読書日記 嘉壽家堂 アネックス

読んだ本の感想を中心に、ひごろ思っていることをあれこれと綴っています。

レンタル彼氏 酒井あゆみ 幻冬舎文庫

2007-06-04 21:36:34 | 読んだ
酒井あゆみの書くものは面白い。
何が面白いのかといえば「人」とは何かということがわかりそうだからである。

何故彼女はそのような行動に出たのか、何故そのような行動をとらざるを得なかったのか、ということは、通常「興味本位」ということで、忌み嫌われたりする。
酒井あゆみが聞こうとすることも、見ようによっては「興味本位」である。
しかし、インタビューを受け入れ、突っ込んだ話をするということは、その人たちが酒井あゆみの何かを認めたということなんだろうと思う。

酒井あゆみの書いたものを「興味本位」という視点からだけでも読めると思う。
真剣に書いたものであるが、そのような危うさがあるところが、そして実はその危うさが「本質」だったりする。

というようなわけで、幻冬舎文庫にある「東京夜の駆け込み寺」「眠らない女」「人妻風俗嬢」「セックスエリート」と読んできたのだが、今回の「レンタル彼氏」については一気に読めなかった。

13人の女性が登場し、いわゆる「男を買う」ことについて色々述べているのである。読みたびに、いいようのない空しさに包まれ、社会の堕落ということばが渦巻き、「何を言いやがる!」という怒りがこみあげ、なんともいえず不愉快な気分になるのであった。

「お金を払った関係」「割り切った関係」で、彼女たちは何を得ようとしたのか?
そこが最も知りたいところである。

著者は真摯に対応している。しかしその真摯な対応が実は彼女たちに「うそ」をつかせていると思うのである。
あるいは彼女たちも説明できないことなのかもしれない。
共通しているのは罪悪感はあるとしながら「でもこうしなければならない私なの」という、こちら側から言わせれば勝手な物言いである。

だから読後感がすごく悪くなってしまったのかもしれない。

「世も末」という感想がいちばん似合うのかもしれない。
「幸福」とはなんなのだろうか。自立した女というのは自由にお金を使える人を指すのか。楽しければなんでもいいのか。

人と人のつながりが本当に希薄になってきていることが実感できる。そして、これから日本はどうなっていくんだろうか、少子高齢化よりも根の深い問題なのかもしれない。

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