ゴロゴロゴロ・・・・・鈍く大きな音が響いてきた。戦車だ、思わずそう叫びたくなるような雰囲気、「大御所」のトラクターが作動を始めた模様。天気も回復して概ね快晴の状況、農閑期を休眠状態で過ごしてきた彼も行動開始の模様だ。農園の地形は階段状の棚田地帯、基本的に耕作機械の使用は困難なのだが、彼の耕地は部分的にトラクター使用が可能な場所も。どうやら耕耘作業を始める予定のようだ。
トラクターを運転する際は得意満面、まるでガキ大将が腕白軍団を率いているような状況だ。確かにトラクターによる耕耘は、便利なことこの上無しであろう。非常に効率的で楽な作業だ。最も地形上、困難で複雑な操作を要求されるのだが、彼にとっては朝飯前の模様で嬉々として楽しんでいる。子狸と例の「百姓候補生」氏はインゲンの下準備中だったが、しばらく眺めることにした。楽しそうな雰囲気は周囲を和ませる、しばしの休息タイムと致しましょうかな。
何ヶ所かの段差を乗り越え、自分の持ち場についたようだ。栽培していた冬野菜も終盤期を終え抜き取られた状態、すぐさま耕耘可能な模様だ。うなりを上げてトラクターが動き始める。少々くたびれた機体だが、まだまだ現役で活躍可能なようだ。廃業された農家さんから譲ってもらった機体、彼以外には手出しをする者が無く、久々の活躍にトラクターも嬉しそうだ。
僅かな時間で耕地は耕されていく。確かに我々が使用するミニ耕耘機とは大きな違いだ。効率性が甚だしく違って、あっけにとられる程に進捗する。やはり文明の利器は素晴らしいもの、活用次第だろうな。
轟音を響かせながらトラクターは走り回る。どうやら能力からみて活動範囲が狭すぎる模様だ。無理も無い、現場は階段状の棚田地帯、活躍出来る場所が限られているのだ。もっと広い農地を・・・・・・そんな願望が出てくるかも知れないが、今度は我々の体力が追いつかない、何とも困った状態だ。