NEST OF BLUESMANIA

ミュージシャンMACが書く音楽ブログ「NEST OF BLUESMANIA」です。

#71 Aice5「Get Back」

2009-03-29 07:43:04 | Weblog
#71 Aice5「Get Back」(Aice5 Final Party LAST Aice5/スターチャイルド)

今日はちょっと趣向を変えて、YouTubeの映像を引用させていただく。Aice5(アイスと読む)、2007年9月の横浜アリーナにての解散ライブDVDから、デビュー・シングル「Get Back」である。

Aice5は、女性声優5人によるユニット。ほっちゃんこと堀江由衣をメインに、ほぼ同世代の浅野真澄、木村まどか、神田朱未、たかはし智秋によって2005年10月結成、07年9月に解散するまで約2年間活動していた。

結成のきっかけは、この手の声優系アイドル・ユニットの代表格、國府田マリ子率いる「DROPS(ドロップ)」の成功を見て、堀江が自分もやってみたいと思い、親しい声優仲間に声をかけたということらしい。メンバーの中には、DROPSにいた神田朱未もいる。

Aice5のシングルは、1stと5thがアニメイトで限定発売されたりしたことでわかるように、マニア向けで、マイナーな販路によって売られていたのだが、それでも地道にファンを獲得し、わずか2年で横アリ単独公演を果たすまでに人気を伸ばした。すごいといえば、すごい。モーニング娘。も顔負けだ。

パフォーマンスを観ても、現在の娘。にも見劣りすることのない、しっかりした歌を聴かせてくれる。副業とはいえ、そのレベルは高い。

リーダー堀江の個人的人気にのみ頼ることなく、他のメンバーのスキルを合わせての総合力で勝負しているのだ。

基本的にはタテ乗りポップスで、娘。よりはAKB48の路線。でも、AKBとはダンチの実力だな。まず、発声からして違う。

アイドル歌謡の基本はユニゾン・コーラス。Aice5もその例にもれないが、ユニゾンになったときの声の揃い方が、AKBあたりとはまるで違う。男性グループでも嵐とSMAPではまるで声の揃い方が違うように、である。さすが、発声のプロ。

下手すると現在の娘。よりもいいんじゃないの~?、とまで思ってしまう(笑)。

筆者が思うには、最近のプロデューサーつんく♂氏は、娘。のメンバー総入れ替えがもたらした歌唱力低下への対策として、楽曲の傾向そのものを変えていっているように思う。久住にアニメ声優をやらせて、立て続けにアニメソング的な曲をリリースしていっているのも、もはや現在の娘。(およびその妹格のベリキュー)に以前のようなグルーヴのある、R&B的な曲を歌わせるのが無理だと判断してのことだと思う。

研究熱心なつんく♂Pのこと、畑違いの声優ユニット、Aice5やDROPSらも大いに参考にしているんじゃないかな。久住のあの甲高い煽り声は、まさに女性声優たちのお家芸をパクったものといえそう。

日本女性の歌声って、やはり、民謡の囃子方のような「赤い声」のほうがサマになる。そのへん、こういうユニットを聴くと痛感する。

アイドルグループ以上にアイドルっぽい、Aice5。さすがに年齢的に照れがあったのか、メンバーの大半が30代を迎えたこともあり解散に至ったようだが、昨今、声優さんたちのルックスがアイドル並みになってきている現状を考えれば、今後もこういう声優界からアイドル界への殴り込みがどんどん出てきそう。

何より彼女たちは声がいいし、歌もうまいひとが多い。音楽面の充実という点から考えれば、それも大いに結構なことだと思うよ。異種格闘技戦、バッチコイ!である。

この曲を聴く


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#70 B・B・キング&アルバート・コリンズ「Stormy Monday」

2009-03-22 10:55:53 | Weblog
#70 B・B・キング&アルバート・コリンズ「Stormy Monday」(Blues Summit/MCA)

70曲目はこれ。B・B・キングがアルバート・コリンズ、バディ・ガイ、ジョン・リー・フッカー、ロバート・クレイ、ルース・ブラウン、ココ・テイラー、アーマ・トーマスといったトップ・アーティストたちと共演したアルバム(93年)より、コリンズとのトラックを。

おなじみの名曲ストマンなわけだが、同年11月に亡くなってしまったコリンズとの共演ということで、実に貴重な記録であります。

ブルース界に王として君臨して50年以上、さまざまなミュージシャンと"謁見"してきたBBだが、それぞれの共演相手に花を持たせるような、心遣いが感じられますな。

この曲ではギターのイニシアティブはあくまでもコリンズにとらせ、ボーカルの大半を担当するBB。後半ではちょこっとパート交換もあるが、イントロから、エッジのたったコリンズのサステイン・トーンが前に出てきている。

コリンズは「Sun rises in the east~」という、BB版4番コーラスの歌詞を歌った後、スキャット付きのギターソロへとなだれ込みますが、このあたりがいかにもコリンズらしい"けれん"といえそう。

歌もギターもスタイルはかなり異なるふたり。でも、その個性の違いが見事にコントラストをなしており、聴きごたえ十分な一曲となっている。

アルバート・コリンズも、亡くなって15年以上たってしまったが、いまだその「破壊力」をしのぐギタリストは登場していない。

イントロの、たったの一音で、弾き手が誰か知らしめる強烈なトーン・キャラクターを持ったギタリストは、今後も出てこないような気がするね。

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#69 ピーター・グリーン「Born Under a Bad Sign」

2009-03-15 08:56:01 | Weblog
#69 ピーター・グリーン「Born Under a Bad Sign」(Blues For Dhyana/Culture Press)

ピーター・グリーン、98年のアルバムから。アルバート・キングでおなじみのナンバー、「悪い星のもとに」である。

グリーンは10年ほどのブランクののち、97年にスプリンター・グループを結成して音楽活動を再開する。翌年に発表したのが、この「Blues For Dhyana」というアルバムだ。

12曲中10曲はグリーン自身のオリジナルだが、この「悪い星~」と「セイム・オールド・ブルース」はカバー。

聴いてみると、実に肩の力が抜けているといいますか、歌にせよ、ギターにせよ、まったくリキんだところがない。

クリーム(歌はジャック・ブルース)やロベン・フォードあたりの同曲と比較してみるとよくわかると思いますが、歌はモノローグのようで枯れまくっているし、ギターはひたすらソリッドでシンプル。

まさに枯淡の境地なんであります。

昔の、つまりフリートウッド・マック時代の「神がかった」プレイを期待して聴いたファンは、見事な肩すかしをくらうことでしょう。

でも、これもまたブルース。書にも楷書、行書、草書などとさまざまな書体があるように、ブルースにも草書のようなそれがあるってことです。

重厚、コテコテなブルースばかりがブルースじゃない、そうゆうこと。

スルメのように、聴けば聴くほど味が出てくるのも、この曲の身上。ぜひ5回はリピートしてほしいです。

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#68 ビッグ・ジャック・ジョンスン「Dust My Broom」

2009-03-08 09:57:28 | Weblog
#68 ビッグ・ジャック・ジョンスン「Dust My Broom」(The Memphis Barbecue Sessions/M.C.)

ビッグ・ジャック・ジョンスンといっても、マニアなひと以外はまずご存じでないと思うが、息の長い、ベテラン・ブルースマンである。

40年ミシシッピ州ランバート生まれなので、今年で69才。もちろん現在も活躍中である。

10代でギターを始め、BBに強く影響を受けるようになる。クラークスデールでフランク・フロスト(kb,hca)、サム・カー(ds)と出会い、ジェリー・ロール・キングスを結成、本格的なプロのキャリアが始まる。

87年以来、キングスの活動と並行してソロ・レコーディングもおこない、7枚のアルバムがある。「The Memphis Barbecue Sessions」はその中では異色の、アンプラグド・セッションだ。

ファビュラス・サンダーバーズのハーピスト、キム・ウィルスンとデュオ共演。今日聴いていただくのは、ブルース・スタンダード中のスタンダード、ロバート・ジョンスンの名曲である。

他のアルバムでは、コテコテのエレクトリック・ギターが売りのビッグ・ジャック・ジョンスンも、ここではアコースティックのみで、軽やかなプレイを聴かせてくれる。スライドを織り交ぜ、スナップをきかせたブギ・ビートがいい感じだ。

歌のほうは、声がつぶれていて発音もあいまいだし、ギターに比べてお世辞にも上手いとはいえないが、それでいいんである。ブルースマンの歌は声質や技術を競うんでなく、ハートが伝わるかどうかがポイントなんだから。

相方のキム・ウィルスンも、ノン・アンプリファイドでいい感じにひなびたハープを聴かせてくれる。音が前に出過ぎず、少し遠くで鳴っているふうのバランスで録れているのも◎。

このレコーディングは、ジョンスンのガンガンのエレキ演奏を期待するムキには評判があまりよくないようだが、筆者的にはけっこう気に入っている。

サニー・テリー&ブラウニー・マギーにも通じるところのある、いなたさ。その一方で、ジュニア・ウェルズ&バディ・ガイのような、陰にこもったスゴみのようなものも感じさせるし。このデュオ、臨時編成にしとくには、惜しいね~。

他にはハウリン・ウルフの「Smokestack Lightning」、リトル・ウォルターの「My Babe」、ウィリー・ディクスンの「Big Boss Man」などもやっている。最小の編成でブルースの本質を伝える演奏がつまっているのだ。

少ない音数で、聴き手をノックアウトさせる音楽というものがある。ジョンスン&ウィルスンのデュオも、その見事な一例だと思います。

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#67 ジュニア・ウェルズ「Everybody's Gettin' Them Some」

2009-03-01 11:45:50 | Weblog
#67 ジュニア・ウェルズ「Everybody's Gettin' Them Some」(Everybody's Gettin' Some/Telarc)

早いもので、もう3月になってしまった。今月の一曲目は、これ。ジュニア・ウェルズ、晩年(95年)のアルバムより、フレッド・ジェイムズの作品を。

ジュニア・ウェルズについては、今までほとんど取り上げる機会がなかったが、ブルース史上、非常に重要なアーティストのひとりだ。

本名エイモス・ブラックモア。34年、アーカンソー州ウエスト・メンフィスに生まれ、50年代よりシカゴ・ブルースの立役者として活躍、60年代以降はファンク色を強めていく。98年に63才で亡くなっている。

ジュニア・ウェルズといえば、ギターのバディ・ガイとのコンビがあまりにも有名だが、ピンでの録音も結構あり、このアルバムはそのひとつ。

ギタリストとして、バディ・ガイの代わりにボニー・レイット、カルロス・サンタナ、サニー・ランドレスといったベテラン、実力派をゲストに迎えた、なかなかの話題盤だ。

この「Everybody's Gettin' Them Some」はほとんどカバーされていない曲だが、なかなかファンキーでロック感覚にも溢れる、いかしたブルースだ。

歌はジュニア・ウェルズからスタート、ボニー・レイット姐さんが途中から絡んでくる。スライド・ギターも弾く彼女だが、この曲ではサニー・ランドレスにまかせて、歌に徹している。このふたりの相性がなかなかよろしい。声質もうまくマッチングしている。

ジュニア・ウェルズの歌って、シャウトし過ぎず、ちょっとドスをきかせた低めの声が、いい感じなんだわ。

ボニーのツボを押さえたコーラス・ワーク、サニーの伸びやかでパワフルなプレイも楽しめて、一粒で三度おいしい、そんな一曲なんであります。

ジュニア・ウェルズ=おどろおどろしい、はったりじみた、みたいなイメージの強い人で、それはそれで間違いじゃないですが、基本は実にしっかりとした歌がうたえる人なのです。

60代に入ってなお意気軒昂なジュニアの会心の一曲、ぜひ一聴を。

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