船乗りの航跡

地球の姿と思い出
ことばとコンピュータ
もの造りの歴史と生産管理
日本の将来

幻のコンパクト・シティー(1)---テクノロジーとデジタル社会

2021-02-25 | 地球の姿と思い出
「コンパクト・シティーの姿(13)から続く。

はじめに、今回から当ブログのタイトルを「コンパクト・シティーの姿」から「幻のコンパクト・シティー」に変更します。その理由は、これから先の話には筆者の遠い昔と現在の記憶や未来への空想が入り混じるからです。つまり信憑性(シンピョウセイ)に問題ありでタイトル変更、この点をあらかじめご了承ください。

---◇◇◇---

1.テクノロジーとデジタル社会
(1)テクノロジーの歴史
初期の人類(猿人)が石器を使い始めたのは前期旧石器時代(約200万年前-約10万年前)とされている。また、確かな証拠はないが、この時代に火の利用も始まったと見られている。

前期旧石器時代は中期・後期旧石器時代、新石器時代に続き、さらに世界各地にいろいろな文明が発祥した。一例はメソポタミア地方でBC3100年頃に栄えたシュメール人の都市国家だった。メソポタミアを含む世界各地の文明は言うまでもなくメソポタミア・エジプト・インダス・黄河文明の4大文明である。

メソポタミア・エジプト文明に少し遅れてBC800年頃からギリシア各地に都市国家が生まれ、古代ギリシア・ローマ文明へと発展した。

古代ギリシアのアリストテレス(BC384-322)*やアルキメデス(BC287?-212)**たちに端を発した機械学は、18世紀中期の産業革命で急速に発展、画期的な発明が続出した。
【*参考:アリストテレスの機械学(Mechanics)は「梃子[テコ](2、3章)」や「2つの滑車(18章)」などの原理を説明している。しかし、機械学はアリストテレスの著作でなく、アリストテレスが創設したペリパトス派の後輩たちの著作との説もある。詳しくは岩波書店「アリストテレス全集12小論考集、「機械学」和泉ちえ訳(pp.407-414)、岩波書店、2015年版参照、なお、全集12機械学の解説で和泉ちえ先生はアリストテレス説を支持している(p.408)。】
【**参考:ペリパトス派の流れを汲む数学、物理、天文学者、エンジニア&発明家。「アルキメデスの原理(浮体の浮力)」やスクリュー・ポンプ(揚水機)は有名だが、彼も梃子の原理を説明している。】

産業革命時代の主な発明は、蒸気機関(J.ワット:1764年)、蒸気機関車(G.スチーブンソン:1825年)、発電機(M.ファラデー:1831年)だった。これらのテクノロジーはエネルギー源と移動技術において社会のインフラを劇的に改革、産業の近代化に大きく貢献した。さらに、1900年代半ばにはデジタル・コンピューター(ペンシルベニア大学ENIAC:1946年)が現われ、人類は宇宙に進出、サターンV(NASAのアポロ計画:1969年)で月面着陸に成功した。

200万年以上も昔の石器を起点に、人類は数学を含む自然界の原理・原則を実用化するテクノロジー(科学技術)を手にした。そのテクノロジーにコンピューターが参戦、人類を月世界にまで運んだ。この先が楽しみになる。

(2)近代製造業の足取り
ここで近代製造業の歴史に目を移すと、産業革命による生産効率の向上は画期的だった。きっかけはA.スミス(1723-90年)だった。彼は国富論(1776年)で分業(Division of Labour:ピン・メーカーの工程分割⇒手作業の専業化)が生産性を大きく改善したと報告した。

手作業の専業化⇒習熟⇒作業効率向上&品質安定・向上⇒機械化・自動化⇒多量生産:この流れを実現した。

この「多量生産」はやがて「少品種多量生産」と「多品種少量生産」、さらに「受注生産(オーダーメイド(和製英語)/Custom-made)」という3つの生産方式に発展した。「受注生産」の製品は豪華なヨット、水力発電機、建造物など、なかには重厚長大な製品もある。

ここで気付くことだが、ソクラテスの「都市の専門化」以来人類が得意としてきた「勘と経験」にコンピューターが加わり、テクノロジーの利用範囲が急激に広がった。その広がりは、自然科学の領域を越えて社会科学や芸術にまで広がった。今や「勘と経験」だけでなく「感性と感覚」の領域でもコンピューターは大きな役割を果たしている。それ故に、STEM教育がますます必要になる。

話は変わるが、あちこちで見かける工場では、生産管理に必要な数値計算と作業をコンピューター・システムが担っている(例:MRP)。結果として近代工業では省力化率がかなり向上した。また、駅や空港でシステムがトラブルを起こすと、その影響は広域に及ぶ。作業量の大きさから手作業での復旧はほぼ不可能である。進んでいる、遅れているは別として、現代社会ではデジタル化はすでに必須事項になっている。

(3)デジタル化と社会の変化
コンピューターのハード技術は1950年代から猛烈なスピードで発展した。その猛烈さは「軽薄短小」どころか、わずか40~50年で真空管やトランジスターの電子回路を半導体でIC(集積回路)に微細化した。その変化をみれば誰でも驚くが、日常生活ではデジタル化に起因する変化に気付くのは当事者だけ、ほとんどの変化は見落とされたり、忘れ去られたりすることが多い。

筆者が知る限りだが、デジタル化の進展で消えた物や職業は次のようなものである。しかも、まだ消滅していないが、その候補は多い。

---◇◇◇---

これはは本当の話だったが、ある大きな製造会社に数十人の原価計算担当のソロバン部隊が存在していた。コンピューターを知る筆者には信じられない話だった。先日、国会中継の答弁で日々発生するコロナ患者の集計は手作業と知った。まさか電卓部隊では?と疑った。

以下はやや専門的になるが、今では消滅したもの、変化したものは次のようなものである:
80欄カード(プログラム作成)、カード・パンチ機&パンチャー(データ作成)、リレー式交換機&交換手、タイプライター&タイピスト、製図板(11㎡/台)⇒PC画面で代替、NCテープ⇒CAD/CAMでNC自動運転、財務会計:本社&海外現地法人決算のデジタル化⇒仕事が激減、オフィス・ワークのデジタル化&e-mail⇒国内外関係者が全員参加・・・e-mailのTo/CCから外れると本人は蚊帳の外(肩叩き?残酷)、コピー機能付きホワイトボード⇒国内外で好評、プレゼンテーション&ハンドアウトのデジタル化と海外事務所自宅参加のテレコンファレンス⇒非常に効率的(安価、気軽、迅速、海外出張の減少)、、、、、

---◇◇◇---

デジタル化に遅れた日本だが、政府もようやく重い腰を上げた。しかし、日本社会とデジタル社会との相性は未知数、いろいろな疑問が湧いてくる。

テレワークと日本型の「役員・部長・課長・主任・従業員」というピラミッド型組織は両立するだろうか?もしピラミッドが崩壊し始めるとなにが起こるか?などなど、、、

続く。


この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« コンパクト・シティーの姿(1... | トップ | 幻のコンパクト・シティー(2... »
最新の画像もっと見る

地球の姿と思い出」カテゴリの最新記事