ジオラマの話に戻ってきました。建物をひととおり作って7月になりました。いよいよここから地面ということで、通常なら先に地面を作ってその上に建物を配置するのですが(実物だって土地に合わせて建物を建てたり、造成をするわけですから)、手順が逆になりました。
(再掲になりますが、建物を先につくったので、そこから建物の配置を考え、土台の設計に入りました。まだレールも敷設していませんね)
1 街並みの土台をつくる。
最初に述べたように、街並みの部分は一段高くして、列車は切通しの下を走る、という配置にしましたので、まずは街並みの土台から作っていきます。モーリンのスタイロフォーム(3cm厚)を2枚重ね、さらに1cm厚のものを重ねて計7cmの高さの地面ができました。
ジオラマ全体のルールとして、レールから4.5cmの高さを確保しなければならず、また、トンネルポータル等の高さと合わせるため、7cmの高さとしました。さらに街並み部分には路面電車のレールも敷きます。トミーテックのワイドトラムレールを敷く関係で、路盤の厚さ6mm程度を別に確保する必要があります。
右側がモジュールの手前側、列車が実際に走る部分です。構造的にはこのような形になっています。さらに、モジュールの右側に3軒並ぶファーラーの店舗付き住宅については照明も入れていますので、コードなどを逃がす切り欠きをつけました。
結構ギリギリまで悩んだのが建物や道路の配置でした。完成形では中央を左右に横断する大きな通りとしましたが、プランの段階では道路や路面電車はすべて手前側に持ってきて、列車が走る線路の上を高架にして道路や軌道敷を作ってしまおうか、と考えたこともありました(下図参照)。実際にGMの水平橋脚を横に並べてみようかな、などと考えたりもしました。
このような配置にしますと、上の路盤を支える橋脚が左右方向にたくさん並ぶ感じになります。そうしますと走る模型の方は橋脚越しに眺める感じになってしまいます。あくまでも車輌が主役で、モジュールはそのための舞台、と私は思いますので、なるべく走る車輌がクリアな視界で観られるようにと思い、配置を考えました。結局、右側1/3はトンネルとしつつ、奥から手前方向に延びるガード部分を設けつつも、全体の半分近くは視界に邪魔が入らず、列車が見られるようにしました。
配置もだいぶ固まってきました。
2 道路や路盤の仕上げを行う
ピンボケな写真で失礼いたします。本来、線路周りはバラストを撒いて木工用ボンドを水に溶いたもので固めていくのがセオリーですが、固着しなかったバラストが床に落ちたりすることもあります。養生はしていても動かすたびにそういうことが起きるのも何なので、線路の下に光栄堂の「アースモデルシート」という糊つきの情景シートを貼りました。建築模型の世界では光栄堂の製品は有名ですね。もちろん、模型に使えるものもたくさん出ています。アスファルト・道路用ということで、いちぱん暗めの色を使っています。こちらのシートはちょっとした空き地や建物の後ろなど、あちこちで使いました。
切通しの上、市街地の道路ですが、こちらはファーラーの「ローマの石畳」というシートを使いました。糊はついておりませんが厚みのある紙製で、平面なら十分に使えます。あらかじめウェザリングされたような色合いとなっているのも使いやすいところです。ただ、実際にはローマの石畳はもっと黒ずんでいます。
路面電車の路盤は、当初は製品のままでそこにウェザリングをして・・・と思ったのですが、ウェザリングかうまくできず、かえって汚くなってしまったこともあり、軌道敷として津川洋行のシーナリーペーパー、石積(灰)を貼っています。
実際にはローマの街のすべてが石畳になっているわけではなく、普通のアスファルト部分も見かけます(グーグルアースなどで確認してみてくださいね)。路面がある程度仕上がりましたので、ようやく建物を固定できるところまできました。
今回のジオラマを出展した「T-TRAKジオラマSHOW」ですが、併催と言いますか、メインの高校生のコンテストで表彰された作品の中には、来場者の目線からでは列車の走行がほとんど隠れてしまうものも見受けられました。さきほども申し上げたようにあくまで主役は線路を走る車輛で、モジュールはそのための舞台、という考えの私にとっては驚きでした。もちろん、表彰された作品が非常に緻密に作られており、実物の情景の解釈や再現も含め、情景模型としての完成度の高さは言うまでもなく、それを悪く言うつもりは全くございませんが、これは車輛が走っている様子がほとんど見えないものに高い評価をつけた審査員各位の「見識」と受け止めさせていただきます。TMSの山崎喜陽氏が見たら、どんな感慨を持たれるかな、などと思いました。それとも「今はまだ語るべき時ではない」と言われるのでしょうか。