NEST OF BLUESMANIA

ミュージシャンMACが書く音楽ブログ「NEST OF BLUESMANIA」です。

音曲日誌「一日一曲」#29 デイヴ・メイスン「Don't It Make You Wonder」(Mariposa de Oro/One Way)

2023-04-30 06:21:00 | Weblog
2008年4月6日(日)

#29 デイヴ・メイスン「Don't It Make You Wonder」(Mariposa de Oro/One Way)





歌手、あるいはコンポーザーとしての実力、キャリアともに十分なのに、いまひとつ影の薄いアーティストがときどきいる。

デイヴ・メイスンは、まさにそんな一人。46年英国生まれ。第一期トラフィックをスティーヴ・ウインウッドとともに支えたシンガー/ギタリスト。

ウインウッドとの音楽性の違いによりトラフィックを離脱、その後はデラニー&ボニーのバックを経て70年にソロ・デビュー。

しばらくは鳴かず飛ばずの状態が続いていたが、米国に定住しCBSに移籍したあたりから運がつきはじめ、77年「We Just Disagree」のスマッシュ・ヒットによりブレイク(皮肉なことに彼自身のオリジナル曲ではなかったが)、同曲を含むアルバム「Let It Flow」がバカ売れしてその名が世界中に知られるようになった。

しかしながらその後は、「We Just Disagree」を越えるヒットを出せず、次第に寡作となり、87年以降はオリジナル・アルバムすら出ていない。

本来ならクラプトンに匹敵する実力の持ち主なのに、これはものスゴ~く残念である。

ただ、彼の人気には根強いものがあり、30年ほど前の曲でも、いまだに愛唱し続けている人々がいる。

そう、我らが「Kotobuki」に集う人たちである。

店主のりっきーさん、おゆうさん夫妻、そしてこばさんを中心とするデイヴ・メイスン愛好会が、ことあるごとにアコギを抱えて「We Just Disagree」や「Will You Love Me Tomorrow」を歌っているのである。

メイスンが聴いたら、涙して喜びそうなシーンである。

その「Will You Love Me Tomorrow」も収められている78年のアルバム「Mariposa de Oro」から、メイスンのオリジナル「Don't It Make You Wonder」を。

アコギをフィーチャーしたサウンド、そして強力無比なコーラスが耳に心地よい。

米国西海岸の空のように澄み切った音世界、まさにメイスンの本領発揮である。

小遣い稼ぎと格闘技観戦だけが楽しみで日本にときどきやってくる、どこかのチャンジー・ミュージシャンより、よほど歌の才能があるんだけどなあ、この人。

やっぱり、容姿のオジさん臭さがいけないんだろうなぁ~。はぁ~(溜息)。

でも、音楽はホント、イケてますから! 「男前」なサウンドを堪能してくれや。

音曲日誌「一日一曲」#28 W・C・クラーク「That's Where It's At」(Texas Soul/Black Top)

2023-04-29 05:13:00 | Weblog
2008年3月30日(日)

#28 W・C・クラーク「That's Where It's At」(Texas Soul/Black Top)





W・C・クラークといえば、その作品「Cold Shot」がスティービー・レイ・ヴォーンによって取り上げられたことで有名‥とはいかないまでも、知ってる人は知っている、そんな存在の黒人シンガー/ギタリストだ。

39年テキサス州オースティン生まれの68才。テキサス・ブルースの総元締的な存在でもあり、若き日のSRVが彼と一緒にバンドをやっていたという縁で、「Cold Shot」が世に広く知られるようになった。

そんなベテランな彼も、ソロ・アルバムをコンスタントを出すようになったのはわりと近年のことで、94年にいまはなきブラック・トップ・レーベルで「Heart Of Gold」をリリースして以来、翌年の「Texas Soul」、98年の「Lover's Plea」と、3枚を発表している。アリゲーターに移籍後も、02、04年と2作を出し、60代にしてなかなか活発な音楽活動を続けている。

今日お届けするのは、ブラック・トップ2作目より、サム・クックでおなじみのナンバー、「That's Where It's At」。クックとジェイムズ・アレクサンダーの共作だ。

クラークは「Cold Shot」のようなヘビーめのブルースを歌う一方で、けっこうソウルな曲調のナンバーも得意である。この曲はまさにその好例。

クラーク、ギターのほうはさほど特徴的なプレイはないのだが、歌はなかなかい味を出している。たとえていえば、「サッポロ一番味噌ラーメン」の藤岡琢也のような(なんのこっちゃ)。

60デコボコの男でなくては出せないような、哀感とユーモアが歌声ににじみ出ているのだ。

オリジナルだけでなく、カバーでもその持ち味は十分に感じられる。

ハートで歌いあげるソウル・マン、W・C・クラーク、今後の活動にも期待が持てそうだ。

音曲日誌「一日一曲」#27 ジェフ・ヒーリー「Sittin' On Top Of The World」(Mess Of Blues/Ruf)

2023-04-28 05:00:00 | Weblog
2008年3月23日(日)

#27 ジェフ・ヒーリー「Sittin' On Top Of The World」(Mess Of Blues/Ruf)





今月2日、ジェフ・ヒーリーががんのため、亡くなってしまった。まだ、41才という若さで。

昨年6月、このコーナーでも彼のことを取り上げたので、ご存じのかたも多いかと思うが、実力派ロック/ブルース/ジャズ・ギタリストとして、今後のさらなる活動が期待されていただけに、本当に惜しい。

彼が視力を生後まもなく失ったのも、がんのためである。おそらく、彼の短い生涯は、病魔との闘いの連続であったのだろう。合掌。

実はこの4月、ニュー・アルバムがリリースされることになっていた。タイトルは「Mess Of Blues」。

ジェフがこよなく愛したブルース、ロック、カントリーなどのカバー集となっていて、まさに彼の本領発揮な一枚であったのに、リリースを待たずにこの世を去るとは、かえすがえすも残念。

はからずも遺作となってしまった本盤より本日紹介するのは、ハウリン・ウルフ、クリームでおなじみの「Sittin' On Top Of The World」。

クリームのハードなアレンジを意識しつつも、ピアノを大きくフィーチャーして、よりオールド・タイムな味わいのある演奏を聴かせてくれる。

ジェフのギター・ソロも、ソリッドで切れ味鋭く、実にブルーズィだ。歌も深みがあり、さすがのキャリアを感じさせる。

黒人ブルースマンとはまた別の魅力を持ったジェフズ・ブルース。彼のありし日を偲びつつ、聴いてほしい。

音曲日誌「一日一曲」#26 ジョン・プライマー「Knocking At Your Door」(Knocking At Your Door/Telarc)

2023-04-27 05:00:00 | Weblog
2008年3月9日(日)

#26 ジョン・プライマー「Knocking At Your Door」(Knocking At Your Door/Telarc)





45年生まれ、おん年63才のジョン・プライマー、初登場である。

マディ・ウォーターズやマジック・スリムのバックバンドにいたころは、「そういやぁそんなヤツ、いたかなぁ?」程度の、存在感の薄~いひとだったが、90年代に40代後半でソロ・デビューしてからは、次第に頭角をあらわしてきた。

で、テラーク・レーベル移籍第一弾、この「Knocking At Your Door」なるアルバムで、ついに本領発揮したといっていいだろう。プライマー、54才の作品だ。

タイトル・チューン「Knocking At Your Door」は、まさにプライマーの魅力のショーケース的一曲。

ストレートでストロングな歌声。繊細さにはちと欠けるかも知れんが、とにかく力強いのひと言。

バックをつとめるマックレイ兄弟のギター&ドラム、そしてマシュー・スコーラーのダウンホームな味わいのハープもまた強力な援軍だ。エディ・テイラー・マナーとでもいうべき、ホンマに見事なリズム・ワークなり。

同時代ブルースの中では、けっして「いま風」な音ではないが、筆者はこういうのを聴くとホッとする。白人ブルースマンに多い、みょうにロック色の濃い演奏より、絶対こっちのほうが好きだな。

なにより、歌に「キャリア」が感じられるんよ。このひとの歌は、もともとはうまくないけど、長年のキャリアの中から、なにかをつかみ取ってきた。それが50代なかばで、ようやく開花したのだろう。

そう、歳月を経ることによって「熟成」するブルースもあるのだ。

大器晩成型ブルースマン、ジョン・プライマーが50代にしてたどり着いたブルースの境地。ぜひ味わってほしい。深いぜ。

音曲日誌「一日一曲」#25 ホームシック・ジェイムズ「The Cloud Is Crying(alt.)」(Windy City Blues/Stax)

2023-04-26 05:11:00 | Weblog
2008年3月2日(日)

#25 ホームシック・ジェイムズ「The Cloud Is Crying(alt.)」(Windy City Blues/Stax)





ホームシック・ジェイムズが1960年代、プレスティジ・レーベルに残した名盤といえば「Blues on the South Side」(64)だが、当時のレコーディングの別テイクが、なんと2004年になって発表された。

アルバート・キング、オーティス・スパン、ウィリー・ディクスン、ビリー・ボーイ・アーノルド、サニーランド・スリムとともに名を連ねるコンピアルバム、「Windy City Blues」がそれである。

そこに収められているジェイムズの未発表音源は3曲。「Gotta Move」「Homesick's Shuffle」、そしてこの「The Cloud Is Crying」である。

「The Cloud Is Crying」の曲名はもちろん、彼の従兄弟であるエルモア・ジェイムズのナンバー「The Sky Is Crying」をもじったもの。

本曲で聴かれるのは、ロバート・ジョンスンに強く影響を受けたに違いない、特徴的なひきずるようなビート。耳を直撃する、重心の低いスライド・ギター・リフ。そしてがなるような、あるいは泣き叫ぶようなボーカル。まさにホームシック・ジェイムズ節全開なのだ。

洗練さの感じられるエルモアのサウンドとはひと味違い、あくまでも泥臭くダウンホームな味わい。ファンキー極まりない。

彼をサポートするラファイエット・リークのピアノ、リー・ジャクスンのベース、クリフトン・ジェイムズのドラムス。いずれも見事なバッキングぶりである。特にベースが強力なグルーヴを生み出すことに成功している。

アーシー、でも一面、非常にモダンなサウンドでもある。

ワン・アンド・オンリーな、ホームシック・ワールドを味わってくれ。

音曲日誌「一日一曲」#24 メアリー・ウェルズ「In The Midnight Hour」(Two Sides Of Mary Wells/DBK Works)

2023-04-25 05:00:00 | Weblog
2008年2月24日(日)

#24 メアリー・ウェルズ「In The Midnight Hour」(Two Sides Of Mary Wells/DBK Works)





メアリー・ウェルズといえば「My Guy」。もうほとんどその一曲という感じだが、60年代前半はシュープリームスのダイアナ・ロスあたりと並んで、トップ・レベルの人気歌手だったのだよ、お若いの。

64年にリリースした「My Guy」がナンバーワン・ヒットになってしまったばかりに、その後が続かずジリ貧の印象があるが、モータウンの稼ぎ頭的存在であったことは間違いない。

しかしですな、人気歌手かならずしも名歌手にあらず。ウェルズも与えられた曲をソツなく歌うものの、強力な「サムシング」をついに持ち得なかった。その声質はあまりに硬く、表現も平板で、ポップな曲は歌えても、時代の熱い潮流「ソウル」にはそぐわなかった。

「My Guy」の後は、人気も次第に下がっていく。よりソウルフルな味わいをもった後進の歌手たちに追い抜かれていってしまったのだ。

そんな彼女が、あえて古巣モータウンを離れて、66年にアトコレーベルで出したアルバムが「Two Sides Of Mary Wells」。

これまでのポップな彼女に加えて、ソウルな面も強調した選曲になっていて、この「In The Midnight Hour」はまさにその代表例。

ウィルスン・ピケットとスティーブ・クロッパーの共作による、ソウルの名曲中の名曲に果敢にも挑戦したわけだが、結果は‥残念ながらイマイチな出来である。

バックはアトコのミュージシャンたちだから、バリバリのソウル。でも、歌が月並みなんだよなぁ。

それなりに頑張ってソウルっぽさを出そうとはしているのだが、どこかしっくりと来ないんである。

やはり、資質というものであろうね。「クイーン・オブ・ソウル」の称号はアレサ・フランクリンという後輩歌手にのみ与えられ、メアリー・ウェルズに与えられることはなかった。

ただただ奇麗に歌うだけでは、心をゆさぶるようなソウル・ミュージックとはなりえない。ウェルズのこの意欲的な試みが示してくれたのは、そういうことなのであります。

音曲日誌「一日一曲」#23 ロバート・ウォード「Toehold」(Black Bottom/Black Top)

2023-04-24 05:18:00 | Weblog
2008年2月17日(日)

#23 ロバート・ウォード「Toehold」(Black Bottom/Black Top)




ロバート・ウォードといえば38年生まれ、60年代よりオハイオ・アンタッチャブルズやファルコンズで活躍してきたシンガー/ギタリストだが、しばらく活動休止ののち、突如90年代にソロでカムバックして話題になったものだ。

ブラックトップ・レーベルで3枚のオリジナル・アルバムを制作後、デルマークに移り、1枚をリリースしている。

いわゆるビッグネームではないが、そのキャリアも実力も、現役ブルースマンのトップランクにあるといっていいだろう。

彼は歌、ギターともに達者で、ゴスペル、ソウル等も呑み込んだ幅の広いボーカル・スタイル、そしてテレキャスまたはストラトとマグナトーン・アンプから紡ぎ出す特徴的なトレモロ・サウンド、このへんが売りだ。

ほどよい粘り、そして枯れを兼ね備えた歌声と、ワンアンドオンリーなギター・トーン、このへんにハマるとクセになりそう。

そんなウォード・サウンドの格好のサンプルが、ブラックトップ三部作のラスト「Black Bottom」に収められた「Toehold」だ。

アイザック・ヘイズほかが作曲、ウィルスン・ピケットが歌って知られるこの曲を、しっかりとウォード節に消化して聴かせてくれる。

ノリのよさはピカ一。ボーカルとギターの絶妙な掛け合いを楽しんでちょ。

音曲日誌「一日一曲」#22 バディ・ガイ「This Is The End」(Blue On Blues/Fuel)

2023-04-23 07:40:00 | Weblog
2008年2月3日(日)

#22 バディ・ガイ「This Is The End」(Blue On Blues/Fuel)





今週も、どブルースでいくじょ。現在活躍中のブルースマンとしては、もっともベテランのひとりといえるバディ・ガイ、58年の作品「This Is The End」なり。

バディがこれをコブラで録音したとき、弱冠22才。同じくコブラに在籍していたオーティス・ラッシュはその2才年上。バディがオーティスを追うように、めきめきと頭角をあらわしてきた頃のナンバーだ。

曲は、ブルースによくあるパターンのひとつ、「やっぱオレたちの仲はもうダメ、終わりかも」という、男が恋人に別れを告げるというもの。

この曲をバディとともに、永遠の「だめんず」アイク・ターナーが作ったというのを聞くと、なんか妙にナットクしちゃうなぁ。イケさん、あんたは昔からそーゆーことばかり繰り返してきたんやねぇ~って(笑)。

閑話休題(それはさておき)、22才のバディの歌やギターは、後にチェスに移籍してからの安定したそれに比べると、まだまだ荒削りではあるが、いまも変わらぬ甲高い「バディ節」や、感情先走り気味、ややせっかちだが迫力満点なギター・プレイなど、すでに彼らしい持ち味があらわれている。栴檀は双葉より芳し、なのだ。

バックはベースのウィリー・ディクスン、ドラムスのオディ・ペイン、サックスのジャッキー・ブレンストンら、盤石の構え。文句のつけようがない。重厚にして、熱いサウンドだ。

これぞ、コブラ、これぞ、シカゴ・ブルースなり!!

音曲日誌「一日一曲」#21 J.B.ルノアー「Give Me One More Shot」(Rhythm & Booze: 25 Shots of Vintage R&B/STATESIDE)

2023-04-22 05:38:00 | Weblog
2008年1月27日(日)

#21 J.B.ルノアー「Give Me One More Shot」(Rhythm & Booze: 25 Shots of Vintage R&B/STATESIDE)





今週はひさしぶりに純正ブルース・ナンバーなり。きわめてユニークなブルースマン、J.B.ルノアー、50年代のヒット曲「Give Me One More Shot」。

ブルースの題材として取り上げられることが多いのは「お酒」。「酒飲みブルース」とでも呼ぶべき一ジャンルがある。この曲も、そういった一曲だ。

こんなに飲んじゃいけないのはよ~くわかっている。でもでもやっぱり、やめられないとまらない。マスター、もう一杯、そう、もう一杯だけおくれよ。お願いだからぁ‥‥といった、あなたにもワタシにも心当たりアリアリな(笑)歌のひとつであります。

酒飲みブルースマンといえば「Bad Bad Whisky」のエイモス・ミルバーン、「Hey Bartender」のフロイド・ディクスンあたりが代表選手だけど、社会派ブルースマン・ルノアーもお酒には目がなかったようで。

あの、一度聴いたら忘れられない、甲高~い声で歌われる「酒飲みブルース」は、他の左党ブルースマンのそれとはだいぶん趣きが違う。

シブみ一切なし、やたらとアッパー、ハイテンションな一曲。ホーンセクションをバックに、ブギウギ・リズムを刻む彼のギター・プレイもなかなか味があって面白い。

この曲は彼のベスト盤ほか、いろんなコンピに入ってますが、この「Rhythm & Booze: 25 Shots of Vintage R&B」というアルバムは、ミルバーン、ディクスンを含む、酒飲みブルースの代表的ナンバーが満載で、上戸にはたまらない一枚であります。

いうまでもなく、グラスを片手にお楽しみあれ。

音曲日誌「一日一曲」#20 サンタナ「Well All Right」(Inner Secrets/Columbia)

2023-04-21 05:00:00 | Weblog
2008年1月20日(日)

#20 サンタナ「Well All Right」(Inner Secrets/Columbia)





「一日一曲」、記念すべき20曲目は、これ。サンタナ78年のシングルヒット、「Well All Right」。

この曲はエリック・クラプトンの参加した、ブラインド・フェイスのアルバム収録曲(スティーヴ・ウィンウッドがリード・ボーカル)としてよく知られているが、もともとバディ・ホリーが50年代末にヒットさせたナンバー。ホリー、クリケッツのメンバー、ジェリー・アリスン、ジョー・モールディン、そしてプロデューサー、ノーマン・ペティとの共作なんである。

サンタナ版カバーは、明らかにブラインド・フェイスのバージョンを下敷きにしており、それにサンタナ流泣きのギターを絡めたアレンジにしている。サンタナにしては、短めでキャッチーなヒット・チューン仕立てになってます。

収録アルバム「Inner Secrets」には、トラフィックのナンバー「Dealer」も入っているくらいだから、アルバムを制作する際に、ウィンウッドら元トラフィックのメンバーからの働きかけがあったのかもしれない。

歌のうまさに関していえば、オリジナルのホリーやブラインド・フェイス版にはやはり負けてしまうが、演奏としてはまずまずの出来ばえ。

三つのバージョンを通しで聴いていて感じることは、バディ・ホリー(とノーマン・ペティ) の作曲センスはやはりハンパじゃなくスゴいってこと。

なんていうか、白人向けに歌っている白人ミュージシャンなのに、ゴスペルとかブルースなどの、ブラックなフィーリングが横溢しているのですよ。サビの繰り返しの部分とか、特にね。

まあ、だからこそ、"もっとも黒いフィ-リングを持つ白人"と呼ばれたウィンウッドが、この曲を取り上げる気になったんでしょうな。「Peggy Sue」だったら、絶対歌わないだろーし(笑)。

50年代まで、ピアノ、サックスといった楽器が立役者だったロックンロール・バンドを、ギター中心、あるいはギター・オンリーにシフトさせていったのは、ホリーの功績がひじょうに大きいと思う。もし、バディ・ホリーがいなかったら、イギリスの60年代の音楽シーンはかなり違ったものになったはずで、ビートルズ、ストーンズ、キンクスといったギター中心のビート・バンドたちも、ホリーの存在あってこそ、自然発生してきたのではないかな。

大西洋を超えて多大な影響を与えた、元祖眼鏡ロッカー。ある意味でエルヴィス以上の神的存在といえそう。ビバ・バディ!

音曲日誌「一日一曲」#19 ハニー・コーン「Want Ads」(Sweet Replies/Hot Wax)

2023-04-20 05:00:00 | Weblog
2008年1月5日(土)

#19 ハニー・コーン「Want Ads」(Sweet Replies/Hot Wax)






明けましておめでとう。今年もよろしく。新年の第一弾は、これ。

黒人ガールズグループ、ハニー・コーン、71年のミリオン・ヒット「Want Ads」。タイトルは「恋人募集」みたいな意味だな。

ハニー・コーンは69年、リード・ボーカルのエドナ・ライトを中心に、シェリー・クラーク、キャロリン・ウィリスの3人が、ロサンゼルスにて結成。

モータウンの最強ソングライティング・チーム、ホランド兄弟&ドジャーが68年立ち上げた独立レーベル、ホットワックスに入り、この「Want Ads」を大ヒットさせ、一躍看板グループとなる。日本でも東芝EMIからリリースされ、スマッシュ・ヒットとなったので覚えている人も多いのでは。

ただ残念ながら、ハニー・コーンとしての活動は、72年まで。結果的には一発屋で終わってしまったのだが、残された数枚のアルバムは、どれもいい出来である。

何より、彼女たちの歌声に若さとパワーがあふれている。ことに、この「Want Ads」にはそれが集約されているのだ。

曲調は、ひたすらハッピーでキャッチーでダンサブル。女性グループでいえば、マーサ&ヴァンデラスの系統。ジャクソン5にも通じるところのあるサウンドだ。

彼女たち、見てくれ的にはシュープリームス、スリー・ディグリーズには届かず、という感じでそのためスーパースターにはなれなかったが、歌では決してヒケをとっていなかったと思う。

エドナのパンチのあるチャーミングな声、パワフルなバック・コーラスにノック・アウトされてみて。

音曲日誌「一日一曲」#18 レッズ・ツェッぺリン「Winter Sun」(Lez Zeppelin/Emanation)

2023-04-19 04:55:00 | Weblog
2007年12月23日(日)

#18 レッズ・ツェッぺリン「Winter Sun」(Lez Zeppelin/Emanation)






あいかわらず、更新が途切れがちでスマソ。ひさびさの一曲はこれ。

一瞬、アーティスト名を読み間違えたむきも多いと思うが、レッドではないです、そう、レッズ・ツェッぺリン。

名プロデューサー、エディ・クレーマーのプロデュースにより今年7月デビューしたこのバンド、もちろん、その名が示すようにツェッぺリンのトリビュート・バンドのひとつ。

まあそんなバンド、洋の東西を問わずゴマンとあるわけだが、ちょっと異色なのは、バンドメンバー全員がうら若き女性、つーことだね。

ってことは、「Lez」というのはレズビアンを意味しているかもしれんわけで、なかなか意味深なバンド名であります。

レッズ・ツェッぺリンの中心は、リード・ボーカルのサラ・マクレラン。今回の曲はインストなので、彼女の声が聴こえないのが残念だが、他の曲を聴いてみるに、ハイ・トーンというよりは中音の、わりとドスの効いた歌声で迫るタイプ。ご本家プラントとは個性がかなり違うんである。

この「Winter Sun」はZEPのサード・アルバムB面風、フォークロック調のオリジナル・インスト。ギター&マンドリンの丁寧な演奏が、彼女たちの意外としっかりとした実力を感じさせる。他のカバー曲(「胸いっぱいの愛を」「オーシャン」「ロックン・ロール」など)も、原曲にかなり忠実な演奏を再現している。

とはいえ、この手のトリビュート・バンドはその先駆け的存在の「Dread Zeppelin」以来、全部話題先行型の「一発屋」で終わっているのも事実。

おそらく彼女たちが「Lez Zeppelin」名義でのアルバムを出すのも、これきりなんだろうが、次回は別のバンド名で、別アーティストのトリビュートをしてみたら、面白いのでは。

でも、それが「Runaways」だったとしたら、ちょっとトホホだけど(笑)。

音曲日誌「一日一曲」#17 ゲイリー・ムーア「Long Grey Mare」(Blues For Greeny/Charisma)

2023-04-18 06:15:00 | Weblog
2007年11月24日(土)

#17 ゲイリー・ムーア「Long Grey Mare」(Blues For Greeny/Charisma)






ひさびさ登場のゲイリー・ムーア、今日はこの一曲。

ムーアはハードロック・ギタリストであると同時に、ブリティッシュ・ブルースの担い手の一人でもあることは皆さん、よくご存じだろう。

その彼がもっとも影響を受けたギタリストは、フリートウッド・マックの初代リード・ギタリスト、ピーター・グリーン。(ただレコードを聴いていただけでなく、無名バンド時代、マックの前座をつとめたこともあったそうだ。)

ムーアは黒人のブルースよりも、むしろ白人の解釈によるブルースに、強くインスパイアされたのである。このことが、彼の今日に至るブルースギター・プレイに色濃く出ているように思う。

さて、本曲はムーアがピーター・グリーンへのトリビュートとして95年に発表したアルバム「Blues For Greeny」から。

もちろん、グリーンのマック時代の作品だ。ファースト・アルバム「Peter Green's Fleetwood Mac」に収録。

曲調は、あからさまにハウリン・ウルフの「キリング・フロア」。でもこっちのほうが明らかにビートがモダンであり、ロックであります。

ムーアのソロは、そのタメ具合といい、フレージングといい、当然ながらグリーンのプレイにクリソツだけど、それ以外では、クラプトンやブルームフィールドを思わせる箇所もある。

要するに、白人ブルース・ギタリストの王道とは、こういう路線なんやね。

この曲ではギターのみならず、ムーアの歌がシブくて、なかなかいい。歌も含めてのピーターへのオマージュといえそうだ。

ムーアの人並みはずれた才能も、やはり、グリ-ンの神がかったプレイを身近に聴いて初めて生み出されたもの。

ということで、天才は過去となんらつながりなく、いきなり生まれるわけではない。

それはム-アに限らず、クラプトン、ジミヘン、ベックなど、どの天才にもいえること。

先人を侮るなかれ、そゆことであります。

音曲日誌「一日一曲」#16 アイズリー・ブラザーズ「Between The Sheets」(Between The Sheets/T Neck)

2023-04-17 05:08:00 | Weblog
2007年11月18日(日)

#16 アイズリー・ブラザーズ「Between The Sheets」(Between The Sheets/T Neck)





アイズリー・ブラザーズつーたら、54年オハイオ州シンシナティにて結成、実に半世紀以上のキャリアを誇る、黒人兄弟グループの老舗的存在やね。一時はジミ・ヘンがバックバンドにいたりしたんで、ご存知のかたも多かろう。

その長い活動期間中、そのサウンドは時代の要請に応じて次第に変化してきたが、全くかわらぬものがひとつある。「甘ぁ~~い」(スピードワゴン風に)ボーカル、これでんがな。

リーダーのロナルド・アイズリー、そして彼を支える同胞たちのハーモニー。

まさに永久不滅のスウィート・ソウル、シルキー・ソウルなんである。

そんな彼らの、80年代に入ってからの印象的なヒットがこれ。「Between The Sheets」ナリ。

タイトルだけでも、十分にエロいものを予感させるが、実際、歌もサウンドもきわめつけのセクシー。

この曲をBGMに、夜の首都高、湾岸エリアあたりをドライブすれば、たいていの女性は落ちそう、なんて気がします(やってみたことはないけどw)。

まあ、そういう実用性だけでなく、聴いていてホンマ、気持ちええよ。

きょうびのR&Bなんか、これに比べれば「マダマダやのぉ~」と思ってしまう。

いまだ現役バリバリ、大御所グループの一番脂の乗った頃(ロナルド42才)の音に酔い痴れてくれや。

音曲日誌「一日一曲」#15 ハウリン・ウルフ「The Red Rooster」」(The London Howlin' Wolf Sessions/Chess)

2023-04-16 05:28:00 | Weblog
2007年10月21日(日)

#15 ハウリン・ウルフ「The Red Rooster」」(The London Howlin' Wolf Sessions/Chess)





しばらくお休みにして申し訳ない。ひさしぶりの一曲はこれ。ハウリン・ウルフのロンドン・レコーディングから、おなじみのナンバーを。70年5月録音。

この曲をストーンズが「LIittle Red Rooster」としてカバーしたことで、ウルフの白人間での知名度も大幅にアップしたが、それをストーンズの5分の2のメンバー、そしてエリック・クラプトン、スティーヴ・ウィンウッドと共演したわけだから、まさに歴史的価値のある師弟共演といえそう。

ものの本によると、ウルフはロンドンにやってきてこのセッションを始めた当初、体調も悪く、相当不機嫌モードだったらしい。

豪華メンバーによるセッションにもかかわらず、果たしてうまくアルバム一枚分録れるのか? そんな感じだったらしい。

その閉塞状況を突破するきっかけとなったのが、クラプトンがこの曲の弾き方についてウルフに訊ねたことだったそうだ。

アルバムではこの曲の直前に収められている、同曲のNGバージョンで、ふたりの遣り取りを聞くことが出来る。ウルフはギターを弾くタイミングを「BOOOM!」という擬音で表現している。そして彼らの笑い、なごむさまも聞ける。

このことがプラスとなり、白人組とウルフ、サムリンらが融和、以後セッションはうまく進んだというのだから、人生、何がきっかけで事態が好転するか、わからないよねえ。まさに塞翁が馬。

音盤日誌「一日一枚」2001年9月30日の記事でも既に書いたが、ここでのクラプトンのスライド・プレイは非常にリラックスしていい感じだ、とりたてて技術的に難しいことをしているわけではないけど、その音色、響きがウルフのサウンドにぴったりマッチしているのだよ。

もちろん、バックでオーティス・スパンばりの粋な響きを聴かせるウィンウッドの演奏も、忘れちゃいけない。ともすれば単調に流れがちのこの曲の、いいアクセントになってる。

白人だって、十分にブルースの心を掴んでいい演奏が出来る、そういう見事なサンプルだといえそうだ。