早朝6時に隣の公共温泉あぽん西浜に言ってみれば、こんなに早いのに地元の顔馴染みらしい親父連中がかなり大勢来ているではないか。昨日休みだったから湯が奇麗だからかな、サウナも既に高温になっているしこの辺りは朝風呂庄助さんが多いらしいぞ。露天は温くてゆっくり入るのに好都合、ここでも低温だからか内風呂より白く濁っている。さらに特筆すべきはじっと浸かっていると身体に小さな無数の泡が付着してくることで、これも温いからでいい湯だなぁ。
一時期空が晴れて鳥海山も見え、展望レストランからは日本海の眺望がいいから夕日が素晴らしいだろう。朝食も朝からイカ刺があってタラちり鍋、大きなふぐ干物などとタップリではあるが、僕は牛乳が濃厚で美味しかった。
宿からすぐの道の駅鳥海ふらっとでは野菜直売所などもまだ品が少ないし魚介類も規模が小さいから酒田港の方がいいかな、でもお値段の比較は出来ていませんが。遊佐は有名な小樽の鯟御殿の主であった青山留吉の出生地であちらは別荘こちらが本邸、こちらに建てられた旧青山本邸で雛飾りもしているというので三日目の最初の立寄り地とした。鯟御殿は北の美術館と言われているようだが僕はまだ見物していないので分からないが、こちらも贅を尽くした造りと見事な庭園というものの、かなり実質的にもなっている感じである。ここにも享保雛から現代兎雛までいくつか飾られていたが、これは本邸見物の余禄かな。
次は酒田市街を通り抜けていつもの土門拳記念館に行けば、予めパンを買って鴨などにやろうと意気込んでいた女房は拍子抜け、この時期にはほとんどが北に帰っちゃったようです。途中の田圃では白鳥の群れも見えたのですがあれはまた何処か別の寄留地の群で、このあたり最上川河口でも全く白鳥を見掛けなかったから記念館で聞けば、3月上旬には帰っていくそうです。今回の記念館の企画展示は奈良東大寺のお水取りの取材記録写真で、よくこんなに奥の姿が撮れたものですねぇ。
昼は昨秋にも食べたアルケッチャーノのカジュアル店であるイルケッチャーノに行けば、ちょうどWBCの日本対韓国の決勝戦のTV実況最中だからか昼時なのに空席がいくつかあった。駐車場にはクラブツーリズムの観光バスが駐車していて、どうやら本店では団体客もとるらしいにはやや口アングリ。前菜、パスタ、コーヒーのセットが1500円でこの程度がちょうどよい。小柄なオーナーシェフがこの時間、ケーキ売店奥の席で業者や取材などの応対中らしかったが、笑いを見せずに真剣顔だったから、団体受入れなどの商談だったのでしょうかね。
庄内雛街道の次の中心地は鶴岡、酒田が商人の街ならこちらは親藩酒井家の城下町でここでもいくつかの観光施設で雛飾りを展示している。庄内ひな街道のパンフレットがあってこの二つを中心に周辺地までの展示会場が紹介されているが、とても全部は回りきれないのでよさそうなところを絞り込む。まずは致道博物館では酒井家の雛人形と見事な塗の雛道具に市内旧家の雛飾りの展示と伝統雛菓子展となっている。ここに鶴岡雛祭り実行委員会の豆知識パンフレットがあって、立雛、享保雛、次郎左衛門雛、有職雛、古今雛」、芥子雛などの説明があったがこれ以外にも神像型とか室町雛や寛永雛などというものもあるとかで、コケシの系統などと同じように門外漢にはチンプンカンプンではある。こういうものは手にとってジックリ愛でながら説明に納得し、何回も見直して覚えるものでしょうかね。ほかには御所人形などの説明もあって、大名がお公家さんに進物したお礼に貰ったから御所から言うことと元気な子に恵まれる意味があると、微笑ましい人形ながら身分が高い人専用だったということも知った。また庄内には松本で見たような押絵人形があって、ここのは下級武士の手慰みだったそうで、庄内押絵というのだそうだ。
次はすぐ近くの荘内神社宝物殿は市内旧家の江戸から昭和の雛の展示、ここに7人囃子人形があってこれは公家さん用で雅楽演奏を表現、5人囃子は武家用で能楽を演奏しているんだそうだ。ここにはお土産用に酒田の老舗菓子屋の小松やが作った干菓子があって、小さい箱で2000円だと。なんでも酒田で女房が珍しいからと聞いたときには主人一人で手描き色づけしている雛菓子で2年前から注文しても一杯と話していたが、3年ぐらいはもつそうだからこのくらいの値段がしてもいいのかな。
鶴岡最後は旧羽黒町にある松ケ岡開墾場、ここには最近藤沢周平作品の映画化などの撮影などで映画撮影誘致に力コブを入れていて庄内映画村㈱なるものも設立され手いると聞いていたので初めて訪ねた。来てみれば廃藩後の明治5年に庄内藩士3000人が刀を鍬に変えて入植開墾した際の養蚕施設など和洋合体の木造2階建5棟が残っていてかなり面白く風景に溶け込んでいるではないか、ここに映画村拠点を置くとは眼の付け所がいい。ここの瓦は城の解体の際に持ち出して運んできたとか、見本が置いてありましたが既に桟瓦になっていたのですね。今回お目当ての開墾記念館は一番奥の建物で、ここの2階に開墾士の末裔である田中正臣、正佐兄弟が収集した2万5千点を越える土人形を中心にした全国郷土玩具が寄贈され常設展示されているのは今まで知らなかった。この時期は鶴岡瓦人形を初めとする全国各地のお雛様土人形200体が特別展示、いやはやこれだけのドエライ人形や土鈴、張子、凧などよくぞ集めましたねぇ上野村にも個人蒐集の玩具博物館があったけれどここの量はそれ以上、世の中にはとんでもない人物がいるものです。こりゃワシなど足元にも及びません、どうやってこれだけ集めたものなのかコーサン、降参であります。
またもや小雪が舞いはじめ、もういい時間といつもの宿温海温泉の桂屋には5時少し前に到着、馴染みのふくやかなオネエちゃんに迎えられる。この日は我々ともう一組らしいが、女性が多いそうで男風呂は久しぶりに小さいほう。ここの湯は熱めなので水道水で薄めるには小さいほうが早くていい、湯上りには肌が引締る湯でサッパリする。泉質は含硫黄・ナトリウム・カルシウム塩化物硫酸塩泉で街中には飲泉場もあるし共同浴場もあるがあくまで辺鄙な土地、でも萬国屋とたちばな屋は名旅館として有名だが、我々は料理が美味しい桂屋が常宿なのです、でもこの時期は始めて。窓から見える川向こうの萬国屋に昼にアルケッチャーノで見た観光バスが入って来ていた、あのツアーはかなりの料金の豪華ツアーでしょうね。この日の夕食はお造り、茹でズワイ蟹、ノドグロ糟漬焼、ブドウエビ塩焼、アンコウ友酢、山形牛しゃぶしゃぶ、ガサエビのミソスープ、ヤリイカとホタテの洋風仕立、サザエのエスカルゴ風、最後が茨城などとは違う上品ながら濃厚なアンコウ汁などでオシマイ、いつものウニ焼は無かったが洋風仕立は初めてで美味美味と堪能、御飯はパスして腹一杯とあいなる。酒では栄光富士のひとりよがりという大吟醸はアルコール度を16%以上としているから、吟醸香だけのサラッとした酒ではなく味わいとコクがシッカリという別格の酒で、これを飲んだあとでは同じ酒造のなまいきという銘柄は霞んじゃうじゃないですか。