用語管理で気掛りなことを一言付け加えて置く。

このブログの2012-01-09で説明した基礎情報の英語化は進んでいない。それは、社内用語や業務規定や技術基準などの英語化とそのメンテナンスのことである。この作業には、人材確保とコストが必要で、片手間の仕事では片づかない。しかも、一企業だけの努力には限界があり、国家の基盤整備と連動すべき、水面下の氷山のような大きな問題である。

とりわけ、企業の基礎情報の英語版はグローバルな活動の土台である。その土台作りには、不断の努力が必要である。もし、世の表面的な流れに気をとられて、この土台固めとメンテナンスを看過すると、華々しい海外展開が砂上の楼閣に転じる恐れもある。

1960年頃、日本食を洋食器に盛り付け、ナイフとフォークで食し、本船(自分の船)は洋食であると言う新参外航船(外国航路に新規参入した内航船)があった。しかし、洋食には船内でのスープ作りとパン焼きが基本、厨房関係者は定期的にホテルで研修を受けた。たかが貨物船とはいえ、ほのるる丸の食事は仕事で来船するヨーロッパの人々にも通用した。ただ洋食器に盛り付けただけの日本食と同様、表面だけの英語化=グローバル化と誤解してはいけない。

次回、3)形式に続く。

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