#178 B・B・キング「Second Hand Woman」(Take It Home/MCA)
B・B・キング、79年リリースのアルバムより。ウィル・ジェニングスとジョー・サンプルの作品。
ブルースの大御所、B・B・キングも今年でおん年86才。健康上の問題はあるものの、地道に新作を発表し続けているのは見事というほかない。いつまでも長生きして、このブルース界を見守ってほしいものだ。
そんなBBが54才、ブルースマンとして一番円熟していた時期にリリースしたのが、「Take It Home」というアルバムだ。
プロデューサーにウィル・ジェニングスとジョー・サンプルを迎え制作されたこの一枚、ブルースというよりはだいぶんポップなサウンドに仕上がっている。
ウィル・ジェニングスといえばバリー・マニロウ、スティーヴ・ウィンウッド、ディオンヌ・ワーウィック、ホイットニー・ヒューストン、セリーヌ・ディオンなどにヒット曲を提供してきた白人ソング・ライター。一方、ジョー・サンプルはいうまでもなく、クルセイダーズの中心的存在のキーボーディスト、アレンジャー。2人はクルセイダーズの同年のアルバム「Street Life」でもコラボレーションしている。
そんな超一流プロデューサー達に曲を完全にまかせ、BBは歌い手/弾き手に徹しているわけだが、どれだけプロデューサーの個性が強かろうと、BBはやっぱりBBである。
きょうの「セコハン女」もしかり。バックにサンプルのピアノ、ホーン・セクション、女声コーラスが配されて一分の隙もない仕上がりなのだが、BBの怒り節とファンキーなギターが決して負けていない。いやむしろ、一人でそれら全体を凌駕しているといいますか。
どんなバックが来ようが、俺は俺。そんな感じで、ブルースを歌うBB。さすが、ブラック・ミュ-ジック界のドンである。
ブルースという音楽も、大昔の「素朴な音楽」というイメージから大いに変化をとげて、BBによって「もっとも都会的で洒脱な音楽」へと成長したのだと思う。
ただ歌で聴かせるだけでなく、バックのサウンドも含めて、トータルで勝負する音楽へと進化したのだ。
同時期のアルバート・キングあたりについてもいえることだが、ブルースという素材を調理して、ひじょうに複雑な味わいの料理に仕立てていくことで、ブルースの枠を越えた「各アーティストの音楽」が形成されていった時代だったのだと思う。
ブルースは変わらない。でも、ひとところに留まることもない。
音楽を時間軸で見ると、またいろんなことが見えて来る。ぜひ、32年前の先端的なブルースを味わってみてくれ。
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