ノット・クラッシュ・オブ、マイ・フェイス(６)

二日ぶりです(笑)
鬼塚専務がアメリカの子会社にカツを入れるために出張されました。Ｗ大学卒業の鬼塚専務もさすがに英語は苦手とみえて河田部長を同伴ですね。
無論通訳は別にいるわけですが、通訳は所詮は雇われです(笑)
古風な鬼塚専務は身内を信頼して頼るタイプの方です。
通常の会話は通訳に任せるとしても、独特の言い回しを正しく訳してくれる(希望ですね)身内をつけておきたかったのです。
かくしてイギリスに二年間駐在していた実績を買われて河田部長に白羽の矢が立ったのでした。
「しまったなぁ」
これが河田部長の本音だったでしょう(笑) たった一日でもあれくらい(笑)ワガママな人いない!!とみんなから嫌がられといる専務でしょう…
それが四日間です(笑)
河田部長はどこか体が悪くならないかと、随分不摂生を繰り返したのですが、残念ながら丈夫な体をしていました。
おかあさんに感謝するべきですなぁ(笑)

ところでアメリカ四日間は往復に3日ほど掛かるのでで、実際は一日滞在したようでした。
移動は飛行機ですね(笑) 飛行機は禁煙です(笑)
だからこれまでアメリカに行くのを渋っていらっしゃったらしいのですが、この鬼塚専務は到っての愛煙家です。
「どうして金を払っているのに辛い目に会わなきゃあならないのよ」口をとんがらがせていらっしゃるくらいです。
だからそばの河田部長はハラハラしどうしだったでしょう(笑)
それにもうひとつあります。
それはキップなど忘れる名人でもあります。 新幹線のキップなど楽勝に忘れます。
あと自宅のマンションの鍵は三回も作り直しです。
このマンションですが、さすが鬼塚専務がお住まいになるだけありまして、
つまり高級ですが…
こんなマンションに限ってセキュリティが厳しく設けてありました。マスターキーは家人に1つあります。あと予備キーですね♪
これを作り直すのが大変です。
費用はもちろんですが、再発行は他では作れない仕組みになっています。
それくらいセキュリティに厳しいのは高級マンションの象徴ですが、度々無くす鬼塚家では大変でした。
キーの再発行は時間にして３週間費用は７千円ですって…(笑)
「何度も無くすから女房の奴が渡さないて言いやがるんだよ」
専務は仕方ないなぁ…なんて顔で笑っていますが、
「しかし７千円は高いよなぁ」
お金持ちのくせに妙に金銭感覚だけは庶民派でした。
そんな鬼塚専務はようようアメリカの子会社に到着されました。
早速会議が開かれました。
時間にして約二時間… いろんな地元社員が発言します。
会議は日本と違ってオープンな感じで、要するに発言は自由自在です。
それを黙って聴いていた鬼塚専務は横の河田部長に話しました。
「おい、河田、アメリカ人はみんな好き好きに喋っているがどいつも俺が悪いなんて言う奴いないなぁ」
なるほど赤字で倒産しかけていた会社でした。
それを技術力があるため買い取ったわけですが、相変わらず赤字の垂れ流しです。
鬼塚専務はこれが日本なら赤おに鬼と恐れられたあの風貌で怒り狂っていたでしょう(笑) 現実は何にしても通訳を挟んでの会話になります。
最初は大人しく通訳を通じて話していた専務…
何を言っても変な返事しか帰ってきません。
河田部長は内心これはヤバイぜ！と感じていました。
こんな焦れた会議を一番嫌うのが専務だ４たからでした。
案の定鬼塚専務は 怒りを爆発させました。
いきなり立ち上がると社員に向かって
「ドント・クラッシュ・オブ、マイ・フェイス!!」
あの赤鬼、鬼塚専務が怒りを露にして叫ばれました。
これには一堂しーん(笑)となりました。…
そして社員が口々に「ボス、悪かった」
と謝り始めるじゃあありませんか(笑)
さすがに鬼塚専務の怒りは世界的だなぁ♪とそばの河田部長も納得していましたが、
通訳だけはしきりと首をかしげていました(笑)

帰国したあと鬼塚専務は笑いながら
「うちの娘がなぁ…あんな英語はありそうだけどないわ、ていうんだけどな…」
なるほど娘さんはアメリカ留学の経験がありましたが、
娘曰くあれは日本英語でアメリカにはそんな言葉はない！と断言していました。
「よく通じたわねぇ」
感心するやら呆れるやらの娘さん(笑)
しかし専務の迫力に押されたかどうか…
現地の社員は「よく解らないけど気持ちは分かった」なんて…(笑)だってアメリカに「俺の顔を潰すな」
なんて言葉はないでしょう(笑)