NEST OF BLUESMANIA

ミュージシャンMACが書く音楽ブログ「NEST OF BLUESMANIA」です。

#123 リル・サン・ジャクスン「Get High Everybody」

2010-05-22 16:27:15 | Weblog
#123 リル・サン・ジャクスン「Get High Everybody」(Restless Blues/Document)

シンガー/ギタリスト、リル・サン・ジャクスンのインペリアルにおける録音より。ジャクスンの作品。

リル・サン・ジャクスンは本名メルヴィン・ジャクスン、1915年テキサス州タイラー生まれ、76年同州ダラスにて60才で亡くなっている。

もともとはゴスペルを歌っていたが、ブルースにも興味を持つようになる。第二次世界大戦時は従軍し、帰還後本格的にミュージシャンとしてのキャリアをスタートさせることになる。

まずはゴールド・スター、モダンにて録音、続いて50年以降はインペリアルにて約50曲ものシングルを出すことになる。

とりわけ、「Rockin' and Rolloin'」は大ヒットとなり、一躍人気シンガーとなる。のちのロックンロール黄金時代を予感させるようなタイトルだが、わりとゆったりしたテンポの弾き語りで、ロックというよりはブルースな一曲。

54年までは破竹の快進撃だったジャクスンも、インペリアルを離れた50年代後半からは表舞台から遠ざかってしまう。

60年に再発見され、アーフリーにてレコーディング。このときは、インペリアルにおいてメインであったバンド・スタイルではなく、彼本来の弾き語りであった。

人生のほんの一時期(12年ほど)、メジャーシーンで活躍したミュージシャンなのだが、50年たった今もCDが再発され聴かれているのは、草葉の陰の本人にとっても「望外の喜び」といったところではなかろうか。

彼の持ち味は、その力の抜けた素朴な歌声にあると思う。ちょっと鼻にかかった感じが、いなたくてGOOD。

今日聴いていただく「Get High Everybody」は、アップテンポのシャッフル。タイトル通り、ノリノリのダンス・ナンバーである。

バックのバンドは。完全にジャンプ仕様。ホーンセクションをバッチリ従えているが、彼のギタープレイは残念ながら表には出てこない。ジャクスンはまるでスタンダップ・ブルースマンのようだ。

せっかくメジャーブレイクしたのにその路線から降りてしまったのは、ジャクスン自身、こういうスタイルはあまりお好みでなかったのかもね。

ジャクスンのもうひとつの魅力、ギタープレイについてはここでは語らないが、興味のあるひとはアーフリーから出ている「Blues Come to Texas」を聴いてみてくれ。これもまたオツな味わいがある。

知る人ぞ知るテキサス・ブルースマン、リル・サン・ジャクスン。彼の音楽もまた、20世紀の重要な遺産だと思うね。

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#122 THE BAWDIES「HOT DOG」

2010-05-16 11:41:52 | Weblog
#122 THE BAWDIES「HOT DOG」(Getting Better)

日本のロックバンド、THE BAWDIES(ザ・ボウディーズ)のニューシングル。メンバーのひとり渡辺亮(ROY)の作品。

昨年4月、当コーナーで初めてTHE BAWDIESを紹介したが、彼らのその後一年間の活動ぶりは「めざましい」のひと言だ。

メジャーデビューアルバム「THIS IS MY STORY」が第二回CDショップ大賞を受賞したほか、音楽系ケーブルテレビやFMではずっとパワープレイが続いているなど、しっかりその(実はエッチな)名が浸透している。

メジャーデビュー当初より彼らを絶賛してきた筆者としても、うれしい限りだ。

THE BAWDIESというバンドは、ロックンロール、R&Bといった黒人発祥の音楽の本質を、初めて正確に把握したジャパニーズ・バンドなのだと筆者は思っている。

一昨年、ザ・ネヴィル・ブラザーズの日本公演を観たときに筆者が感じたことは、「ロックンロールって、実に軽くて、実に重い音楽なんだな」ということ。

ハイスピードで軽快に流れていってしまうように見えて、実は非常にヘビーなサウンドの裏打ちをともなっている音楽、それがロックンロールなのだ。

その「重さ(ヘビーネス)」というのは、リズム楽器の演奏による「重さ」もさることながら、「ことば」をともなった「うた」の持つ「重さ」にこそ由来するものであると思う。

思えば何十年も、われわれ日本人はロックンロールの歌い方をはき違えていた。とにかく軽く、リズムにようやく乗っかってうたうことしかできなかった。

ごくまれに桑田圭祐のような天才が現れるものの、おおかたのシンガーには無理であった。

そんな中、ごく若い世代から、ボーカルに最重点をおく、真にロックンロールを理解した突然変異的なバンドが出現、筆者は狂喜したわけである。

20代の日本人バンドが、40年も前のCCR、ゼムといったバンド風の、玄人好みのブラックな音を歌い、演奏しているんだから、たまらない。

で、彼らのインタビューを聞くに、最も影響を受けたアーティストのひとりにリトル・リチャードがいる、と聞いて大いに腑に落ちた。

多くの日本のバンドが、比較的近年の国内アーティスト、あるいはせいぜい手を広げて同時代の海外バンドばかり聴いているのに対し、この「溯り」ぶりはハンパでない。筆者は、70年代に50年代の音を聴いて感動を受け、自分の音楽感性を培ったものだが、それ以上のマニアックな探求ぶりに、脱帽である。

まあ、しちめんどくさいことはこのへんにして、とにかくきょうの一曲を聴いてみよう。

まさにダンス・ミュージック、パーティ・ミュージック。ノリノリで踊れる音なんである。

ROYの最高に黒くパワフルな歌声、シンプルだが、彼の歌に見事ハマったバンド演奏。

自分も40年前、こういう演奏ができたらなと夢想しつつ、ついに実現できなかった音がそこにある。

THE BAWDIES、ブレイクはもう目前だ。貴方の耳で、そのスゴさを確認してほしい。

この曲を聴く

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#121 テキサス・ジョニー・ブラウン「The Blues Rock」

2010-05-08 15:47:38 | Weblog
#121 テキサス・ジョニー・ブラウン「The Blues Rock」(Atlantic Blues: Guitar/Atlantic)

28年生まれのギタリスト/シンガー、テキサス・ジョニー・ブラウンがアトランティックに残したインスト・ナンバー。彼自身のオリジナル。

ミシシッピ州チョクトーに生まれ、テキサス州ヒューストンにてミュージシャンとなる。40年代後半より、エイモス・ミルバーン、ボビー・ブランド、ジュニア・パーカーらのバックにて演奏。代表的なプレイは、ボビー・ブランドの「Two Steps From The Blues」におけるギター。

アトランティックやデッカ、デュークにて自分名義の録音をする機会をもつが、フル・アルバムを出すことはずっとなかった。

97年、ようやくチョクトー・クリークというレーベルからアルバム「Nothin' But The Truth」をリリース、01年にも「Blues Defender」を出している。苦節70年、とてつもなく遅咲きのブルースマンなのである。

さて、きょうの一曲はアトランティックで49年に録音した3曲のうちのひとつ。ラテン・ビートにのせてブラウンのギターとテナーサックスがリードをとる、重厚なホーンアレンジが印象的な一曲だ。

短めながらそのギター・ソロには、キラリとしたセンスが感じられる。ジャズっぽいサウンドの中でブルーズィな異彩を放っているといいますか。

ちなみにここでシブいピアノを弾いているのは、当時のバンマス、エイモス・ミルバーン。

ブルースというカテゴリに属してはいるものの、きわめてサウンド指向の高い、ハイ・クォリティな仕上がりだ。ジャズ・ファンにもおススメ。

ブラウンは今年82才。いまもしっかり健在のようで喜ばしい限りだ。

ほぼ同世代のBBなどとは、知名度的には比べるべくもないが、ブルースマンとは一国一城のあるじ。個性、そしてキャリアで勝負すればいいのだ。

テキサス・ジョニー・ブラウンもまた、曲数こそ少ないものの、いくつかの名演奏でわれわれの耳、そして心に残っていくであろう、筋金入りのブルースマンだ。ぜひ、聴いてみてほしい。

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#120 プロフェッサー・ロングヘア「Rockin' With 'Fess」

2010-05-02 10:43:06 | Weblog
#120 プロフェッサー・ロングヘア「Rockin' With 'Fess」(Tipitina: The Complete 1949-1957 New Orleans Recordings/Important Artists)

プロフェッサー・ロングヘアの代表的ヒット。彼自身の作品。フェデラル時代の録音(51年)。

フェスことプロフェッサー・ロングヘアは本名ヘンリー・ローランド・バード。1918年ルイジアナ州ボガルーサ生まれ。80年、61才で同州ニューオーリンズにて亡くなっている。

N.O.が生み出した偉大な音楽家フェスについて、ここでいまさらくだくだしく語るつもりはないが、20世紀アメリカにおける天才の一人であることは、間違いないだろう。

ニューオリンズR&Bとよばれる音楽の一ジャンルは、まさにフェスが「発明」したものといっていい。

その左右の手をフルに駆使したピアノ演奏は独創的きわまりないもので、彼ひとりでフルオーケストラ一個分に相当するスケールのサウンドを叩き出していた。

フェスティバルのステージでフェスがピアノを弾き始めたとたん、他の会場の演奏がすべて止まってしまったとか、逸話にはことかかないのも、天才の証明か。

まさに空前絶後の存在だったわけだが、60年代までの日本においてはほとんど知る者がなかったのも事実で、このコンピアルバムに収録された50年代の曲群は、リアルタイムで聴く者などいなかった。いや、彼の音楽だけでなく、ブルース、R&B系の音楽全般に関してそうであった。

当時、いかに外来音楽の伝播が偏ったものであったか、ということやね。

だが、知られざる天才フェスも70年代に入って、ドクター・ジョンなどの白人ミュージシャン、あるいはミーターズのような若手黒人ミュージシャンらが礼賛していたこともあって、日本でも聴かれるようになってきた。

亡くなって既に30年の歳月が経ってしまったが、彼の音楽は、いまだに聴くたびに新鮮な驚きを筆者に与えてくれる。

ダイナミックに転がるピアノ、ほどよくラフなボーカル。これぞロックンロールの始祖形なのだと感じる。

きょう聴いていただく「Rockin' With 'Fess」は、テナーサックスをフィチャーしたジャズっぽいスタイルながら、しっかりロックもしている、アップテンポのブギ・ナンバー。「アルプス一万尺」をモチーフにしたユーモアあふれるアレンジがいい。

この卓越したリズム感覚こそが、ニューオリンズ音楽の本質であり、最大の魅力といっていい。

約60年の月日を経て甦る、フェスの名演・名唱。聴かんと、大損でっせ~。

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