船乗りの航跡

地球の姿と思い出
ことばとコンピュータ
もの造りの歴史と生産管理
日本の将来

コンパクト・シティーの姿(8)---デジタル化とマイナンバー

2020-07-25 | 地球の姿と思い出
「コンパクト・シティーの姿(7)---来るべき変動とデジタル化の遅れ」から続く。

2)マイナンバーの遅れ
マイナンバーの目的は、①国民の利便性の向上、②行政の効率化、③公平・公正な社会の実現の3つである。具体的には社会保障、税、災害対策の分野に適用する。(以上、総務省HPから抜粋) 筆者もこの3つを願う。

マイナンバーの形式は数字NNNN NNNN NNNNの12桁、国民一人ひとりを識別する番号である。

住民基本台帳に登録された人にマイナンバーが付与されたのは2015年10月、写真付きのマイナンバー・カードの交付は2016年1月から始まった。

しかし、デジタル化が遅れた日本社会では、マイナンバーへの関心も薄く、その出遅れに対する国民の危機感はいまひとつである。たとえば、写真付きのマイナンバー・カードの全国交付率は次のとおりである。
 2020年3月1日 15.5%(総務省統計)
 2020年7月1日 17.5%(総務省統計)
せっかくのマイナンバー・カードの交付率は非常に低調である。

しかし、金銭が絡むと国民もにわかに活気づく。特別給付金10万円のオンライン申請にマイナンバー・カードが必要と知った人々は、カードの交付を求めて役所の窓口に殺到した。窓口がパンクするほど混乱したが、交付率は17.5%に向上した。目先の10万円は大切だが、もっと先にある3つの目的にも期待したい。

しかし、思わぬ10万円の給付金も、自治体ごとに開始したオンライン申請にシステム・エラーが多発、43自治体がオンライン申請を停止した(日経2020/6/2)。それらのトラブルは、システムの初期不良、ユーザーの入力ミス、マイナンバーと住民基本台帳のインターフェース・トラブル(実際には法的な制約)などだった。

筆者の目には、ユーザー・テストと本番をごっちゃにしたようなシステム・スタートアップ、運用性の検証が甘かった。結果として、本番中のシステム修正やシステム中止という②行政の効率化と正反対の状態に陥った。長年システムに携わってきた筆者からすれば、それでもシステムのプロか?と叱責したくなる。

振り返ればいろいろなトラブルがあったが、忘れてはいけないことが一つある。それは、③公平・公正な社会の実現の1つにマイナンバーと銀行口座の紐付けがあった。しかし、現在それは手付かずである。

本来、最優先事項の口座開設にマイナンバー必須は第一に達成すべきだった。しかし、6400億円*も使ったが、最優先事項は達成できなかった。おまけに、オンライン申請の混乱だった。踏んだり蹴ったりはこのことである。【*参考:安倍首相、口座ひも付け「しっかり検討」 マイナンバー、普及へ課題も、JIJI COM,2020/6/11】

将来の日本を考えるとき、マイナンバーと金融口座の紐付けは経済犯と遺産相続トラブルの抑止効果があり、死蔵金融資産の解明にも対応できる。また、不動産との紐付けも将来の国土のスポンジ化対策にも役立つ。これらの問題の解明にはバックアップ・データ、特にコンピューターの情報が必要である。

遠い昔の話であるが、1981年に日本の製造会社が8年前の生産記録(磁気テープ)を米国法廷に提出、高額の損害賠償訴訟に勝訴した。当時は珍しい判例だったが、コンピューターの磁気テープのデータが証拠として認められた。・・・2400ftの磁気テープは、調査に必要な膨大な時間と人手を削減した。(コンピューターのデータ・バックアップでは、データの同時更新を避ける排他制御機能が秒以下の時間単位でデータ更新を記録。例:日時=YYMMDDHHMMSS.SS…)

参考だが、筆者が1967年にテキサスで取得したSocial Security Number(SSN:社会保障番号)のカードには、NN-NNN-NNNN(9桁)、氏名、自署だけで現住所の表示はない。おもしろいのは、カードの裏面に"Tell your family to notify the nearest Social Security Office in the event of your death."(本人死亡時に家族は最寄りの事務所に通知下さい)とある。
 現在のSSNカードは昔のフォーマットとほぼ同じ、生体認証はないが身分証明にもなり、米軍と沿岸警備隊は隊員の認識番号としても利用している。なお、子供は出生証明書登録と同時にSSNを取得できる。

次回の現状分析に続く。


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする