2003年6月6日(金)
#167 エアロスミス「GET YOUR WINGS」(COLUMBIA CK 32847)
エアロスミスのセカンド・アルバム。74年リリース。邦題「飛べ!エアロスミス」。
前年、アルバム「AEROSMITH」でデビューした彼らだが、二枚目のアルバムを発表する頃までは、日本ではまださほどの人気でなかったと思う。
人気が急上昇してくるのは、翌年アルバム「TOYS IN THE ATTIC」を出し、「SWEET EMOTION(やりたい気持ち)」、そしてラップをロックに導入したナンバー、「WALK THIS WAY」を連続ヒットさせたあたりからだろう。
その後は、皆さんご存じのように、キッス、クイーンとともに「ロック御三家」とまで呼ばれる超人気グループになるわけだが、ブレイク以前の彼らにも、なかなかいい曲がある。
<筆者の私的ベスト3>
3位「TRAIN KEPT A ROLLIN'」
タイニー・ブラッドショー(ほか)の作品だが、もちろんエアロはヤードバーズのヴァージョンでこの曲を知った世代。
それが証拠に、前半(スタジオ録音)はやや遅めのテンポながら、後半、ライヴで演奏するアップテンポのアレンジは、まさにヤーディーズ版をまんま戴いたもの。
アメリカのバンドでありながら、彼らが自国よりも英国のロックの強い影響を受けたことがよくわかりますな。
曲によっては、クイーンにもかなり近い音を出している。どちらがどちらを真似したってことではないでしょうが。
で、この曲でのジョー・ペリーのギターが(別に難しいことをやっているわけではないが)、音の伸びが実によくてカッコいいのひとこと。
これぞロック・ギター!という感じの演奏であります。また、ジョーイ・クレイマーのパワフルなドラミングもいうことなし。
しかし、邦題の「ブギウギ列車夜行便」、これはないよな(笑)。
2位「SAME OLD SONG AND DANCE」
これも邦題がスゴいぞ。なんてったって「エアロスミス離陸のテーマ」だもんな(笑)。
なんとか日本にファンを増やそうという、当時のレコード会社の宣伝マンの力作なんだろうが、どうもご苦労さまという感じ。
グループ名や、アルバム・タイトルに引っかけたまでで、歌の中身は「離陸」とはほとんど関係ありません(笑)。
タイラー=ペリー・コンビの作品。ミディアム・テンポのオーソドックスなロック・チューン。
キャッチーなギター・リフがいかにもエアロらしい。
おっと思わせるのは、バックにホーン・セクションを配し、サックス・ソロをフィーチャーしていること。
このホーンになんと、ブレッカー・ブラザーズまでが参加しとります。どうりで、イカした音だわ。
このへんに、ブリティッシュ・ロックの影響大ながらも、それに完全に同化しない、アメリカのバンドらしい個性を感じるね。
4人の演奏、タイラーの歌いぶり、ともに手堅いものがある。二枚目にして、なかなかの完成度だ。
1位「S.O.S.(TOO BAD)」
「S.O.S.」といったって、アバではない。もちろん、ピンク・レディーでもない(たとえが古すぎるか)。
なぜか邦題は「エアロスミスS.O.S」。そこまで冠を付けなくても、ええんちゃうの(笑)。
あまりにおかしいので、他のナンバーも邦題を書いちゃいますが、「SPACED」→「四次元飛行船」、「WOMAN OF THE WORLD」→「黒いコートを着た女」、「SEASON OF THE WITHER」→「折れた翼」てな具合。直訳なのは「PANDRA'S BOX」→「パンドラの箱」くらいのもんか。
でもまあ、これが約30年前の洋楽レーベルの宣伝マンの、平均的センスなので、大目に見てあげてや。
で、閑話休題。この曲はタイラーの作品。ミディアム・ファスト・テンポで、カッチリとまとまった一曲。
耳に残るシンプルなリフの繰り返し、どこか哀愁を漂わせるマイナー系のメロディ・ライン。
すでにして「エアロ節」、「タイラー節」とでもいうべき個性が確立されている。
凡百のハード・ロック・バンドにはない「サムシング」が、この曲を聴くと感じられるってこと。
まさに、「栴檀は双葉より芳し」ですな。
最後に付け加えておくと、本作よりジャック・ダグラスがプロデュースにあたっている。
明らかにデビュー・アルバムよりは、音に「しまり」が出て、曲調にも幅が出来、バンドとしてよりプロフェッショナルな相貌を見せてきているのが、この「GET YOUR WINGS」。
その「変化」は、バンド・メンバー自身の成長によるものだけでなく、ダグラスの手腕によるところも大きいと思うが、いかがであろうか。
まさに「上昇気流」にのった、イキのいい彼らを再発見して欲しい。
<独断評価>★★★☆