京都再訪(2)から続く。
(2)稲荷大社
10月の中旬、5年振りに稲荷大社を訪ねた。稲荷大社はJR京都駅から奈良線で2つ目の駅、乗車時間5分の近場である。京都と奈良を結ぶJR京都駅には外国からの観光客も多く、中央改札の女性係員は、流暢な英語でテキパキと質問者に対応していた。京都駅もすっかり変わった。
JR京都駅
JR稲荷駅は蒸気機関車時代とほぼ同じ大きさ、昔ながらの小さな待合室は伏見街道に面している。待合室を出て道幅7、8メートルの伏見街道を渡ると、目の前に御鎮座1300年記念でピカピカになった新しい参道が広がる。
【参考】
昨年(2011年)は稲荷大神御鎮座1300年の記念、この機会に重要文化財である本殿とその関連施設には大きな改修があった。なお、この御鎮座の日付は奈良時代、和銅4年2月初午の日(711年)、延喜式神名帳(927年)参照。
下の写真は、筆者と同じ電車から降りた人々である。若い女性や外国人が多いように思った。
JR稲荷駅前
下の案内図のとおり、稲荷大社は稲荷山(233m)の斜面27万坪に広がる大きな神社、全国の稲荷神社の総本山である。山を巡る参道は人の行き来が絶えない。昔からよく整備された参道、清潔なトイレの配置、治安良好、JRと京阪電車の駅が近くアクセスも便利である。参道の土産物店や露店、キツネうどんやイナリ寿司(キツネ寿司ともいう)の食堂がウォーキングを兼ねた参拝者を引きつける。参道のスズメの串焼きも有名だったが、最近はその店は少なくなった。
稲荷山の案内図
下の写真は、京阪電車の稲荷駅からの参道である。中央の年配のご夫婦、日本人だと思っていたら日本在住のアメリカ人だった。稲荷大社は外国人に人気があるとインターネットにあるが、閉門時間なし、拝観料なし、駐車料金なしなどが人気の理由かも知れない。
今回の参拝で気付いたが、いつの間にか御神籤が200円になっていた。しかし、拝観料がないことや神社の維持管理コストを考えれば、御神籤の値上げはやむを得ないと思う。御神籤を買う買わないは本人の気持ち次第、その「気持ち」は拝観料とは本質的に異なるので御神籤代の値上げの方が受け入れ易い。ともあれ、拝観料なしの稲荷山はありがたい。
参道風景
参道でスペイン人観光客の一行に出会った。ガイド嬢のスペイン語はなかなかのもの、その説明が少し分かるので上手く案内するものだと感心しながら、暫らく耳を傾けた。スペインの人には鳥居や神社の建物、土産物店が珍しいようで、カメラやビデオに収めていた。
スペイン人観光客の一行
下の写真は、鳥居と楼門である。この楼門は、秀吉が母大政所の病気回復祈願のために、天正17年(1589年)に寄進したものである。1974年に永久保存のために解体修築、昨年は御鎮座1300年記念の補修で鳥居や楼門も色鮮やかになった。
今日は楼門の人影がまばらであるが、正月には人波で埋め尽くされる。2012年3ガ日の人出は270万人、全国第五位だった。ちなみに、第一位は明治神宮の315万人、第二位は成田山新勝寺の298万人、第三位は川崎大師平間寺の296万人、第四位は浅草寺の275万人だった。
新表参道の鳥居と楼門
楼門から山に向かって外拝殿、内拝殿、本殿が並ぶ。本殿の背後には千本鳥居が二手に分かれて奥社奉拝所に続いている。下は、一方の千本鳥居から他方を見た写真である。内側では赤い世界に圧倒されるが、外から見る千本鳥居はおもちゃの鳥居のように見える。
千本鳥居を外から撮影
千本鳥居を抜けると奥社奉拝所(一般に「奥の院」という)がある。下の写真の左手は所要時間約2時間の「お山巡り」の出発点、同時に東山トレイルの出発点でもある。写真右手には、「おもかる石」がある。
奥社奉拝所
今日は日曜日、「おもかる石」に挑戦するのは若い女性が多く、なぜか年配の男女は見かけない。人は、寄る年波と共に夢と希望まで諦めるのだろうか。
「思ったより軽かった」「重かった」と入れ代り立ち代り挑戦する若者に交じって筆者も試みたが、以前より重く感じた。これはまずい、初めての「NG」だった。
自然エネルーギーの活用に関する願いだったが、その対象は水力、風力、波力と広範囲、つまり、絞り込みが甘く、具体性に欠けると反省した。このように曖昧な願いは「NG」、「おもかる石」は正直だと思った。
下の写真は東山の将軍塚展望台(約216m)から京都市街の眺めである。京都を離れる直前に駅からこの展望台にタクシーで駆け上った。
将軍塚展望台からの眺め(1)
将軍塚展望台からの眺め(2)
行き詰まりや迷いがあるとき、山の上から眼下に広がる静かな街を眺め、その街に息づく百人百様の生き方を思う。将軍塚から京都の街を眺めるうちに小さな自分に気付き、つまらぬ些事にくよくよするなと気持ちをリセットした。今回の「おもかる石」はNGだったが、いつかまたと思った。
神戸再訪と京都再訪をここで終了して、次回は10月25日に中断した「英語と他の言語(5)」に続く。