#132 ザ・フー「Magic Bus」(The Singles/Polydor)
ザ・フーのシングル。68年9月リリース。メンバーの一人、ピート・タウンジェンドの作品。
セールス的には全英で26位止まりと、あまりふるわなかったものの、彼らにとって非常に重要なレパートリーとなった作品だ。
名盤「ライブ・アット・リーズ」('70)で聴かれるように、彼らのコンサートの最終パートで必ず演奏され、ライブを最高潮に盛り上げるナンバーであった。
この曲は当時、アメリカ限定のコンピレーション・アルバム「Magic Bus」以外では聴くことが出来ず、日本では「ライブ・アット・リーズ」がリリースされるまで、ほとんど知られることがなかった。
約2年、幻の名盤というかコレクターズ・アイテム状態だったわけだが、いま聴くに69年の「トミー」のいくつかの名曲群と比較しても、まったく聴き劣りしない出来ばえだ。
まず、そのビートに、はっきりとした特徴がある。当時の日本ではほとんど知られていなかったジャングル・ビート、すなわちボ・ディドリーが得意とする、「アイム・ア・マン」などで聴かれる、あのリズムである。
ジャングル・ビートをさらに溯れば、ニューオーリンズのセカンド・ラインに行き着くわけで、この曲はもろにアメリカ・オリエンテッドな音なのだ。
アコースティック・ギターのイントロに始まり、賑やかなパーカッションのバッキングを従え、延々と繰り返されるシンプルなリフレイン。
次第にサイケデリックなギター・プレイへと突入していくも、シングルサイズでフェイドアウトしてしまう。どこがサビとかいう曲ではないので、とにかくエンドレスで続くのであろうなと感じさせる、麻薬的な曲調なのだ。そこで、この曲の威力が最も発揮されるのは、ライブにおいてということになる。
「ライブ・アット・リーズ」では、通常のバンド用のアレンジになっていて、8分近くの長尺で聴く者をノックダウンしてくれる。こちらもぜひ、聴き比べてほしいものだ。
チャートインの成績でわかるように、ポップ・チューンとしては、いまひとつ訴求力が足りない、地味なナンバーかもしれない。
だが、その音楽的な充実度は、見事なものだと思う。
ボ・ディドリーの亜流に終わらず、自らのオリジナリティを盛り込みつつ、骨太なサウンドを構築していたザ・フー。
同時期のヤードバーズ、ストーンズなどと比べてみても、68年当時もっとも先進的なロック・バンドであったといって、間違いないだろう。
そのエモーショナルなボーカル、コーラスは、あまたある白人バンドの中でも頭ひとつ以上突出した存在であった。
ニューオーリンズR&Bの本質をいちはやく体現したその比類なき才能、とくと確認してほしい。
ザ・フーのシングル。68年9月リリース。メンバーの一人、ピート・タウンジェンドの作品。
セールス的には全英で26位止まりと、あまりふるわなかったものの、彼らにとって非常に重要なレパートリーとなった作品だ。
名盤「ライブ・アット・リーズ」('70)で聴かれるように、彼らのコンサートの最終パートで必ず演奏され、ライブを最高潮に盛り上げるナンバーであった。
この曲は当時、アメリカ限定のコンピレーション・アルバム「Magic Bus」以外では聴くことが出来ず、日本では「ライブ・アット・リーズ」がリリースされるまで、ほとんど知られることがなかった。
約2年、幻の名盤というかコレクターズ・アイテム状態だったわけだが、いま聴くに69年の「トミー」のいくつかの名曲群と比較しても、まったく聴き劣りしない出来ばえだ。
まず、そのビートに、はっきりとした特徴がある。当時の日本ではほとんど知られていなかったジャングル・ビート、すなわちボ・ディドリーが得意とする、「アイム・ア・マン」などで聴かれる、あのリズムである。
ジャングル・ビートをさらに溯れば、ニューオーリンズのセカンド・ラインに行き着くわけで、この曲はもろにアメリカ・オリエンテッドな音なのだ。
アコースティック・ギターのイントロに始まり、賑やかなパーカッションのバッキングを従え、延々と繰り返されるシンプルなリフレイン。
次第にサイケデリックなギター・プレイへと突入していくも、シングルサイズでフェイドアウトしてしまう。どこがサビとかいう曲ではないので、とにかくエンドレスで続くのであろうなと感じさせる、麻薬的な曲調なのだ。そこで、この曲の威力が最も発揮されるのは、ライブにおいてということになる。
「ライブ・アット・リーズ」では、通常のバンド用のアレンジになっていて、8分近くの長尺で聴く者をノックダウンしてくれる。こちらもぜひ、聴き比べてほしいものだ。
チャートインの成績でわかるように、ポップ・チューンとしては、いまひとつ訴求力が足りない、地味なナンバーかもしれない。
だが、その音楽的な充実度は、見事なものだと思う。
ボ・ディドリーの亜流に終わらず、自らのオリジナリティを盛り込みつつ、骨太なサウンドを構築していたザ・フー。
同時期のヤードバーズ、ストーンズなどと比べてみても、68年当時もっとも先進的なロック・バンドであったといって、間違いないだろう。
そのエモーショナルなボーカル、コーラスは、あまたある白人バンドの中でも頭ひとつ以上突出した存在であった。
ニューオーリンズR&Bの本質をいちはやく体現したその比類なき才能、とくと確認してほしい。