南斗屋のブログ

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人身傷害補償特約で新判例

2007年10月31日 | 交通事故民事
人身傷害補償特約で、最高裁の新判例がでました(最高裁 平成19年10月19日判決)→最高裁のホームページ

 この「人身傷害補償特約」というもの、聞きなれぬ方も沢山おられるのではないかと思いますが、自動車総合保険契約という全部パックになっている契約に入りますと、その特約として、この人身傷害補償特約がついています。

 最高裁まで問題になったのは"自動車を運転していた方が、ため池に転落して死亡した(死因はでき死)"という事案でした。
 このような事案の場合「加害者」はいませんから、加害者の任意保険会社に請求するということはできません。
 そこで、その自動車が加入していた保険、いわば被害者が加入していた保険から、保険金が支払われないかどうかを、検討する事になりますが、その一つが人身傷害補償特約になるわけです。

 人身傷害補償特約には、細かい要件があり、その全部を紹介する事はこのブログでは出来ませんので、ここでは最高裁で問題となったところだけ紹介いたします。

 このケースで問題となったのは「外来の事故」という特約の文言の解釈でした。
被害者は、狭心症の持病をもっていたようで、高松高裁では「本件事故は、被害者が狭心症による発作等の身体疾患に起因した意識障害により起こったものである疑いが強い」と考え、このような身体疾患等の内部的原因による事故は「外来の事故」とはいえないとして、被害者の遺族側の請求を認めませんでした。

 これに対し、最高裁は「外来の事故」というのは、言葉そのものからすれば「被害者の身体の外部からの作用による事故全般をいうので、被害者の病気で生じた事故も外来の事故にあたる」として、被害者側の請求を認めました。
つまり、被害者側としては、事故と障害や死亡という結果との間に、因果関係があるところまで証明すれば、人身傷害特約を支払ってもらえるというものです。

 この最高裁が判断したようなケースが、多数生じるとは考えにくいのですが、この最高裁判決は各新聞紙上でもとりあげられており(私が見たのは20日付夕刊でした)、人身傷害補償特約についてマスコミがとりあげることも珍しいので、このブログでも紹介した次第です。

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