NEST OF BLUESMANIA

ミュージシャンMACが書く音楽ブログ「NEST OF BLUESMANIA」です。

#80 ローウェル・フルスン「Blue Shadows」

2009-05-31 11:04:31 | Weblog
#80 ローウェル・フルスン「Blue Shadows」(Chess Blues/Chess)

ローウェル・フルスン、チェッカー在籍時のヒット。フルスンのバンドのピアニスト、ロイド・グレンの作品だ。

このボリュームたっぷりのボックス・セット(なんと、101曲を収録!)以外では、日本盤「Hung Down Head」のボーナス・トラックでも入っているので、そちらで聴くことも可能だ。

ローウェル・フルスンといえば、ケント時代の「トランプ」というイメージが強いけど、チェッカー/チェス時代にもいい録音がある。この曲など、まさにそう。

リラックスしたムードでのびのびと歌い、かつギターを弾くフルスン。ホーンをフィーチャーしたジャジィなバックも実にごきげんだ。そして作曲者、グレンのピアノ演奏もいい。

ローウェル・フルスンは、知名度とかセールス枚数とかでいえば、ブルースの王者だったとは決していえないが、王者たるBBに多大な影響を与えたということで、第一級のひとだと思う。

フルスンの代表的ナンバーをBBは何曲もカバ-しているが、この「Blue Shadows」も、64年のアルバム「Rock Me Baby」でカバーしている。

フルスンは「怒り節」が基本のBBに比べると、もっと大らかというかラフな持ち味だが、おさえるべきところはつねにビシッとおさえている、そんな芸風だ。

このひとって、ホントに気持ちよさげに歌うんだよねぇ。まるで、風呂に入ってその中で歌っているように。

ある意味、シンガーの理想形ですな。ぜひ、その貫禄あふれる歌いっぷりを味わってみてください。

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#79 ジュニア・キンブロウ「Nobody But You」

2009-05-24 06:52:35 | Weblog
#79 ジュニア・キンブロウ「Nobody But You」(All Night Long/Fat Possum)

ジュニア・キンブロウ、ファット・ポッサムにおけるデビュー盤('92)より。キンブロウのオリジナルを。

バックバンド名はソウル・ブルー・ボーイズ。ベースはゲイリー・バーンサイド。ドラムスはキンブロウの息子、ケニー・マローン。

ジュニアことデイヴィッド・キンブロウは30年、ミシシッピ州ハドスンヴィルの生まれ。98年同州ホリー・スプリングスにて67才で亡くなっている。

彼は、R.L.バーンサイド同様、遅咲きのブルースマンとして、90年代、一躍脚光を浴びたひとである。

その、とめどなくループするようなブギのグルーヴは、R.L.爺にまさるとも劣らぬ強烈なものがある。

そのR.L.の息子ゲイリー、わが息子ケニーという次世代ミュージシャンを率いて、生み出すファミリー・グルーヴ。古いんだか新しいんだかよくわからんサウンドだが、とにかくクセになる音だ。

ゴツゴツとした歌とギター、粘っこいベース、ドラムス。ワン・コード、ワン・リフで押しとおすその音は、黒い。あくまでも黒い。

これが白人も含む若いリスナーにウケて、キンブロウは60過ぎにしてもっともヒップなアーティストとして認められたのだから、世の中何が起こるかわからない。

きょうの一曲も、ワン・コード・ブギ。まさに典型的キンブロウ節なナンバー。

キンブロウが経営していたジューク・ジョイントでのライブ録音なので、観客の反応もビビッドにとらえられており、その場の熱気がまんま伝わってくる。

酒焼けしたような野太い歌声が、実にいかしてるオヤジ、キンブロウの濃厚な世界を、とくと味わって欲しい。

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#78 J.B. ハットー「I Feel So Good」

2009-05-17 08:38:01 | Weblog
#78 J.B. ハットー「I Feel So Good」(Atlantic Blues: Chicago/Atlantic)

スライド・ギターの達人、J.B. ハットーのアトランティックでの録音より「I Feel So Good」を。おなじみ、ビッグ・ビル・ブルーンジーの作品だ。

J.B. ハットーは、1926年サウス・キャロライナ州ブラックヴィル生まれ。ジョセフ・ベンジャミン・ハットーがフルネームだ。83年にイリノイ州ハーヴェイにて57才で亡くなっている。

J.B. ハットーといえば、エルモア・ジェイムズ直系のブルースマンとしてよく知られているが、エルモアの幅の広い音楽性をすべて継承したというよりは、エルモアの中の一番泥臭い部分のみ受け継いだというべきだろう。そういう意味では、エルモアの従兄弟のホームシック・ジェイムズに近いという気もする。

とにかく、彼のスライド・プレイを聴けば、そのことがよくわかる。突飛なフレージングにせよ、ペナペナな音色にせよ、なんかすごく気ままに弾いている感じだ。また、そのボーカル・スタイルにしても然り。あくまでも田舎臭さを隠そうとしない。

時代が移り変わり、流行に取り残されそうが、おかまいなし。あくまでも自分のスタイルを貫く。うーん、ブルースマンやねぇ。

マディ・ウォーターズなどについてもいえることだが、時流に合わせて器用にスタイルを変えていくよりは、とことん一芸で通していくほうがその人らしい個性のあらわれだ、という気がする。

ということで、今日の一曲、聴いてみよう。バック・ミュージシャンはわりといま風にアップデートされた器用な演奏をしているのに対し、ハットーは全然洗練されていない。

リード・ギタリストの達者な演奏と比べてみると、一目瞭然ってやつだ。

でも、それでいいんである。ハットーは、ハットー。バンドの中で一番キャラが立っているから、無問題なのだ。

フェンダー、ギブソンみたいな有名ブランドをあまり使わず、マイナーで安価なギターを弾き、王様みたいな奇妙な帽子をいつもかぶっていたハットー。マイペースを絵に描いたようなこのブルースマンは、特に商業的に成功したわけではないが、妙に存在感がある。

いつも大きな口を全開にして歌い、叫び、スライドをプレイする彼は、「バイタリティの塊」って感じだ。

まさに元気の出るブルース。ハットーの快唱、快演を聴いとくれ。

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#77 Sphere(スフィア)「Future Stream」

2009-05-10 10:43:39 | Weblog
#77 Sphere(スフィア)「Future Stream」(GloryHeaven-ランティス)

先日、Aice5を取り上げて以来、彼女たちに続く次世代声優ユニットはないものかチェックしてみたところ、このスフィアが目に飛び込んできたのでご報告。

スフィア(Sphere)とは、英語で球体、天空等の意味。この2月に結成、4月22日にCDデビューしたばかりの、寿 美菜子、高垣彩陽、戸松 遥、豊崎愛生による4人組だ。

寿は17才、高垣は23才、戸松は19才、豊崎は22才。平均年齢20.25才と実に若い。Aice5とは完全に10年のへだたりがある(笑)。

それぞれが何年かのキャリアはあるが、声優としてはまだ駆け出しといったところか。戸松はすでにソロ歌手としてシングルデビューしており、他の3人もアニメ内ユニット等での歌手経験がある。

人気の戸松を中心に、若手女性声優のきれいどころを集めた。というよりむしろ、最近の声優界の傾向として、ルックスのいいコを優先的に採用して、将来的には歌手、女優などの「表」の仕事へ売り出していく、そんなもくろみが透けて見えるんだけどね。

声優がアイドルになったというより、アイドル向きの素材をまず声優業界内で育てておいて、知名度の上がったところでアイドルとして売り出す、そんな感じでしょう。

それはともかく、筆者としては、うたってくれる歌がナイスならば、全然オッケーなわけで。まずは、YouTubeのPV映像を見ていただきやしょう。

この「Future Stream」は、テレビアニメ「初恋限定。」のオープニングテーマ。アニメに声優として出演しているのは寿、豊崎のふたりのみで、そういう意味でスフィアは、アニメ内ユニットとはいえない。

PVの演出でわかるように、アニメ色は払拭されており、意図的にアイドルユニットとして売ろうとしているのがよくわかる。

キャラとして一番目立つのは、最年長ながら最も小柄(150.8cm)でポニテ茶髪で大塚愛にちょっと似た高垣彩陽(あやひ)かな(彼女がリーダー格)。次に目立つのは最も長身(169cm)でショートヘアで小顔、宮崎あおい似の豊崎愛生(あき)かな。 戸松と寿は、ふたりともちょっと古風でおとなしめでロングヘア、ということで見分けがつきにくいかも知れないが、背の高いほうが戸松である。

さあ、これできょうからあなたも立派なスフィア通です(笑)。

曲のほうは、まあ可もなく不可もなく的な、無難な作り。彼女たちの透き通った地声をそのまま生かした爽やか系の王道ポップス。う~ん、悪くはないんだけど‥、なんのひっかかりもない。

ちょっともの足りないなあ‥と思っていると、「Future Stream」のカップリング曲も聴く機会があった。「Treasures!」だ。

こちらは、ハードロックのアレンジ。「Future Stream」よりはもう少しガッツが感じられていい。ステージでやったら、盛り上がりそうだ。

PVでは全員白の衣装を着て、しきりに清純なイメージをアピールしているが、ちょっとカマトトな感じではある。

アニメの鉄則として「キャラが立つ」ことは大切だ。4人のキャラはまだ若干かぶっているので、まずはそれぞれのメンバーのコンセプトをきちんと決めて、衣装にも差別化をはかるようにしたほうがいいと思う。

うた的には最低限クリアすべきところを十分クリアしているので、あとは場数でしょう。

これまではAKB48あたりを聴いて満足していた層をうまく引き込めれば、第二のAice5どころか、スピードとMAXを合わせたような存在になりうるかも。

ひとえに、プロデューサーの手腕が問われるところであります。

まだ何の色もついていない状態のスフィアが、どういう色に染まっていくか、非常に興味があります。ハイ。

この曲を聴く

コメント (2)
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#76 イヴァン・リンス「Bandeira Do Divino」

2009-05-06 09:14:36 | Weblog
#76 イヴァン・リンス「Bandeira Do Divino」(Best Of Ivan Lins/Disky)

ブラジルを代表するシンガーソングライター、イヴァン・リンスの初期ベスト・アルバムより、彼のオリジナルを。

イヴァン・リンスは45年生まれだから、今年64才。ブラジルはリオ・デ・ジャネイロ生まれ。生粋のキャリオカである。

元々は理系出身だったが、ミュージシャンの道に入り、70年にメジャーデビュー。同世代だが既に歌手として著名であったエリス・レジーナに「Madalena」という曲を提供したことで注目される。

70年代はずっと長髪、ヒゲもじゃのルックスで通してきたイヴァンは、80年代後半にはヒゲをきれいにそり落とし、髪も短かめにしてイメチェン。眼鏡をかけ、ちょっとインテリ風のイメージがある。

自作自演をモットーとするシンガーソングライターだが、彼の楽曲にひかれ取り上げるアーティストも多い。カーメン、エラ、サラといったジャズ・ディーバたちがカバーしたほか、パティ・オースティンやマントラ、ジョージ・ベンスンも彼の曲を歌っている。インストでもクインシー・ジョーンズ、デイヴ・グルーシン、リー・リトナーといったトップ・ミュージシャンが演奏している。まさに玄人好みのミュージシャン。

彼のきわだった特徴は、何よりもその「声」にあると思う。

わりとアタックの強い、やや甲高い声だ。この声については地元ブラジルでも評価が分かれているらしく、人により好き嫌いがあるみたいだ。

ブラジルの音楽は基本的に都会的であること、洗練されていることが重要事項なのだが、どうも彼の声は「田舎くさい」と思われているらしい。たとえていうなら、カントリー・ブルース系の声でモダン・ジャズを歌うみたいな、ミスマッチってことやね。

歌声はどこかいなたい。でも、彼の作る曲は非常にモダンである。アメリカのジャズやフュージョンを意識した、テンションコード、転調を多用した曲作りを見ると、音楽的にはかなり高度なことをやっているのがわかる。

この不思議なミスマッチ感こそが、イヴァン・リンスの個性なのだ。

実は筆者も20年ほど前、彼が来日したときに昭和女子大講堂でライブを聴いたのだが、緻密なバックの演奏を上回るほどの、パワーのある歌声に感銘を受けたのを、昨日のことのように覚えている。人間の声ってやっぱり、あらゆる楽器の中でも一番説得力があるものなんだなと。

さて、今日聴いていただく曲「Bandeira Do Divino」(78年録音)も、ヴォーカルにどこかいなたさを感じさせながら、バックのコーラスや演奏はあくまでも洗練され、美しい。

とにかく彼の紡ぎ出すメロディは、絶品だ。ブラジルの豊かな土壌の上に咲いた、大輪の向日葵のような、生命力にあふれた楽曲。

自分もぜひ歌ってみたい、そういう気を起こさせる魅力に満ちたイヴァン・リンスの音楽世界を、とくと味わって欲しい。

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