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日本の将来

日本の将来---5.展望(14):コンパクト・シティーの広場(1)

2015-02-25 | 日本の将来
5.展望(13)から続く。

(2)在来線のリエンジニアリング
在来線のリエンジニアリングといえば、最も身近な駅前の再開発である。駅前のバスやタクシー乗り場から商店街に通じる広場、そこには横断歩道、信号待ち、バスや車の騒音、人と車が混在する見慣れた駅前風景がある。その重要な駅前は、人と車の流れが交差する非効率的なスペースになっている。

人口が数十万から数百万の大都市のコンパクト化では議論が発散するので、ここでは比較的小さな都市、2080年頃の人口が十数万人規模の都市を想定する。その理由は、65歳以上の人口減少が80年頃にピークを迎え、その後は0~14歳、15~64歳、65歳以上の人口比がそれぞれ9%、50%、41%に落ち着くからである。【参照:年齢別人口と変化、日本の将来---5.展望(4)2014-07-25】

2080年頃の総人口は現在の約半分、6,500万人と推定される。さらに、2100年頃は人口5,000万人台の時代を迎える。80年代には、土地と領土に対する考え方と憲法を始めとする法体系も激変する。当然ながら政治、経済、教育、福祉における空論が通用しない時代、国の存続に関わる局面に真剣で直面する。もちろん、「消滅済都市」と「消滅予定都市」も明らかになる。その荒波に揉まれた鉄道網は統廃合を終えて、次の時代に向かう時期である。

そのような時代を思うとき、駅前風景も今のままの筈がない。

以下に描く駅前広場は頭の中のイメージに過ぎないが、技術的な裏付けは在来技術で建設可能、運用性では高齢者に配慮するので大きな問題はない。ただし、経済性については、具体的な土地の手当てと投資コストは4~60年先の激変期の話になるので、現在は未検討である。言い訳になるが、人口減による空き地が増大する時代、直径4~500m程度の駅前広場を100ほど建設してもささやかな面積である。

1)駅前広場の概念図
高齢化を考えるとき、足腰だけでなく、視力・聴力・判断力も衰える。高齢運転者の免許更新で見るとおり、身体能力はおおむね70%程度に低下する。見づらい、聞きづらい、反応が遅い、ただそれだけでなく、それらに起因する人間の誤動作、たとえば事故、を想定すると十分な安全係数を見越すべきである。したがって、都市機能の集約、バリアー・フリーと行動範囲のコンパクト化は自然の流れである。

広からず狭からず、しかも安全にすべての用事をこなせる場所、それがコンパクト・シティーの中心広場の姿と考える。なぜかエトナを思い出す。

下に示す図は、コンパクト・シティーの駅前広場のイメージである。日本のどこにでもある駅前広場を発展させた広場(Plaza:プラザ)である。

            

上の図では、駅を単純に描いているが、実際には駅から支線が伸びている場合や私鉄が交差している場合もある。もし、現在の駅前が商店などの密集地であれば、駅を数百メートル移動する方法もある。これから先、4~60年の先を考えるとき、いろいろな選択肢が浮かんでくる。

また、図では駅前広場は円形であるが、その形は多角形、正方形、長方形であってもよい。地形にもよるが、広場の大きさは直径4~500mと考える。端から端まで普通に歩いて5~7分(80m/min)、効率の低下(70%=56m/min)と安全係数(1.5)を考慮しても11~14分の距離である。

大切なことは、この広場は歩行者専用、車の進入は禁止という点である。その広場は石畳、中心に噴水と木陰を配置すれば申し分がない。もちろん、広場内では徒歩、自転車あるいは車椅子や自走電動車などを利用できる。

広場の人と物資の出入り口は駅、バス・タクシー乗り場、外周道路、広場地下の駐車場になる。市街地のバス・路面電車は外周道路に沿って駅に乗り入れる。もし、津波の可能性があれば広場と外周道路をかさ上げすることも考える。また、雪対策のアーケード化とエアコンも可能である。

次回は、A~Eの内容に続く。

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日本の将来---5.展望(13):在来線ネットワーク

2015-02-10 | 日本の将来
5.展望(12)から続く。

(1)在来線ネットワークの価値
1872年の新橋-横浜は単線(29km)の鉄道、2年後の74年には大阪-神戸が開通、その後今日までわずか140年のうちに官営・民営の鉄道が日本全土に広がった。鉄道の線路は、輸送量に応じて単線、複線、複々線やそれらの組み合わせがあるが、運賃計算に用いる営業距離もある。

現在、日本の鉄道の営業距離は、駒鉄太郎の鉄道データベース(2014/11/29)によれば、次のとおりである。

◇鉄道・軌道全営業キロ=27,755.1km、うち旅客列車が走る距離=27,110.3km
 その内訳は、JR在来線=約17,500km、私鉄など=約7,600km、新幹線=約2,400km

また、日本の駅の数は、日本地図センター「全国の駅の数(H26/6)」によると次のとおりである。

◇全国の駅の数(沿線別駅数)=10,475駅

いうまでもなく、日本は火山列島で約70%が山岳と森林である。この国の大きさは、稚内空港-羽田空港-鹿児島空港間の距離は2,061km、北から南に延びる細長い山国に約2万7千キロの鉄道が敷かれている。かなり鉄道が普及しているといえる。

参考だが、北海道択捉島カモイワッカ岬から沖縄県与那国島までの距離を、筆者が大ざっぱに測ると約3,400kmである。また、日本のEEZ(Exclusive Economic Zone:経済的排他水域)+領海の面積は、4,479,358km2、米、豪、尼(インドネシア)、新(ニュージーランド)、加に次ぐ世界6位の海洋国である(社会実情デーダ録)。山国で、かつ、大きな海洋国家でもあることを忘れてはいけない。

広大な海洋に囲まれたこの山国に、791都市がひしめいている。その都市に住む人は1億1,692万人(H26)であり、この都市人口は全人口1億2,729万人の91.8%に当たる。田畑が主役の市も多い。

1960年代にはよく耳にした6大都市(東京、大阪、名古屋、横浜、京都、神戸)も今は死語になった。下の表は、人口100万人以上の都市と100万人以下の県の一覧表である。東京と横浜に全人口の約1割が集中している。しかし、一方では人口100万人に満たない県が9県、うち香川、徳島、高知は四国である。国土に占める可住地は27.3%、人口密度の地域差は大きい。もし、適切な政策がなければ打つ手を失って日本がボロボロの虫食い国家に成り下がる恐れもある。

  
  出典:総務省H26年都市別人口とH25年県別人口

幸い、日本には立派な鉄道網がある。在来線と新幹線と私鉄の連携、輸送需要への柔軟な対応、高品質の車両と軌道、ネットワーク全体の正確な列車運行、これらの点で筆者が経験したどこの国の鉄道と比べても遜色がない。

このブログで紹介したが、筆者は昨年(2014)8月に京都駅から浜松駅までの東海道在来線を快速電車で走った。あの時、列車の走行音や揺れからも東海道線は健全だと感じた。また、時刻表の運行精度はいうまでもなくノー・プロブレムだった。それはチャラチャラ、ピカピカの新技術ではなく、長い実績が信頼性を保証する有形・無形の資産だと自分自身で確かめた。ちなみに、東京駅から神戸駅に至る東海道線は1都2府6県65都市を走り抜ける。65都市の人口は3,343万人、日本の人口の約26%である。平安京を起点としたこの東海道、今ではJR・私鉄の在来線、新幹線、高速道路が並走し、日本の工業ベルトに発展した。

人口の増加とともに広がり続けた日本の交通ネットワークと人々の生活圏、しかし、人口減少期を迎えた今、この生活圏を計画的に縮小すべき時がきた。この縮小は撤収でなく、次の発展への備えである。在来線、新幹線、高速道路のうち、特に、最も基本的な在来線のリエンジニアリングを、次回に検討する。【リエンジニアリング:Re-engineering(改革、再開発、リストラなどの意味)例:Business Process Re-engineering=業務改革または業務再構築】

続く。

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