寝転がって気ままに想う事

 世の中ってこんなもんです・・
面白可笑しくお喋りをしましょうか ^^

さあ大変、異動だ! (5)

2012年01月20日 09時19分10秒 | 日記
最先端の技術を擁するエレクトロニクス事業部を束ねる高辻役員。 実は未だにメールが出来ません(笑) いえ他の役員さんでもまったくの方は大勢いらっしゃるのが現状でした。
だから酔っぱらうまでに連絡しなくっちゃあ…酔えば上手くできないのと、愛人の相手は人妻…簡単には出歩けません。

「俺は疲れたよ…」
「え!」
いやいや…手を振って今のは聞かなかったことにしてよ…
鬼塚専務は力なく笑いました。
「…?」
なんだいこの弱気な態度は…
高辻役員は初めて見る鬼塚専務の弱気な態度は不思議なものを見たようでした。
「専務…どうされたのですか?」
「あ…うん…俺も高辻さんだけ引っ込むのは寂しいよ…」
高辻役員はこの四月から役員を退任することになっていました。
役員停年ですね…
「専務、何をおっしゃっているんですか…」世代交代が迫っていました。
会社は役員は63歳
専務は66歳が停年になります。
一つ年上の鬼塚専務は高辻役員が退任した後も二年専務でいられます。
それをおっしゃっているんでしょうが、
荒くれ専務には意外な一面もありました。

今更ながら… 高辻役員は現実派でした。
俺だって…俺だってあんたがいなけりゃあ専務だったよ。
俺の力があったからあんたはノホホンとしていられたじゃあないか!
専務に従順な姿勢を崩さずに高辻役員はやるせない気分でいっぱいでした。
俺はだいたい円山じゃあダメだ、と言っていたじゃあないか!
そう口に出かかったことが何度あったでしょうか…
それをあんたが押し通したのだから…
「高辻さん、俺は優秀な奴は何をしても優秀だと思っていたよ…」空になったグラスをクルクル回して鬼塚専務がブツブツ始めます。ビールを注げ、と言うことか… 高辻さん役員がビールを手にすると、 いやいや…手を振りながら「もういいよ…」
「どうしたのです!?」これまで永いつきあいでお酒を注がれて断るのを初めて見ましたから…
「なんだか最近の奴はわからないな…」
なるほど…鬼塚専務の目を掛けてきた(つもり)の円山事業部長は人事でことごとく衝突していました。
「そうですね~」これには高辻さん役員も賛同せざるを得ません。
実際人事権は事業部長にあるはずですが、いわゆる「天の声」がありました。
事業部長は自分の色の人事を構成しますが、上司…この場合は高辻役員や鬼塚専務の意向を取り入れるのが慣習でしたから…
これをことごとく拒否されて鬼塚専務の顔は丸潰れになりました。 高辻役員が取り成しても頑として譲らないのでお手上げ状態なのが今の事業部の実態でした。
こんな時期に今さら円山事業部長を更迭するわけにもいかず、お二人はほとほと困り果てていたのです。
ただもう二ヶ月で退任する高辻役員と二年ある鬼塚専務とでは温度差があるのも確かですが…
この円山事業部長の昇格自体本社の社長が首をかしげていたのをなだめすかして通したのは鬼塚専務です。謂わば自分の蒔いた種でした。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする