NEST OF BLUESMANIA

ミュージシャンMACが書く音楽ブログ「NEST OF BLUESMANIA」です。

音盤日誌「一日一枚」#78 V.A.「GUITAR SPEAK III」(ビクター音楽産業 VICP-5116)

2022-01-31 05:39:00 | Weblog

2001年12月15日(土)



V.A.「GUITAR SPEAK III」(ビクター音楽産業 VICP-5116)

1.CRYSTAL BALL(NILS LOFGREN)

2.A LIFE IN MOVIES(STEVE HACKETT)

3.THE 62(TOM VERLAINE)

4.NO WATER IN HELL(BOB MOULD)

5.STILL LIFE WITH A DOBRO(ADRIAN BELEW) 

6.THAT BOY'S EVIL(GARY MYRICK)

7.RED SHOES(MICK TAYLOR) 

8.OTIS(DOMINIC MILLER)

9.EYE OF THE NEEDLE(ROBERT FRIPP AND THE LEAGUE OF GUITARITS)

10.MORNING RUSH HOUR(STEVE MORSE)

以前、ウィッシュボーン・アッシュのインスト・アルバム「ヌーヴォー・コールス」を取上げたが、今日の「ギター・スピークIII」もそれと同じくIRSレーベルの「ノー・スピーク」シリーズからの一枚だ。

新旧とりまぜた、実力派ギタリストたちによる、オムニバス・インスト・アルバム。91年リリース。

これがまた、ギター・ヲタクなら「お~っ!」というような顔ぶればかりなんである。

まずはベテラン・ギタリスト、ニルス・ロフグレンから。筆者の世代には「宙返りギタリスト(!)」として有名なひとである。

彼を語るとき、ついついそのアクロバティックなパフォーマンスばかり言及しがちだが、どっこい、音楽的にも大変しっかりしたものを持っている。

二ール・ヤングやブルース・スプリングスティーンといった大物ロッカーたちにも厚く信頼されているのが、その証左だろう。

このアルバムで演奏する(1)は、自身のオリジナル。多重録音を駆使した、分厚いギター・ハーモニーが印象的な一曲。

続いて、これまた大ベテラン、スティーヴ・ハケットが登場。ジェネシスのギタリストとして、彼らの黄金期を築いた男である。

ジェネシス脱退後は、ソロ、そしてスティーヴ・ハウとのグループ「GTR」でも活躍している彼の収録曲は、(2)。自身のオリジナル。

どこか中近東風のエキゾチックなリフあり、HM風のおいしいメロディアスなソロあり、アコギの繊細な響きあり。高度のテクニック、幅広い音楽性が盛り込まれた一曲だ。

(3)を演奏するのは、ご存知、ニューヨークのパンク・バンド「テレヴィジョン」のリーダーであった、トム・ヴァーライン。

現在はソロで活動している彼のオリジナル。ソリッドで重心の低いギター・サウンドは、なんともいえずカッコよろしい。エコーの使いかたが実にうまく、耳に心地よい響きをもたらしてくれる。

次に登場する、ボブ・ムールドは、知名度はかなり低いかも知れないが(実は筆者も初めて聴いたクチである)、アメリカの若い世代のギタリストの中では、実力派の評価が高いという。

以前には「「ハスカー・ドゥ」というバンドにいたという彼のオリジナルが、(4)。

デス・メタルのビートにのって、メロディともノイズともつかぬ、アヴァンギャルドなソロ・プレイが展開される。

「カオス・サウンド」ともいうべき、過激な音の洪水に、身をゆだねてみよう。

さて、(5)では、多くのロック・アーティストのバッキング(ザッパ、ボウイ、トーキング・ヘッズなど)、そしてキング・クリムゾンのメンバーとしても知られる名ギタリスト、エイドリアン・ブリューが登場。

ここで彼は、なんと、エレキ・ギターではなくドブロ(リゾネイター)を弾いている。

ハワイアン、カントリー、ブルースなどでは使われるものの、あまり一般的ではないこのギターを使って、彼は実に不思議なムードのオリジナル曲を演奏する。現代音楽風というか、環境音楽というか、静謐ながら妖しい。

さすが、ロックの狭い範疇にとどまることのない、超実力派だけのことはある。目からウロコ!な一曲である。

(6)は、これまた新世代のホープ、ゲイリー・ミリックのオリジナル。

若手とはいえ、すでにスティーヴィ・ワンダーや、ジャクスン・ブラウンといった大物にも認められ、アルバムに参加しているぐらいだから、ただのヒヨッコではない。自身が率いるバンド、ザ・フィンガーズでも活躍。

収録曲は、ヴェンチャーズの「パイプライン」を下敷きにしたものだが、そのHMをベースにしたギター・プレイはあくまでもヘヴィーで、攻撃的。

ノーキーもびっくり。新世代の「エレキバンド」サウンドとは、まさに、これなのかも知れない。

さて、筆者の世代にも大変おなじみの名前が登場。ミック・テイラーである。

ブルースブレイカーズ、ストーンズを経て、ソロで活動を続ける彼の収録曲は、(7)。

第二期ジェフ・ベック・グループにいたキーボーディスト、マックス・ミドルトンと組んでの演奏だが、これはミドルトンの作品。ここでミックは、音色といいフレーズといい、フュージョン色の濃いプレイをしているので、ミック=ブルース・ギタリストという先入観で聴くと、だいぶん違うので驚くかも知れない。

91年当時、彼はかなりフュージョンに入れ込んでいたのである。現在ではまた、ブルースに回帰しているのだが。

いつもとはちょっとテイストの変わったミックの演奏を、味わってみてほしい。

続く(8)は、アメリカ人ギタリスト、ドミニック・ミラーのオリジナル。

ミラーも、クリッシー・ハインド率いる人気バンド、プリテンダーズをふりだしに、いくつかのバンドを渡り歩き、スティングのバンドに参加するようになった、「ギターを抱いた渡り鳥」的存在。

そのキャリアはダテではないことがよくわかるのが、この演奏だ。ファンキーなビートにのせて、伸びやかなトーンで、余裕たっぷりのプレイを聴かせてくれる。

そのフレーズには、ブルーズィなセンスも十分感じられる。

お次は、ミック・テイラーにも負けないベテランが、登場。ロバート・フリップだ。

ロック・ファンなら知らぬ者はない、キング・クリムゾンの中心的存在。30年以上、常にトップを走り続け、さまざまな話題を提供し続ける男である。

そんな彼が、アコースティック楽器だけで編成したオーケストラが「ザ・リーグ・オブ・クラフティ・ギタリスツ」である。彼のオリジナル曲、(9)を収録。

端正でセンシティヴ、自然体なサウンドが聴ける。稀代のプログレ・バンド、クリムゾンとはまた違った、彼の一面を知ることが出来る。

さて、大トリは、「カンサス」などのバンドでプレイしてきたキャリアを持つ、スティーヴ・モーズ。自身のオリジナル、(10)を収録。

彼のプレイはHR/HMを基本にしながらも、シンフォニックな音作りを持ち込むなど、そこにとどまらない音楽的な広がりを感じさせる。今後も活躍が期待されるプレイヤーのひとりだ。

以上のように、全編、トップ・プレイヤーたちの、スーパー・テクニックとアイデアに満ちた演奏を収録。

これだけのテクニシャンたち10名の演奏が一枚で聴けるのだから、筆者を含めたギター・ヲタクどもにはこたえられない。

ライヴ盤も含めて4枚も出ている「ギター・スピーク」シリーズ、ギターにうるさい貴方なら、ぜひチェックしてみてほしい。


音盤日誌「一日一枚」#77 V.A.「BLUES MASTERS, VOLUME 7: BLUES REVIVALS」(MCA/Rhino R2 71128)

2022-01-30 05:55:00 | Weblog

2001年12月8日(土)



V.A.「BLUES MASTERS, VOLUME 7: BLUES REVIVALS」(MCA/Rhino R2 71128)

1.BABY, WHAT YOU WANT ME TO DO(JIMMY REED)

2.THREE ACES ON THE BOTTOM OF THE DEAL (AKA BLUES FOR GAMBLERS & EVERYBODY'S BLUE)(LIGHTNIN' HOPKINS, SONNY TERRY, BROWNIE MCGEE WITH BIG JOE WILLIAMS)

3.CANDY MAN(MISSISSIPPI JOHN HURT)

4.FANNIN STREET(DAVE "SNAKER" RAY)

5.WRITE ME A FEW LINES(MISSISSIPPI FRED MCDOWELL) 

6.DEATH LETTER(SON HOUSE)

7.BOOM BOOM(JOHN LEE HOOKER) 

8.GOT MY MOjO WORKING(MUDDY WATERS)

9.BORN IN CHICAGO(PAUL BUTTERFIELD BLUES BAND)

10.GOOD MORNING LITTLE SCHOOLGIRL(JUNIOR WELLS' CHICAGO BLUES BAND)

11.THE BLUES NEVER DIE(OTIS SPANN)

12.BABY SCRATCH MY BACK(SLIM HARPO)

13.COMING HOME TO YOU BABY(SONNY BOY WILLIAMSON II)

14.THE DEATH OF J.B. LENOIR(JOHN MAYALL & THE BLUESBREAKERS)

15.ON THE ROAD AGAIN(CANNED HEAT)

16.BLUES POWER(ALBERT KING)

17.THE THRILL IS GONE(B.B. KING)

先月の10日分でも紹介した、「BLUES MASTERS」シリーズの続編である。1993年リリース。

MCA系のみならず、レーベルを超えてさまざまなアーティストがコンパイルされているので、なかなか「お買い得感」の高い一枚だ。

まずは、ジミー・リードの歌による(1)から。リード自身のオリジナルで、59年録音。翌年にはR&Bチャートで大ヒットしている。

tRICK bAGもメドレー中で取上げている、おなじみの曲。tbファンなら要チェキである。

やたら長いタイトルの(2)は、メンバーも実に豪華。

ライトニンに、ソニー&ブラウニーのコンビ、非公式ながらビッグ・ジョーも加わって、和気あいあい、セッション風の演奏を繰り広げてくれる。60年録音。

達者なフィンガー・ピッキングでのアコギ演奏を聴かせてくれるのは、1893年生まれの伝説的カントリー・ブルースマン、ミシシッピー・ジョン・ハートによる(3)。彼自身のオリジナル。

63年ニューポートにての録音だから、すでにおん年70歳。でも、年齢にまるで関係なく、実にみずみずしい歌と演奏だ。必聴!

(4)はちょっと毛色の変わった、フォーク調ブルース。レッドベリーのナンバーを、日本ではまったく知られていないスネイカー・レイというシンガーが12弦ギターを弾きつつ歌う。

ジャカジャカと、コード・ストロークを弾きっぱなしのスタイルが、妙に新鮮に聴こえる。とにかくパワフル!な一曲だ。

「ミシシッピー」と名づけられたミュージシャンは何人もいるが、そのひとり、フレッド・マクダウェルによる(5)が続く。自身のオリジナル、64年録音。

こちらも弾き語りスタイル。いかにもダウンホームなスライド・ギター・プレイに、ヘタウマ系の枯れたヴォーカル。

マニアにはこたえられない「味わい」の一曲だ。

カントリー・ブルース系をもう一曲。リゾネイターを弾きつつ歌う、サン・ハウスの(6)だ。彼のオリジナル、65年録音。

その起伏の激しいギター・プレイ、そして野太くエモーショナルな歌声には、ただただ圧倒される。

ロバート・ジョンスンに多大の影響を与えたといわれるのも、納得。たしかに、「Walkin' Blues」は彼の影響なしには生まれえなかったように思う。

「情念」のほとばしるような一曲である。

続いて、先日83歳で亡くなったばかりのジョン・リー・フッカーによる(7)。自身のオリジナル、61年録音。

アニマルズにカバーされたことで、一気にメジャーになったナンバーだ。

前の何曲かと比べると、ものすごくモダンなビートだな~と感じる。でも、どちらもブルースであることに変わりない。

わが道を行き、かつ極めたワン・アンド・オンリーなブルースマン、ジョン・リーの真骨頂を示す一曲。とにかく、カッコいい。

続くは、ブルース・コンサートのキラー・チューンと呼ばれる(8)。

「BLUES ORIGINALS」ではオリジナルのアン・コールによるヴァージョンを紹介していたが、こちらでは世に広めた張本人、マディ版を収録。

もちろん、かのニューポート・フェスティバルでの初演版だ。60年録音。

当時から、キラー・チューンだったと感じるくらい、マディ、観客、ともにノリノリのライヴである。

さらには、ホワイト・ブルースも登場。バターフィールド・ブルース・バンドによる(9)である。

ニック・グレイヴナイツの作品。65年録音、彼らのファースト・アルバムから。

ここでは、バターフィールドがヴォーカル、ハープとフルに活躍。とくに黒人顔負けの熱っぽいハープ・プレイが聴きもの。

さすが、初めて黒人街へ踏み込んだ白人ブルースマンだけのことはある。

続いては、ジュニア・ウェルズ率いるバンドによる(10)。サニーボーイ一世の代表作のカバー。65年録音。

これぞシカゴ・ブルースという感じのコテコテなヴォーカル&バンド・スタイル。

ギターはバディ・ガイ。現在のブルース界を代表するプレイヤーの、若き日のプレイが聴ける。

シカゴ・ブルースといえば、ピアニストとしてトップの座にいたのがオーティス・スパン。そんな彼のリーダー作が(11)。

自身のオリジナル、65年録音。

彼のアンニュイなヴォーカルとシブいピアノ演奏はもちろんだが、バックにマディがギターで参加しているのも注目である。

マディ・バンドへの長年の参加への、恩返しといったところか。

シャウトしないクールなヴォーカルといえば、スリム・ハーポ。「BLUES ORIGINALS」でも、彼の特徴ある歌声が聴けたが、ここでも同じヤーディーズによってカバー(「ラック・マイ・マインド」と改題)された(12)を収録。

おかしな歌詞に、粋なヴォーカル。独特な世界を持っているひとだ。

サニーボーイ二世は(13)で登場。マット・ギター・マーフィのアコギのみをバックに聴かせる歌とハープは、まことにディープ。

自身のオリジナル、63年録音。

彼のチェスでの代表的アルバムからではなく、「Portraits In Blues」というかなりマイナーな、ストーリーヴィルでのアルバムからの選曲というのも、泣かせます。

再び、白人勢の登場。ジョン・メイオールは(14)で、個性的なブルースマン、J・B・ルノアーの死を悼んで自作曲を歌う。

67年録音、ミック・テイラー参加後のアルバム「Crusade」から。ミックのギターはもちろん、リップ・カントによるバリトン・サックスのソロが実にフンイキを出している。

白人バンドで、もう一曲。キャンド・ヒートの代表的ヒット、(15)である。リード・ヴォーカル、アル・ウィルスンの作品。68年録音。

ブルースに通暁したウィルスンならではの、ツボをおさえた曲作りが光る、オリジナル・ナンバー。シャウトせず、ファルセットで歌う、ヴォーカル・スタイルも面白い。これまたブルース。

さて、(15)でアルバート・キングが登場。すでにこの「一日一枚」でもご紹介した、究極のライヴ盤「LIVE WIRE / BLUES POWER」に収められた、究極の一曲だ。

自身のオリジナル、68年録音。

そのスゴさ、素晴らしさは、もう、聴いていただくほかない。

コンピレーション盤にもかかわらず、カットせず、フルで収録されているのも、大変うれしいところだ。

さて、どんじりに控えしは、やはりこのお方に登場していただくほかはないという、御大B・B・キング。

69年録音、大ヒットとなった(17)を収録。これはベンスン=ぺティットのコンビによる作品。

当時先端のファンクなリズムにのせて、歌われるマイナーなメロディ。B・B一流のヴォーカル・テクが冴え渡る一曲。

これまた、泣かせますな!

1960年代に入って、おもに英米の白人層によりブルースが再発見・再評価され、一大ブームになっていく。

このコンピレーションは、その時代を検証するべく編まれたわけだが、一枚を通して聴くと、実にさまざまなタイプのブルース・アーティストが同時期に存在し、それぞれに自分たちの個性を表現していったことが、よくわかる。

「百家争鳴」といいますか、「百花繚乱」といいますか。

ビートにしても、実にさまざまなものがあり、その多様なDNAがいまだに引き継がれている。

音楽構成としてはシンプルでありながら、その中身は多様で、奥行きが深い。

「ひとつの型にはまらない」、これこそが21世紀になってもブルースという音楽が脈々と生き続けている理由だと筆者は思いますが、いかがでしょうか?


音盤日誌「一日一枚」#76 憂歌団「ベスト・オブ・憂歌団ライブ」(フォーライフ 28K-116)

2022-01-29 05:37:00 | Weblog

2001年12月2日(日)



憂歌団「ベスト・オブ・憂歌団ライブ」(フォーライフ 28K-116)

1.渚のボード・ウォーク

2.All Of Me

3.Midnight Drinker

4.嘘は罪

5.ザ・エン歌

6.ドロボー

7.パチンコ組曲

8.Stealin'

9.シカゴ・バウンド

憂歌団、86年5月24日、新宿シアターアプルにてのライヴ。

「ベスト・オブ」と銘打たれただけあって、彼らのいくつかあるライヴ・レコーディングの中でも出色の出来ばえである。

「赤い灯、青い灯、道頓堀の、川面に映る恋の灯よ…」

今は亡き作家、景山民夫さんの名調子のMCとともに、憂歌団登場。

まずは、ストーンズのカバーでも知られるドリフターズ64年の大ヒット、(1)でスタート。アーサー・レズニックとケニー・ヤングの作品。

おなじみのアコギ・サウンドにのった木村秀勝(現・充揮)のしゃがれ声は、なんとも艶っぽい。

続いて、ジャズ・スタンダード中のスタンダード、(2)へ。シーモア・サイモンズ、ジェラルド・マークスの作品。

堤夏の訳詩も、実にせつないムードをかもし出していて、ナイス。

女心を歌わせれば「天才的」ともいえる木村の歌唱が、これまた光っている。

さて、憂歌団のステージの一番の特徴といえば、演奏する側も観客の側も、一杯ひっかけてリラックス・モードに入っているということ。

いささかウルサイ声援もあるものの、実にいい雰囲気が漂っている。

インナー・スリーヴの写真で見るに、憂歌団のメンバーは、ウィスキーの水割りをプラコップに二杯、足元に置いて、一曲終わるごとに少しずつひっかけて行く。

当然、ステージが進むにつれて、気分がどんどんハイになっていくという寸法だ。

そんな酒好きな彼らをそのまま歌にしたようなナンバーが、お次の(3)だ。沖てる夫の詞、内田勘太郎の曲。

こういう曲では、ほんと、客席も盛り上がる。手拍子、足ぶみ、なんでもあり。

あげく、「1万リッターのゲ●を吐け」の歌詞である。ちと汚ないが、これには観客も狂喜乱舞(笑)。

さて、口直しなのか、またしっとり系のスタンダード、(4)。ビリー・メイヒュー作。

ジャズ・ヴォーカリストでこの曲を歌ったことのない人は、いないという位の、超有名曲。

またまた木村は、女性になりきった、やるせない歌唱。これにオブリを付け、ソロを奏でる内田のギターといったら、もう絶品。

この人のアコギは、なんでこんなにも美しい音色を紡ぎ出せるのだろう!

A面(アナログで聴いておるのだよ)のラストは、木村のオリジナル、(5)。

大阪出身の彼らしい、文字通りド演歌なナンバーなのだが、これがまたいい。

とにかく、彼のような天才の歌を聴くと、歌とは心ぢゃ!と痛感しますね。

テクや声量、それも重要ではあるが、すべてではない。最終的にはいかに歌の中に心を込められるか、これだと思いますです。

B面のトップは、木村作のノヴェルティ・ソング、(6)。ちょっと放送は出来そうにない、ヤバイ系の歌詞。

でも、彼らが歌うとサイコーにユーモラスで、楽しい。客席も大歓喜。

さらに追いうちをかけるのが、同じく木村作の(7)。

これがもう、抱腹絶倒の出来。ぜひ、聴いてみて欲しい。

おなじみの「パチンコ、パチンコ!」の連呼をしていたかと思うと、突然、曲調は一変、マイナーに。

なにが始まるかと思いきや、「けさ来た、新聞に、近頃は、パチンコが出ない~」と来たもんだ。

そう、井上陽水の「傘がない」のロコツな引用だ。

それを歌っているうちに、いつのまにかGFRの「ハートブレイカー」に変わっていたなんてご愛嬌も。

またまた、ロックン・ロール調へ一変。チャック・ベリーの「ジョニー・B・グッド」だ。

大盛り上がりの中、ワメきまくる木村。

それでもまだ終わらず、マイナー・ブルース調「パチンコ」へ。

勘太郎のギターからは、「エリーゼのために」やら「天国への階段」やらのフレーズも飛び出したりして、大ウケ。

最後は正調「パチンコ」に戻って、大団円。いやー、ほんまに笑わせてもらいました。

「それでは皆さん、コーラスの時間です」と、木村が観客をリードして、(8)へなだれ込む。

ガス・キャノン作、内田と有山淳司が日本詞をつけた名曲だ。

場内の大合唱で、ステージはクライマックスへ。

ラストは、名古屋のブルース・バンド「尾関ブラザーズ」がオリジナル、憂歌団のデビュー・アルバムにも収録されていた、尾関真作のスロー・ブルース・ナンバー、(9)。

一音一音に魂を込めるかのような、内田のスライド・プレイが最高にカッコよい。

そして、もちろん、その心をすべてしぼり出すかのような、木村のダミ声も…。

静と動、陰と陽、躁と鬱。あらゆる憂歌団の魅力がつまった、最高の出来。

日本のバンドだってこれだけスゴいことが出来るんだって、マジで感動した一枚。ほんまもんの名盤です!


音盤日誌「一日一枚」#75 クリーム「WHEELS OF FIRE」(Polydor 559425)

2022-01-28 05:11:00 | Weblog

2001年11月25日(日)



クリーム「WHEELS OF FIRE」(Polydor 559425)

IN THE STUDIO

1.White Room

2.Sitting On Top Of The World

3.Passing The Time

4.As You Said

5.Pressed Rat And Warthog

6.Politician

7.Those Were The Days

8.Born Under A Bad Sign

9.Deserted Cities Of The Heart

10.Anyone for Tennis

LIVE AT THE FILLMORE

11.Crossroads

12.Spoonful

13.Traintime

14.Toad

クリームのサード・アルバム。68年リリース。

LPでは2枚組として発表されたもの。1枚めはスタジオ録音。2枚めはフィルモアに於けるライヴ。

とにかく名盤中の名盤の誉れ高く、いまだに売れ続けているアルバムなのだが、なにがそんなにスゴいのか。

まずはジャック・ブルース(曲)・ピート・ブラウン(詞)コンビによる、クリーム最大のヒット曲(1)から聴いてみよう。

セカンド・アルバムの「英雄ユリシーズ」の循環コード進行を発展させたナンバー。

この曲ではじめてワウ・ペダルなるものの存在を知ったというリスナーも多いくらい、ワウが効果的に使われている一曲だ。

他にもフィードバックやエコー、オーバーダビング等が多用され、スタジオ録音技術がフルに生かされている。

もちろんこれは、プロデューサーであるフェリックス・パッパラルディ、レコーディング・エンジニアであるトム・ダウド(のちにオールマンズも担当)やエイドリアン・バーバーらの、高い技術力に負うところが大きい。

(2)はハウリン・ウルフのカバー。原曲とは違って、かなり粘っこい、これでもかの重たいアレンジが特徴的だ。

ブルースというより、これはもうヘヴィー・ロック。

(3)は、以前にも紹介したように、ジンジャー・ベイカーとマイク・テイラーによる、アバンギャルド・ジャズ風味のナンバー。

エスニック調コーラスで始まり、ストリート・オルガン風の音にストリングスが絡む。

途中何度もテンポ・チェンジを繰り返す、複雑な構成。未知の音世界へと誘ってくれる。

ジャズやアフリカ音楽に深く傾倒している、ベイカーならではの曲調だ。

プレイヤーとして、クリームの三人だけでなく、パッパラルディが全面的に参加しているのも、このスタジオ盤の特長。

ヴィオラ、オルガン・ペダル、トランペット、スイス・ハンド・ベルといった多様な楽器を巧みに操り、クリーム・サウンドにヴァラエティを加味している。

この曲では、オルガン・ペダルやヴィオラで参加。

続く(4)は、ブルース=ブラウン・コンビ作。ブルースがアコースティック・ギターを弾いている。

音階的にも、西洋音楽のそれではなく、どこかアラビアあたりのエスニック的なものが感じられる、実験的な作品だ。

パッパラルディのヴィオラ、ブルースのチェロが奏でる不協和音が、神秘的な雰囲気を高めている。

(5)は、パッパラルディのトランペット・ソロで始まる、これまた摩訶不思議なムードのナンバー。ベイカー=テイラー作。

寓話ふうのストーリーをクラプトン(らしき声)が語り、バックのリズムは徐々に激しくなり、最後はギターのうねるようなソロへと昇りつめていく。

(3)から(5)は、ライヴにはまず向かない、スタジオならではの面白い試みといえそうだ。

(6)は、ライヴでもおなじみの、へヴィーなビートのナンバー。ブルース=ブラウン作。

進行的にはブルースなのだが、もっと重々しく、歌詞も風刺にみちている。

ギター・ソロも、オーバーダビングによる凝った音作りになっている。

それも主音に和音を重ねていく、いわゆるツイン・リードのやり方ではなく、少しずつ違ったフレーズのソロを重ねていく、「ポリ・メロディック」(そんな言い方があるかどうかは知らないが)な方法論が面白い。

こういう試みも、ひとつ間違えると、ものスゴくダサくなりがちだが、クラプトンの巧みなプレイのおかげで、ギリギリ免れている。

次の(7)も、ベイカーがグロッケンシュピールなる打楽器、パッパラルディがハンド・ベルを演奏している、毛色のかわったナンバー。ベイカー=テイラー作。

地の演奏はアップテンポのハード・ロックなのだが、コーラスも加わって、なんとも奇妙な味わいのポップスに仕上がっている。

一般にクリーム=ハード・ロック・バンドと把握されがちだが、このアルバムを聴くと、そんな一筋縄ではいかないことがよくわかる。その音楽性は実に多岐にわたっているのある。

(8)は、ブルース・ファンにとってはなじみの深いファンキー・ブルース。もちろん、アルバート・キングのカバー。ウィリアム・ベル=ブッカー・T・ジョーンズ作。

クラプトンのギター・プレイも、かなりオリジナル寄りの、ファンキー色の強いものになっている。

アルバートが彼らにとっても、かなりインスピレーションをもたらした存在であったことが判る。

(9)は、アコギも加えた演奏。タイトなビートに乗せて、ストリングスとクラプトンのギターが自在に躍る、進歩的なサウンド。

キング・クリムゾンあたりがやっていたことを、確実に十年近く早く試みていたのである。

クリーム、そういう意味でも、相当「プログレ」なバンドだったのである。

スタジオ盤ラストの(10)はオリジナル・アルバムにはない、ボーナス・トラック(EP)。映画「サべージ・セブン」の主題曲。アコギやコンガ等を使った、アコースティック・ナンバー。ストリングスも効果的に使われている。

このように全編、ブルース、ファンク、プログレ、エスニック等々、スタジオ録音で可能な実験をあれこれ試している。

でも決してひとりよがりに陥らず、ちゃんと「聴かせる」アルバムにも仕上がっている。

これが、実にスゴいところなのだ。

さて、ライヴ盤のほうはといえば、これまた完成度は高い。

まず、クリームといえばこの曲!とまで言われる(11)。以前にもこの曲に対するオマージュ(賛辞)は書いてしまったので、ここではくだくだしく語らないが、68年時点における世界最高水準のロック・ライヴというだけでなく、20世紀を代表する名演奏といえそうだ。

続く(12)は、これもまたハウリン・ウルフの代表曲。ウィリー・ディクスンの作品。

なんと17分近くにおよぶ長丁場を、だれることなく、延々とインプロヴィゼーションだけでうずめつくしていく三人の力量には、舌を巻かざるをえない。

ことに、クラプトンのギブソンSGでのプレイは、「INCREDIBLE」のひとこと。

日本でも60~70年代、陳信輝、竹田和夫ら、多くのトップ・プレイヤーが腕試しのため、この難曲に挑戦したものである。

でもやはり、当時弱冠22歳のクラプトンの腕前には、誰もかなわなかったものだが。

大体、コピーできるか云々以前に、このフレーズをすべてオリジネートしたクラプトンの才能は、ただものであろうはずがない。ふつう17分も演奏すると、ネタ切れになるぜ、ホンマに。

「神」とよばれた所以である。

(13)では、クラプトンはお休み、ベイカーのドラムスのみで、ブルースがハープを吹く。

このハープも実にいい。トーンは割りとシャープで、黒人ブルースマンのそれとは一味違った彼のプレイも、クラプトンの陰にかくれてあまり語られることはないが、グーである。

大ラスの(14)は、ファースト・アルバム所収のインスト。繊細にして豪快、ベイカーの実力をあますところなく伝える、圧巻のソロ・プレイ。もう、こたえられません。

以上、名うてのプレイヤー三人が、持てる技をすべて出しつくして演奏する、バトル・ロワイヤルのような40数分。

「すさまじい」のひと言だ。

スタジオ盤に比べると、音楽的な広がりで勝負というよりは、とにかく力技でわれわれの耳を圧倒するという感じのライヴ盤ではある。

84分、通しで聴けば、ノック・アウト間違いなし。この「音」の洪水に、あなたは耐えられるかな?


音盤日誌「一日一枚」#74 バッド・カンパニー「10 FROM 6」(ATLANTIC 7 81625-2)

2022-01-27 05:46:00 | Weblog

2001年11月18日(日



バッド・カンパニー「10 FROM 6」(ATLANTIC 7 81625-2)

1.Can't Get Enough

2.Feel Like Makin' Love

3.Run With The Pack

4.Shooting Star

5.Movin' On

6.Bad Company

7.Rock 'n' Roll Fantasy

8.Electric Land

9.Ready For Love

10.Live For The Music

第一期バッド・カンパニーのベスト・アルバムである。85年リリース。

フリー解散後、ヴォーカルのポール・ロジャーズ、ドラムスのサイモン・カークが、元モット・ザ・フープルのギター、ミック・ラルフス、元キング・クリムゾンのベース、ボズ・バレルとともに、73年結成したのがバッド・カンパニー。

翌年、レッド・ツェッペリンが立ち上げたスワン・ソング・レーベルからアルバム「バッド・カンパニー」でデビュー。

シングル・カットされた(1)が全米ナンバーワン・ヒットとなり、華々しいスタートを切る。

処女作とはいえ、そのサウンドはかなり完成度が高い。ブルースをベースにした、ストレートなロックン・ロールがアメリカをはじめ、日本など世界中で人気を博したのである。

ファースト・アルバムからは、他に(5)、(6)、(9)と、4曲も収めれている。彼らとしても、このアルバムには格別の思い入れがあるようだ。

たとえばラルフス作の(1)は、ギターもカッティング中心の、実にシンプルな音作りなのだが、当時の、グラム・ロックに代表される豪華絢爛サウンドの流行の中では、逆に大変新鮮に聴こえたものである。今も、その魅力は色あせていない。

つまり、ギター・バンドの基本中の基本、みたいなベーシック・サウンドなので、永遠に古びないのである。

フリー時代の、あのベターッとした、ブリティッシュ丸出しの重たいサウンドは、かなりアメリカナイズされて、「抜け」のいい、カラッと乾いたものになっている。

これが、アメリカでも大成功をおさめた勝因といえるだろう。(1)のほか、同じくラルフス作の(5)も、その系統の佳曲だ。

もちろん、ロジャーズの持つ、「濃ゆ~い」ブルース・フィーリング、メジャーの曲を歌っても、どこか陰影のあるブルーな歌声、これもアメリカ人には強くアピールしたハズだ。

グループのテーマ・ソングともいえる、ロジャーズ・カーク共作の(6)などに、それをはっきりと感じとることが出来る。

また、ラルフス作の(9)、これも実にロジャーズのブルースごころを見事に引き出したメロディである。

好調なスタートをした彼ら、その勢いをかって、翌75年にはセカンド・アルバム「ストレート・シューター」を発表する。

このアルバム・タイトルも、直球勝負型の、いかにも彼ららしいものではなかろうか。

同アルバムからは2曲、ヒットの(2)、(4)を収録。

これらを聴くに、アコギやピアノ、コーラスを加えるなどして、ブルースのみならず、カントリー色もかなり濃いサウンドに仕上がっている。

基本はハード・ロックだが、決して一本調子に終わらぬ、広い音楽性を感じさせてくれる。

(2)なぞは、歌詞にマディ・ウォーターズの強い影響を読み取ることができる。

前作の(9)についてもいえるが、基本的にバドカンの歌詞世界はシンプルなんである。「求愛」、つまり女性に「おまえを抱きたい」とストレートに迫る、こういうことやね。で、それこそが一番説得力があるもんだ。

70年代、いろんなギミック、ケレンで理論武装をしたロック・バンドが乱立した中で、徒手空拳ともいえる彼らのシンプルな世界は、潔くてすがすがしささえ感じさせてくれる。

さて、バドカンの快進撃はなおも続く。翌76年にはサード・アルバム「ラン・ウィズ・ザ・パック」を発表。

ここではタイトル・チューン、(3)を収めている。

サウンド的に大きな変化はないが、ストリングスを取り入れたりして、アレンジにもさまざまな工夫をしているのがわかる。

一年一作のコンスタントなペースは、77年リリースの4番目のアルバム「バーニング・スカイ」まで続く。

しかし、どうもこのアルバムは、彼らにとって満足の行く出来ではなかったと見えて、このベスト・アルバムのラインナップからは外されている。

2年おいて79年、「ディソレーション・エンジェルズ」を発表。

その中からの(7)は、スマッシュ・ヒットしたおなじみのナンバー。

3分17秒と、当時のロックのヒット・チューンとしては異例なほど短い時間に、ロックのエッセンスをギュッとつめこんだナンバー。ロジャーズの作品。実に曲作りがうまいんだよなあ、彼らは。

曲、歌、演奏、この三位一体というか、三者のバランスがよくとれているのだよ。

フリー時代のロジャーズみたいに、誰かひとりが突出するのでなく、ブルーズィなギター、ファンクなベース、タイトなドラムスと、それぞれが聴かせどころをちゃんと持っている。

さすが、バンド経験の豊かな四人だけのことはある。

もう一曲、ラルフス作の(10)も収録。

こちらは、彼らの音楽への真摯な姿勢が伝わってくるナンバー。

ボズのファンキーなベース・ラインが実にいかした、ノリのいい演奏だ。

ヴォーカルもラップ的な要素が感じられ、彼らの持つ「黒っぽい」フィーリングがもっとも顕著に表われた一曲。

ここまで順風満帆のように見えた彼らの活動であったが、歳月を経るにしたがい、音楽的にも人間関係的にも次第に煮詰まっていき、グループの中にすきま風が吹き始める。

それでも3年のブランクののち、82年に第一期最後のアルバムが出される。「ラフ・ダイヤモンズ」だ。

ここでは(8)を収録。ロジャーズの作品。

深みのあるヴォーカル、効果的に配されたピアノやストリングス、エコーを駆使した重層的なサウンド処理。明らかに、ストレート一本やりの初期とは違って、変化球も繰り出してくる、成長したバドカンの姿がそこにある。

70年代から80年代へと時代が移り変わるように、サウンドもまた徐々にではあるが、変化していく。

このアルバムの発表後、ロジャーズはバンドを去り、85年ジミー・ペイジらとの新バンド「ザ・ファーム」の結成に参加する。

そのザ・ファームも結局短命に終わってしまうのだが、デビュー・アルバムを聴くと、どこか過去のバドカンのサウンドをほうふつとさせる音だったりして、バドカン・サウンドの素晴らしさを改めて感じる。

残ったラルフスは、「バッド・カンパニー」のバンド名を継承し、新メンバーも加えて90年代までバンドを存続させていく。

でもまあ、筆者にしてみれば、ロジャーズ抜きのバドカンは、まったく別のバンドという気がする。

やはり、ロジャーズの歌声は、バドカンにとってなくてはならぬエレメントだったと思う。

最近でもロジャーズはソロ・アルバムやトリビュート・アルバムなどで地道に活躍しており、一ファンとしてうれしい限りだ。

が、やはり彼の才能のピークは、この第一期バドカンにあり!と筆者は断言してはばからない。

彼をずっと聴いてきたかたも、まだ聴いたことのない若いかたも、このベスト・アルバムで彼、そして見事なチームプレイをみせるバッド・カンパニーというバンドの魅力を確認してほしい。


音盤日誌「一日一枚」#73 V.A.「BLUES MASTERS, VOLUME 6: BLUES ORIGINALS」(MCA/Rhino R2 71127)

2022-01-26 05:00:00 | Weblog

2001年11月10日(土)



V.A.「BLUES MASTERS, VOLUME 6: BLUES ORIGINALS」(MCA/Rhino R2 71127)

1.BRING IT ON HOME(SONNY BOY WILLIAMSON II)

2.YOU NEED LOVE(MUDDY WATERS)

3.TEXAS FLOOD(LARRY DAVIS & HIS BAND)

4.GOT MY MO-JO WORKING(BUT IT JUST WORK ON YOU)(ANN COLE, WITH THE SUBURBANS & ORCHESTRA)

5.I AIN'T SUPERSTITIOUS(HOWLIN' WOLF)

6.LOVE IN VAIN(ROBERT JOHNSON)

7.I CAN'T QUIT YOU BABY(OTIS RUSH)

8.BULLDOZE BLUES(HENRY THOMAS)

9.MADISON BLUES(ELMORE JAMES)

10.SOMEONE TO LOVE ME(SNOOKY PRYOR)

11.I AIN'T GOT YOU(JIMMY REED)

12.THAT'S ALL RIGHT(ARTHUR "BIG BOY" CRUDUP)

13.I'M A MAN(BO DIDDLEY)

14.BOOM, BOOM OUT GOES THE LIGHTS(LITTLE WALTER)

15.PACK FAIR AND SQUARE(BIG WALTER &HIS THUNDERBIRDS)

16.I'M A KING BEE(SLIM HARPO)

17.IT'S A MAN DOWN THERE(G.L. CROCKETT)

18.BACK DOOR MAN(HOWLIN' WOLF)

「BLUES WASTERS」と名づけられたシリーズの中の一枚。1993年リリース。

MCAの音源を中心に、SONY MUSIC、PAULA/JEWEL、Vee-Jay、BMGなど他社の音源も含めて編集され、バラエティにとんだセレクションになっている。

タイトル中の「ORIGINALS」が示すように、ロック系アーティストによってカバーされた有名なブルース・ナンバーの、オリジナル・ヴァージョンが選曲されている。

まず(1)は、レッド・ツェッペリンのカバーでおなじみのナンバー。

サニーボーイのヴォーカル、そしてハープには、実に「深い」味わいがある。

続いて(2)は、ウィリー・ディクスン作、同じくZEPの「胸いっぱいの愛を」で歌詞がまるごと引用されたナンバー。

ここでは、マディ・ウォーターズによる、野太いヴァージョンを収録。

(3)は、スティーヴィ・レイ・ヴォーンのデビュー・アルバムのタイトル・チューンともなった、スロー・ブルース。

オリジナルはラリー・デイヴィス。ただし作曲者としてのクレジットはドン・ロビー。

日本ではあまり知られていないが、ロビー率いるデューク・レコードに所属していたシンガー。アルバート・キングのバンドを経て、B・B・キングの引きで彼のレーベルに所属したりもした実力派だ。58年の録音。

このヴァージョン、ギターのフェントン・ロビンスンのプレイも聴きもののひとつである。

(4)は、マディ・ウォーターズの十八番として知られている、あまりに有名な曲だが、実はアン・コールというジャンプ・ブルース系の女性シンガーがオリジナル。

彼女とツアーを共にしていたマディが、この曲の受けように目をつけて、ちゅっかり自分のおハコとして取り入れた、ということらしい。

マディに負けず劣らず勇ましい、アン・コールの歌いぶりにも注目したい。

(5)は以前このコーナーでも紹介したジェフ・ベック・グループ(第一期)の「トゥルース」でカバーされていたナンバー。

ジミー・ロジャーズ、ヒューバート・サムリンのツイン・ギターが奏でるリフがまことにカッコよい。61年録音。

(6)はもちろん、ストーンズがアルバム「レット・イット・ブリード」中でカバーした名曲。

なにせ37年の録音、音質はいまイチだが、心をゆさぶる歌声といい、独演とは思えぬ達者なギター・プレイといい、名演には変わりない。これぞ、デルタ・ブルースの粋。

(7)は、これもZEPにカバーされた名曲、オーティスのコブラでのファースト・シングル。

決してカバーに「食われる」ことのない、金字塔的な名唱だと思う。

(8)は、聞きなれないタイトルだが、「ゴーイン・アップ・ザ・カントリー」という別名を聞けば、皆さん、ピンと来るだろう。

名ブルース・ロック・バンド、キャンド・ヒートのカバーで知られるようになったナンバー。映画「ウッドストック」でもバックに流れていたし、最近では日本でクルマのCFソングにも使われた、どこかほのぼのとしたムードのカントリー・ブルース。

オリジナルはさすがに古くて、なんと28年。典型的なホーボーと呼ばれた放浪のシンガー、ヘンリー・トーマスが自ら吹くリード・パイプがいい雰囲気だ.

(9)は、スライド・ギターの大御所、エルモア・ジェイムズの自作自演。チェスの名盤「フーズ・マディ・シューズ」に収録されている。60年録音。

白人エルモア・フリークNO.1、ジェレミー・スペンサーがいた、フリートウッド・マックによりカバーされているので、おなじみであろう。(「ブルース・ジャム・イン・シカゴVOL.1」所収。)

エルモアのソリッドなスライド・プレイ、そしてワイルドなヴォーカルは実にゴキゲンだ。ノリノリ~な一曲。

(10)は、ヴィー・ジェイ所属のハーピスト、スヌーキー・プライアーのオリジナル。56年録音。

この歌詞を全面的に書き替えたのが、ジェフ・ベック在籍時のヤードバーズの代表曲「ロスト・ウィメン」なのである。

オリジナル版、歌のほうはご愛嬌という感じの出来だが、そのハープはさすがに「貫禄」を感じさせるプレイである。

(11)は、クラプトン・フリークなら一度はそのソロをコピーしたであろう、第二期ヤードバーズ・ナンバーの原曲。(筆者も恥ずかしながらやりました。)

カルヴィン・カーターの作品、歌うはジミー・リード。55年の録音。こちらもヴィー・ジェイ音源から。

間奏部分は、ジミー・リードのハープをフューチャーしたもの。ヤーディーズ版と聴き比べてみると面白い。

(12)はキング・エルヴィスが最も影響を受けた黒人シンガーのひとり、クルーダップの作品。

エルヴィスによるカバー(アルバム「リコンシダー・ベイビー」などで聴ける)とくらべると、少し甲高い声が印象的だ。

46年の録音だから、バックの演奏スタイルも古めかしいが、それもまた微笑ましい。

(13)は、これまたヤーディーズの重要レパートリー(ライヴではラストに演奏されることが多かった)のひとつ。

オリジナルのボ・ディドリーも、重量感あふれる演奏がナイスだ。

(14)は、パット・トラヴァースによってカバーされたナンバー。不世出のハーピスト、リトル・ウォルターは、シンガーとしても一流であることが、これを聴くとはっきりわかる。

もちろん、ハープの方も、たとえようもなく素晴らしい音色だ。

お次の(15)では、ビッグ・ウォルターも登場。彼も負けじとヴォーカルで勝負。こちらもグーなんである。

やはり、すぐれたハーピストは歌わせても上手い。ハープのこころは「歌ごころ」なのだなと、改めて感じいった次第。

で、この曲のカバーといえば、J・ガイルズ・バンド。ともにいかしたロックン・ロールに仕上がっている。

ハーピスト三番勝負(!)の最後は、スリム・ハーポ。

(16)は、ジェイムズ・ムーア、すなわちスリム・ハーポ自身の作品。ヘンリー・グレイ、ルイジアナ・レッドらも取上げ、ストーンズや、日本ではシーナ&ロケッツなどもカバーしている有名曲だ。

スリム・ハーポはこれをシャウトせず、クールに歌う。前のふたりとはかなり趣きを異にしたヴォーカル・スタイルだが、これはこれでカッコいい。

(17)はオールマンズがカバーしたサニーボーイの「ワン・ウェイ・アウト」(W・ディクスン作)とかなり似通ったスタイルを持つナンバー。どうやらこの「イッツ・ア・マン~」のほうが元曲らしい。

歌うは、日本ではほとんどおなじみのない、G・L・クロケット。

こちらはシャウト無縁の、鼻歌ソング的な歌いぶり。肩の力がまるきり抜けた感じだ。

でもなぜか、65年にリリースされるや、R&Bチャートの上位を占めるヒットになったというから、世の中わからない。

さらには、ジミー・リードが「アイム・ア・マン・ダウン・ゼア」なるアンサー・ソングまで作って、これまたヒットしたというおまけのエピソードまである。

ラストの(18)は、ドアーズのカバーで知られる、へヴィーな(サウンドも歌詞も)ナンバー。ウィリー・ディクスン作品。

ジム・モリスンのヴォーカルもスゴみがあったが、オリジナルのウルフも決して負けてはいない。めいっぱいの迫力だ。

ちなみに、ギターはサムリンの他、デビュー当時のフレディ・キングも参加しているようだ。よ~く耳をすまして聴きわけて欲しい。

以上18曲、いかにブルースがロックの成長の上で欠かせぬことの出来ない「栄養源」になったかを語る、雄弁な証拠ぞろい。

単独では入手しづらい、貴重な音源もいくつか含まれているから、買って損はない。

ブルース・ファン、ロック・ファンともに、超おススメである。


音盤日誌「一日一枚」#72 バディ・ガイ「スリッピン・イン」(BMGビクター BVCQ-634)

2022-01-25 05:17:00 | Weblog

2001年11月4日(日)



バディ・ガイ「スリッピン・イン」(BMGビクター BVCQ-634)

1.I SMELL TROUBLE

2.PLEASE DON'T DRIVE ME AWAY

3.7-11

4.SHAME, SHAME, SHAME

5.LOVE HER WITH A FEELING

6.LITTLE DAB-A-DOO

7.SOMEONE ELSE IS STEPPIN' IN(SLIPPIN' IN, SLIPPIN' OUT)

8.TROUBLE BLUES

9.MAN OF MANY WORDS

10.DON'T TELL ME ABOUT THE BLUES

11.CITIES NEED HELP

バディ・ガイ、1994年の作品。エディ・クレーマーのプロデュース。

いつもハイ・テンションな歌とギターを聴かせてくれるバディだが、この一枚も勿論、全編気合いの入ったプレイがギッシリだ。

まずは、ボビー・ブランドのヒット、(1)。クレジットにはドン・ロビー=ディアドリック・マローンとあるが、当然ながらブランド自作の曲を買い上げたもの。

スロー・ブルースながら、のっけから歌のテンションは高く、ハイ・トーンのバディ節が全開である。

で、リズム隊の音、どこかで聴いた覚えがあるなあと思えば、今は亡きスティーヴィー・レイ・ヴォーン率いるダブル・トラブルの面々でした。

ベースのトミー・シャノン、ドラムスのクリス・レイトンのほか、この曲のみキーボードのリース・ワイナンスも参加。

SRVサウンド復活!という感じの、タイトな演奏が実にグーだ。

続く(2)はチャールズ・ブラウンの作品。アップ・テンポで、ガンガン飛ばしまくる一曲。

ここからは、チャック・ベリーのピアニストとして知られるベテラン、ジョニー・ジョンスンが登場。

ワウワウなどギター・エフェクト全開、若いもんにはまだまだ負けん!といわんばかりのギラギラしたバディのプレイが聴ける。それこそ、SRVも顔負け。

(3)もフェントン・ロビンスン作曲の典型的スロー・ブルース。

歌もギターも、(1)よりはメロウでしっとりとした雰囲気だ。また、ジャズィなセンスを湛えた、ジョンスンのソロ・プレイが味わい深い。

さて、曲調はまた一転、アップ・テンポの(4)へ。ジミー・リードの作品。

チャック・ベリーの「メンフィス」などと同系統のシャッフル・ナンバー。この「ノリ」が実に心地よい。バディも肩の力を抜いた自然体の歌&ギターを披露してくれる。

(5)はローウェル・フルスン作、タンパ・レッドのヒットで知られる、ミディアム・スロー・ナンバー。

マディの「フーチー・クーチー・マン」を思わせる重心の低いアレンジにのせて、バディの粘っこいギター・フレーズが炸裂! 聴き応え十分だ。若いロック・ギタリストにも参考になる、いかしたリック満載。

(6)はバディのオリジナル。歌詞から見るに、口説きソングといえるが、それにふさわしく、バディの歌も抑え目でムードがある。

スロー・ビートにのせた「泣き」のギターもまたよし。これを聴けば、世の女たちは皆イチコロ!?

アルバム・タイトルとしても引用された(7)はデニス・ラサール作、R&B系シンガーのカバーが多いナンバー。ファンキーなリフがいかしている。

シカゴのブルース・クラブではことのほか人気の高い曲だそうだ。

アルバム中では唯一のライヴ録音。客席の熱い反応がダイレクトに伝わってくる。

(8)ではふたたび、チャールズ・ブラウンの大ヒットを取上げている。ブラウン一流のメランコリックなメロディ・ラインが「気分」な、去って行った恋人へ贈るフェアウェル・ソング。

バディの歌もギターも実に繊細で、ちょっとオーティス・ラッシュ風。全体的にテンションの高い、このアルバムの中ではちょっと異彩を放っている。

(9)は、あらなつかしや、70年代エリック・クラプトンと共演した、「バディ・ガイ&ジュニア・ウェルズ・プレイ・ザ・ブルース」収録曲の再演。バディのオリジナル。

キャッチーなリフ、ヘヴィーなビート。今聴いても、なんともロック感覚あふれるナンバーで、ブルースという枠におさめきれないバディの幅広い音楽性を再認識できる。

(10)は、J・クインという詳細不明のアーティストのナンバー。

ブルースの本質とは何ぞや? そこそこにレコードも売れて名前も知られるようになったブルースマンが歌っているのは、本当に「虐げられた者たちの音楽=ブルース」といえるのか? そういう深く本質的な問題をつきつけたへヴィーなナンバーだ。

ハイ・テンションな歌、そして派手なスクウィーズ・プレイも絶好調の、スロー・ブルース。どことなく、アルバート・キングを匂わせるフレーズも聴かれる。

こうやって聴いて来ると、ギタリストとしての彼は、さまざまなギタリスト(ロック系も含む)の影響を受けながらも、コピーに終わることなく、必ず自分流に消化したフレーズを紡ぎ出しているのがよく判る。

最後の(11)は、ふたたびバディのオリジナル。「社会派」的な歌詞がちょっとユニークなナンバー。

ささやき、うめくような「引き」のヴォーカルは、ふだんの「押し」で迫る彼とはだいぶん趣きが違うが、これも結構イケてる。バディの引き出しの多さがよくわかる曲だ。

そしてギターのディストーション・トーンもまた、心にしみる。幕引きにふさわしい、味わいに満ちたナンバーだ。

アルバム発表当時、バディは57~58歳。一般社会では定年間近、決して若いとはいえない彼が、往時と変わらぬ迫力あるヴォーカル、そしてエネルギッシュなギター・プレイを聴かせてくれる。驚嘆せざるをえない。

もちろん、65歳となった現在でも、現役バリバリ。レコーディングに、ライヴに、決してテンションを落とすことなく、精力的な活動を続けている。「生涯現役ブルースマン」、バディ・ガイはやはり無敵だ。

そんな彼のアルバムの中でも、この「スリッピン・イン」は、完成度が高く、一聴の価値があると思う。

この一枚から、彼の不滅のブルース魂、そして常に新しい音を模索する、進取の気性を感じとって欲しい。


音盤日誌「一日一枚」#71 ジョニー・ウィンター・アンド「LIVE」(COLUMBIA CK 30475)

2022-01-24 05:01:00 | Weblog

2001年10月28日(日)



ジョニー・ウィンター・アンド「LIVE」(COLUMBIA CK 30475)

1.GOOD MORNING LITTLE SCHOOL GIRL

2.IT'S MY OWN FAULT

3.JUMPIN' JACK FLASH

4.ROCK AND ROLL MEDLEY:

GREAT BALLS OF FIRE

LONG TALL SALLY

WHOLE LOTTA SHAKIN' GOIN' ON

5.MEAN TOWN BLUES

6.JOHNNY B. GOODE

ジョニー・ウィンター・アンドのセカンドにしてライヴ・アルバム。71年リリース。フィルモア・イースト、フロリダのパイレーツ・ワールドにて録音。

パーソネルは、ジョニー・ウィンター(g,vo)、リック・デリンジャー(g,vo)、ランディ・ジョー・ホッブス(b)、ボビー・コールドウェル(ds)の四人。

「100万ドルのギタリスト」というキャッチ・フレーズで華々しくコロムビアからデビューしたウィンターが、元マッコイズの看板ギタリスト/シンガー、デリンジャーをよんで結成したグループ。

売りはもちろん、ふたりのいずれ劣らぬギター・テクニックと、ワイルドなヴォーカルだ。

異形の大男と、小柄な美青年。見てくれはだいぶん対照的なふたりだが、音楽的な指向はバッチリ合っていて、デビュー盤から見事なコンビネーション・プレイを聴かせてくれた。

そんな実力派の彼らの、本領が最も発揮されたライヴ盤。

とにかくオープニングの(1)から、もう飛ばす飛ばす。

オリジナルはもちろん、サニーボーイ一世だが、ヤードバーズやアルヴィン・リー率いるテン・イヤーズ・アフターらもカバーしているこのナンバーを、ハイパーアクティヴなロックン・ロールに仕上げているのだ。

ウィンターもデリンジャーも、ひたすら速いパッセージを何の造作もなく引き倒す。しかも、ただ速いだけでなく、ノリが抜群によい。

その底力、恐るべし。

ウィンターのラフでがなるようなヴォーカル・スタイルも実にサマになっているんだな、これが。

続いて、曲調は一変、スロー・ブルースの(2)となる。これは、B・B・キングの代表曲。自分のもとを去っていった女にわびる歌だ。

歌詞はだいぶんウィンター流にはアレンジしているが、そのディープな歌いっぷりはキングにも迫るものがある。

もちろん、ウィンターのファイヤーバード、デリンジャーのレスポール、ふたりの「泣き」のギターも最高。ハンパな黒人ブルーズマンなんか、かすむプレイだ。

スピード・プレイ、思いきりタメたプレイ、何でもござれというところが彼らのスゴいところだ。

「弾きすぎ」という評も一方ではあるだろうが、彼らのプレイは前向きに突進していくタイプなので、「重さ」がなく、聴いていて腹にもたれるということがない。いくらでも聴ける、という感じだ。

そして前半ラストはストーンズの大ヒット、(3)。もう、何のてらいもなく、やりたい曲をやり倒す、こういうところが好きだな~。痛快この上ない。

ストーズにもひけを取らぬドライヴ感、ワイルドな存在感。これを聴いて体の血が騒がないやつはロックを聴かなくともよろしいです、という感じ。

後半はメドレーものの(4)から。ウィンターのオールド・ロンクンロール趣味を前面に押し出した選曲だ。

まずはジェリー・リー・ルイスの大ヒット、「火の玉ロック」。続いて、リトル・リチャードの代表曲、ビートルズのカバーでもおなじみの「のっぽのサリー」。そしてとどめは「ホール・ロッタ・シェイキン・ゴーイン・オン」。もちろんこれも、ジェリー・リー・ルイスのヒット。

息もつかせぬスピード・プレイでゴリゴリ押しまくる。で、それがやたらと気持ちよい。

(5)はウィンターのオリジナル。彼のスライド・ギターをフューチャーしたアップ・テンポのブルース・ナンバー。

彼のソロもさることながら、デリンジャーのギターとの掛け合いも実にエキサイティング。

ファイヤーバードを弾いているさまが目に浮かぶよう。「ブルースマニア」なウィンターの側面が堪能できる一曲だ。

ラストは例によって「ROCK'N'ROLL!!」の掛け声とともに始まる、「ジョニー・B・グッド」。

オリジナルのチャック・ベリーに負けじとバリバリ弾きまくり、わめきまくるウィンター。

40分間、とにかくしちめんどくさい理屈は一切なし、聴いてノレる、踊れる、そういうロックンロールとブルースのテンコ盛り。

シンプルなものが一番説得力がある、ということを実感させる一枚。たまにはこういうのを聴いて、カチカチになった頭をほぐしてみましょ。


音盤日誌「一日一枚」#70 ジョン・メイオール&ザ・ブルースブレイカーズ「ウィズ・エリック・クラプトン」(DERAM/ポリドール POCD-1851)

2022-01-23 05:37:00 | Weblog

2001年10月21日(日)



ジョン・メイオール&ザ・ブルースブレイカーズ「ウィズ・エリック・クラプトン」(DERAM/ポリドール POCD-1851)

1.ALL YOUR LOVE(Rush)

2.HIDEAWAY(King, Thompson)

3.LITTLE GIRL(Mayall)

4.ANAOTHER MAN(Arr. Mayall)

5.DOUBLE CROSSIN' TIME(Mayall, Clapton)

6.WHAT'D I SAY(Charles)

7.KEY TO LOVE(Mayall)

8.PARCHMAN FARM(Allison)

9.HAVE YOU HEARD(Mayall)

10.RAMBLIN' ON MY MIND(Trad., Arr. Mayall)

11.STEPPIN' OUT(Bracken)

12.IT AIN'T RIGHT(Jacobs)

先週の1枚も名盤であったが、今週も名盤中の名盤と呼ばれる1枚。

ジョン・メイオール率いるブルースブレイカーズのセカンド・アルバムである。66年リリース。

64年末、音楽的指向のくい違いからヤードバーズを脱退したエリック・クラプトンが身を寄せたのが、英国ブルース界のパイオニア、メイオールのバンドであった。

このグループでクラプトンは、自分の音楽的才能を存分に開花させ、のちの大活躍の礎を築くことになる。

さっそく(1)から聴いてみよう。もちろん、オーティス・ラッシュの最重要ナンバー。

コブラ盤のオリジナルにほぼ忠実なアレンジだが、クラプトンのギターの艶やかな音色がたとえようもなく素晴らしい。

おそらくレス・ポール・スタンダードを使っていると思われるが、本家ラッシュにせまるあざやかなヴィブラート・トーンにノック・アウトである。

このアルバムの発表時、クラプトンわずかに21才。はたちそこそこの若造がこんなギターを弾いていたんだから、もう絶句である。

しかも彼は17才の時にギターを始めたという。ほんの数年で、これだけ完璧にブルース・エッセンスをマスターしたのである。まさに、天才。まさに、神。

続く(2)は、クラプトンが最も影響を受けたギタリストのひとり、フレディ・キングのデビュー曲。

こちらもオリジナルにほぼ忠実に従いながらも、細かいところで若干アレンジを加えている。聴き比べてみると面白いだろう。

3分ちょっとという短いインストの中に、ブルース・ギターのエッセンスがギュッと凝縮されている。文句なしの名演。

(3)はメイオールのオリジナル。ミディアム・テンポのブルース。ここでのクラプトンのギターは、伸びやかでリラックスしたムードがある。

(4)はトラディショナルをアレンジしたという、伴奏はクラップのみといたってシンプルな、カントリー・ブルース。メイオールの中低音を強調したヴォーカルといい、ハープといい、どことなくサニーボーイ二世ふうである。

メイオールは、他の曲でのどちらかといえば一本調子な、甲高いヴォーカルより、こういうシブめの歌い方のほうがずっといい、と思うのは筆者だけであろうか。

(5)は日本のブルース・ロック系のバンドらもこぞってコピーした、メイオール・クラプトンの共作。泣きのギター・ソロが印象的なスロー・ブルース。

ジョン・アーモンドのバリトン・サックスが奏でる、物憂げなりフもなかなかいい。

(6)はいうまでもなく、レイ・、チャールズの大ヒット。当時のR&Bバンドにおいては、「キラー・チューン」というべき曲だ。

間奏のヒューイ・フリントのドラム・ソロの後に、ビートルズの「デイ・トリッパー」をパクったリフが続くのは、ご愛嬌といったところか。コンパクトにまとまっていて、ステージ受けがよさそう。前半の幕切れにはふさわしいナンバーだ。

(7)は、メイオール作、ブラス・アレンジも賑やかな軽快なジャンプ・ナンバー。クラプトンのギターも、思いきりアグレッシヴに泣き、喚いている。

(8)は、悪名高き監獄農場「パーチマン・ファーム」を歌ったモーズ・アリスン作のブルース。

歯切れのいいビートに乗せて、メイオールのハープ・プレイが炸裂する。

(9)はデレク・アンド・ドミノス時代の名演「ハヴ・ユー・エヴァー・ラヴド・ア・ウーマン」をほうふつとさせるスロー・ブルース。メイオールのオリジナル。

ここでのクラプトンのプレイは、いささか荒削りながら、実にエモーショナルで、ディープだ。ファンならずとも、必聴の出来ばえである。

(10)はトラディショナル、というより、ロバート・ジョンスンのナンバーとして有名。もちろん、このクラプトンのヴォーカルによるヴァージョンがきっかけで世に知られるようになったわけだが。

クラプトンはこの曲が相当お気に召されたらしく、70年代にもライヴで何度か録音している。

やはりその歌詞が、さすらいこそ自分の身上と考えるクラプトンの心情に、すんなりとフィットしたのであろうか。

続く(11)は(2)と好一対をなす、インストゥルメンタル。メンフィス・スリムでおなじみのナンバーである。

オリジナルのピアノ・リフやソロをギターにおきかえ、エッジの立った音でパワフルな演奏を聴かせてくれる。

なお同曲は、クリーム時代にも「LIVE VOL.2」で13分以上にもおよぶ超熱演がある。ぜひ、聴き比べてみて欲しい。

ラストの(12)は、リトル・ウォルターのカバー。アップ・テンポでガンガン飛ばす演奏が、耳に心地よい。

前面には出てこないが、ジョン・マクヴィー(かのフリートウッド・マックのメンバー)やヒューイ・フリントの、堅実でタイトなプレイも、ブルースブレイカーズのサウンドをしっかりと支えている。こちらもよーくチェックしてみて欲しい。

とにかく、発売35年を経た今も、いまだに売れ続けているという驚異のロング・セラ-。

その理由はやはり、弱冠はたちの天才、クラプトンの「華」のあるギター・プレイだろうが、バンド・アンサンブルとしても、彼らの音が極めて高い水準にあることを忘れてはなるまい。

クリーム、フリートウッド・マック。のちに一世を風靡するスーパー・バンドの原点は、ここにある。

歳月の流れに決してあせることのない、不滅の「響き」を聴くべし。


音盤日誌「一日一枚」#69 アルバート・キング「LIVE WIRE/BLUES POWER」(Stax SCD-4128-2)

2022-01-22 05:28:00 | Weblog

2001年10月14日(日)



アルバート・キング「LIVE WIRE/BLUES POWER」(Stax SCD-4128-2)

1.WATERMELON MAN(Herbie Hancock)

2.BLUES POWER(Albert King)

3.NIGHT STOMP(Jackson-King)

4.BLUES AT SUNRISE(King)

5.PLEASE LOVE ME(King-Taub)

6.LOOK OUT(King)

68年6月、サンフランシスコのフィルモア・オーディトリアムにおけるライヴ録音。

アルバート・キングのステージは出来不出来の差が激しいとよく言われるが、これは間違いなく上乗、ピンの出来といえるだろう。

彼が本気を出せばいかにスゴい歌、ギター・プレイを聴かせるかを立証した一枚だ。

オープニングの(1)は60年代のファンキー・ジャズの代表曲。

アルバートはこの曲の途中からトレードマークのフライングVを抱えて登場するのだが、Vの特徴あるブライトな音でクイーンと弾き始めた瞬間から、もうやる気マンマンなのが感じられる。

ノリのいい一曲目から一転、いきなり重厚なスロー・ブルースが始まる。アルバム・タイトルともなっている(2)だ。

これが、文字通り「圧巻」の出来ばえ。

途中、アルバートによる語り(あるいはプリーチというべきか)をはさんで、延々10分以上インストゥルメンタルが続くのだが、そのサウンドの大きなうねりには、ただただ驚嘆するのみ。

とにかく、粘りに粘り、執拗にスクウィーズし続けるアルバートのギターがスゴいの一語。

緊張でピンとはりつめた感覚、その一方でリラックスしたムードもあり、そのふたつが絶妙にブレンドされているのだ。

およそブルースのライヴ盤があまたある中で、この一曲は十指に入る出来といえるだろう。

これはもう、実物を聴いて確かめていただくしかあるまい。

さて、大曲の後も、名演奏がめじろ押しである。

続く(3)はこのアルバムのプロデューサーでもある、MG'Sのアル・ジャクスンとの共作(インスト)。

いかにもスタックス系ソウルという感じのファンキー・ビートに乗せて、アルバート節が炸裂。

彼のギターはよく言われるように、どんな曲でも同じフレーズを貫き通す「ウルトラ・ワンパターン」なのだが、そのワンパターンが実に強力きわまりない。

彼のギターは表情が豊かで、本当によく「歌う」。

SRVをはじめとして、熱烈なフォロワーが多いのも納得がいく。

(4)は彼のクレジットになっているようだが、BBなどでもおなじみ、アイヴォリー・ジョニー・ハンターの名曲。

こちらのスロー・ブルースも(2)同様、9分近くの大熱演。

でも、長さを感じさせず、天井知らずのエキサイトぶりを見せつけてくれる。

長尺でも決してダレることのない彼のテンションは、脱帽ものである。

(5)は、イントロを聴けばすぐわかる、エルモア・ジェイムズ・スタイルの、ガッツあふれるシャッフル・ナンバー。

こちらもBBのナンバーとしておなじみ。アルバートのライヴァル意識がほの見えますな。

スモーキーでほとんど声を張り上げないヴォーカル・スタイルのアルバートなれど、ここではシャウトも交える盛り上がりぶり、いかにも場内がヒートアップしていることが感じ取れる。

ラストの(6)は、アップ・テンポの自作インスト。

これまたシャッフル・ビートでノリノリ、スクウィーズばりばりのギター・ソロを展開してくれる。。

それにしても、彼のフライングVはどうしてこんなにツヤっぽい音を出せるのだろうか。

彼こそは、テクニックより、むしろその「音色」で聴く者をノック・アウトすることの出来る、数少ないギタリストのひとりであるといえそうだ。

「気合い」「ダイナミズム」「表現の豊かさ」、いずれをとっても超一級の一枚。

ジャンルを問わず、ありとあらゆるライヴ盤の中で最高峰にあるこの「LIVE WIRE/BLUES POWER」、聴かずにいては絶対損!だと思う。

ロック・ファンにもおススメ。


音盤日誌「一日一枚」#68 ハニードリッパーズ「VOLUME TWO」(プライヴェート盤・HDS-A1381CD)

2022-01-21 07:25:00 | Weblog

2001年10月7日(日)



ハニードリッパーズ「VOLUME TWO」(プライヴェート盤・HDS-A1381CD)

さて、今日は昨日に引き続いて、またもハニードリッパーズ。

筆者はある日、中古CDショップでこの1枚を発見した。おお、彼らのセカンド・アルバム!

が、たしか一作のみで終わったプロジェクトのはずである。「VOLUME TWO」とは、これいかに…?

よくよく確かめてみると、これはライヴを録音したプライヴェート盤(いわゆるブートですな)。

しかも、録音されたのは「ヴォリューム・ワン」に先立つこと3年も前の、81年4月13日。

これはどういうことかというと、元々「ハニードリッパーズ」というグループ名は、ZEP解散後のプラントが、ソロ・デビューするまでのしばらくの間活動していたバンドにつけていたもの。

そのグループではレコードを出すまでに至らず、このライヴ録音のみが残っていた、ということだ。

要するに、「ヴォリューム・ワン」のハニードリッパーズとはまるきり別のバンドなんでご注意を。

さて、このアルバム、ロバートの故国イングランドはノッティンガム、「ザ・ブルー・ノート・クラブ」でのライヴ。

観客はどうもZEPの時代とはうってかわって、男性客、それも中年以上ばかりのようで、プラントが登場しても黄色い喚声が上がらず、はなはだ盛り上がらない(笑)。

が、めげずに何度も「GOOD EVENING」と呼びかけ、「リトル・シスター」からスタート。

もちろん、プラントが最もリスペクトするシンガー、エルヴィス・プレスリーのヒット曲だ。

「ラスト・ダンスは私に」で知られる名ソングライター、ドク・ポーマス、モート・シューマンのコンビによる作品。

この軽快なロックン・ロールに続くのは「ヘイ・メイ」。

ケイジャン・ミュージックと呼ばれるジャンルでの代表選手、「ルイジアナ・マン」や「ディギ・ディギ・ロー」のヒットがある、ダグ&ラスティ・カーショウ兄弟の自作ヒット。シェイキン・スティーヴンスのカバー版もある。

迫力あるコーラスをバックに、ワイルドにキメるプラント。

三曲目はジーン・ヴィンセントをカバーした「アイ・ウォント・ユー・バック」。

低音で抑えたヴォーカル、ソリッドなギター・プレイ、いかにもいかにもな、ロカビリー・サウンドである。

続く「トゥルー・ラヴ」もまた典型的なノリのいいロカビリー・チューン。

「ディープ・イン・ザ・ハート・オブ・テキサス」は、ハーシー=スワンダー・コンビ作による、ビング・クロスビーがオリジナルのカントリー。

というよりむしろ、レイ・チャールズ、ペリー・コモ、デイヴ・エドマンズも歌っている、カントリー・スタンダードと呼ぶべきか。

続いて、ギター、2本のサックスをフューチャーしたインスト・ナンバー。

バックをつとめるハニードリッパーズは、ローカル・バンドっぽいイナタい演奏で、格別うまい!という感じではないが、50年代頃のR&Bバンドの持っていた「ムード」はうまく再現している。ギターはリズム感がシャープで、ジミー・ペイジよりちょっと上手い、かな(笑)。

ZEPと比較すると、ドラムスがドカドカ、ドスドスという感じのプレイで、あまりに聴き劣りするのだが、それをいっちゃあおしまいよ、なんだろう。

ボンゾがスゴ過ぎたのであって、こちらが格別ひどいわけではない。

ここはZEPのことはさらりと忘れて、虚心に聴いていくことにしよう。

ステージの前半は白人音楽中心だったが、後半はブラックものがメイン。

「ハウ・メニー・モア・イヤーズ」はもちろん、ハウリン・ウルフのナンバー。

ウルフのダミ声とは対照的な、超高音でのシャウトが圧倒的迫力。

続くはアルバート・キングのナンバー「クロスカット・ソー」。

ここでは、ギターの泣きのプレイがなかなかグー。

かつてのZEPナンバーも、一曲だけ登場。サニーボーイ・ウィリアムスンIIの「ブリング・イット・オン・ホーム」である。

ただし、ZEP流でなく、サニーボーイの原曲に忠実なアレンジで。ここでプラントはお得意のハープをじっくり聴かせてくれる。

このハープの響きが深~くて、実にいいんだな。

すっかりブルース・モードになったところで、ダメ押しの一打は、マディ・ウォーターズの「キャント・ビー・サティスファイド」。スライド・ギターのプレイがまたいい。

さらには、ビッグ・ビル・ブルーンジーの「ホワット・キャン・アイ・ドゥー」も。アップ・テンポでぐいぐいと飛ばして、まさに痛快。

お次は白人ロッカー、バディ・ホリーのナンバー「テル・ミー・ハウ」。ホリーの盟友、ジェリー・アリスン、ノーマン・ペティらの作品。

いかにもホリー・サウンドらしい、軽快にかき鳴らされるリズム・ギターがナイス。

ステージは「クィーン・オブ・ザ・ホップ」でいよいよ佳境へ。50~60年代活躍したロック&ポップス歌手、ボビー・ダーリン(「マック・ザ・ナイフ」で有名)のスマッシュ・ヒット。

ダーリン=ハリスのコンビによる作品。これがいかにも威勢のいいロックン・ロール。

さらには再び、ジーン・ヴィンセントのヒット曲「シー・シー・シー・シーラ」を熱唱。

アンコールは、なんとマディ・ウォーターズの「モジョ・ワーキン」。

ちょっとベタ過ぎる展開じゃないの?と突っ込みたくもなるが、このキラー・チューンのおかげで、場内は大熱狂の合唱大会。

サックスもここぞと吹きまくり、ギターやハープも暴れまくる。

興奮のうちにライヴは終了。なんともローカル・バンドそのもの、カバーばかりのベタなステージ構成に思わず笑ってしまった。

ZEPの、緻密に計算、演出されたステージに比べれば、だいぶんラフで適当、リラックスした演奏。

でも、けっこうノレるんだな、これが。

「まず演奏する自分たちが楽しむ」という「バンドの基本精神」が感じられるということか。それが、お客をも自然と引きつけ、リラックスさせる源なのである。

なにより、ZEPというトップ・バンドで歌うというプレッシャーから解放されたためだろうか、プラントの歌は実に生き生きとして魅力的である。

「メジャーになる」「ヒットを出す」などということより、まず「演奏を楽しむ」、これがバンドの原点なんだなと教えてくれた1枚でありました。


音盤日誌「一日一枚」#67 ハニードリッパーズ「ヴォリューム・ワン」(MMG 15P2-2743)

2022-01-20 05:55:00 | Weblog

2001年10月6日(土)



ハニードリッパーズ「ヴォリューム・ワン」(MMG 15P2-2743)

今月の1枚目はこれ。84年リリースのミニ・アルバム。

「ハニードリッパーズ」といっても、皆さんお忘れかも知れないが、元ZEPのロバート・プラント、ジミー・ペイジを軸に、ジェフ・ベック、ナイル・ロジャーズ(元シック)といった面々が参加したプロジェクト。

クレジットには「NUGETRE AND THE FABULOUS BRILL BROTHERS」などとあるが、これも彼ら一流のシャレである。

ちなみに、「ヴォリューム・ワン」と銘打っておきながら、結局、この1枚だけの短命プロジェクトで終わってしまった。

だが,当時は「ZEP復活か?」などとけっこう話題を呼び、シングル・カットされた「シー・オブ・ラヴ」も大ヒットしたものだ。

そんな「兵どもが夢の跡」のごときアルバムをひさしぶりに聴いてみた。

一曲目は「アイ・ゲット・ア・スリル」。

作者はルーディ・トゥームズ。40~50年代にルース・ブラウンやエイモス・ミルバーン、クローヴァーズといったR&B系アーティストたちのために曲を提供していたコンポーザーである。代表作は「ミント・ジュレープ」「ティアドロップス・フロム・マイ・アイズ」。

このスウィンギーな曲をプラントは、ドゥ・ワップ・コーラスをバックに、おなじみの上ずり気味の高い声で奔放に歌いまくる。

間奏の、ちょっとラフだがスピード感あふれるロカビリー調ギターがカッコよろしい。

二曲目は、「シー・オブ・ラヴ」。フィル・フィリップス&ザ・トワイライターズ59年の大ヒット。

ジョージ・クーリーとフィリップス(本名バップタイズ)の共作。イギリスの歌手、マーティ・ワイルドのカバーでも知られている。トワイライターズのヒットはこの一曲のみ。

一発屋の典型みたいなヒット曲だが、40年以上の歳月を経てなお、いまだに映画やCF等で流れており、エヴァグリーンの座を獲得している。

プラントはこの流麗なバラードを、実に思い入れたっぷりに歌い込む。ジミー・ペイジのストリング・ベンダーの伸びやかなソロが、ノスタルジックなムードを一層かきたてる。

ストリングスのアレンジも実に美しい。名曲のカバーとして、一級品の出来だ。

続いては、レイ・チャールズ作&歌でおなじみの「アイ・ガット・ア・ウーマン」。54年のヒット。

が、声をふるわせ、あるいはくぐもらせるようなプラントのヴォーカル・スタイルはレイのそれというより、レイをカバーしたエルヴィスのに近い。

実際、プラントが自ら認める永遠のアイドルはエルヴィスだ。

エルヴィスの「ゴールデン・ヒット第一集」の曲は全部得意なレパートリーだったという彼ならではの、エルヴィス・トリビュートな一曲といえそう。

ブラス・アレンジ、派手にブロウするテナー・サックスのソロもごキゲン。R&Bの黄金期を現代によみがえらせた名唱・名演だ。

四曲目は「ヤング・ボーイ・ブルース」。tRICK bAGもステージで取上げている、これまたR&Bの名バラード。

人気作曲家”ドク”・ジェローム・ポーマスと、フィル・スペクターの共作。ベン・E・キングの歌で60年にヒットしている。

ここでのプラントのヴォーカルがまた切なさに満ちていて、いい。青春だね~という感じ。バックのコーラス、ストリングスがまた、恥ずかしげもなく(笑)、青春そのもののサウンド。

プラントはZEP時代、キングの「ウィアー・ゴナ・グルーヴ」をカバーしていたぐらいだから、この曲ももちろんオキニだったのだろう。

懐かしや、フィル・スペクターの「ウォール・オブ・サウンド」の復活!である。

ラストは「ロッキン・アット・ミッドナイト」。R&Bのスター歌手、ロイ・ブラウン47年の大ヒット。

こちらもエルヴィスのカバー・ヴァージョンがあり、ロックン・ロール草創期の最重要曲のひとつといえる。

プラントも先達に負けじと、ノリノリの歌を聴かせる。

ギター・ソロ、前半は割りとオーソドックスなブルース・ギター。こちらはペイジかロジャースか。

後半のトリッキーなスライド・ソロはジェフ・ベック。ブラス中心のノスタルジックな音にひと味、スパイスを加えている。

シャッフル・ビートがひたすら体に心地よい、

ということで、全編これ、懐かし系のR&B、ロッカバラード系のサウンド。格別目新しいものはない。

まして、ZEPの影も形もない。

だが、いずれもポップスの王道を行く名曲揃い。少年の頃からそれらに親しんだプラントの歌いぶりは、説得力に満ちている。

すべての道がローマに通じているように、すべてのロックはこういったR&Bに通じているのだと感じさせる1枚。

単なる回顧趣味ではない。ロックの「基本」が、ここにあるのだ。皆さんも、ぜひ聴いていただきたい。


音盤日誌「一日一枚」#66 ハウリン・ウルフ「THE LONDON HOWLOIN' WOLF SESSIONS」(Chess CHD-9297)

2022-01-19 05:06:00 | Weblog

2001年9月30日(日)



ハウリン・ウルフ「THE LONDON HOWLOIN' WOLF SESSIONS」(Chess CHD-9297)

さて、今月ももう終わり。今日は、ハウリン・ウルフが相棒ヒューバート・サムリンとともに英国に乗り込み、現地のミュージシャンとのセッションを繰り広げた一枚。

もちろん、当HPの「チェスで100枚」http://www.macolon.net/chess100.htm にも入っている。70年5月録音、71年夏のリリース。

このレコーディングのために集められた、英国ミュージシャンの顔ぶれがなかなか素晴らしい。

まずは、リード・ギターにエリック・クラプトン、キーボードにスティーブ・ウィンウッドという、元「ブラインド・フェイス」組のふたり。

リズム・セクションは、ベースにビル・ワイマン、ドラムスにチャーリー・ワッツという「ストーンズ」組。

いずれもウルフに強い影響を受け、曲のカバーをしたこともあるミュージシャンばかりだ。

その他、"6人目のストーンズ"ことイアン・スチュアート(ピアノ)、ジョン・サイモン(同)、クラウス・ヴーアマン(ベース)、フィル・アップチャーチ(同、こちらはアメリカから同伴)ら実力派が参加。

まずは「ロッキン・ダディ」で軽快にスタート。「キリング・フロア」によく似た、アップ・テンポのナンバーである。60歳の誕生日を間近に控えながら、ウルフのダミ声も健在だ。

今回、サムリンはほとんどの曲でリズム・ギター役に徹し、ソロの大半はクラプトンがとっている。

この曲も彼がソロを弾いているが、ギターのフレーズにもトーンにも一種の「軽み」があり、心なしかサムリンを意識している感じである。

主役のウルフを食わないよう、アンサンブルを重視した、弾きすぎないギターに好感が持てる。

ほぼ同時期に録音した、「レイラ」あたりのプレイと比較してみると面白い。

「レイラ」のリラックス・ムードに比べると、こちらはきちんと計算され抑制のきいた、几帳面なプレイという印象なのだ。

逆に言うと、クラプトンのいつものパッショネイトな演奏を期待していた人々には、ちと物足りないかも知れないが。

いくらクラプトンが神だなんだと崇められていても、ブルース界のボス、ウルフの前に出てしまえば、彼もひよっこのようなものということか。

そういう「師匠」の前での「緊張」は若干感じられるものの、さすがトップ・アーティストたち、プレイに抜かりはない。

ことに、キーボードのウィンウッドの、出過ぎないが見事にツボを押さえたバッキングは素晴らしい。

そして、リズムのふたりが生み出すのは、余分なものを削いだ、実にタイトなグルーヴである。ウルフのレギュラー・バンドにはない、モダンさもある。

さすが英国、いや世界最強の老舗グループのメンバーだけのことはある。

さて、曲紹介に戻ると、二曲目はウィリー・ディクスンの名曲「迷信嫌い」。第一期ジェフ・ベック・グループがカバーしたことで、ロック・ファンにもすっかりおなじみになったナンバー。

この盤ではホーンも加え、ファンキーでモダンなアレンジになっている。なかなかイケます。

続いては「シッティン・オン・トップ・オブ・ザ・ワールド」。クリームのカバーで、皆さんもご存知の曲であろう。

ここでのクラプトンのプレイは、クリーム時代の息詰まるようなそれとは対照的に、自然に湧き出てきたフレーズをさらっと弾いた、そんな感じである。力むことなく、無理なくブルースを謳っているのだ。

ロックの「極大値」的エネルギーを求めるリスナーには、いささか肩すかしかも知れないが、筆者的には結構オッケーである。

次の「ウォリード・アバウト・マイ・ベイビー」も、ウルフ・ファンにはおなじみの、典型的なシャッフル・ナンバー。

ウルフ自身のハープによるイントロがなかなかカッコよろしい。彼は決してテクニシャンではないのだが、非常に味のある音色を聴かせてくれる。

「ホワット・ア・ウーマン!」はオリジナル中心の彼にしては珍しくカバーもの。ジェイムズ・オーデン作のワンコード・ブルース。

でもウルフが歌えば、すべて「ウルフ節」になっちゃってますが。

「プア・ボーイ」は「私の推薦盤」中にもあるアルバム、「リアル・フォーク・ブルース」所収の、陽気なブルース・ナンバー。

でも今回はもう少し沈んだムードで、しっとりと聴かせてくれる。

クラプトンのソロも、サムリンのプレイをお手本にして、かっちりとまとめられている。

「ビルト・フォー・コムフォート」も「リアル~」に収められていたナンバー。こちらも、少しだけビートを遅めにして、ホーンも加え、粘っこいサウンドにアレンジしなおしている。

「フーズ・ビーン・トーキング」も、代表的ナンバー。ここでの聴きものは、ラテン・ビートに乗ったウィンウッドのオルガン・プレイだろう。なんだかんだいっても、やはり、彼はウマい!

が、この盤のハイライトは、やはり次の「レッド・ルースター」だろうな。もち、ストーンズもカバーした、名曲中の名曲。ウィリー・ディクスン作。

クラプトンはここではでスライドを弾いているが、派手さはないものの、押さえるべきところはビシッと押さえたプレイ。シブい!のひと言だ。

「ドゥ・ザ・ドゥ」は、これまたワン・コード・パターンでぐいぐいと飛ばすナンバー。

「ハイウェイ49」は、ビッグ・ジョー・ウィリアムス作の、「ダスト・マイ・ブルーム」にちょい似た、ブルースの王道的ナンバー。

全員ノリノリで、セッションを楽しんでいるさまが目に見えるよう。

エルモア・ジェイムズばりのスライドを弾くクラプトン、ピアノを自在に操るウィンウッド。いずれも生き生きとしたプレイだ。

ラストは、これまた十八番、「ワン・ダン・ドゥードル」。ウルフの迫力あるダミ声が一層映える、ワン・コード・ブルース。

ここでの、クラプトンの枯れたソロもよい。クリーム時代の「スプーンフル」のこれでもか的な、コテコテなソロもスゴいが、何度も聴くと胃にもたれそうだ。

こういう「引き算」的なさらっとしたプレイもまたいいものだと思った次第。

このアルバム、全体的にアンサンブル重視の演奏で、派手さには欠けるので、いわゆる「名盤」的なくくりでいえば、入らないかも知れない。

しかし、演奏レベルは当然ながら高く、聴くたびにさまざまな発見がある。

何度聴いてもあきるということがない。これこそ、「愛聴盤」とよぶにふさわしい一枚だ。

クラプトン・ファンも、この一枚は意外にチェックもれしがちなので、どうかお忘れなく。


音盤日誌「一日一枚」#65 V.A.「J-BLUES BATTLE VOL.1」(BLUE-Z)

2022-01-18 05:07:00 | Weblog

2001年9月23日(日)



V.A.「J-BLUES BATTLE VOL.1」(BLUE-Z)

実に「オモロイ」一枚を入手してしまった。その名も「J-BLUES BATTLE」。95年発表。

これをリリースした「BLUE-Z」というレーベルはビーイング・グループのひとつで、大阪にある。

もともと、このオムニバス・アルバム、かの有名なアメリカ村の中にあるクラブ、「GRAND Cafe」において95年1月以来行われていた「SUNDAY BLUES LIVE」という定例ライヴから生まれた企画。

「The Blues Is Roots of Rock」を謳い文句に、若いクラブ世代にも、ブルースを聴いてもらおうというイベントである。

そこに出演していた若手ブルース・シンガー、春名俊希をはじめとして、女性ブルース・デュオ「STORMY」、さらにはベテラン・近藤房之助や、B'Zのリード・ヴォーカル・稲葉浩志といった売れっ子まで参加しているのだから、ちょっと気になるっしょ?

トップは近藤房之助の十八番、BBの「ロック・ミー・ベイビー」。

ま、これは至極まっとうなブルースですな。ホーンも加わって、バリバリ、ファンキーな音であります。

松川純一郎の、泣きまくりのギター・ソロもカッコよろしい。

が、それ以外は各自それぞれの解釈でブルースしていて、これが結構「オモロイ」のですわ。

二番手は、立原燎(vo)、Maki(静沢真紀)(g)のデュオ、「STORMY」。レオン・グロスの「スタッガー・リー」を演っている。ブルースというよりは、カントリー・ロック風のサウンド。

ブルースマスター、塩次伸二氏にギターの手ほどきを受けたというMakiのプレイは、けっこう本格的。

彼女、先日のブルカニでも登場していたが、きちんと基本をおさえた堅実なプレイが光っている。

ちょっと見には可愛い女のコだからって、決してあなどれないっすよ。

立原燎の、ハイトーンを生かしたシャープなヴォーカルも、勇ましい感じで資質十分。

将来が実に楽しみなふたりである(現在デュオは解消、それぞれソロで活躍中)。

続いては、春名俊希による「セイム・オールド・ブルース」。

もちろん、フレディ・キングの名唱で知られるドン・ニックス作のあのナンバー。

アレンジとリード・ギターは、ビーイングの”裏番”的存在のプロデューサー、葉山たけし。

フレディのソロをほぼ完コピして、バリバリ弾きまくっている。

春名クンの歌の出来ばえはといえば、年齢ゆえかまだ青臭さはまぬがれず、フレディのあのド迫力にも到底かなわぬものの、結構ガンバっている。今後の精進次第ですな。

それにしても、こんな「セイム・オールド・ブルース」があったなんて、Dr.Toriさん、ご存知でしたかぁ~っ?

お次は、川島だりあ(vo)&倉田冬樹(g)、といえば、判るひとには判る、そう、後に「FEEL SO BAD」というバンド名で活躍するふたりである。

川島だりあは、最初川島みきという名前でデビューしたJポップ系のシンガー。ビーイングの中堅どころの歌い手で、ソングライターとしても活躍している。

それがなにやら、ジャニス・ジョプリン風のしゃがれ声に一変、左右トラックに飛び回るフリーキーな倉田のギターをバックに歌うは、ジミ・ヘンドリクスの「レッド・ハウス」。

この、のたうちまわるようなハード・ロックをブルースと呼ぶのも、いささか抵抗があるが、ジミも本来はブルース・ギタリスト。彼の音楽の根底にはすべてブルースが流れているのも事実だ。

ま、ブルースを広義に解釈してみれば、こんなのもアリでしょう。

五番目に登場するのは、千葉恭司(vo)、団篤史(g)のコンビ。

これも知っているひとは知っている、明石昌夫(b)率いるハード・ロック・ユニット、AMG(AKASHI MASAO GROUP)のメンバー。

歌うのは、ロック系のひとびとには絶大なる支持があるのか、またもやフレディ・キングのレパートリー、「パレス・オブ・ザ・キング」。

こちらのサウンドは、最初はアコースティックに始まり、途中でハード・ロックに一変するという、ZEPの「ブリング・イット・オン・ホーム」のパクりっぽい構成。でも、実力派のAMGだけあって、なかなかまとまってます。

千葉選手の声はへヴィメタの名残りがプチ匂いますが(笑)、まあ、細かいことは気にしますまい。

エンディングは、心なしかコーラス・アレンジがポール・ロジャーズの「マディ・ウォーター・ブルース」っぽいところもあったりして、アレンジの明石センセの、一筋縄ではいかない「合わせ技」を感じます(笑)。

Dr.Toriさん、これにもまたまたビックリでしょ?

ラストには、本アルバム一番の「問題作」が控えている。

「B'Zの」という説明ももはやいらないくらい、日本を代表するシンガーとなった稲葉浩志がトリを取っているのである。

カバーしているのは、なんと、ローウェル・フルスン67年のヒット「トランプ」。

このラップの元祖のようなナンバーを、稲葉は大胆に再構成、原曲のムードをまったく払拭して、新しい「トランプ」を作り出してしまった。

アコギ、ハープ(稲葉自身がやっているのだが結構上手い)、打ち込み風ドラムの重たいビートにからんで、野獣のような稲葉のラップ&シャウトが響き渡る。

ここまで来ると、カバーの域を完全に脱してしまっている。

オリジナルをサンプリングで取り入れたラップ、ヒップホップ系のアーティストらよりも、さらに大胆不敵な試みといわざるをえない。

これをブルースとよんでいいものか、賛否両論あるだろうが、なかなか「オモロイ」出来だ。

SKUNK Cさん、こんな「トランプ」、知ってましたかぁ~っ?

以上6曲のミニ・アルバム、なかなか好評だったようで、以後、VOL.2、VOL.3も出ている。

VOL.2には大黒摩季、VOL.3にはZARDの坂井泉水まで登場したというから、かなりドヒャーッ!な感じだが。

ま、若い世代に「ブルース」なる音楽ジャンルを知らしめた功績は、素直に認めることにしよう。

その中身は、だいぶんブルースとかけ離れたものもありますが(笑)。


音盤日誌「一日一枚」#64 トミー・フラナガン・トリオ「オーヴァーシーズ」(DIW)

2022-01-17 06:01:00 | Weblog

2001年9月22日(土)



トミー・フラナガン・トリオ「オーヴァーシーズ」(DIW)

「歌伴の達人」とよばれるモダンジャズ・ピアニスト、トミー・フラナガン率いるトリオによる名盤中の名盤。57年リリース。

スイングジャーナル誌でゴールド・ディスクを受賞したことから、ご存知のかたも多いだろう。

ベース:ウィルバー・リトル、ドラムス:エルヴィン・ジョーンズ。

アップ・テンポのパーカー・ナンバー「リラクシン・アット・カマリロ」で軽快に始まり、リリカルなエリントン・ナンバー「チェルシー・ブリッジ」、ラテン・リズムのオリジナル曲「エクリプソ」とたたみかけるように展開し、聴く者の耳を退屈させるということがない。

フラナガンの玉をころがすようなタッチ、リトルの堅実で粘り強いベースライン、そしてジョーンズのスティック、ブラシを自在に使い分け、あらゆるリズムを難なく叩き出すドラミング。すべてが完璧なプレイだ。

「ダラーナ」でのリラックス・ムード、「ベルダンディ」でのバド・パウエル・ライクな超高速ピアノ・ソロ&リズムワークもいい。

しかし、なんといっても白眉は、失恋した女性がその心情をうたったという曲、「ウィロー・ウィープ・フォー・ミー」だろう。

ブルース・スピリットに溢れたフラナガンのソロ・プレイは、すべてのリスナーの心をゆさぶるものがある。






ジャズだの、ブルースだの、ポップスだのといったジャンルを、完全に超越しているのだ。

もちろん、「ビーツ・アップ」、「スコール・ブラザーズ」、「リトル・ロック」といったフラナガンのオリジナルすべてが、「うた心」に満ち溢れている。

当時、トリオのメンバーは全員が20代(意外!)。

しかし、若さにまかせたパワーだけでなく、細部に至るまできちんと仕上げられたそのサウンドには、円熟味さえも漂っている。

彼らの、音楽への深い理解が感じ取れるのである。

聴かずにいては絶対ソン!な一枚。日頃ジャズを聴かれることのないかたにも、おススメしたい。