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グローバル工場---機能の階層(3)

2012-01-24 | ことばとグローバルシステム
前回のグローバル工場---機能の階層(2)の続き。

                         工場機能の階層図
     出典:筆者著“生産管理の理論と実践” COMM Bangkok、2010

2)取引先情報
はじめに「情報」の意味を説明する。ここで説明する取引先情報の情報は、コンピューター上の「テーブル」や「マスターファイル」を意味する。たとえば、エクセル(Excel)のテーブル、サーバーや汎用コンピューターのマスターファイルとデータベースなども情報と呼び話を進める。

取引先の情報をグローバルに通用させる場合は、英語を標準語、日本語、西欧諸語、タイ語などを現地語とする。すでに前回の2)多言語データベースで日本語化の方法を説明したが、同じ方法で次のデータ項目を英語と日本語で登録する。
 取引先名称、敬称、住所、担当者名、敬称、役職、部門、取引銀行名、支店名、口座種別、名義
 注1:敬称と口座種別は多言語コード表で対応すれば、日本語の入力は不要
 注2:英語と日本語の名称はそれぞれ名称1、2、3に分けて入力:多言語データベース参照
 注3:英語と日本語の住所はそれぞれ住所1、2、3に分けて入力

日本語化する取引先のデータ項目は以上のとおりである。同様にタイの取引先をこのデータベースに登録する場合は、名称~名義までのデータ項目は英語とタイ語(現地語)で入力する。

次に、取引先を顧客と仕入先に分けて説明する。もし顧客であると同時に仕入先の場合は、必要な情報を顧客情報と仕入先情報に登録する(顧客コードと仕入先コードは同じ)。さらに、顧客の配送先(配送センターやエンドユーザーなど)も顧客情報に登録する。

A.顧客情報
顧客テーブルは、レベル1の右の受注管理と完成品売上に必要なテーブルである。

製品にもよるが、エンドユーザーに販売した製品のアフターケアが必要な場合がある。たとえば、大規模な機械設備、輸送用機器、ソフトウェアはアフターケアが必要になる。製品のアフターケアとして、エンドユーザー(個人または法人)をサポートするために、専用のデータベースとアプリケーションを開発する。たとえば、ソフトウェア製品の顧客サポートシステムを要約すると次のようになる。

先ず、エンドユーザーに出荷した製品とその製造番号を出荷システムから受取る。販売店に出荷した場合は、販売店がエンドユーザーに出荷した時点で、その情報を顧客サポートシステムに引渡す。

全世界のエンドユーザー(数十万件)が購入した製品と製造番号を一つのデータベースで管理する。その管理内容は、販売したソフトのバージョンアップ(Upgrade)情報をエンドユーザーに通知する。エンドユーザーが希望するとき、その改訂版を出荷システムから発送する。また、電話やE-mailでの問合せにも対応する。当然であるが、このデータベースは個人情報を記録しているのでデータの機密保護には十分な対策が必要になる。

以上、顧客サポートシステムの概要を説明した。他にもマーケット分析システムなど、さまざまなシステムが顧客情報から派生する。

B.仕入先情報
仕入先は、直接材料と間接材料に分けて管理する。直接材料の仕入先には加工外注先を含めて管理する。他方、間接材料の仕入先には工場内の工事や清掃を依頼する会社も含めるので、仕入先の数は多くなる。ここでは直接材料の仕入先に限って説明する。

直接材料の仕入先情報は、レベル1の購買管理に必要な情報である。この情報は、直接材料を広く国内外の業者に発注、納入品の受入検査、代金の支払に使用するデータである。言い換えれば、仕入先情報は、グローバルなサプライチェーンの基礎データである。この意味で、仕入先情報はグローバルデータベースに登録すべきデータである。

仕入先の納期と品質に関する実績データおよび金型や治工具の支給履歴は、それぞれ別々のデータベースで管理する。これらのデータベースは、各工場が管理すべき情報である。

3)品目情報
品目情報は、直接材料、仕掛品、完成品(製品)、補修部品(サービスパーツ)および参照品(治具や金型など)を一元的に管理するテーブルである。量産品と受注生産品の品目が混在しても問題はない。一般論であるが、品目情報で多言語化が必要なデータ項目は品目名称だけ、他のデータ項目は英数字記号で表現できる。もし、品目名称を英数字記号だけにすると、品目情報の多言語化は必要ない。ただし、画面は多言語に対応する。

品目情報の主な内容は、共通情報(品目コード、名称、計量単位など)、技術情報(図面や改訂情報など)、生産管理情報(生産リードタイムやロットサイズなど)、在庫管理情報(在庫管理の要不要など)、購買情報(手配リードタイムや発注単位など)および原価情報(標準原価と実際原価)である。

直接材料の購入単価は仕入先別材料テーブルに登録、完成品(製品)の販売価格は顧客別製品テーブルに記録する。当然であるが、購入単価や販売価格には現地通貨で表示する。

工場や製品開発部門を戦略的に世界各地に分散する場合、品目テーブルは本社で一元的に管理すべきである。この本社での一元管理には、次のような取決めが必要である。

 ◇ローカル品目を設定、たとえば品目コード頭1桁=9を設定、この品目の管理は各国の工場に任せ
  て、本社は関与しない。
  例:現地工場だけで使用する材料と製品、現地営業所などの限定販促品(キャンペーン品)など
 ◇品目データのメンテナンスは、数日以内で完了し、世界各地の事業所にリリースする。
  例:本社に申請した特別価格は2営業日以内に承認(オンラインデータベースの場合)
  注意:最新情報のリリースに要する時間は、システムのオンライン化以前に本社の事務処理の効率
     化で大きく短縮できる。

4)BOM(製造部品表/材料表)
専門語で説明したが、BOMはレベル2の生産計画(MRP)とレベル3の原価計算に必要な情報である。BOMに存在する直接材料や部品(仕掛品)や製品は、必ず品目テーブルに存在しなければならない。この意味で品目テーブルとBOMは一対の情報である。BOMは品目情報と共に本社で管理すべき情報である。

なお、BOMは親品目(コード)と子品目(コード)と子品目の必要数量を定義するテーブルである。このため、BOMには多言語化すべきデータ項目ない。

5)工程順序情報
たとえば、ある電子部品の最終検査工程が、目視検査⇒電気特性検査⇒耐熱検査だったとする。この目視、電気特性、耐熱の3つの検査を検査工程の順序、つまり工程順序という。この検査工程に、1000個の電子部品を投入して、初工程の目視で3個がNG(不合格)、電気特性で10個がNG、耐熱で2個がNG、NGは合計15個、合格品は985個となる。もちろん、15個のNG品にはDefect Code(不良品コード)を付けて原因を明らかにする。

各工程の作業内容は、作業指示書(Manufacturing Instruction)に部品のカラー写真を付けて、各部の作業内容とチェックポイントを現地語で説明する。

工程順序テーブルはレベル2の工程管理に必要な情報である。この工程順序テーブルから直接労務費と金型・治工具費を積算し、品目テーブルの原価データに記録する。このため、レベル3の原価計算には品目テーブルとBOMが必要だが、工程順序テーブルは不要である。

稼働中の機械設備が故障した、あるいは生産計画の結果で1台の機械の生産能力を超えるといったトラブルが発生する。このとき、即座に代替の機械や作業の外注で対処することが大切である。大規模なトラブルでは、代替工程を海外のグループ工場に求めることもある。

予期せぬトラブルに直面しても、常に工場の安定稼動をはかる。このために、工程負荷の平準化と生産のスケジューリングはどこの工場にとっても大きな関心事である。余談になるが、2000年初頭からソフト業界がこぞって売り出した「スケジューリングシステム」が日本で話題になった。

当時、画期的なシステムとの触れ込みで、スケジューリングシステムは高価で緻密なパッケージソフトだった。しかし、実際には高度過ぎて使い勝手に問題とのこと、筆者は導入例を聞くが成功事例を耳にしたことがなかった。なぜ、成功例が話題にならないのかと疑問をもった。

余談になるが、2003年秋に筆者は、アメリカのある大学で「スケジューリング」の講座を見つけた。早速、E-mailで聴講(Auditing)を申込んだ。3日後に「More than welcome(大いに歓迎)」との返信を得て、早速、大学直営のホテルを手配した(大学のホテル・レストラン管理学部直営のキャンパス内のヒルトン)。

開講直前に残念ならが「実績に疑問があるトピック(主題)のため開講は中止」になった。しかし、折角のチャンス、「スケジューリング」を「Computer Aided Manufacturing」に変えて、他の講座と合わせて合計5講座、2ヶ月間、フルタイム(Full-time)の聴講を無料で終えて帰国した。

筆者の知る範囲だが、アメリカの大学では、机に空きがありかつ講座の先生の許可があれば四年制/大学院を問わず聴講可能、学歴不問、65歳以上は無料、ただし大学により州内居住者の65歳以上に限り無料とか条件は異なる。私大は不明。市民と大学の距離は短く、この制度もアメリカらしくおもしろい。「門をたたけ、そうすれば、あけてもらえるであろう(Knock, and the door will be opened)」(7-7、マタイによる福音書、新約聖書、Matthew, Oxford/Cambridge Press, 1970)

以上、余談を交えてレベル0の生産基礎情報をグローバル化の観点で説明した。

この生産基礎情報はコンピューターのハードとソフトに依存している。この意味でレベル0を支えるシステムに求められる要件は次のとおりである。

 ◇システム障害の回復手順とバックアップ体制
  例:本社IT部門が中心になって現場を指導、時には現場への人的支援を実施(アメリカ)
 ◇自然災害への対策
  例:コンピューターのオペレーションを山奥の岩盤上の専門会社に委託(アメリカ)

次回は、レベル1の購買、在庫、受注管理の説明に続く。


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グローバル工場---機能の階層(2):コード表がデータベースの土台

2012-01-09 | ことばとグローバルシステム

前回のグローバル工場---機能の階層(1)の続き。

2.機能階層図の説明
下の図は、工場機能の階層図である。この図は、単独の工場や国内外で稼動している工場群にも当てはまる。図に示すレベル0はレベル1の必要条件、レベル1はレベル2、レベル2はレベル3の必要条件になる。このピラミッド型の階層図で、階層の上下関係や中身に誤りや欠陥があるとき、工場の運営にトラブルが起きる。

レベル0や1の管理が不十分にもかかわらず、いきなりレベル3の原価・利益管理を目指して高価なパッケージソフトを購入し、導入に失敗した。このようなトラブルはタイの日系工場でよく見かけるケースである。パッケージソフトは高級だが、自社の運用体制がそのソフトウェアーに付いて行けない、いわば砂上の楼閣が失敗の原因である。ソフトウェアーを買う側と売る側双方の判断ミス、結果として双方ともに大きなダメージを受ける。

このようなトラブルを避けるため、国内外の長年にわたる経験を下に示すピラミッド型の図形に要約した。ここでは、日本の製造業の健全なグローバル化を願って、失敗例を示しながら各レベルの内容を説明する。

                         工場機能の階層図
     出典:筆者著“生産管理の理論と実践”COMM Bangkok、2010

(1)レベル0:生産基礎情報
レベル0の情報は工場管理に必要な基本的な情報である。レベル0は、工場の土台に当たる部分であり、このレベルなしにレベル1の機能は成り立たない。

1)コード表
先ず、上の図の右端のコード表、言い換えれば“略語集”から説明する。

コンピューターに関係なく、昔からコード表は、製造業、商社、金融業、学校、官公庁など、あらゆる組織にとって最も重要なデータだった。コード表があってはじめて、データベースを構築することができる。

製造業に必要なコード表は、国コード、通貨コード、材質コードなど、その種類は100以上になる。それらは、勘定科目コード、部門コード、社員コード、海外工場との共通コード(e.g.品質等)など、製品開発、営業、製造、品質、購買、物流部門に亘るコード表である。(多くのコードは他の社内外データベースと共通するので追加・変更・削除(=メンテナンス)には要注意)

言うまでもなく、コード表は業務システムの土台になる重要な情報である。昔は、火事になればまずコード表と売掛帳を持ち出せと云われていた。

コンピューターの時代ではコード表の設計とメンテナンスにおいては、次の点に留意すべきである。
①自社だけでなく、取引先や業界とコードを共有するコード設計⇒ISOやJISコードの使用
②特殊文字(カタカナや特殊記号)を回避したコード設計⇒コード表の一元管理で海外事業所と共有
③無意コードと有意コードの違いを考慮したコード設計⇒コードの長寿化/オーバーフローの回避
 【例:無意コード:Meaningless Code(e.g.数字連番)、有意コード:Meaningful Code(e.g.JPN日本)、
  混合コード:Mixed Code(e.g.無意+有意コード) 】
④コードとコード表の計画的な追加・変更・削除⇒新旧コードの並列運用(約2年の運用経験あり)

コード表を大きく分けると次のように分類できる。

A.社外のコードを活用するコード表
この種のコードは、ISOやJISの国コードや通貨コード、計量単位コードや産業分類コードである。世界で広く使われているJPNやUSA、m(メートル)、kg(キログラム)などは、そのまま利用できる。これらのコードは略語や記号であり、国コードの国名は英語の公式名である。

ISOやJISの他に、EDI(Standard for Electronic Data Interchange)のコードも国際的なコードである。また、NAICS(North American Industry Classification System)の業種分類コードは、顧客や仕入先の業種分類に利用できる。

ここで忘れてはいけないことは、これらのコード表はグループ企業の共通コード表という点である。日本の視点だけでなく、アメリカやタイ工場の顧客や仕入先の国コードや通貨コードも登録しなければならない。このような点でも、企業のグローバル化が進むとき、共通コードのメンテナンス(追加、変更、削除)に漏れがないよう本社と関係企業の間で双方の守備範囲を取決める必要である。

たとえば、製品コード(品番)も自社と取引先の共通コードである。製品カタログは自社と顧客(不特定多数のエンド・ユーザー*を含む)との共通言語(コード)である。筆者の経験だが、製品コードの変更(有意コード⇒無意コード)は長期に亘る作業だった:製品と補修部品(一部は中間加工部品)併せて十数万点以上、補修部品の供給打切りに規程無し(製品寿命が数十年のケースも稀でない)という状況だった。世界各国の取引先に事前予告(数年前)⇒新コードへの移行開始⇒新旧コードの運用(取引先&顧客との受注・出荷:2年間継続)⇒旧コード体系廃止でコード体系刷新を完了した。このコード体系変更には国内営業と海外営業の協力を得た。
【*参考:エンド・ユーザーは極寒地から南海の島嶼(トウショ)に分布、製品の故障・修理不能は、時には生命を脅かす恐れも想定した。参考:内外取引先へのコード体系変更予告から新旧コード並列運用打切りまでの10年、グローバル工場---機能の階層(5):日本初のMRP(2012-02-25)

B.社内で決めるコード表
大多数のコード表はこの種類のコード表である。製品分類コード、材質コード、顧客分類コード、顧客注文タイプコードなどは、グループ企業の技術規定、品質基準、会計基準、人事規定など、社内のルールとして定義するコード表である。

新しい素材、製品、事業の展開にしたがって、新しいコードが発生するのでコード表のメンテナンスも忘れてはいけない。

C.外国の法制度を反映すべきコード表
社内で決めるコード表の中には、関係国の法制度や商習慣を反映すべきコード表がある。典型的な例として、グローバルな勘定科目一覧表(Chart of Account)を説明する。

海外の子会社を含むグループ企業の連結決算をできるだけ自動化したいとき、グローバル勘定科目コードを導入する。全社共通のグローバル勘定科目コードを導入すれば、システムの工夫によって関係会社の財務状況を任意の時点で照会することができる。これにより、グローバルな経営視界の改善(Improvement of Management Visibility)が可能になる。平たく言えば、グループ企業の財務状況が丸見え、いい方は悪いが相手のポケットに手を入れることができる。

実例では、経営視界の改善を目的とした勘定科目のグローバル化で、海外子会社の月末締め処理と本社への決算報告作業が激減した。人員削減が目的ではなかったが、結果的には25%も人員が減少した。このケースでは、会計の人員を無理に削減したというより、やることがなくなったといった感じだった。アメリカ本社への報告は、月末恒例の徹夜に近い作業だったが、その作業が殆どなくなった。ねじり鉢巻で頑張ったあの作業は一体何だったのか?との思いもあった。一方、タイの日系企業では、月末のねじり鉢巻は今も続いている。

グローバル勘定科目の導入では、たとえば進出先がアメリカやタイの場合、勘定科目もその国の法制度に対応しなければならない。たとえば、アメリカの場合では「給与-陪審員休暇:Salary - Jury Duty」や「給与-軍事徴収休暇:Salary - Military Leave」などと日本では使用しない経費の勘定科目コードが必要になる。

経費関係ではさまざまな残業手当、日本特有の住宅や通勤手当など、資産勘定ではWrite-off/Write-up(ライトオフ/ライトアップ:資産の消却/資産の評価増・・・いずれも日本では認められなかった)など、さまざまなケースへの対応が必要になる。実際には、科目コードの頭1桁で国別のブロッキング、または、勘定科目毎に「日本では不使用」とのコメントで対処した。

また、個々の勘定科目コードの中身については各国固有の法制度や商習慣があるので、その国の専門家のアドバイスが必要になる。たとえば、タイでは、税法上の固定資産は「1年を超えて使用する資産はすべて固定資産とする」となっており、減価償却も日割り計算である。厳密にいえば、事務用の鋏やカッターナイフも減価償却の対象になる。これでは、固定資産の管理が複雑になり混乱する。このような問題については、現地の公認会計士のアドバイスと他社の動きを参考に対処すべきである。同時に、今後の勘定科目の設計では、国際会計基準(International Accounting Standards)を視野に入れて検討すべきである。

さらに、グローバル勘定科目のタイトル(名称)は、多言語化すべきである。日本本社の連結財務諸表は日本語だけでも通用するが、アメリカやタイに進出した工場が現地法人として官公庁に提出する書類は現地公用語でなければならない。

 Account Number  Account Title   勘定科目名  Account Usage    
 4010015         Expenses: Water  経費:水道    Monthly water bill, Bottled water

上のサンプルでは、Account Number=グループ企業共通勘定科目コード(番号)、Account Tile=名称(英語)、勘定科目名=日本語名(現地公用語)、Account Usage=使用方法(英語)を示している。進出先国の官庁への決算書類は、英語/現地公用語の対応表で対処できる。

上のサンプルのAccount Usageは、グローバル企業の場合、英語だけで十分と考える。

D.英語だけのコード表
実用上、コード名称の多言語化が困難なコード、必然的に英語だけのコード表がある。

どこの工場でも、工程ごとに仕上り品の品質を判定する。不良品の場合は、不良品コードを付けて生産管理部門に報告する。ここでは、その不良品コードをDefect Code(デフェクト コード)として説明する。

加工した部品や完成品の不具合、たとえば傷(Scratch)やひび割れ(Crack)は、職場別に定義されたコードである。機械加工、表面処理、塗装、最終検査などの工程別の不良を示すDefect Codeは、多種多様、コード表に登録する不良品コードの数は多い。また、それらのコードは、工程を担当する誰もが理解すべきコードである。

タイの場合は、外注工程はタイだけでなく近隣諸国に広がる。このため、コードは短い英数字、名称はどこの国でも通じる簡単な英語になる。一般に、Defect Codeの多言語化は不要、それは英語だけのコード表である。
(もしDefect Codeを多言語化すれば、タイ工場の場合はタイ語、マレーシア語、カンボジア語、ベトナム語などが必要になる。たとえば、Scratchという意味の一意性を保つためには、英語を標準語として押し通しても問題はない、またその論拠にも一理あると思う・・・この種の英語コードは、一意性を保つ点でローマ時代のラテン書き言葉と類似している。)

E.コード表の管理
顧客の注文タイプコードや支払条件コードやDefect Codeなどは、その業務の新人が最初に覚えるべきコードである。この意味で、日本企業の本社はコード表を世界共通語の英語と日本語で定義して、関係者に周知徹底する仕組み作りが大切である。その仕組みには、コードの追加・変更・削除の申請(現場から本社への流れ)と承認後の周知徹底(本社から関係部門への流れ)がある。

なお、勘定科目の英語/現地語対応表の管理は、その国に任せるのが自然の流れになっている。

ここまで、コード表の要点を説明した。レベル0の取引先、品目、BOM、工程順序の説明は、次回に続く。


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