田植えの時期が近づくと、急に水系が賑やかとなってくる。何れの水系でも水路の清掃活動が始まるのだ。水稲栽培は水を使っての栽培活動、水の入手は必要不可欠で、この時期に作業が集中するのも苗作りのタイミングを見計らっての事だろう。農家によっては複数の水利組合に所属する者もあり、作業日の決定は特別な関心事となる。幹事さん達は横の調整に余念が無い。組合員の全員参加が前提、当然ながら雨天決行となってくる。長老と子狸での代理参加、しっかりと顔と氏名と地権者との関係を確認された。
我々の関与する水系は数キロの距離にも及ぶ。当然ながら、簡略とはいえ全体を点検しなければならない。詰まりや漏れや予期せぬ分流等が生じていれば補修しなければならないのだ。道具は長老が手鎌とクワとノコギリ、子狸が山仕事用の長刀、持参した用具のからみで源流部へと進行する。灌木やツルや丈の大きな雑草等が発生していると睨んだからだ。取水部は河川の一角、其処までは狭い獣道みたいな作業道が続いている。
予想は的中して、歩きにくいブッシュが続いている。ノコや長刀で切り払いながら、徐々に上流へと進む。作業道が通行できるようにしておかないと、日常の点検や確認がやりづらい。道の確保が一番重要なのは公共工事と同じ事、水路作業のイロハでもある。水流は多めのようで、取水口の石組も崩壊してなかった。時によっては、並べた石が水流に流され、取水口への水の導入が不能となってる事例もあり得るのだ。
取水口への道の確保を行ってから下流部へと移動した。こちらは概ね平坦部で刈払機が活躍する分野だ。流石に農家だけあってか、7割位が刈払機持参組、草刈りは頼んでおいても大丈夫だろう。目視で確認作業へと回っていく。我々の耕地は水系の中での最末端、いわば皆さんが使った後の残り水が利用分だ。従って途中で詰まり等が発生すれば最悪の事態ともなってくる。幸いにして確認した範囲では詰まりや分流等の障害は無かった、ありがたや。今のところ水流も豊富で、大きな音を立てながら流れ走っている。
当地も間もなく田植えのシーズンを迎える。水の必要度は高まるばかり、水利組合の果たす役割も大きいのだ。地権者の方が恥を偲んで我々に出動を要請されるのも宜なるかなと思えてくる。反則金の支払いで出動を猶予されてお終い・・・・・とはいかないのだ。農作業は幅広い意味での共同作業、とりわけ水稲栽培はその傾向が強い。田舎暮らしにあこがれる都会の方が、農村部に移住してトラブル発生となりがちなのは、農村が共同社会である事を実感として理解できないからだろう。ご注意あれよと、願わずにはおられない。