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64東京オリンピックからの変化---臨時

2021-07-25 | 地球の姿と思い出
今回は、幻のコンパクト・シティーから外れてオリンピックの思い出に触れる。

64東京オリンピック(1964/10)のとき、筆者は「ほのるる丸」の三等航海士として北海を航海していた。

夜の当直は3人、North Sea Pilot(北海水先案内人*)、筆者およびクォーターマスター(Quartermaster:操舵手)の3人は消灯したブリッジ(船橋)でレーダーとデッカ**を使ってロッテルダム(オランダ)を目指していた。
【*参考:北海を航行する外国大型船は、国際法によりNorth Sea Pilotの乗務が義務付けられていた。北海入口にあたるドーバー海峡(英)でNorth Sea Pilotが乗船、本船(自船)が北海を離れるまで船長&航海士をサポートした。契約のパイロットは英海軍艦長経験者だった。ハンブルグに停泊中のことだったが、筆者が書類を小脇に階段を駆け上がろうしたとき、階段を下りようとする非番の彼と鉢合わせになった。とっさに道を譲ろうと筆者は立ち止まったそのとき、彼は“Job First”と言って道を譲ってくれた・・・駆け出しの筆者より大先輩のNorth Sea Pilotに“Job First(仕事優先)”と道を譲られたあの場面は今も忘れない。】
【**参考:デッカ(Decca)航法=欧州海域の電波航法、ノルマンディー上陸作戦の潜水艦が利用したのは有名。測位精度が非常に高いので濃霧の河川航行も可能だった。】

北海では各国の大型貨物船が追いつ追われつ、先を急いでいた。そこは国際物流の檜舞台、海上衝突予防法が言う「船舶が輻輳(フクソウ)する海域」そのものだった。特に夜の航海では神経を張りつめる。今も思い出すが、消灯した真っ暗なブリッジでNorth Sea Pilotが「今のTokyoはオリンピックで大変だが、われわれは毎日がオリンピックだ」とつぶやいた。いらい今でも、“オリンピック”という言葉を聞くたびに、他船の船影をオレンジ色で点々と映し出ずレーダー画面が瞼に浮かび上がってくる。

あれから約半世紀以上も経った今、この地球にはいろいろな変化があった。

数えきれない些事はさておき、人類史上最大の変化、と言うより最大の進展は、人類がコンピューター技術を手にしたことにある。

筆者の理解では、類人猿以来の木器や骨器、石器、火、土器、金属、文字、化学、機械、採取、狩猟、農耕、電気、コンピューター、宇宙、、、これらの中でも人間の脳機能を超高速で補完するコンピューター技術の意味は非常に大きい。その本質は計算・記憶・判断の超高速大量処理である。たとえば、人の暗記力を重視する教育システムとは異質の世界である。

コンピューターのハード・ソフト・通信機能は在来のテクノロジーと合体して新しい分野に発展し始めた。つまり脳機能を得た在来のテクノロジーが相互に連携することも可能、そのシナジー効果(相乗効果)も期待できる。したがって、その行く先は昔の常識に縛られることはない。

たとえば1980年代の「在宅勤務」は、なぜか日本では言葉だけに終わってしまった。しかしあの「在宅勤務」は40年も遅れて、しかもコロナ禍が切っ掛けで、テレワークに名前を変えて日本で日の目をみた。もちろん、今後の日本ビジネスはリアルタイムで世界の檜舞台に参入する。そこには間違いなく新しい展望が開ける。

1980年代から今日まで、40年に亘ってテレワークを阻害していたもろもろの障害は、幸か不幸か、コロナ禍で一気に霧散した。「密」を避けるためには「背に腹は変えられない」とばかりテレワークが進んだのは幸いであるが、さまざまなネットワークのオンライイン化は多くの可能性を秘めている。

蛇足だが、テレワークは単に仕事やりかたの変更だけでなく、雇用や組織の形態、都市機能、交通・通信網、法制度、対外関係などに影響する。

これらの分野には、日本の目前に迫る少子高齢・人口減少問題が影を落とすが、すべてがネガティブではない・・・言葉上の人口減少=頭数(headcount)の減少は一見“先細り感”につながる。しかし、頭数は少ないがその背後にはコンピューターが控えているので彼らは迅速にニーズに対応できる。

従来の産業構造では、人口減少には“先細り感”がある。しかしデジタル社会では、省力化や自動化による人口減少には“先細り感”はない。たとえば、紙の住民台帳(=本質的には江戸時代の大福帳)がデジタル住民台帳(=データベース)に変化するのは、最新テクノロジーの流れに沿った動きである。また、化石燃料の内燃機関から電動モーターへの動きもしかり、世はすでに未知のテクノロジーに向かって動き始めている。ここで忘れてはいけないことは、このような変化の本質に即した諸制度、たとえば、先ず法制度の改革である。

「ほのるる丸」以来、筆者が見てきた世界の感想だが、目が届きにくい大所帯では万事が緩むのでまとまりがある(well-organized)少数が望ましい。その少数は、適材適所が生み出す少数精鋭であり、目線が低い。目線が低いと重心が低い船のように荒天に強くなる。

改めて地球を振り返ると、将来のキーワードはやはり“コンパクト”だと思っている。

次回は、メンタル・タイム・トラベルに返り「幻のコンパクト・シティー(5)---徒歩圏内の便利な広場」に続く。


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