2024年7月16日(火)
#467 ジェフ・ベック・グループ「You Shook Me」(EMI Columbia)
ジェフ・ベック・グループ、1968年7月リリースのデビューアルバム「Truth」からの一曲。ウィリー・ディクスン、J・B・ルノアーの作品。ミッキー・モストによるプロデュース。
英国のロック・バンド、ジェフ・ベック・グループは、元ヤードバーズのギタリスト、ジェフ・ベックをリーダーとして、1967年初頭にロンドンで結成された。
前年、アメリカツアーの途中から嫌気がさして演奏に加わらなくなり、そのまま脱退したベックは、新たなメンバーを探して自分のバンドを作ることにしたのである。
当初メンバーは流動的だった。ボーカルはショットガン・エクスプレスにいたロッド・スチュアート、リズム・ギターはサンタバーバラ・マシーンヘッドにいたロニー・ウッド。だがベースはジェット・ハリス(元シャドウズ)、デイヴ・アンブローズ、ドラムスはクレム・カッティーニ、ヴィヴ・プリンス(元プリティ・シングス)など、しばしばメンバーが変わっていた。
結局、ベースはロニー・ウッドが担当することになり、ドラムスはエインズレー・ダンバーに落ち着いた。
プロデューサーのミッキー・モストとマネジメント契約、67年から68年にかけて3枚のシングルをリリースする。
その後、ダンバーが脱退、スチュアートの推薦によりスチームパケットにいたミッキー・ウォーラーが代わりに加入して、固定メンバーとなる。
この4人で最初のアルバム「Truth」をレコーディング、68年5月にリリースし、全米15位の好セールスとなる。本日取り上げた一曲「You Shook Me」はその中に収められた。
この曲はもともと、マディ・ウォーターズが1962年にリリースしたシングル・ヒット曲である。初めてボーカルをオーバーダビングした実験的なナンバーであり、バックのアール・フッカーによるスライドギターが非常に印象的だった。
この60年代のモダン感覚のシカゴ・ブルースが、白人ロックミュージシャンの注目を引くことになる。6年後、この曲はジェフ・ベック・グループの名演によって、蘇ることになる。
ベックのトリッキーなギター、そしてスチュアートの迫力充分のハスキーボイスが、この曲の持つ攻撃的な(性的な意味も含む)魅力を最大限に引き出している。バンドに混じってゲストで参加しているハモンドオルガンは、レッド・ツェッペリンのメンバーとなるジョン・ポール・ジョーンズだ。
アルバムでは2分半の短尺であったが、ライブではより長く演奏して、彼らの人気曲のひとつとなった。
これに目をつけたのが、彼らのステージを観ていたジミー・ペイジであった。ペイジは、自身が立ち上げようとしていたバンドで、この曲をさらにドラマティックな構成して、主要なレパートリーにすることを考えたのだ。
同年10月、レコーディングが行われ、翌69年1月、新バンド、レッド・ツェッペリンのデビュー・アルバム「Led Zeppelin」がリリースされた。
その中で「You Shook Me」は新たなアレンジにより、リスナーに衝撃を与えたのである。ロバート・プラントの、男性の通常声域を大きく超えたハイトーン・ボーカルが聴くもの全員のハートを揺るがした。
以降この曲は、最初のリメイクを行ったベックたちよりも、ZEPのバージョンの方でより語られるようになってしまった。真似した方が、より有名になってしまったのは、実に皮肉である。
その後、ジェフ・ベック・グループは69年にセカンド・アルバム「Beck Ola」をリリースして前作同様全米15位のヒットとなったものの、バンド内の人間関係はうまく行かず、解散することとなる。スチュアートとウッドは、スモール・フェイセズに合流して、後にフェイセズとなるのは、皆さんご存知の通りである。
ベック版「You Shook Me」を改めてじっくりと聴いてみて感じるのは、黒人ブルースを白人ロックの感覚で調理するというアイデアは悪くなかったのだが、いまひとつ練り込みが足りないという気がする。
この曲の良さは、長尺にして、ヤマや谷を作ってこそ初めて引き出せるのではないだろうか。その意味で、後発ゆえのアドバンテージはあるにせよ、ZEPのメンバーが練り上げたサウンドは、格別の出来映えだったなと感じる。
ともあれ、ベックはその後もいくつもバンドを作って試行錯誤を続けていく。サウンドの模索者、ジェフ・ベックならではの意欲的な一曲、もう一度チェックしてみてくれ。
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