午後四時ごろ電話が鳴る、普通の声ではない、「お父さんが倒れた
お姉さん早く来て!」叫びともとれる声に女房に代わる。倒れたK君
のもう一人の姉を乗せ三人、病院に駆けつける。道路はサラリーマン
の帰宅ラッシュと、秋のつるべ落としの日没が重なり、いやがうえに
も気がはやる。肩に力が入り緊張する運転、もっとゆっくり気をお付
けてと自分に言っているのか?姉妹二人が言う。
久しぶりの病院前で口数の多い二人を降ろし、少しはなれた駐車場を
探す、すぐ見つかりほっとする。
K君はICU、HCUなどが隣接するベットに寝ていた。呼びかけて
も反応が無い。自呼吸もままならず、呼吸器と血圧を上げるクスリ、
脱水症を防ぐくすりなどの点滴に繋がれ、生かされていた。
バス停で気分が悪くなり、電話番号を残して倒れたらしい。救急車で
病院に運ばれた。小脳出血で場所も悪く、出血量も多く手術もできず
危篤状態である。あまりにも突然の出来ごとであった。枕元には、僕
より9歳若いK君が倒れる前に残した電話番号のメモが、家族の涙に
濡れていたのを見た。写真は文章と無関係。