世界の市場(4)から続く。
砂漠の青空市場、マラケシュのフナ広場は観光客には人気がある。筆者も観光客の一人になって想像の市場の中をあちこち覗いて歩く。生活用品、調度品、民芸品、農産物、スパイなどの日用品に観光客目当ての民芸品や骨董・ガラクタもある。炎天下の広場、手絞りオレンジ・ジュースだけは飲む価値がある。
夕刻の屋台から立ち上る香ばしい匂いはイスラム系の匂い、シシカバブ―やスパイスの匂いに包まれている。昔はフランスと関係があったので、夜店にはエスカルゴ料理もある。形が小さくただのカタツムリかも知れない。食用の養殖カタツムリとの違いを味で見分けるのは難しいので手を出さない。
食欲をそそる匂いに誘われて、何の肉か分からないが焼肉などを試食する。実際に食べてみると香ばしい匂いの割には、味は大したことがない。しかし、それが夜店の味であり、子供のころへの郷愁でもある。
昼間の広場でヘビ使いや大道芸をうっかり撮影すると、チップを要求されることもある。その時は、黙って1ドル紙幣を渡せばよい。それでも要求されれば無視する。一般的にチップの相場は、その国の最少額紙幣または1ドル紙幣1枚で十分である。この点で、世界のどこの国でも通用する1ドル紙幣は便利である。今まで、1ドル紙幣のチップを拒否されたことはない。
参考だが、モロッコとヨーロッパ諸国との経済格差は大きい。たとえば隣国のスペインと1人当たりの名目GDPを比べると10倍近くの差がある。
モロッコ= 3,435US$(約40万円)
スペイン=32,559US$(約360万円)
出典:IMF-World Economic Outlook Databases(2018年4月版)
また、モロッコと日本を比較すると、面積(約45万k㎡)は日本(約38万k㎡)より広く、人口は約3、400万人で日本(約1億2600万人)の3分の1以下である。
名目GDPは低いが、モロッコの鉄道網はアフリカ諸国の中ではよく整備されている。その総延長1,900km、うち1,000kmは電化区間である。現在、時速200kmの高速鉄道も建設中、将来は時速320kmの高速鉄道を目標にしている。そのうちに物流と人流がさらに発展するので将来は明るい。
現在のモロッコ国鉄は、ジブラルタル海峡近くのタンジェを始点に首都ラバトとカサブランカを経由してマラケシュまで南下している。さらに、この幹線はラバトで東方向に分岐、アルジェリア国境近くのウジダまで伸びている。ウジダはアトラス山の北側に位置する高原都市(標高550m)、地中海に近く肥沃な農地は果樹栽培に適している。その果樹・農産物は、鉄道と道路でラバト・カサブランカ方面に出荷されている。
ここで、マラケシュからジブラルタルまでの旅を次のように計画した。
下に示す都市間の距離は、グーグル地図から直線距離で割り出した。また、列車とフェリーの所要時間はインターネットの時刻表から求めた。
マラケシュ⇒カサブランカ 2泊 約250km、列車で約3時間
カサブランカ⇒タンジェ 1泊 約350km 列車で約7時間
タンジェ⇒セウタ(スペイン領) 1泊 約60km バスの所要時間不明
セウタ⇒アルヘシラス(スペイン) 3泊 ジブラルタル海峡 約30km フェリーで約1時間
アルヘシラス⇒ジブラルタル(イギリス領) 約10km 路線バスで約30分 アルヘシラスから日帰り
上のデータを目安に、風の吹くまま行き当たりバッタリで気楽な旅を楽しみたい。
もちろんこれは想像の旅、パスポートなし、航空券やホテルの予約なし、当然だが持ちものは必要最小限の身の回り品だけである。
思えば筆者は船乗りになって以来、2年前の夏まで世界のあちこちを旅してきた。その50数年間、同僚や家族と一緒の旅はほとんどなく、いつも一人旅だった。しかし、2年前のヒューストンへの旅は珍しく娘と孫の3人連れだった。偶然が重なる不思議な旅だったが、はからずもそれが最後の海外旅行になった。後で振り返ると海外旅行のフィナーレにふさわしくいい旅、最後に泊まったホテルも良かった。
長年の一人旅で身に付いたのは、身軽な旅だった。身軽であれば、決断と行動が速くなる。2000年から十数年間は東南アジアの1~3週間の旅を毎月繰り返した。その旅は、50L(3辺合計115~120cm)の布製キャリー・ケース1個とショルダー・バッグだけ、国内旅行と変わらなかった。
旅行カバン売場でカバンの容量(L)と旅行日数の表示があるが、あれはナンセンスである。必要最小限の荷物は旅行日数の長短とは関係なく、必要なものである。それ以外は現地調達すれば良いが、実際には現地で調達しなければならないような品物は50数年間に一度もなかった。また、筆者の独断だが、「旅行の便利グッズ」はどれも余計なもの、持たないに越したことはない。
海外旅行では荷物を「目の届くところに置く」これが原則である。飛行機で目の届くところは機内である。したがって、キャリー・ケース1個を機内持ち込む。また、タクシーなどでの移動中も「目の届くところに置く」の原則に立ち、荷物を後部トランクなどに入れない。「走って飛行機の乗り継ぎができた」「タクシーのトラブルで無事だった」などは、「平時(平和な時)でない時(反語の戦時ではないが、治安が不安定なところ)」の出来事、それらはこの原則のお蔭だった。
この原則は、世界各地で経験したピンチで得た教訓であり、結局は「自分の身は自分で守る」に帰結する。
7月は「想像の旅」を中断、臨時の「途切れない糸(続編)」に続く。8月は「想像の旅」に復帰する。
砂漠の青空市場、マラケシュのフナ広場は観光客には人気がある。筆者も観光客の一人になって想像の市場の中をあちこち覗いて歩く。生活用品、調度品、民芸品、農産物、スパイなどの日用品に観光客目当ての民芸品や骨董・ガラクタもある。炎天下の広場、手絞りオレンジ・ジュースだけは飲む価値がある。
夕刻の屋台から立ち上る香ばしい匂いはイスラム系の匂い、シシカバブ―やスパイスの匂いに包まれている。昔はフランスと関係があったので、夜店にはエスカルゴ料理もある。形が小さくただのカタツムリかも知れない。食用の養殖カタツムリとの違いを味で見分けるのは難しいので手を出さない。
食欲をそそる匂いに誘われて、何の肉か分からないが焼肉などを試食する。実際に食べてみると香ばしい匂いの割には、味は大したことがない。しかし、それが夜店の味であり、子供のころへの郷愁でもある。
昼間の広場でヘビ使いや大道芸をうっかり撮影すると、チップを要求されることもある。その時は、黙って1ドル紙幣を渡せばよい。それでも要求されれば無視する。一般的にチップの相場は、その国の最少額紙幣または1ドル紙幣1枚で十分である。この点で、世界のどこの国でも通用する1ドル紙幣は便利である。今まで、1ドル紙幣のチップを拒否されたことはない。
参考だが、モロッコとヨーロッパ諸国との経済格差は大きい。たとえば隣国のスペインと1人当たりの名目GDPを比べると10倍近くの差がある。
モロッコ= 3,435US$(約40万円)
スペイン=32,559US$(約360万円)
出典:IMF-World Economic Outlook Databases(2018年4月版)
また、モロッコと日本を比較すると、面積(約45万k㎡)は日本(約38万k㎡)より広く、人口は約3、400万人で日本(約1億2600万人)の3分の1以下である。
名目GDPは低いが、モロッコの鉄道網はアフリカ諸国の中ではよく整備されている。その総延長1,900km、うち1,000kmは電化区間である。現在、時速200kmの高速鉄道も建設中、将来は時速320kmの高速鉄道を目標にしている。そのうちに物流と人流がさらに発展するので将来は明るい。
現在のモロッコ国鉄は、ジブラルタル海峡近くのタンジェを始点に首都ラバトとカサブランカを経由してマラケシュまで南下している。さらに、この幹線はラバトで東方向に分岐、アルジェリア国境近くのウジダまで伸びている。ウジダはアトラス山の北側に位置する高原都市(標高550m)、地中海に近く肥沃な農地は果樹栽培に適している。その果樹・農産物は、鉄道と道路でラバト・カサブランカ方面に出荷されている。
ここで、マラケシュからジブラルタルまでの旅を次のように計画した。
下に示す都市間の距離は、グーグル地図から直線距離で割り出した。また、列車とフェリーの所要時間はインターネットの時刻表から求めた。
マラケシュ⇒カサブランカ 2泊 約250km、列車で約3時間
カサブランカ⇒タンジェ 1泊 約350km 列車で約7時間
タンジェ⇒セウタ(スペイン領) 1泊 約60km バスの所要時間不明
セウタ⇒アルヘシラス(スペイン) 3泊 ジブラルタル海峡 約30km フェリーで約1時間
アルヘシラス⇒ジブラルタル(イギリス領) 約10km 路線バスで約30分 アルヘシラスから日帰り
上のデータを目安に、風の吹くまま行き当たりバッタリで気楽な旅を楽しみたい。
もちろんこれは想像の旅、パスポートなし、航空券やホテルの予約なし、当然だが持ちものは必要最小限の身の回り品だけである。
思えば筆者は船乗りになって以来、2年前の夏まで世界のあちこちを旅してきた。その50数年間、同僚や家族と一緒の旅はほとんどなく、いつも一人旅だった。しかし、2年前のヒューストンへの旅は珍しく娘と孫の3人連れだった。偶然が重なる不思議な旅だったが、はからずもそれが最後の海外旅行になった。後で振り返ると海外旅行のフィナーレにふさわしくいい旅、最後に泊まったホテルも良かった。
長年の一人旅で身に付いたのは、身軽な旅だった。身軽であれば、決断と行動が速くなる。2000年から十数年間は東南アジアの1~3週間の旅を毎月繰り返した。その旅は、50L(3辺合計115~120cm)の布製キャリー・ケース1個とショルダー・バッグだけ、国内旅行と変わらなかった。
旅行カバン売場でカバンの容量(L)と旅行日数の表示があるが、あれはナンセンスである。必要最小限の荷物は旅行日数の長短とは関係なく、必要なものである。それ以外は現地調達すれば良いが、実際には現地で調達しなければならないような品物は50数年間に一度もなかった。また、筆者の独断だが、「旅行の便利グッズ」はどれも余計なもの、持たないに越したことはない。
海外旅行では荷物を「目の届くところに置く」これが原則である。飛行機で目の届くところは機内である。したがって、キャリー・ケース1個を機内持ち込む。また、タクシーなどでの移動中も「目の届くところに置く」の原則に立ち、荷物を後部トランクなどに入れない。「走って飛行機の乗り継ぎができた」「タクシーのトラブルで無事だった」などは、「平時(平和な時)でない時(反語の戦時ではないが、治安が不安定なところ)」の出来事、それらはこの原則のお蔭だった。
この原則は、世界各地で経験したピンチで得た教訓であり、結局は「自分の身は自分で守る」に帰結する。
7月は「想像の旅」を中断、臨時の「途切れない糸(続編)」に続く。8月は「想像の旅」に復帰する。