想像の旅---カサブランカ(4)から続く。
アラビア文字の数字に誘発されて、テヘランやPA001、海外でのシステム支援、さらには日米の教育の違いに思い出が広がった。それは、一つの記憶が別の記憶を次つぎと誘発しながら頭の中を駆け巡る、記憶の爆発だった。(爆発=explosion:急激な展開、爆発的に広がること)
記憶の嵐が収まると、意識はシステム化に取り掛かっているハムディーの店に戻ってきた。今回のシステム化は、店内業務のシステム化であるが、レジのセルフサービスにも備える。
店舗では、経営者のハムディーを頭に3人の女性スタッフ、3人の男性のジャニター、合計7人が働いている。人の動きから判断すると、店の切り盛りは女性たちらしい。というのも男性ジャニター(janitor)は雑用係りである。彼らは走り使い、掃除、力仕事、お茶出しなどを担当、暇なときは店内に待機している。女性スタッフが頼めば、いつでも手助けをする・・・なんだか「アラジンと魔法のランプ」を思い出す。
モロッコといえば、かつては性転換や整形で有名になったが、店の女性スタッフたちは整形美人でなく、生まれつきのモロッコ美人である。一人の女性は、目と目の間の鼻が3cmほどの高さ、エジプトの壁画でよく見る美人を思い出す。STEM教育が進んでいるので、彼女たちのコンピューター経験はすでに高校時代に終了、むしろ店のシステム化を待ち望んでいる。ハムディーの奥さんは深窓の人、店には口出ししない。
まず、システム導入の準備として、商品テーブルを作成する。いきなり5,000件の商品テーブルを作成するのではなく、売れ筋商品約100件を選びテスト・データとする。昔からの商品台帳を参考に、商品コード、名称、価格などデータ・シートに書き出し、商品テーブルを作成する。商品テーブルはデータベースの中核を占める情報であり、在庫や仕入れ/販売テーブルと商品コードでつながっている。
長年使い古した商品台帳は、ところどころが擦り切れて、書き込みも多い。担当者でなければどれが新しい情報なのかは分からない。特に厄介なことは、商品台帳に載っていない商品は何件あるかも分からない。これらは、システム化の後に時間を掛けて整理/隔離/処分する。
今回のシステム化をチャンスとして、既存のデータ項目、たとえば最も身近な商品名称なども見直し、最新の状態に更新する。また、商品名称の多言語化として、公用語のアラビア語とベルベル語は必須、第二言語のフランス語と世界共通語の英語、計4ケ国語を名称として使用する。
また、商品名の標準化も同時に進める。たとえば、化学物質の「ビニール」と「ビニル」、どちらも同じものであるが、検索すると別物になる。また、商品の色なども難しい。メーカーの呼称は専門的すぎて、一般人には理解できない。たとえば、赤系とか青系とか分類することも必要である。さらに、ヨーロッパに近いアフリカでは計量単位もフート・ポンド法とメートル法の併記も必要である・・・このような基本的な情報整備を怠ると、無人店舗では顧客の質問が多発、質問に対応するために余計な人手が必要になる。
さらに、将来の無人レジへの備えとして、商品の荷姿、販売単位(バラ売り、ダース売り、メーター売りetc.)、仕入単位、容積、重量の項目も必要になる。荷姿や容積・重量などのパッケージ情報は、仕入先やメーカーと共通情報として先方に確認する。
日本のスーパーでも、すでにセルフサービス・レジが導入されている。そこでは顧客がレジを自分で操作する。しかし、導入期のためか5~6台のセルフサービス・レジに対してスーパー側の担当者が立会い、顧客を補助している。筆者もトライしたが、“待ち”を厭わなければ店のレジ係りに任せる方が楽である。思うに、顧客が商品をカートに入れて、レジを自分で操作する。これは、スーパーの自販機化であり、将来のスーパーは、バック・ヤードが巨大な無人倉庫・宅配センターになる前兆かも知れない。
今すぐの実現は別として、将来の小売店の姿をハムディーと3人の女性スタッフと話し合った。ハムディーの店は日用雑貨の店、現状で最も類似している業態は、コンビニや小規模スーパーである。この認識のもと、皆の考えを聞いてみた。
紀元前7世紀ころにはフェニキア、前5世紀にはローマとの交易があったモロッコ、旧市街地そのものが歴史と文化である。そこに住む人びとの日用品を提供する。日用品に加えて実用的な民芸品も扱いたいとの希望もある。伝統的な食器や民芸品で歴史と文化を絶やさないとの思いである。また、コーヒーの自販機とイートイン(eat-in)・コーナーも設けて近隣との交流の場としたい。メディナ(旧市街地)目当ての観光客は歓迎するが、生活を共にする地元民優先、スマホ/PC利用は時間制の立ち席だけである。
旧市街地は一つの大きな商店街、多様な店舗が存在する。どこの店がなにを扱っているか、自店にないものはどの店で手に入るかなど、旧市街地だけでなくカサブランカの情報は店の顧客にとっては重要である。単独の店でなく旧市街地の一員、他店との競争でなく共生を指向する。店主たちを始め、店員、顧客たちが互いに知り合い、いわば地域密着型の店舗がハムディーの理想である・・・これは、コンパクト・シティーの一つの要件と重複する。また、遠いエトナの思い出がちらっと頭をよぎった。
続く。
アラビア文字の数字に誘発されて、テヘランやPA001、海外でのシステム支援、さらには日米の教育の違いに思い出が広がった。それは、一つの記憶が別の記憶を次つぎと誘発しながら頭の中を駆け巡る、記憶の爆発だった。(爆発=explosion:急激な展開、爆発的に広がること)
記憶の嵐が収まると、意識はシステム化に取り掛かっているハムディーの店に戻ってきた。今回のシステム化は、店内業務のシステム化であるが、レジのセルフサービスにも備える。
店舗では、経営者のハムディーを頭に3人の女性スタッフ、3人の男性のジャニター、合計7人が働いている。人の動きから判断すると、店の切り盛りは女性たちらしい。というのも男性ジャニター(janitor)は雑用係りである。彼らは走り使い、掃除、力仕事、お茶出しなどを担当、暇なときは店内に待機している。女性スタッフが頼めば、いつでも手助けをする・・・なんだか「アラジンと魔法のランプ」を思い出す。
モロッコといえば、かつては性転換や整形で有名になったが、店の女性スタッフたちは整形美人でなく、生まれつきのモロッコ美人である。一人の女性は、目と目の間の鼻が3cmほどの高さ、エジプトの壁画でよく見る美人を思い出す。STEM教育が進んでいるので、彼女たちのコンピューター経験はすでに高校時代に終了、むしろ店のシステム化を待ち望んでいる。ハムディーの奥さんは深窓の人、店には口出ししない。
まず、システム導入の準備として、商品テーブルを作成する。いきなり5,000件の商品テーブルを作成するのではなく、売れ筋商品約100件を選びテスト・データとする。昔からの商品台帳を参考に、商品コード、名称、価格などデータ・シートに書き出し、商品テーブルを作成する。商品テーブルはデータベースの中核を占める情報であり、在庫や仕入れ/販売テーブルと商品コードでつながっている。
長年使い古した商品台帳は、ところどころが擦り切れて、書き込みも多い。担当者でなければどれが新しい情報なのかは分からない。特に厄介なことは、商品台帳に載っていない商品は何件あるかも分からない。これらは、システム化の後に時間を掛けて整理/隔離/処分する。
今回のシステム化をチャンスとして、既存のデータ項目、たとえば最も身近な商品名称なども見直し、最新の状態に更新する。また、商品名称の多言語化として、公用語のアラビア語とベルベル語は必須、第二言語のフランス語と世界共通語の英語、計4ケ国語を名称として使用する。
また、商品名の標準化も同時に進める。たとえば、化学物質の「ビニール」と「ビニル」、どちらも同じものであるが、検索すると別物になる。また、商品の色なども難しい。メーカーの呼称は専門的すぎて、一般人には理解できない。たとえば、赤系とか青系とか分類することも必要である。さらに、ヨーロッパに近いアフリカでは計量単位もフート・ポンド法とメートル法の併記も必要である・・・このような基本的な情報整備を怠ると、無人店舗では顧客の質問が多発、質問に対応するために余計な人手が必要になる。
さらに、将来の無人レジへの備えとして、商品の荷姿、販売単位(バラ売り、ダース売り、メーター売りetc.)、仕入単位、容積、重量の項目も必要になる。荷姿や容積・重量などのパッケージ情報は、仕入先やメーカーと共通情報として先方に確認する。
日本のスーパーでも、すでにセルフサービス・レジが導入されている。そこでは顧客がレジを自分で操作する。しかし、導入期のためか5~6台のセルフサービス・レジに対してスーパー側の担当者が立会い、顧客を補助している。筆者もトライしたが、“待ち”を厭わなければ店のレジ係りに任せる方が楽である。思うに、顧客が商品をカートに入れて、レジを自分で操作する。これは、スーパーの自販機化であり、将来のスーパーは、バック・ヤードが巨大な無人倉庫・宅配センターになる前兆かも知れない。
今すぐの実現は別として、将来の小売店の姿をハムディーと3人の女性スタッフと話し合った。ハムディーの店は日用雑貨の店、現状で最も類似している業態は、コンビニや小規模スーパーである。この認識のもと、皆の考えを聞いてみた。
紀元前7世紀ころにはフェニキア、前5世紀にはローマとの交易があったモロッコ、旧市街地そのものが歴史と文化である。そこに住む人びとの日用品を提供する。日用品に加えて実用的な民芸品も扱いたいとの希望もある。伝統的な食器や民芸品で歴史と文化を絶やさないとの思いである。また、コーヒーの自販機とイートイン(eat-in)・コーナーも設けて近隣との交流の場としたい。メディナ(旧市街地)目当ての観光客は歓迎するが、生活を共にする地元民優先、スマホ/PC利用は時間制の立ち席だけである。
旧市街地は一つの大きな商店街、多様な店舗が存在する。どこの店がなにを扱っているか、自店にないものはどの店で手に入るかなど、旧市街地だけでなくカサブランカの情報は店の顧客にとっては重要である。単独の店でなく旧市街地の一員、他店との競争でなく共生を指向する。店主たちを始め、店員、顧客たちが互いに知り合い、いわば地域密着型の店舗がハムディーの理想である・・・これは、コンパクト・シティーの一つの要件と重複する。また、遠いエトナの思い出がちらっと頭をよぎった。
続く。