#116 キャンド・ヒート「Got My Mojo Working」(Let's Work Together/Goldies)
60年代より現在に至るまで活動している長寿バンド、キャンド・ヒートのベスト盤(オランダ版)より、マディ・ウォーターズでおなじみのナンバーを。
キャンド・ヒートは65年頃、アル・ウィルスン(g,hca)、ボブ・ハイト(vo)を中心にロサンゼルスにて結成された白人バンド。ブルース・バンドとは名乗っていないが、そのレパートリーの多くは黒人のブルースであり、当時としては先駆的なホワイト・ブルース・バンドであった。ちなみに、グループ名は黒人ブルースマン、トミー・ジョンスンの曲名からとっている。
ジョン・リー・フッカーとの共演アルバム「Hooker 'n' Heat」を出したり、モンタレーやウッドストックなどの大規模なフェスティバルに出演したりして知名度を上げた彼らは、ブルースのカバーだけでなくオリジナル曲も発表し、いくつかはヒット曲も出す。
だが、70年代後半は実質的に休止状態。長いブランクののち、80年代の末に活動を再開する。メンバーを変えながら現在に至っている、というわけだ。
筆者が思うに、彼らの演奏は「どれだけ黒人のサウンドを忠実に再現出来るか」が基本ポリシーなんだと思う。歌い方にせよ、演奏にせよ。あるひとはそれを「黒人ブルース原理主義」などともいう。
白人ロックミュージシャンの多くは、ブルースという原典を換骨奪胎して、自分たちにとって歌いやすい、演奏しやすいスタイル(たとえば、ロカビリー)に変えてしまった。だが、彼らは「それじゃだめなんだ」といわんばかりに、白人的なアプローチを拒否し、あくまでも原典の再現にこだわった。
そのこだわりぶりは、あまたあるホワイト・ブルース・バンドの中でも、頭ひとつ抜けているといっていいだろう。
その頑さゆえに、いわゆるポピュラリティは獲得出来なかったものの、そのこだわりに共鳴してか、いまだにファンが根強く残っているのが、彼らの特徴だといえそうだ。
ところで、きょうの一曲、説明など不要であろうが、ブルース・スタンダード中のスタンダード。ブルース・ファンでは知らぬ者などひとりもいない、超有名曲だ。
あまりにも繰り返し演奏されてきたせいで、「もう聴きあきた」などという評もないわけではないが、どこのブルースセッションでも、必ず一度は演奏される、そんな絶対的なポピュラリティを誇っている。
なにより特徴的なのは、その意味深長な歌詞だ。もともとこの曲はプレストン・フォスターが作り、女性R&B歌手、アン・コールがステージで歌っていたのを、当時彼女と組んでツアーをやっていたマディ・ウォーターズが気に入り、オリジナルの歌詞をつけてちゃっかり自分のレパートリーに取り込んでしまったのである。
以来、この曲は、黒人白人、ブルース、ロックを問わず、とんでもない数のアーティストによってカバーされることになる。日本でも60年代後半からブルース・クリエーション、ゴールデン・カップスをはじめとする多くのバンドが取り上げていたのは、50前後のひとならよくご存知だろう。
当時は「モジョ、それ何? 美味しいの?」みたいな感じで、正体不明のアイテムだったわけだが、要するに意中の女性を振り向かせるための、まじないグッズ。
つまり、歌の内容自体、かなーりインチキくさいのだが、それをとにかくノリと勢いで歌い切ってしまうのが、いかにも元祖モテ男、マディらしかった。
キャンド・ヒートの場合、(写真を見るとわかると思うが)イケメン、モテ系がひとりもいない、いやむしろムサい系以外の何者でもなかったわけだが(笑)、ひたすらモジョの、そしてマディのご利益を信じ切って歌っている感じで、なんだか微笑ましい。
そのくらい、この「Got My Mojo Working」という曲には、とてつもなくマジカルな力があるってことなのです。
マディのむこうを張って、超アップテンポで演奏されるこの曲。聴いていると、ガンガン、エネルギーがチャージされてきまっせ、お客さん。
60年代より現在に至るまで活動している長寿バンド、キャンド・ヒートのベスト盤(オランダ版)より、マディ・ウォーターズでおなじみのナンバーを。
キャンド・ヒートは65年頃、アル・ウィルスン(g,hca)、ボブ・ハイト(vo)を中心にロサンゼルスにて結成された白人バンド。ブルース・バンドとは名乗っていないが、そのレパートリーの多くは黒人のブルースであり、当時としては先駆的なホワイト・ブルース・バンドであった。ちなみに、グループ名は黒人ブルースマン、トミー・ジョンスンの曲名からとっている。
ジョン・リー・フッカーとの共演アルバム「Hooker 'n' Heat」を出したり、モンタレーやウッドストックなどの大規模なフェスティバルに出演したりして知名度を上げた彼らは、ブルースのカバーだけでなくオリジナル曲も発表し、いくつかはヒット曲も出す。
だが、70年代後半は実質的に休止状態。長いブランクののち、80年代の末に活動を再開する。メンバーを変えながら現在に至っている、というわけだ。
筆者が思うに、彼らの演奏は「どれだけ黒人のサウンドを忠実に再現出来るか」が基本ポリシーなんだと思う。歌い方にせよ、演奏にせよ。あるひとはそれを「黒人ブルース原理主義」などともいう。
白人ロックミュージシャンの多くは、ブルースという原典を換骨奪胎して、自分たちにとって歌いやすい、演奏しやすいスタイル(たとえば、ロカビリー)に変えてしまった。だが、彼らは「それじゃだめなんだ」といわんばかりに、白人的なアプローチを拒否し、あくまでも原典の再現にこだわった。
そのこだわりぶりは、あまたあるホワイト・ブルース・バンドの中でも、頭ひとつ抜けているといっていいだろう。
その頑さゆえに、いわゆるポピュラリティは獲得出来なかったものの、そのこだわりに共鳴してか、いまだにファンが根強く残っているのが、彼らの特徴だといえそうだ。
ところで、きょうの一曲、説明など不要であろうが、ブルース・スタンダード中のスタンダード。ブルース・ファンでは知らぬ者などひとりもいない、超有名曲だ。
あまりにも繰り返し演奏されてきたせいで、「もう聴きあきた」などという評もないわけではないが、どこのブルースセッションでも、必ず一度は演奏される、そんな絶対的なポピュラリティを誇っている。
なにより特徴的なのは、その意味深長な歌詞だ。もともとこの曲はプレストン・フォスターが作り、女性R&B歌手、アン・コールがステージで歌っていたのを、当時彼女と組んでツアーをやっていたマディ・ウォーターズが気に入り、オリジナルの歌詞をつけてちゃっかり自分のレパートリーに取り込んでしまったのである。
以来、この曲は、黒人白人、ブルース、ロックを問わず、とんでもない数のアーティストによってカバーされることになる。日本でも60年代後半からブルース・クリエーション、ゴールデン・カップスをはじめとする多くのバンドが取り上げていたのは、50前後のひとならよくご存知だろう。
当時は「モジョ、それ何? 美味しいの?」みたいな感じで、正体不明のアイテムだったわけだが、要するに意中の女性を振り向かせるための、まじないグッズ。
つまり、歌の内容自体、かなーりインチキくさいのだが、それをとにかくノリと勢いで歌い切ってしまうのが、いかにも元祖モテ男、マディらしかった。
キャンド・ヒートの場合、(写真を見るとわかると思うが)イケメン、モテ系がひとりもいない、いやむしろムサい系以外の何者でもなかったわけだが(笑)、ひたすらモジョの、そしてマディのご利益を信じ切って歌っている感じで、なんだか微笑ましい。
そのくらい、この「Got My Mojo Working」という曲には、とてつもなくマジカルな力があるってことなのです。
マディのむこうを張って、超アップテンポで演奏されるこの曲。聴いていると、ガンガン、エネルギーがチャージされてきまっせ、お客さん。