NEST OF BLUESMANIA

ミュージシャンMACが書く音楽ブログ「NEST OF BLUESMANIA」です。

#84 中島愛「天使の絵の具」

2009-07-26 17:26:17 | Weblog
#84 中島愛「天使の絵の具」(ノスタルジア/flying DOG)

若手女性声優・歌手の中島愛(めぐみ)のセカンド・シングル所収のナンバー。

このタイトルを聞いてピン!と来た方、あなたは決して若くありませんね(ニヤリ)。

そう、この曲はアニメ映画「超時空要塞マクロス 愛・おぼえていますか」のエンディング・ナンバー。実に25年前の曲なんである。

個人的なことをちょっと書いてしまうと、筆者は当時、少年漫画誌の編集者。担当している作品の仕事がなかなかうまくいかず、プライベートでも失恋続き、八方ふさがりの状態だった。

そんなある日、仕事の空き時間に吉祥寺の映画館にふらりと入って観たのが、この劇場版「マクロス」。で、その中で一番印象に残ったのが、ヒロインの一人、アイドル歌手のリン・ミンメイ役の声優もつとめた女性歌手、飯島真理の歌声だった。

テーマソング「愛・おぼえていますか」は、当時大ヒットとなったが、実はその曲以上に気に入ったのが、この「天使の絵の具」。飯島自身のオリジナルで彼女のセカンド・アルバムにも既に収録されていたが、それを清水信之がアップテンポの曲調にリ・アレンジ、非常にポップでキャッチーな感じにリニューアルしたのが映画版バージョンだった。

この、彼女の甘~い歌声に、筆者は一発でノックアウトされてしまったのだ。

けっして、ミンメイのキャラクターに(いまふうにいえば)「萌えた」わけではない。また、「中の人」である飯島のルックスが好みだったわけでもない。むしろ、苦手なタイプだった。

ただただ、純粋に飯島の「声」に萌えてしまったのである。

こんな「声萌え」は、めったにあることじゃない。筆者自身でいえば、これまでの人生でも、松田聖子と飯島真理ぐらいしかないのだ。

ある女性歌手に惚れ込むときは、自分の場合、たいていは歌声だけでなくそのルックスやキャラも含めて総体的に気に入るケースがほとんど(具体的には、小林麻美、中森明菜、中山美穂、工藤静香などがそのパターン)だが、ルックス的に格別好みでないこのふたりを好きになったということは、やはり、声そのものにとてつもない魅力があった、そういうことなんだろう。

さて、前フリがやたら長くなってしまったが、きょうの一曲は、昨年放映して大人気だったTVアニメ「マクロスF」のヒロイン、ランカ・リーをつとめた中島愛による、マクロス・スタンダードのカバーというわけだ。

聞くところでは、現在のマクロス・ファンに「ランカ・リーに歌ってほしい過去のマクロス・ソング」の人気投票をしてもらって、見事一位となったのが、この「天使の絵の具」だとか。「ああ、みんなもこの曲が一番好きだったんだ!」とわが意を得たりで、実にうれしい。

さて、中島自身は「マクロスF」のオープニング・ナンバー「星間飛行」を既にヒットさせて、歌手としても好調なスタートをきっている。日比のハーフということで、エキゾチックな濃い顔立ちをしており、スターの素質も十分だ。

とはいえ、この「天使の絵の具」を聴くに、声の高音部の伸びとかツヤとかいったキメどころで、残念ながら飯島真理版より聴き劣りしてしまうのも事実だ。

25年以上前のオリジナル・マクロスこそ最高!と信じて疑わない原理主義者たちには、まず受け入れられそうにないなぁ。ちょっと残念。

でも、当時を知らない若いファンたちにしてみれば、それがどうした!?という感じだろうね。

オリジナルとはいえ、昔のマクロスはいまのマクロスとは別物。時代の流れに応じて、キャラの絵柄も変化しているし、人物造型、ストーリー展開も変わってきている。

新しい時代には、やはり、新しいヒーロー、ヒロインが必要なのだ。

弱冠ハタチの中島の表現力が、飯島のそれに追いついていないからといって、叩くのはどうかと思う。

どんな歌い手でも、歳月を経て、歌を成長、進化させていくものなのだ。

そういう意味で、この中島愛はあえてアニメキャラクターに寄りかかった声(いわゆるキャラ歌唱)でなく、彼女自身のスタイルで、正統派の歌い方で歌おうとしているのが頼もしい。

飯島真理ほどの、天賦の声の魅力はないにせよ、いいシンガーになる可能性は十分に持っている。

中島愛の今後の成長に、大いに期待してます。

この曲を聴く


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#83 レッドベリー「Leaving Blues」

2009-07-19 09:31:38 | Weblog
#83 レッドベリー「Leaving Blues」(Leadbelly/Virgin)

四週間ぶりの更新は、この一曲であります。フォーク/ブルース・シンガー、レッドベリーの40年代の録音より、自身のオリジナルを。

レッドベリーは1888年ルイジアナ州ムーアリングスポート生まれ。49年、ニューヨークにて61才で亡くなっている。

テレビはおろか、ラジオ放送もまだ始まっておらず、レコードも普及していなかった20世紀の前半、庶民はどうやって音楽を楽しんでいたか?

各地を回って、生の弾き語りで歌をうたいきかせるシンガーが、そういったメディアのかわりに存在していたのだ。彼らはソングスター(Songster)と呼ばれていた。

レッドベリー、本名ハディ・レッドベターもそのひとりで、12弦ギターを手に、さまざまなジャンル(フォーク、ブルース、ワークソング、スピリチュアルなど)の音楽を、ひとりで歌って旅をしていた。

1930年代以降、国会図書館用や商業レーベルへの吹き込みも始まり、彼の名前は全国区的に有名となる。

白人、黒人を問わず人気を博し、後代にも大きな影響を与えている。たとえば、クリーデンス・クリアウォーター・リバイバル。彼らの4枚目のアルバム「ウィリー&ザ・プア・ボーイズ」では、A面、B面で一曲ずつ彼の代表曲「コットン・フィールズ」「ミッドナイト・スペシャル」がカバーされていて、その影響度がよくわかる。

きょう聴いていただく「Leaving Blues」も、アメリカのみならず、海を渡って英国のミュージシャンたちにもカバーされている。スキッフルのスター、ロニー・ドネガン、それからロリー・ギャラガー率いるバンド、テイストも録音しているのだ。

レッドベリーの歌の魅力といえば、なんといってもその円熟味あふれる「声」だろうな。きょうの一曲でも、ちょっと鼻にかかった高めの声でウェイルする、いかにもレッドベリーらしい歌唱を聴くことが出来る。そのひなびたムードは、いかにもルイジアナなんだよな~。

ギターのほうも結構達者で、そのプレイは実にリズミカルでスピード感があふれている。

明るい曲、メランコリックな曲、しみじみとした曲、どんな曲を歌っても、レッドベリーの個性がそこににじみ出ているのだ。

20世紀前半のアメリカ民衆音楽を象徴するシンガー、レッドベリーの歌う「Leaving Blues」。これぞカントリー・ブルースの粋(すい)だと思います。必聴。

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