NEST OF BLUESMANIA

ミュージシャンMACが書く音楽ブログ「NEST OF BLUESMANIA」です。

#82 レイジー・レスター「If You Think I've Lost You」

2009-06-21 09:13:51 | Weblog
#82 レイジー・レスター「If You Think I've Lost You」(I'm a Lover Not a Fighter/Ace)

レイジー・レスターの、エクセロ・レーベルにおける代表的ナンバーを。ジェリー・ウェストの作品。

レイジー・レスターは1933年、ルイジアナ州トーラス生まれ(存命中)。本名。レスリー・ジョンスン。

彼の郷里ルイジアナには、ルイジアナ・ブルースとよばれる独自のスタイルのブルースが育っている。アーティスト名でいえば、ライトニン・スリム、ロンサム・サンダウン、スリム・ハーポ、そしてこのレイジー・レスターが代表選手である。

彼らに共通していえるのは、独特の「ゆるさ」だ。陽性で、どこか白人のC&Wにも通じるところのある、のんびりした感覚。ルイジアナの気候、風土が生み出したカラーといえよう。

レスター自身は、ジミー・リード、リトル・ウォルターあたりのシカゴ・ブルースのハーピスト/シンガーの影響を受けたが、またそれらとも微妙に違った、地方色のある芸風だ。

レイジーの芸名通り、怠惰な感じが身上。歌は一本調子で音程も微妙、お世辞にもうまいとはいえないが、ハープはなかなか達者である。テクニックに走り過ぎず、味わいを大切にしているそのスタイルは、ハープ初心者にも結構参考になりそうだ。

きょうの曲のテーマは男女の「別れ」なんだが、深刻になったり湿っぽい感じになったりせず、どこかカラッとしている。レスターならではのユーモアが感じられるのだ。

レスターはこの「If You Think I've Lost You」のほか、全部で15枚のシングルをエクセロ時代に吹き込んでいる。これがいい曲揃いで、このアルバムでその大半を聴くことが出来る。

プロデューサー、J.D.ミラーの作品「I'm a Lover Not a Fighter」「Sugar Coated Love」「I Hear You Knockin'」あたりは必聴。ミラーは、ルイジアナの音楽シーンにおいて非常に広範囲の活躍をしたひとなので、ぜひその名を覚えておいて欲しい。

シカゴにはない、のどかな味わいのブルース。ぜひ、味わってみるべし。

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#81 ロバート・ナイトホーク「Sweet Black Angel」

2009-06-07 10:44:39 | Weblog
#81 ロバート・ナイトホーク「Sweet Black Angel」(Drop Down Mama/Chess)

ロバート・ナイトホークの、代表的ヒット・ナンバーを。ナイトホーク自身のオリジナル。

ジョニー・シャインズ、ハニーボーイ・エドワーズ、フロイド・ジョーンズらを収めたコンピレーション・アルバム「Drop Down Mama」で日本でもよく知られているナイトホークは、1909年アーカンソー州ヘレナ生まれ。67年、同地にて57才で亡くなっている。

本名・ロバート・マッカラム。戦前はロバート・リー・マッコイ、ランブリング・ボブなどといった名でレコーディングしたのち、改名。歌のみならず、スライド・ギターもよくこなすブルースマンだ。

きょう聴いていただく「Sweet Black Angel」は、BBが改作し、ステージでも定番曲となった「Sweet Little Angel」の、元歌としても知られている一曲だ。

どこか翳りのある落ち着いた歌声、そしてまるで人声のようによくうたい、泣くスライド・ギター。実に雰囲気があるね。

BBみたいにテンションの高い、ステージ・アクトで映えるタイプのブルースマンもいれば、ナイトホークのようにメランコリックで、モノローグ的な世界をもつブルースマンもいるのだ。

現在、入手できる音盤はごくごく少ないが、残されたわずかな曲でも、彼の独自の魅力を知ることが出来る。

名は体を表すとはよくいったもので、彼の芸名「Nighthawk(アメリカヨタカ)」は、いかにもその芸風にぴったりだと思う。

しっとりとしたそのサウンドは、あくまでも夜に聴くのがふさわしい音楽、そういう気がする。

シカゴ・ブルース・シーンで活躍しながら、そのテイストは正統派シカゴ・ブルースというよりは、戦前のブルースに近い。

サニーボーイ一世、ビッグ・ウォルター、ルーズベルト・サイクス、バディ・ガイなど、新旧さまざまなシカゴのブルースマンたちと共演をしているが、彼はやはり彼。

どのようなスタイルで演奏しても、人生の苦み、渋みを、その歌とスライド・ギターに味わうことが出来る。

これこそが、ミュージシャンにとって一番重要な「存在感」ではないかと思います、ハイ。

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