NEST OF BLUESMANIA

ミュージシャンMACが書く音楽ブログ「NEST OF BLUESMANIA」です。

#104 大貫妙子・山弦「snow」

2009-12-27 11:31:30 | Weblog
#104 大貫妙子・山弦「snow」(note/EMIミュージック・ジャパン)

年の瀬にふさわしい一曲を。大貫妙子とアコギ・ユニット山弦の共演ナンバーだ。大貫のオリジナル。

早いもので、ター坊がシュガー・ベイブで75年にレコードデビューしてから、34年もの歳月が経ってしまった。

ソロデビューからでも33年。もう、押しも押されもしない大ベテランということやねぇ~。

その間に出したアルバムも、オリジナルものだけでも33枚。平均すれば年に1枚。実に堂々たる仕事ぶりなんである。

でも、30数年たっても、彼女、デビュー当時とほとんど変わっていないのだ。見た目の楚々としたイメージも、その透明な歌声も。

これはホント、スゴいことでっせ~。

まあ、その驚くべき若さの秘密は、ター坊自身も言っていたように、ずっと結婚せずに、自由な生き方をしてきたからに、ほかならないだろう。

さて、今日の一曲は、2002年のアルバムより。ここでは実力派アコギデュオ「山弦」との共演を果たしている。

そもそも彼らのなれそめは、山弦(小倉博和、佐橋佳幸)のオリジナル・インスト「祇園の恋」に、ター坊が歌詞をつけて「あなたを思うと」というタイトルで歌ったことから始まっている。これが実に素晴らしい出来映えだった。

そのコラボレーションを発展させ、アルバム一枚にまとめあげたのが「note」ということになる。

現在56才の大貫より、6、7才ほど若い山弦のふたりだが、キャリアは十分。決して、ター坊に貫禄負けしていない。小倉はもとより、ふだんはエレクトリック・ギターでハジけまくっている佐橋も、しっとりとした大人っぽい音を聴かせてくれる。

今日の「snow」は、ミディアムスローテンポのバラード。ター坊はいつものように、なんのギミックも使わず、さらっと歌い上げているのだが、これがまた極上の味わい。

彼女の澄み切った歌声に、山弦のふたりの爪弾きが重なりあい、純白の冬の風景を聴き手の心に浮かび上がらせるのだ。

これぞ、ピュア・ミュージックと呼ぶにふさわしい音。日頃ストレスで汚れきった心を、見事に洗い清めてくれるのです。

三人の生み出す、透明度100%のサウンドに、些事を忘れて身をゆだねていただきたい。

本家はこちらです


#103 ヴァン・ヘイレン「Ice Cream Man」

2009-12-13 12:40:49 | Weblog
#103 ヴァン・ヘイレン「Ice Cream Man」(Van Halen/Warner Bros.)

ヴァン・ヘイレン、78年リリースのデビュー・アルバムより。ジョン・ブリムの作品。

ヴァン・ヘイレンは、ここ10年ほどは活動休止状態ではあるものの、35年もの歴史を誇る長寿バンドだ。

オリジナル・メンバーはエディ(g)とアレックス(ds)のヴァン・ヘイレン兄弟に、デイヴィッド・リー・ロス(vo)とマーク・アンソニー(b)の4人編成。74年、カリフォルニア州パサディナにて結成。

78年にキンクスのカバー「You Really Got Me」のシングルヒットを飛ばしたときは、実に清新な衝撃をロック界に与えたものだ。

ブリティッシュ・ハードロックの強い影響を受けながらも一歩突き抜けた、アメリカのバンドならではの陽気で開放感あふれるサウンドは、それまでにないものだった。

デイヴの賑やかなキャラクターと超絶高音ボーカル、エディの派手なライトハンド奏法、そしてリズムセクションの切れのいいワイルドなプレイ。

先達であるZEP、エアロなどともひと味違った、まさに新世代ハードロックの幕開けだった。

ファーストにしてすでにベテラン・バンドに匹敵する完成度を備えたアルバムは、リスナーたちを大いに刺激した。これぞ80年代の音という評価も少なからずあった。

その後バンドは何回かのメンバー交代を経て、少しずつスタイルを変えつつも存続していくのだが、デビューアルバムを最高傑作と考える人は多い。

初々しさというよりは、既に十分な貫禄を感じさせるそのサウンドは、フツーのバンドならば3枚目か4枚目でようやく達成するレベルのものだ。

そんな良曲ぞろいの中でも、ちょっと異色の一曲が、この「Ice Cream Man」。

ジョン・ブリムといえば、50年代にシカゴで活躍した黒人シンガー/ギタリストだが、いくつかのレーベルを経て所属したレコード会社、チェッカー/チェスとの折り合いがあまりよくなかったため、そこでのレコーディングもお蔵入りになることが多く、わずかにエルモア・ジェイムズとの相乗りアルバム「Whose Muddy Shoes」(70年発表)収録の7曲で知られる程度であった。

60年代にはミュージシャンからほぼ足を洗って、クリーニング屋で生計を立てざるをえなかったという。

そんなブリムにとって思いもよらぬ朗報が、このヴァン・ヘイレンによるカバー・バージョンだった。

ブリムが再びブルースマンとして表舞台に立つことになったのも、このアルバムのヒットのおかげだったという。

オリジナルは、ブリムの友人リトル・ウォルターのハープを従えた軽快なシャッフルだが、ヴァン・ヘイレン版はちょっとひねってあって、前半アコースティック、後半ハードロックというアレンジになっている。

ブリムが妻のミュージシャン、グレイスの協力を得て作ったユーモラスな歌詞が、実に印象的。ダイヤモンド・デイヴの伊達男キャラにもマッチした、小粋でちょっとキワドく、そしてとことん陽気なナンバーだ。

デイヴの派手なボーカルに負けじと、目一杯ハジケて弾きまくるエディのギター・ソロも聴きもの。

ヴァン・ヘイレンによる、ブルース讃歌と言える一曲。ハードロックのルーツは、やっぱりブルースなんであります。

本家はこちらです


#102 ブラインド・ボーイ・フラー「Georgia Ham Mama」

2009-12-06 10:45:54 | Weblog
#102 ブラインド・ボーイ・フラー「Georgia Ham Mama」(Remastered 1935-1938/JSP)

戦前に活躍したシンガー/ギタリスト、ブラインド・ボーイ・フラーの30年代のレコーディングから。フラーの作品。

フラーは本名フルトン・アレン。1907年、ノース・キャロライナ州ウェイズボローの生まれだ。

ブラインド・ブレイク、ロニー・ジョンスンなどの影響でギターを始め、20代にはゲイリー・デイヴィス師について習う。

35年頃よりノース・キャロライナ州ダラムでプロとして活動、120曲ものレコーディングを残した。

だが、残念なことに、41年33才の若さで病死している。

そんな夭折のブルースマンだが、彼の影響をしっかりと受けている大物アーティストがいる。ブラウニー・マギーだ。

きょうの一曲を聴いていただくとよく判ると思うが、その特徴的な節回しは、クリソツといってもいい。

バックにはマギーの相方、サニー・テリーがハープで参加しており、知らずに聴くと一瞬、テリー=マギーと勘違いしそう。

その、いい感じに鄙びた味わいは、マギーに引き継がれたといっていい。

実際、フラーがなくなった時、マギーはそれを大いに悲しみ、一時はブラインド・ボーイ・フラーIIと名乗ったくらいだったという。

歌だけでなく、ギターでもフラーは後世に少なからぬ影響を残している。マギーとともにその代表格といえるのが、黒人女性ギタリストのエタ・ベイカー。さらには、シーファス&ウィギンスなどにもその強い影響が感じられる。

ラグタイムを基調としたそのプレイは、確かなリズム感とテクニックに裏打ちされたものだ。

ちょっと田舎くさい歌いぶりに、このリズミカルなギターが加わることで、なんとも魅力的なカントリー・ブルースに仕上がっている。

ハンチングなどかぶってリゾネーターをつまびく姿、実に粋なんである。

筆者にとっても、目標となるブルースマンのひとり。ホント、憧れちゃいます。

本家はこちらです