副題が「思い出したくない過去を乗り越える11の方法」とあるように、また、著者が、精神科医でもあるように、
たとえば、外傷性記憶のように、忘れてしまいたい忌まわしい記憶を
どうすれば忘れられるかについて、いくつかの方法を提示した書である。
本書では、どういう記憶が忘れにくいのかについて、いくつかの例をひいて具体的に示され、
次に、そのメカニズムを説明し、
最後に、忘れるための処方箋を示している。
たとえば、「親孝行」についての著者自身のエピソードがでてくるが、これなどは示唆深い。
ひとによって異なるだろうが、親に対して持つ感情というのは、一方では、いろんな世話を受けたという恩義もあるであろうし、
なぜ、あのとき、必要なあれを買ってくれなかったのかという不満足な記憶もあると思う。
このケースでは「恩を返す」というと、子が親に親孝行することになるのであろうが、
「恩は子孫に返せばよい」という発想が語られている。
親は、どうしてもよい面もあれば、悪い面も持っているので、対象に対する感情もアンビバレントなものになる。
そういうとき、この「格言」は、気分をすっきりさせてくれるに違いない。
十分に自分が納得できる親孝行なんかできない多忙な現代に於いては。
なお、岡野憲一郎「心理療法/カウンセリング30の心得」、みすず書房、2012が一番新しい著書である。
たまたま、ジュンク堂で見つけて買ったところ、おもしろかったので、続いて読む本を探したところ、そのなかで
タイトルに惹かれて買ったのが、紹介した本である。