思えば長い冬眠生活だった。1月は皆目、2月は1~2回、何の話かと思えば大御所の農園への出動回数である。驚くほど少なかったのだ。ひょっとしたら病気では、そんな心配の声も出るほどだった。案に相違して至って元気なようで、足の痛みもあってかゆっくりしていたみたい。3月の声を聞き出し、そろそろ出番かと決意した模様だ。そういえば季節は「啓蟄」、冬眠中の虫達も這い出す頃合いだ。大先輩を虫になぞらえるのは失礼千万かと思えるが、ご無礼の程平にご容赦を。
ともあれ元気そうで何よりだ。仲間達も期待して待っている。何せ棚田でトラクターを運転できるのは彼だけ、耕耘作業の助っ人を歓迎し待ち望んでいるみたい。期待の声を知ってか知らずか、黙々と草刈りを始めた模様だ。何はさておいても耕地の準備からだろう。既に3月に入った。月末ぐらいから夏野菜の種蒔き等が始まる。彼も気がせいてるのだろう。
子狸が草抜きに熱中してると、近づいて来て、俺も草刈りが追っつかないのだ・・・・・との弁明。冬眠期間が長すぎたようだ。未だ種蒔きまでには十分時間がありまっせ・・・・・・・と元気づける。子狸が農園に到着した時には彼の車は無かった。少し遅れて出動したみたい。彼の特徴だが、農園に到着すると駐車場を一回りして出動者を確認する。その後、挨拶を交わしながら作業に従事するのが恒例だ。本日は作業が先になったが、気があせったのだろう。
大御所の特徴は他にも存在する。作業には常にブルーの作業服を着用することだ。青色が好きな色みたいで、どんな事情にせよ、ブル-の作業服以外の姿を見たことが無い。誰しも同じかと思うが、しっくりくるスタイルというのがあるものだ。いわば彼にとってブルーの作業服がサラリーマンのスーツ姿に相当するのだろう。かくいう子狸も同様だ。緑のヤッケにグレーの作業ズボン、この姿が一番サマになる。作業が進捗するのだ。
ファッションアイテムはともかくとして、作業には似合った作業スタイルが存在する。日常の繰り返しの中から、自分なりにサマになるスタイルを作り上げていくのだろう。大御所のブルーの作業服も長年の経験から導き出された代物だろう。心地よい着ごごちと快適な作業とは表裏一体なのかも。