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グローバル化への準備---英語と他の言語(1):主要国の公用語と使用言語

2012-08-25 | ビジネスの世界
「コンピューターの知識(3)」から続く。

3.英語と他の言語
このブログの「ことばとコンピューター(2011-06-04)」で述べたが、世界標準規格(ISO639-3)は459の言語を定義している。たとえば、3桁コード、ainはアイヌ語、ojpは中古日本語(古文)、jpnは日本語である。この459の言語に方言などを加えると五千以上との説もあり、今では世界の言語の数は正確に数え切れないというのが定説である。

数えきれない言語が存在するこの地球、グローバル化とともに言語の違いが一つの難問として浮かび上がってきた。

(1)言語の知識
言語には無頓着だった日本でも、近年では社内公用語や使用言語などといったことばがニュースになっている。まずここに、ほんの一部に過ぎないが世界の言語事情を眺めてみる。

1)公用語(Official Language)
組織、団体、国、地域などが文書や会話に使用する公の言語をいう。重要な文書や全国放送には公用語を使う。

2)使用言語(Working Language)
Working Language の和訳は、使用言語、作業用語、業務用語、使用用語、または実用的な言語である。使用言語は公用語の一つである。このブログでは、Working Language を使用言語という。

3)母語(Mother Tongue)
幼児期に家庭で最初に習得し、自由に使える言語をいう。母国語ともいう。国際機関などの職員の母語と使用言語が違うときは、その点を考慮して勤務を評定する。(このブログ「時代の流れ」(2012-3-25) 専門職以上の評価を参照)

(2)世界の現状
日本では標準語を国語として教えており、各地に方言があるものの言語環境は単純である。しかし、世界の言語環境はかなり複雑で、不明な点も多い。ここでは、公用語と使用言語の現状を分かる範囲で説明する。

1)国際連合(United Nations)
公用語(Official Language):
アラビア語、中国語、英語、フランス語、ロシア語、スペイン語の6言語
使用言語(Working Language):
英語、フランス語

他の主な国際機関の公用語:
国際電気通信連合(ITU) - 英語、フランス語、スペイン語
万国郵便連合(UPU) - 英語、フランス語
国際労働機関(ILO) - 英語、スペイン語、フランス語
国際司法裁判所(ICJ) - 英語、フランス語
国際刑事裁判所(ICC) - 英語、フランス語
国際海洋法裁判所(ITLOS) - 英語、フランス語
国際標準化機構(ISO) - 英語、フランス語
など、これらの機関では公用語が使用言語である。

2)欧州連合(EU)
公用語:
ブルガリア語、チェコ語、デンマーク語、オランダ語、英語、エストニア語、フィンランド語、フランス語、ドイツ語、ギリシア語、ハンガリー語、アイルランド語、イタリア語、ラトビア語、リトアニア語、マルタ語、ポーランド語、ポルトガル語、ルーマニア語、スロバキア語、スロベニア語、スペイン語、スウェーデン語、以上23言語
使用言語:
すべての公用語が使用言語である。また、手話の公用語も定めている。

法令や公文書は23言語で作成するが、重要度が低い場合は必ずしもそうではない。しかし、公用語の維持管理では、人材とコスト面の負担が大きい。

EUの言語について興味深い報告が「HP of Satoshi Iriinafuku - EU社会の実像」にあるので、以下に引用する。

     EUの言語の現状
     

2006年2月21日、欧州委員会は、EU市民の外国語能力に関する報告書を発表した。これは、2005年11月5日から12月7日かけて実施されたアンケート調査結果に基づいているが、調査は、EU加盟25ヶ国と、ブルガリア、ルーマニア、クロアチア、トルコの計29ヶ国において、15歳以上の市民、2万8694人を対象にして行われた。

それによると、56%の市民が母語以外の外国語で会話を楽しむことができる。これは、2001年の調査時(EU15ヶ国)より、9ポイント上昇しているが、特に、ルクセンブルク、スロバキア、ラトビアでその割合が高くなっている(それぞれ、99%、97%、95%)。その理由として、欧州委員会は、ルクセンブルクのように、複数の言語(ルクセンブルク語、フランス語、ドイツ語)が一国の公用語にされていることや、近隣国との結びつきが強いことなどを挙げている。

もっとも、44%の市民は母語しか話せない。アイルランド(66%)、イギリス(62%)、イタリア(59%)、ハンガリー(58%)、ポルトガル(58%)、スペイン(56%)の6ヶ国では、その割合が50%を超えている。

外国語として最もよく使われているのは英語であり、ドイツ語、フランス語、スペイン語、ロシア語がこれに続いているが、母語として最もよく話されているのはドイツ語である(18%)。
・・・中略・・・

「母語ぷらす2」
なお、欧州委員会は、母語以外に2つの言語の習得を長期的な目標に設定しているが、それに賛同した回答者は50%で、46%は反対している。なお、この要件を満たすと答えた者は28%であるが、とりわけ、ルクセンブルク(92%)、オランダ(75%)、スロベニア(71%)でその割合が高かった。

母語以外に、3つの言語をマスターしている者は11%であった。このように多くの言語を駆使しうる者は、若年層に多く、留学経験のある高学歴者とみられている。

半数以上の市民は、すでに6歳の頃から外国語を学んでおり、外国語能力の重要性は強く認識されているが、過去2年間に外国語を学んだか、または、それを向上させた者は、18%に過ぎず、学習意欲の低さが浮き彫りになっている。
以上で「HP of Satoshi Iriinafuku」からの引用は終り。

3)ドイツ語を公用語とする国
EUの公用語は23言語であるが、加盟国にはそれぞれの公用語がある。もちろん、その国の公用語はEUの公用語である。すべての加盟国の公用語を挙げるのは省略するが、ドイツ語を公用語とする国は次のとおりである:
 ドイツ連邦共和国
 オーストリア共和国
 スイス連邦(他の公用語=イタリア語、フランス語、ロマンシュ語)
 リヒテンシュタイン公国
 ルクセンブルク大公国(他の公用語=ルクセンブルク語(ドイツ語の方言)、フランス語)
 ベルギー王国(他の公用語=フランス語、フラマン語)
 オランダの一部

たとえば、スイス連邦の使用言語の6割以上がドイツ語(またはスイスドイツ語とよばれる方言)であるが、公用語でない英語を必須単位にする学校が多い。ドイツ語とスイスドイツ語はかなり違うため、実際には英語を使う傾向にある。

4)カナダの公用語
カナダでは10州のうち、8州の公用語は英語、ニューブランズウィック州は英語とフランス語、ケベック州はフランス語だけが公用語である。

筆者の経験では、販売管理の受注センター(電話と夜間録音)は、英語とフランス語で注文を受け付け、それぞれの担当者が応対していた。コンピューターシステムは、英語とフランス語の2言語データベースで対応した。

5)インドの公用語
人口は、日本の約10倍、12億2千万人である。1965年の憲法で公用語はヒンディー語と定められ、植民地時代の公用語(英語)を15年でヒンディー語に切換えるとした。しかし、ヒンディー語の使用率が低い州、たとえば、タミル・ナードゥ州などからの反対があり、現在でもヒンディー語と英語の併用が続いている。

ヒンディー語はインド共和国の公用語であるが、他にも22の公的な言語を定めている。しかし、この22の言語は公用語と定義されない曖昧な存在である。

さらに、インド共和国の公用語とは別に州ごとに公用語を定めており、州の公用語にはヒンディー語と22の言語も含まれている。たとえば、アッサム州の公用語は英語とアッサム語、タミル・ナードゥ州は英語とタミル語であり、アッサム語とタミル語は共に22の言語に含まれている。しかし、ミゾラム州は英語とミゾ語であり、ミゾ語は22の言語には含まれていない。また、すべての州と直轄領は英語を公用語に含めている。

なお、共和国憲法では英語を公用語と認めないが、28州のうち3州、7直轄領のうち3直轄領は英語だけを公用語にしている。

インドの日常語は、方言を含む約850の言語といわれるが、大学のすべての授業は英語である。インドの公用語では、建前はヒンディー語、本音は英語と22の言語といえる。

ここで筆者のタイでの見聞になるが、1990年頃に進出した日系工場、数社は当時から社内公用語は英語である。しかし、建前は英語、本音は日本語とタイ語だった。ただし、業務システムは英語/タイ語であり、日本語/タイ語の画面は見たことがない。日本企業の言語問題は、「古くて新しい」課題である。

ここまで、世界の言語とその現状を、英語を中心に垣間見た。このような現状を踏まえて、次に、日本人の英語には何が重要かを筆者の経験と観点で検討する。

次回の「英語と他の言語(2)」に続く。

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グローバル化への準備---コンピューターの知識(3):ソフトウェアの理論

2012-08-10 | ことばとコンピューター
「コンピューターの知識(2)」から続く。

(3)コンピューターの論理
ここでは、コンピューターの考え方と基本的な論理(ロジック:logic)を紹介する。

1)数式の意味
まず、数学の“=”とコンピューターの“=”の違いを説明する。図10の左側のC=A+Bは数学の数式であると同時に、FORTRANやBASICなど、コンピュータープログラムに出てくる数式でもある。

数学のC=A+Bは、左から右に読み、Cの内訳はA+Bと解釈する。しかし、コンピューターでは、AとBの値を加えた結果をCに記録するという意味になる。言い換えれば、C←A+Bの意味である。

             図10 代入式
           
             出典:E.I.Organick著「A FORTRAN IV Primer」1967 (フォートランIV入門)

次に、前回の磁気コアで説明したが、データの「読み込み(Read-in)」は「上書き」、「読み取り(Read-out)」には「読み取られても、もとのデータは変化しない」という特性がある。

この特性を、図11では“Destructive Read-in(破壊的な読み込み)”と“Nondestructive Read-out(非破壊的な読み出し)”という言葉で説明している。

      図11 データの読み込み(Read-in)と読み出し(Read-out)
     
      出典:E.I.Organick著「A FORTRAN IV Primer」1967 (フォートランIV入門)

図11の左側は、AとBのデータを入れ替える方法を示している。また、図の右側は、入れ替えがうまくいかない方法である。ここで、AとBのデータは数値や文字データなど何でもよい。

左の図では、Step1でAのデータをT(任意の仮置き場所)に退避させる。次のStep2でBのデータをAに書き込む。最後のStep3でTに退避していたデータをBに書き込む。これでAとBのデータを正しく入れ替えることができる。

他方、右の図のStep1は、BのデータをAに書き込む。この時点でAのデータは、Bのデータで上書きされる。次に、AのデータをBに書き込む。しかし、AのデータはすでにBのデータに置き換えられているので、AとB共にBのデータとなり、データの入れ替えはうまくいかない。

コンピューターのデータ更新は、「追加」「変更」「削除」のいずれかである。このうち「変更」の処理では、変更する前にそのデータを仮置き場に退避させ、不用意にデータを消去しないように配慮する。

2)論理回路
コンピューターの基本的な論理は、ANDとORという回路で成り立っている。AND回路は電気部品の直列接続、OR回路は並列接続であり、これらは懐中電灯の電池の接続に見られる。他にNOT、NAND(Not And)、NOR(Not Or)回路などがあるがANDとOR回路から派生した回路である。

図12は、S1とS2というスイッチで作ったAND回路とOR回路である。もちろん、S1とS2はBistate Element、スイッチの代わりに磁気コアやトランジスターなどでもよい。言うまでもないが、今日ではこれらの回路はLSIになっており、コンピューター言語や情報の条件検索に使われている。

   図12 AND回路とOR回路の真偽表(Truth Table for AND & OR)
   

図12には、AND回路とOR回路のTruth Table for .AND.(アンド真偽表)とTruth Table for .OR.(オア真偽表)を示している。それぞれの真偽表は、T=True(真=オン)、F=False(偽=オフ)の組み合わせである。
【注:Truth Tableの和訳は真偽表、真理表、真理値表など、ここでは真偽表とする】

AND回路では、S1とS2ともにT(オン)のときだけ回路の豆球が点灯する。豆球が点灯すればAND回路の条件が満たされたことを意味する。もし、S1またはS2または両方がF(オフ)の場合は、豆球は点灯しない。このようなS1とS2の状態(T=オンかF=オフ)と豆球の状態(T=点灯かF=点灯せず)との関係をアンド真偽表という。

また、OR回路では、S1とS2が共にTまたはどちらかがTの場合はOR回路がT、S1とS2ともにFの場合はOR回路がFになる。

参考だが、19世紀の英国の数学者 G. Boole(1815-1864)が提唱したブール代数にちなみ、ANDやORの論理をブール論理(Boolean Logic)ともいう。

(4)コンピューターと情報処理(Information Processing)
1940~50年代のコンピューターは、主に弾道計算や自動制御などに使われる計算機だった。

その後、記憶容量が増大するにつれて、コンピューターは会計や給与計算に利用され、いわゆる汎用コンピューターに発展した。この頃、コンピューターは単なる高速計算機から情報処理の領域に踏み出した。

80年代から盛んになったデータベースやオンラインシステムの構築は、情報処理の典型的な例である。この頃から、コンピューターは社会のあらゆる分野に浸透し、グローバルな情報化社会の形成に大きく貢献した。

ここで、データと情報の違い、情報には2つの意味があること、さらに情報処理の本質を一般論として説明する。

1)データ(Data)
ある会社の社員の基本給を考える。Aさんは29万円、Bさんは23万円など、個々の金額を基本給データという。この段階では、Aさんの29万円は他の社員に比べて高い、あるは安いとは言えない。この29万円という数字は、一つの客観的な数値、つまり単なるデータにすぎないからである。

2)情報(Information:インフォメーション)
すべての社員の基本給を把握し、整理したとき基本給の平均、最高、最低、最も社員数が多い金額など、基本給の情報が明らかになる。ここではじめて、Aさんの29万円が他の社員に比べて安いとか高いとかを判断できる。

社員の基本給から得た情報をその会社の内部情報(Internal Information)という。この内部情報に対して、同業他社や他業界、国内や海外の基本給データや情報を外部情報(External Information)という。この外部情報を得る手段は様々である。業界団体や公的なデータとして入手する方法、情報収集の専門会社から有料で入手する方法などがある。

3)インテリジェンス(Intelligence:インテリジェンス)
内部情報と外部情報を合わせて分析し、自社の給与水準は他社より高いなどと新しい情報を得る。もしデータや情報に疑問があれば、再調査や追加情報を収集する。ときには、うわさ(Rumor)も分析の対象になる。この段階では、データや情報収集力と分析能力がキーポイントになる。

ここから得られる情報をインテリジェンスという。ここでの情報という言葉は、情報将校(Intelligence Officer)の情報、アメリカ中央情報局(CIA:Central Intelligence Agency)の情報である。企業の場合は、この情報(インテリジェンス)にもとづいて戦術や戦略を検討する。
【注:インテリジェンスの和訳は、知能、知性、聡明、機密情報、諜報など】

ここまで3回にわたって、コンピューターの基礎知識を紹介した。それは、すべてのデータは“0”と“1”の組み合わせ、また基本的な論理はAND回路とOR回路だった。

最後に、情報処理のもうひとつの常識「garbage in, garbage out:ガービッジイン、ガービッジアウト(コンピューターが高性能でも、ゴミを入力すればゴミしか出てこない)」を挙げるが、これがコンピューターと情報処理の本質かも知れない。

次回の「英語と他の言語(1)」に続く。


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